2018年12月09日

日日是好日(表記以降、結末に触れています)

そもそも、このタイトルが読めないわけですが(映画館の窓口で「ひびこれこうじつ」ください、と言ってしまった)、とんだ赤っ恥をかいたので調べてみると、これは禅語の一つで「にちにちこれこうじつ」と読むらしい。

映画の中で、黒木華演じる主人公が、多部未華子演じる従姉妹に意味を聞かれる。

毎日が良い日、って意味でしょ?

と答えると、従姉妹は追撃する。

それくらい私だってわかるよ。それだけ?

それだけって…。聞かれた主人公はきょとんとしている。
そりゃそうですよね。

何でもない日、おめでとう!

とか、

1年365日 きっと誰かの誕生日♪

とか、そういう意味だと思ってましたもん、私も。

そうじゃないなら、何なんだ、と思いながら画面をじっと見つめていました。

茶道初心者の主人公たちのズッコケお点前に映画館が沸き、和やかなムードに包まれるなか、映画は少しずつしんみりとして、季節の移ろいの美しさとはかなさが沁みてきます。

お点前や茶碗、掛け軸やお菓子など眼で見る要素の多いお茶ですが、だんだんと、茶筅のたてる音や虫の声、雨の音など、耳で聞こえるものにも敏感になってきます。

滝の掛け軸を見るシーン、ざあーっつと音を立てて流れ落ちる水が、スクリーンの向こうからこちらを潤すかのようでした。

茶室に置かれるものは、ただ単に季節感を演出するだけのものではありません。ひとつひとつに意味を込めて用意し、お客をもてなす。

映画では、茶道教室なので先生が意味を説明してくれますが、お茶席ではきっと、お客が自分で主人側の意図に気づかなければならないのでしょう。そういう意味では、寛いで心遣いを楽しむと同時に真剣勝負でもあるわけで、これが和のおもてなしの洗練されたところでもあり、疲れるところでもあり、ということなのだと改めて思いました。

きちんと背筋を伸ばした登場人物たちの端正な立ち居振る舞い。それを見るだけでも十分価値がありますが、いまこの一瞬に集中すること―流行りの言葉でいえばマインドフルネスってヤツでしょうか―について、考えるきっかけにもなります。

いま、この時と同じ時は二度とない。

当たり前のことですが、樹木希林さんに言われると説得力ありすぎです。

映画を観てから何日もたって、じわじわと沁みて来る。
晴れの日ばかりじゃない人生を味わい深くしてくれる映画です。

以下、ちょこっとだけ個人的感想をば...結末に触れていますので、
未見の方はここまで。
















よろしいでしょうか?


この映画に限らず、どこで話を終わりにするかという選択は、なかなか難しいですね。
原作がある作品はなおさらだと思いますが、まさか24年間をイッキミすることになるとは思ってませんでした。

後半は特にエピソードが飛ぶため、暗転するたびに、ここで終わりか?!と身構えてしまい、落ち着きませんでした(笑

そしてラストはまさかの、主人公による、タイトルの意味の解説。

なんて勿体ない....。

ここまで見た人は十分わかってますって!(そういう風に誘導しているし)

良い映画でしたが、個人的にはそこがちょっと残念でした。


面白いと思ったのは脇役の美智子。思ったことはハキハキと言い、要領よく楽しみ、要領よく就職し、要領よく玉の輿にのる女の子。

典子は仲良くしながらも、どうしても彼女と自分を比べてしまう。

ひと昔前の典型的な勝ち組女性だけに、主人公と好対照の登場人物として、いかにもぶりっ子みたいに描くこともできたでしょうが、当たり前と流してしまいそうなことに疑問をもち、典子の密かな優越感にツッコミを入れる、なかなか賢い女性として描かれています。

2人のシーンは、女の子同士の微妙な心理のあやを的確に表現していて、俳優さんも演出も上手いなと思いました。

海外での上映もあるのでしょうか、どんな風に見えるのか、海外の方々の感想を聞いてみたいです。

posted by 銀の匙 at 22:24| Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月25日

ファンタスティック・ビースト2 黒い魔法使いの誕生(表記以降、ネタバレあり)

タイトル長すぎて覚えられねえっ!(怒)と評判の人気映画の続編が、さらにタイトル増量して新登場!

面倒くさくて私も同行者に「今日行くのは「ファンタビ2」」としか言わなかったため、「聖地巡礼?」と恐れられていました(三連休如きで誰がファンの旅に行きますか?!)

……幸い、前作も観た(↠記事はこちら)ので、早速公開日に出かけ、あのどこかノンビリした、レトロな世界を楽しむつもりでいたら、今回はずいぶんとまた暗かった…。

とはいえ、出だしのシーンから暗黒ながらも迫力満点、ファンタジーとはいえ、ジョニー・デップ仕掛けるところの「離間の計」も現実味があり、大人は十分楽しめることでしょう。

逆に、お子さんにはちょっとキツイかも。

前作未見の人に対する配慮はあまりないので、公式サイト等(↠こちら)で予習してから行きましょう。

「ハリー・ポッター」シリーズを観ていない方でも楽しめますが、この作品が前日譚にあたるので、繋がり具合が面白いです。私はあまり「ハリー・ポッター」には詳しくないんですけど、それでもかなり、ほぉ〜そーだったのか〜と思いました。


ほぉ〜つながりで言うと、私は主役のニュート・アルテミス・スキャマンダーを演じているエディ・レッドメインさんをこのシリーズで初めて知ったのですが、何だかぼぉっとしてるような時とか、セリフを受けるときの表情が、シャイなのを通り越してちょっと変わってるな〜と思っていたのです。

今回、彼の子供時代のシーンがあり、子役(ソックリだった)が同じような表情で演じるのを見て、初めてそれが演技だったんだと気づいた次第。

ということで、子ども時代のニュートもキュートな本作品、ぜひ、映画館の大きい画面でお楽しみください!

お話の中身が分かってもOKと言う方は、以下もどうぞ!

(いきなり核心部分のネタバレです)











さて。

今回のファンタビは何て言うか「スター・ウォーズ」新シリーズみたいな展開で、ものすごい破壊力を秘めた青年・クリーデンスが、自分の家族を探そうとパリに現れ、彼を利用したい黒い魔法使い・グリンデルバルド、彼を危険視し葬り去りたい魔法省、彼を助け出したいニュートたちの三つ巴の争いになります。

クリーデンスはリタ・レストレンジの弟だと思われていたのですが、彼の窮地に不死鳥が現れたことで、ホグワーツ魔法学校の校長であるアルバス・ダンブルドアの弟、アウレリウスだったことが明らかになります…。

って、ハッキリ言って、登場人物の誰が誰の家族かなんて、興味ないんですけど?

実は、私は「ハリー・ポッター」シリーズにさほど関心がなく、その理由は、ファンタジーと言いつつ、各回が実際には殺人事件の謎を解くミステリみたいな内容だったことと、血統がモノを言うお話だったからです。

もちろん、お話の中では純血主義は批判されているのですが、ハリーが無敵の強さだったり、何もしないうちから英雄視されていたのは、彼の血筋ゆえだった訳ですよね。

ファンタビの第1作はそういう部分が薄かったので気に入ってたのですが、結局、誰が誰の子で因果応報のドロドロが始まるのか…ファンタジーでそれはちょっとなぁ〜…「指輪」と比べて話が小さすぎる!と思ったところでハタと気づきました。

そうそう、ビルボ初めホビットたちは、家系図について話をするのが何より好きだったじゃないですか。

これはトールキン教授がイギリス人の性癖を上手く捉えてたというべきか、ローリングさんもそういう伝統にきちんと乗っかったというべきか…

いえいえ、〇〇の子××の何番目の息子の何とかの…っていうのは神話伝説では良くあるつかみだから、正統派のストーリー展開というべきなのかも知れません。

ま、私といたしましては、大手柄の御礼としてダンブルドア校長にお茶に誘われたニフラーの付き添いの(笑)ニュートが、「スプーンは隠しておいた方が良いですよ」ってシーンが嬉しくて、それで十分元は取れました。

もちろん、校長先生ともあろうお方がお客様に出すスプーンは「銀の匙」に決まってますからね☆彡(ニフラーにくすねられるなら、良しとしよう…)


posted by 銀の匙 at 22:23| Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月17日

人生フルーツ

ただのほっこりスローライフ礼賛映画かと思ったら大間違い。かなりガツンと来ましたよ、自分的には…。

通常公開はとっくに終わったのですが、日本全国で1度ならず2度3度のアンコール上映が行われており、それに加えて、樹木希林さん追悼特集上映があちこちで行われている関係で、この映画もナレーションを担当されていることからラインアップに入っているようです。私も本上映は見逃してしまい、追悼特集で観ました。

ここのとこ毎回このパターンなのですが、予告がピンと来なくて。

自宅の庭に小さな畑を作り、暮らしに必要なものをできるだけ自分の手で作って暮らす、老夫婦のドキュメンタリー。

ひと言で要約すれば確かにそうなんだけど、なぜそんなことをしてるのかという理由が分かるにつれて、これがなかなか「丁寧な暮らし」的なほんわかした話では片づけられないことに気づきます。

主人公は、90歳の夫・つばたしゅういちさんと、87歳の妻・つばた英子(ひでこ)さん。

しゅういちさんはアントニン・レーモンドの事務所に勤めたこともある建築家。名古屋にある高蔵寺ニュータウンという、大規模開発された団地・住宅街の一角に、自分で設計した自宅を建てて住んでいます。

木造平屋、ぶち抜きの広い空間をゆるくコーナーに区切った洒落た建物の中は、過度に整理整頓していない、ホッとする空間。それでも、あまり主張の激しいものは置いていないようなのですが、ちょっと人目をひくポスターが飾ってあります(これが後半の伏線だったとは…)。

樹木希林さんの味のあるナレーションを挟みながら、カメラは二人の日常を丹念に追っていきます。隅々まで自分で手を入れた庭と家屋、食卓にならぶ手料理、手織りの布。本にもなっているほどの丁寧な暮らしぶりです。

いやぁさすがは芸術家夫妻、毎日の暮らしも芸術だってことかな,,,とか勝手に感慨にふけっていると、話はしゅういちさんの仕事に及びます。

しゅういちさんは現役時代、日本住宅公団で団地の設計をしていました。図面で見ると、空間を贅沢に使った緑と風にあふれる素敵な街ができそうな感じなのですが、そこは昭和な高度経済成長期のこと、ゆとりの設計が実現されるはずもなく、出来上がった団地は山を削り谷を埋め、所せましと建物が立ち並ぶ殺風景な場所に…。

こんなとき、設計者はどうするか。設計思想を勝手に変えられたことを愚痴りながら、醜く造成された土地には見向きもせず、遠く離れた高級住宅地に好きな家を建てて暮らすのか。

しかし、しゅういちさんはそうはしませんでした。自分の設計とは懸け離れた有様になった団地に土地を買い、庭を緑化したり、禿山になった裏山にどんぐりを植えるプロジェクトを立ち上げたりと、個人の力で出来る挽回策をコツコツと積み上げていきます。

仕事に責任を持つというのはこういうことなんだなぁとしみじみしてしまいました。

アイディアが思い通りに通らなかったり、仕上がったりしないと、つい他人のせいにしがちな自分を思わず反省してしまう展開。

しかし、しゅういちさんのこうした姿勢は公団時代からだけではありませんでした。この映画はここからが凄い。

普段は作業着っぽい服を着ているお二人ですが、突然正装をして旅にでます。なんだろうと思ったら、台湾での翻訳本の出版記念サイン会のようです。冒頭でちらっと映ったポスターはこのときのものだったんですね。

いかにも台湾の人が好きそうなテーマ・作者だよなぁ、と思ったら、まだまだこのエピソードには続きがある。ぜひ、見ていただきたいのはここからなんです。ということで、未見の方はここまで。

11月下旬から年末にかけても、

ユジク阿佐ヶ谷
チュプキ田端
シアターキノ(北海道)
シアターセブン(大阪)
関 シネックスマーゴ(岐阜)
浜松 シネマイーラ(静岡)
日田シネマテーク・リベルテ(九州)
シアタードーナツ・オキナワ(沖縄)

など、

まだまだ全国で上映があります。緑と陽光あふれる庭の風景、夫妻の丁寧な暮らしぶりなど、画面の隅々まで堪能できますので、ぜひ劇場でご覧になってください。

詳しくは http://life-is-fruity.com/theater/ でチェックしてみてください。


お話の続きが分かってもいい方は、以下も続けてどうぞ。












よろしいでしょうか?

しゅういちさんは、台湾からも依頼を受けて集合住宅の設計を請け負っていました(完成した郊外のマンション群はやはり意図通りではなかったようですが・哀)。その見学を終えて向かった先は、なんと墓地でした。

ここに埋葬されている台湾人は、日本の軍用機を作る仕事に従事していた台湾(当時は日本の植民地だった)の少年工だった人でした。戦前のしゅういちさんは飛行機の設計をしていましたが、狭い宿舎に大勢で暮らしている少年工をよそに自分だけ良い宿舎で暮らすのがイヤで、彼らと同じ宿舎に住んだのだそうです。

そのため、多くの少年工たちに好かれ、親友も出来たのだと言います。彼は台湾に戻った後、政争に巻き込まれて殺害されてしまい、連絡も取れなくなっていたのだとか…。

このあたりは重い話を非常にサラッと描いていますが、それにしても、戦前から一貫してブレないしゅういちさんの姿勢には強いインパクトがあります。戦後、住宅設計を志して公団に入ったのも、日本が焼け野原になり、住むところがない人が大勢いたのを見聞きしたからだといいます。

世のため人のためとか口で言うのは簡単だけど、自分の生き方を通じてそれを形にしていくというのは本当に凄いです。

この生き方を理解し、実践者の1人として今も生活を続ける妻の英子さんもまた凄い。

スローライフというとどことなく、非常にパーソナルな、言い換えれば、自分さえよければいい的な印象を受けることもありますが、そういう思い込みでこの映画の予告を観ていた自分が恥ずかしくなりました。明日が1ミリでも良くなるように、多くの人にご覧いただきたい作品です。

posted by 銀の匙 at 08:54| Comment(4) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月05日

黄耀明 明曲晩唱 LIVE


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香港のレジェンド、元達明一派のヴォーカル、アンソニー・ウォンによる一夜限りのワンマンライブが開催されました。

300人入るライブハウスは日本人・香港人・中国人のお客さんがほとんど同じくらいの比率。わざわざ南京から駆けつけたファンもいました。そりゃそうでしょう、ふだんはオペラグラスでやっと顔が見えるくらいのハコでしかやらないのに、こんな近くで見られるんですもんね。

とはいえ、今回は香港で行われた小規模コンサートのフォーマットをそのまま移管したそうで、舞台の上にはアンソニーと、盟友のキーボーディスト・ジェイソンの2人だけ。全体的に手作り感あふれる、ある意味贅沢なライブでした。

“春光乍洩”や“ダンスダンスダンス”など往年の名曲はもちろんのこと、インスパイアされたドイツ映画や日本映画の劇中曲、レスリー・チャンやテレサ・テンをフィーチャーした曲などを洒落たアレンジで歌ったり、日本語で歌ったり(上手くてびっくり)と大サービス。伸びのある艶やかな歌声が、小さな会場の隅々を満たして行きます。

来場しているそれぞれのファンに向けて英語・日本語・北京語・広東語を取りまぜたMCで、始めて意図を知った曲もありました。“你真偉大”は教会や父権主義を歌った歌だったとか、“禁色”は三島由紀夫の小説から着想されたとか…。

来場したファンもノリがよく、曲間には会場とのインタラクションが楽しい、とてもフレンドリーでアットホームな雰囲気でしたが、最後の方には今の香港が、どことなく発言しづらい、声を挙げにくいプレッシャーを感じる、考えることすらできなくなるのではと恐れている、と思いを吐露し、メッセージ性の強い楽曲も歌いました。

香港返還から20年を経て、何となく風化したように見える諸問題に、何物も恐れず静かなまなざしを向けるその姿は、崇高ですらありました。

と、しんみりさせておいて、アンコールはまさかの「君に胸キュン」!

このギャップに思わず胸キュンな夜でございました。

10月4日 新宿ロフトにて
posted by 銀の匙 at 02:19| Comment(0) | 舞台/パフォーマンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月05日

閃光少女

台風被害に遭われた皆様にお見舞い申し上げます。

ちょっと気絶している間に数か月が過ぎてしまいました。目が覚めたら清朝あたりに穿越してないかな〜と思ったのですが、相変わらず混んだ電車に乗ったり残業したりしているのでした。ちぇっ。

仕事ばっかりしておりましたこの夏、映画2本とコンサートに1回行っただけ(結構出かけてましたねテヘ)、幸い自分的には全部当たりだったのがせめてもの慰めと申せましょう。

で、カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2018で上映された本作品、期間限定とばかり思って、仕事を放り出して見に行った(おかげで翌日以降が修羅場でしたよどうしてくれるんだ)のに、好評につき9月8日からロードショーとのこと。なぁんだ、早く言ってよ…。

上映情報は↓コチラ。
http://qualite.musashino-k.jp/movies/5055/


中国の音楽高校を舞台に、揚琴を学ぶ元気印の少女・ジンの恋と伝統音楽への想いをポップに描いた作品です。


映画の設定なのか事実なのかは分かりませんが、西洋音楽が幅を利かせる中国では、ダサい、大道芸人っぽい、楽器の名前さえ知られていない伝統音楽はもはや虫の息。音楽高校では伝統音楽コースの新入生募集を中止するという決定がくだされます。


西洋音楽コースの先輩に憧れるジンですが、鼻にもかけてもらえなかった上に、専攻する伝統音楽を見下されたように感じ、バンドを組んで伝統音楽の良さをアピールしようと思いつきます。

ところが、クラスメートのヨウ以外、誰も話に乗ってきません。追い詰められたジンは、後輩たちを頼ろうとします。しかし、天才的な演奏テクニックを持つ彼女たちとコミュニケーションを取るのは至難の業。なぜなら彼女たちは、2次元の住人だったからです…。

    * * *

私もしばらく中国に行ってないので、この映画のような情景がリアルなのかフィクションなのか見当もつかないんですけど、少なくともネットの中で見る限り、都会の子どもたちへのクール・ジャパンの浸透ぶりは驚くほどで、日本のテレビドラマやアニメ、マンガ、流行語、ネットニュース等々がほとんどリアルタイムで伝播しているようです。

日本語も翻訳が追いつかないのか面白がられてるのか、そのまんま通用したりしています。例えばこの映画の中でも、後輩たちのニックネームは貝貝醤(ベイベイジャン)、塔塔醤(タータージャン)。

最後の字は醤油という意味ではなく、日本語の「〜ちゃん」から来てるんです。(もう1人はあだ名がずばり「桜っ子」)

いやはやそれにしても、中国映画でヲタ芸を見る羽目になるなんて、誰か助・け・て〜!

中国の伝統音楽の世界をベースにしているので、それだけだとイヤらしい愛国映画っぽくなってしまいそうなところ、クールジャパン要素がその辺を上手く中和しています。

それにしても、中国ロックなんてどの有名バンドも何かしら中国の伝統音楽の要素を取り入れていたし、女子十二楽坊なんてメジャーな演奏集団さえいたのにこの凋落ぶり、一体どうしちゃったんでしょう? 映画向けのフィクションだと思いたいけど…。


こんなに面白い素材を扱いながら、テンポがやや中だるみしている箇所があるし、ストーリーが直球すぎるきらいはありますが、上手いこと誰もが楽しめる爽やかな青春映画に仕上がっていると思います。

先輩が練習のときに引いてるピアノ、XING HAIというロゴが見えますが、
作曲家の冼星海から取ったブランド名なんだろうな〜と思ったり、細かいところでいろいろ発見もありました。

周筆暢の歌うエンディングテーマもキャッチーで私は好きですね。
音からも楽しめる映画です。

2018年9月8日〜シネマカリテ(新宿)にて上映
posted by 銀の匙 at 23:57| Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月10日

6月〜7月のリマインダー

・藍色夏恋 デジタルリマスター版

2018年の台湾映画祭で上映されたにもかかわらず、あまりの人気で入場できなかった人続出。
ついに再上映となりました。この映画は本当におススメです。
恋愛映画…なんですが、ただのアイドル映画に終わらないのが良いところ。
ちょっぴり切なくて、だけどポジティブ。

チェン・ボーリンの出世作。このころは金城武にちょっと印象が似てる気がする…。

6/16(土)〜6/22(金) 上映時間 21:10
ケイズシネマ(新宿)にて

↓上映館のスケジュールページ。作品紹介のページもあるのですが、そちらはネタバレとなっております(謎)。
作品を思いっきり楽しみたいかたは、作品紹介のページは見ない方がいいかも。
http://www.ks-cinema.com/schedule/

台湾文化センターの上映会

こちらはなんと「入場無料」の嬉しい催し。それだけに競争率が高いので、頑張りましょう。
だいたい1か月〜3週間前くらいに、HPから申し込む形になっています。
字幕つき、終わった後に作品解説もついてます。

これから抽選が行われる作品としては 『停车』がトップバッターで、7月9日昼12時申し込み開始予定。

以下、台湾naviのHPより。申し込み方法など詳細は台湾文化センターHP https://jp.taiwan.culture.tw/ をご参照ください。

◆7月28日(土)14時〜 『停車』(2008年) 監督:鐘孟宏(チョン・モンホン)
出演:張震(チャン・チェン)、桂綸鎂(グイ・ルンメイ)、戴立忍(ダイ・リーレン)
台湾を代表する監督の一人鐘孟宏の記念すべき長編第一作。独特の色彩の映像とブラックユーモアで台湾の人と生活を切り取った秀作。

◆8月26日(日)14時〜 『52Hzのラヴソング(原題:52Hz, I love you)』(2017年)監督・脚本:魏徳聖(ウェイ・ダーシェン)
出演:小玉(シャオユー)、小球(シャオチョウ)、スミン、米非(ミッフィー)
バレンタインの一日に起きる様々なカップルたちのラブストーリー。17曲のオリジナルソングで綴られる
トーク:作品解説、監督とプロデューサーの仕事

◆9月22日(土)14時〜 『奇人密碼−古羅布之謎』(2015年)
監督:黃強華(ホアン・チャンホア)、黃文擇(ホアン・ウェンツァ)
台湾の伝統的な人形劇「布袋戲」をベースに、新キャラクターとオリジナルストーリーで創り上げた冒険ファンタジー映画。
日本と合作して成功した「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀」の原点。トーク:作品解説、布袋戲の魅力

◆11月29日(木)19時〜 『拔一條河』(2013年) 監督:楊力州(ヤン・リージョウ)
出演:(ドキュメンタリー)
2009年に台湾の中南部および南東部で発生した水害の直後、子ども達と外国人花嫁たちが村人を勇気づけて復興に向かった感動のドキュメンタリー。
トーク:作品解説、金馬奨レポート

ロシア・ソビエト映画祭
「アンナ・カレーニナ ヴロンスキーの物語」、「マチルダ」ら24本2回上映。
国立映画アーカイブにて7月より

http://www.nfaj.go.jp/wp-content/uploads/sites/5/2018/06/NFAJprogram2018No04.pdf

・凱旋上映!バーフバリ 完全版

上映中。長尺のインド映画なので、今後なかなか再上映は難しいと思われます。これこそ映画館で見るべき作品。気になる方はこの機会にぜひ、劇場で王を称えよ!

http://baahubali-movie.com/theater2.html

ユジク阿佐ヶ谷等、一部の映画館では前編の「伝説誕生」のリバイバル上映も行われます。
posted by 銀の匙 at 11:39| Comment(0) | 催し物 リマインダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年05月06日

2018年 ラ・フォルジュルネ・オ・ジャポン(3日目)有楽町会場

ラ・フォルジュルネ3日目にして最終日。

本日は夕方から、2プログラムに参戦です。

会場周辺は賑わいつつも混雑はしていない、ちょうどいい塩梅の人の入り。

まずはB7会場にて、M325 シルクロードの音楽を聴きました。

実は、最終日1プログラムだけ聴きに来るのもなんだかな、と思い、追加で購入したチケットでしたが、これが大当たり。

見慣れない民族楽器を操るカンティクム・ノーヴムと和楽器(三味線、尺八、琴)の競演。

なぜか最後のナンバーが「こきりこ」…。マンドリンでこきりこ、ブロックフレーテ(かな?)でこきりこ、ノリノリで良い演奏でしたが、なにゆえこの選曲???

ともあれ、日本人観客はみんな知ってるこのナンバー、当然のごとく盛り上がり、熱狂のうちにプログラムが終了し、残るはM316最終公演のみ。

このプログラムは、毎年の目玉奏者が出るのに終わる時間が遅いため、当日でも確実にチケットが手に入ります。帰宅の交通に支障がなければふらっと来て最高の音楽体験。良いですね〜。

と、大人しくAホールで座っていると、池袋会場の最終公演からハシゴしてくる観客を待つので開場が10分遅れになるとのアナウンス。場内は、そんな人いるんだ…! とざわついていました。

後で聞いた話では、ホールAばかりでなく、B5の最終公演・チェンバロ奏者でチケット瞬殺になっていたピエール・アンタイさんは持ち時間30分オーバーだったらしい。お客さん、きっと感涙にむせんでたことでしょう。

最終公演のロマバンド、パヴェル・シュポルツル&ジプシーウェイは超絶技巧で凄かった。持ち曲のトランシルヴァニア幻想曲、ババイのカプリス・ツィガーヌという曲を演奏してくれました。

その後、ウラル・フィルが登場し、ルイス・フェルナンド・ペレス のピアノでラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 op.43、アレクサンドル・クニャーゼフのチェロでカザルス:鳥の歌、ブロッホ:「ユダヤ人の生活」から「祈り」

そして、ウラル・フィルだけでドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 op.95「新世界より」から第4楽章、
〆はエカテリンブルク・フィルハーモニー合唱団も登場して、伝承歌:行け、モーゼよ、と、ヴェルディ:オペラ《ナブッコ》から「行け、わが思いよ、金色の翼に乗って」と盛りだくさん。

クニャーゼフは渋い魅力があった(息継ぎの音が大きくて、静かな曲を弾いてても、チェロって力が要るんだなと思いました)けど、全体に、選曲のせいか熱狂というよりは良演で〆ました、という雰囲気でしたが、アンコール(ナブッコをもう1回演った)も終わり、ルネ・マルタンさんも袖に引っ込み、オケも退場して、家路を急ぐ人たちが立ち上がったあと、とても素敵なことが起きました。

オケが全員はけたときには拍手ももうまばらだったのですが、舞台には最後に合唱団が残っていました。せっかく素晴らしい歌を聴かせてくれたのに、ラストが寂しいなんて残念すぎる、せっかく立ったしお見送りの拍手をしよう、と思ったら、皆さん同じ思いだったらしく、合唱団が退場を始めた瞬間にいきなり拍手の音が大きくなり、合唱団が全員退場するまで、拍手はどんどん大きくなって続いていました。

終わり良ければすべてよし。今年のフォルジュルネも最高でした!


posted by 銀の匙 at 03:10| Comment(0) | 舞台/パフォーマンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年05月05日

2018年 ラ・フォルジュルネ・オ・ジャポン(1日目、2日目)有楽町会場、池袋会場

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皆様こんにちは。
今年もゴールデンウィークのクラシック音楽の祭典、ラ・フォルジュルネ・オ・ジャポン鑑賞/出演してまいりました。

期間中さまざまな用事に襲い掛かられ、レポートとしては遅きに失しましたが、ちょっとした感想ということで。

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まずは第1日目、5月3日。

この日の東京地方は早朝まで凄惨なお天気で気を揉みましたが、午前のうちに天気が回復して一安心。聴衆としては夜の1プログラムだけ聞きました。

今回は銀座/有楽町の東京国際フォーラムと池袋の東京芸術劇場、2つの会場での開催でした。

フォーラム会場はガラス棟と会議棟の間に例年イスとテーブルを大量に出していて、お祭り気分を盛り上げているのですが、第1日目は数が少なく(天気のせいかも)、椅子取り合戦に敗れた人たちが相当困ってました。

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第1回目からブースを出している帝国ホテル。テイクアウトのカップも気合い入ってます。

聴いた方は1つだけでボリス・ベレゾフスキーの:「カルトブランシュ」つまり、曲目はおまかせ。何を演奏するかも分からないのに物凄いチケット争奪戦でした。しかし残念ながら、こちらが疲れていたため、演奏の途中で気が遠くなりそうに…。ダメじゃん。


第2日目、5月4日。

池袋会場は東京芸術劇場前。こちらはコンサート用のホールなので、音は断然国際フォーラムより良かったです。ただ、有楽町会場に比べると、会場周辺がかなり寂しい感じだったのは否めませんでしたが、隣の公演で無料公演が始まるとお祭りらしい雰囲気になって一安心。

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こちらもテーブルやイスが出してあったのですが、酒盛りを始めるグループ(どう見ても音楽を聴きにきた感じではない....)が何組も占拠していて、あまりいい雰囲気とは言えませんでした。これは今後の課題ですかね。

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プログラムが終わったあと、お気に入りの池袋の東口公園に出かけたところ、そこでもラ・ファルジュルネのイベントの一環として無料公演をやっていました。

こちらの方が断然雰囲気が良かったです。

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さて、初の池袋開催ということでチケットも取りやすく、穴場だとは思っていましたが、座席をみてビックリ。一番前の席で、レミ・ジュニエ様のど真ん前。今年の運をすべて使い果たしたとしか思えない...。

おっとその前に、エカテリンブルク・フィルハーモニー合唱団とウラル・フィル、ドミトリー・リスでグレチャニノフのミサ・エキュメニカop.142を聴きました。

東京芸術劇場のコンサートホールはさすがの威容。

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(開演前の様子。もちろん、始まる前に携帯はオフ)


しかし驚いたことに、上手側の舞台番前の1ブロックががら空き。何が起こったんだろうと、始まる前にお客さんもざわついていました。ツアーがキャンセルにでもなったのかしら…? と、皆さんささやいていましたが…。

気の毒なのは演奏者の皆さんで、舞台に出てきた途端、一瞬、えっ...?と表情に出してしまった人もいました。演奏は素晴らしかったのに残念。

この公演に限らず池袋はほとんどの公演に残席があり、本当にもったいなかったです(来年はそうは行かないかも知れないけど)。

でも、来年も池袋地区で開催してくれるかどうか、このままではかなり微妙かも…。

とにかく、おかげさまで今年は至近距離からレミ・ジュニエ様を拝むことができました。

プロコフィエフのピアノ・ソナタ第8番 変ロ長調op.84はホントに長調か…?という感じの曲ではありました。超ラッキーな席でしたので、手の動きがばっちり観察できました。指さすように指1本だけ鍵盤に置く弾き方や、休符でかなり離れた鍵に移動するときにも、手を鍵盤に滑らせているというのが興味深かったです。


ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」からは「ロシアの踊り」「ペトルーシュカの部屋」「復活祭の市場」。

少し線が細い感じの演奏で、奇妙な異国の空間というよりは、水に浮かぶアメンボの不思議な動き、と言った風情。それはそれで大変面白かったです。

夕方からはもう一度、エカテリンブルク・フィルハーモニー合唱団の歌を聴きました。

最初の曲はラフマニノフの晩祷から、「わが霊や主を称えよ」。アルトソロと合唱団の掛け合いの曲ですが、これが大変素晴らしい出来で、最初から滂沱の涙になってしまいました。

この曲に限らず、どの曲にもソロ箇所があり、合唱団メンバーが歌っていましたが、どの人もレベルが高く、しかも終わりに行くにつれてさらに元気になっていくようで、いやはやロシアの人の体力恐るべし、と思いました。

本日は夕方より2プログラムを聴く予定です。

それでは皆様、よい休日を!

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2018年04月29日

パディントン/パディントン2(ストーリーに触れています)

「くまのパディントン」シリーズが大好きで、繰り返し繰り返し読んでいました。

暗黒の地ペルーから密航し、ロンドンのパディントン駅でブラウンさん一家に拾われた子グマの物語。
礼儀正しいジェントル熊(?)のパディントンは、おっちょこちょいだけど街の人気者です。

ブラウンさん一家の日常や骨董屋のグルーバーさんと楽しむ「お11時」のお茶など、お話から垣間見える古き良きイギリスの暮らしに憧れたもんです。

そんな児童文学の傑作を、生きてるようなモフモフのCGで映画化? しかも舞台は現在? 

いやいやガッカリするだけだもん、絶対観ませんよ☆ と思っていたんですけど…。

泣けるから絶対観ろ!という周囲の推薦の辞も何だかなぁと思いながら観始めたら、いきなり原作にないペルーでの回想シーン?が始まり、CGはやけにリアルで可愛くないし、パディントンのおっちょこちょい具合が何となく下品でウザいし、街並みは現在のロンドンだし、子どもたちは現代っ子で小憎らしいし、本のちょっとレトロな良さが全然出てないなぁとガッカリ感半端ありませんでした。

最初はね。


拾ってくれたブラウン一家からも、お母さん(おや、ルーシー・モードさん↠記事はこちら じゃありませんか、また画家の役なのね・笑)を除いては、厄介者扱いのパディントン。そこがまた原作ファンにはガッカリなのですが、ともかく役場に連れて行くか、他に引き取ってくれる人を探そうということになり、パディントンがロンドンに来るきっかけを作った、英国からの探検家を尋ねることになります。

ところが、探検家協会に行ってみると、ペルーに行った人なんかいませんとけんもほろろの扱い。諦めきれないパディントンは資料室に潜入し、ことの真偽を確かめようとするのでした...。




パディントンの造形がややブキミだと思っていたのも最初のうちだけで、挿絵じゃなくて本当のパディントン(というのも変な表現ですが)がいたら、こんな感じだろうなあと納得してしまう演出恐るべし。

そして、バンクス一家の趣味や隣人の職業など、ちょっとした設定も伏線になっていて、鮮やかに大団円につなぐ脚本はお見事のひと言。BBCの「シャーロック・ホームズ」しかり、「ラブ・アクチュアリー」「キングスマン」しかり、パズルのように鮮やかにピースをはめていく劇作の上手さはさすがイギリス。

実はレトロなスパイスも、1では探検家協会のシーン、2ではお話のカギとなる飛び出す絵本のシーンなどに、しっかり効かせてあります。ロンドンの名所を取り上げて、ちゃっかり観光アピールしているのも微笑ましい。

中南米っぽいバンドが狂言回し的に登場し、映画のあちこちに移民排斥への異議申し立てのメッセージが挟まれているのは、時節柄よく理解できるんだけど、ここまで露骨にこのお話に絡ませなくても…と思いかけてハッとしました。

ペルーからの密航者・パディントン。トボけたクマの挿絵の横にそんな文字が躍っていると大げさでユーモラスですが、実は原作者もパディントンに戦争孤児や移民の姿を重ねていたのかも知れない。映画の冒頭、戦争のときに孤児を進んで引き取った、優しいロンドンの人たちを想起するシーンがありますが、原作者の意を汲んで追加したシーンなのかも知れません。

という訳で、原作へのリスペクトもしっかり込められたシリーズ2作、吹き替えキャストの豪華さにびっくりですが、大人の皆様には上級階級からロンドン子までバラエティーに富んだイギリス英語を楽しめる字幕版もおススメです。

泣けるかって? う〜ん、すみません、私はつい、泣いちゃいました...。


関東地区と近畿地区では5月中旬までの上映です。お見逃しなく!





おススメの辞は以上で、以下はご覧になった方向けにちょこっとだけ、個人的感想です。


最後にイギリスに行ってから、もう10年以上経ってしまいましたが(月日の経つのは早いですね)、ロンドン・オリンピックの成功で、かなり多文化共生的な雰囲気になったと聞いている一方、EU 離脱など非寛容な動きがあることも耳にします。

そんな中で、世界に向けて、しかも子ども向けの作品で正面切ってメッセージを打ち出してきたのは素直に偉いと思うし、制作者の良心を感じますが、別の意味でイギリス(と、その遺伝子を受け継いでいるであろうハリウッド)のスゴさも感じました。

この映画は、かつての英国の偉大な探検家たちがやらかしたことを皮肉り、移民といえば泥棒と見なす同胞をたしなめていて、とても勇気があるし立派だと思います。こういう面をちゃんと描いて反省してから、名誉をはく奪されてもクマたちを守った探検家やパディントンを助けた町の人たちを描いている。

それは良いんだけど、そもそも、近代以降、世界のあれこれの紛争(とその結果としての難民流出)の原因を作ってきた立役者は誰あろう、大英帝国様じゃないですか。

ロンドンにいる移民には、元のイギリス植民地からやってきた人たちも少なくないはず。

なのにいつも、いつの間にかイギリスがちゃっかり正義の味方の側に回ってるんだけど、ホントに良いのかしら?

「敗戦国&植民地経営組のおめーが言うな」と突っ込まれそうだから、これ以上の追究はやめておくけど、イギリス人は本当に賢いな…と思い知らされてしまう今日この頃なのであります。




posted by 銀の匙 at 16:57| Comment(2) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月22日

コードネームは孫中山(行動代號:孫中山)  (表記以降、お話の結末に触れています)

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大阪アジアン映画祭でグランプリと観客賞の2冠を獲得した作品という、おうわさはかねがね伺っていたのですが、何せその後も数回しか上映されず、どうしてもお会いできませんでした。

今回、台湾文化センターでの無料上映にチャレンジ。ネットで先着順だったのですが、主催者によれば募集後8分で満席になってしまったとか。

見れば人気も頷ける面白さ。だって、この絵づら↑ですよ(笑)
さすが大阪の観客の皆様はお目が高い。

相当笑ってちょっとホロっと来る、イー・ツーイェン(易智言)監督による脚本も、街中でスカウトされたという高校生キャストの演技も秀逸でした。

舞台は台湾のどこにでもありそうな高校。

学級費を払えとしつこく催促されたアーツゥオ(阿左)ですが、そんなお金はどこにもない。そこで突飛な作戦を思いつきます。それは、倉庫に置かれた孫中山像を盗み出し、くず鉄屋に売ってお金を稼ぐこと。

計画に乗った3人の仲間と共に周到な準備(笑)を整えていると、その前に立ちはだかる驚愕の出来事(あり得ないし・笑)が!!

果たして彼らは無事、孫中山像を売り飛ばして学級費を支払うことができるのでしょうか!?



学校の備品を盗んで売ろうだなんて、とんでもない…とは一瞬も思えないのは、主役のアーツゥオ君がどう見ても人懐っこい良い子だから。なかなか頭も良いのに、どこか天然ボケが入ってほんわかしたアーツゥオは、演じた・懷雲くんの素のまんま。

(こちら↓に・懷雲くん編のメイキングがありますが、とても可愛らしい) https://www.youtube.com/watch?v=Tc3U04sA-1s
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彼の前に立ちはだかる、影のある少年を演じたウェイ・ハンディン(魏漢鼎)との対比も良かったです。

今回、字幕にもトボけた味わいがあり、かなりの人が字幕で笑ってました。

無名の高校生たちが主役のこの映画、大作でもないしキャスティングも地味(有名な俳優さんも出てはいるけどほんの脇訳)、でも見ればきっとお気に入りの1本になるはず。もっとたくさんの人に観る機会がありますように、と心から願っております!

終わったあとのトークショーで2人のその後についても紹介がありました。

この映画の後、・懷雲(ヂャン・ホワイユン)くんはアリエル・リンが主演の映画に出演、魏漢鼎(マシュー・ウェイ・ハンディン)くんは《再見,在也不見》という作品に出演しましたが、学業を優先し、大学に進学したそうです。

所属はイー・ツーイェン監督の事務所だそうですが、今後も俳優を続けるかどうかは彼らに任せると監督は仰っているのだとか。

ということで、ストーリーはあまり知らない方が面白いと思うので、未見の方はここまで。ネタバレOKの方は、どうぞ以下もご覧ください。








さて。


監視カメラ対策に、お面を用意し(安かったけど粗悪材料なので顔がかぶれるらしい・笑)、色仕掛けで倉庫のカギをゲット、かなり重めの女子が載っても壊れない台車も用意してリハーサルまで済ませた彼らが、学校近くの路上で発見したのは1冊のノート。そこには何と、同様の孫中山像強奪計画が記されているではありませんか!!(マジか…)

アーツゥオは持ち主を探し出し、計画の実行日を聞き出して先駆けしようと尾行します。

ノートを回収したのは同じ学校の、どこかミステリアスな少年。この尾行シーンがまた笑えます。

ついに2人は直接ことばを交わすことになるのですが、どちらがより銅像を盗む資格があるかを競い合う「貧乏自慢」のシーンが切実なんですけど、どことなく可笑しい。

人の良いアーツゥオは、野良猫のように警戒心の強い少年に、一緒に組もうと呼びかけ、計画の詳細を説明し、準備した品々を置いた隠れ家に彼を案内してしまいます。

互いを紹介しようとアーツゥオと仲間が隠れ家を尋ねると、そこはもぬけのから。

抜け駆けされたと知った仲間は怒りますが、アーツゥオは余裕しゃくしゃく。自分たちも彼らと同じお面をつけて出かけ、彼らが首尾よく銅像を運び出したら、それをドラックに載せて運び出してしまえばいい。

事はアーツゥオの思い通り進むのですが、対抗グループは首尾よく倉庫に忍び込んだものの、なかなか出てきません。

守衛が連続ドラマを見てるうちに運びださないとバレる、と焦るアーツゥオ。1人、また1人と様子を見に行ったメンバーが戻らないため、ついに4人とも倉庫の中へ。なんと、銅像が重すぎて台車に載せられなかったのでした(アホか…)

8人がかりでようやく銅像は台車に載り、順調かと思いきや、無情にもドラマが終わってしまい、守衛とその彼女に発見されてしまいます。しかし、ブキミなお面が功を奏したのか、キョンシーの真似が効いたのか、彼らは守衛をビビらすことに成功(というか、守衛はこの機に乗じて彼女とよろしくやっているわけですが)銅像を軽トラに積み込みます。

とここで、対抗グループ側は人数が多いことに気が付き(遅いよ!)、つかみ合いの事態に。

何とか振り切って車を発進させたアーツゥオでしたが、走って追いかけてきた例の少年がケガをしたらしいのに気づき、心配して車を止めてしまいます。救いの手を拒んで、あくまで自分1人で銅像を手に入れようとする少年でしたが、何と、どこかで荷台から銅像が落ちてしまったことが発覚。

戻ってみれば台湾の繁華街・西門町の交差点に鎮座まします孫中山像が…。

あくまで協力を拒む少年とアーツゥオが取っ組み合いになっていると、ついにパトカーが来てしまいます。

ニュース沙汰になるわ、生活指導の教官には絞られるわ、結果は惨憺たるありさま。

ひと教室に集められ、おとなしく反省文を書いて提出した生徒に、教官は、また警察に戻りたいのか、最初から書き直せ、3000字以上書け!と命じます。

少年たちは自問します。

最初からって、最初はどこなんだ。

学級費を催促されたところから?

一週間前に孫中山の銅像を見つけたところから?

もっと前、卒業旅行の経費が払えないところから?

いや、おやじの工場が倒産したところから?

そこでまた、彼らの「貧乏自慢」が始まります。倒産なら任せとけ、じいちゃんのじいちゃんのそのまたじいちゃんから貧乏で…。

すると例の少年が一喝します。自分たちの孫の孫の代まで、貧乏でいいのか!

後日、スーパーで試食していたアーツゥオの前に少年が現れます。今までアーツゥオが何度名乗っても自分の名前を明かさなかった少年は、最後に自分がシャオティエン(小天)だと教えます。

お前は賢い。俺は腕っぷしが強い。2人が組んだら、きっと大きなことが出来るはずだ。

いつも秘密の計画を相談してきた歩道橋に仲間たちが集い、俺たちも乗るよ、という合図で、映画は爽やかに幕を閉じます。




日本で言えば「二宮金次郎」みたいな、どこにでもあった銅像が文字通りお蔵入りしていて、それが学校の廊下だの、日本でいえば歌舞伎町か新橋みたいな場所の交差点だのに突然出現する様子が、本当にあり得なくて笑っちゃうんですけど、そうは言ってもこの銅像は「二宮金次郎」でも「ハナ肇」でもなく、国父・孫文/中山先生なのだから、そこはやはり重みが違います。

交差点に銅像置きっぱなし事件がニュースになり、レポーターが「高校生のいたずら」としながらも、何か他に意図があるのか捜査中、と付け加えていたように、場合によっちゃ冗談ごとじゃ済まないし、ひと昔前なら高校生じゃなくて監督が警察にお世話になってたかも知れないなあ...と感慨深いものがございました。

手に「三民主義」と書いた本をお持ちの孫文先生、立場によって毀誉褒貶・見方はいろいろございましょうが、彼が象徴していることの1つは封建社会の終焉。

私は、どう頑張っても身分を変えることは出来なかった昔より、もっと言えば、国父様でジョークを飛ばすと要注意人物扱いだった昔より、現代はずっと進歩してると信じたいけど、現実はまだこんなものなのかと思って観るひとも多かったことでしょう。


上映後、解説トークで伺ったのですが、台湾でも貧困はかなり深刻な問題で、その大きな理由の1つは独り親家庭が多いこと、そして突き詰めれば離婚率が高いことだと仰っていました。


映画では、どこまでも諦めないで、何とかしようと考える子どもたちの姿を、ユーモアいっぱいに描いているところに救いがありました。現実にはなかなか難しい問題だけど、100年前の孫文先生の時代に比べたら、まだまだ庶民にだって未来は変えられると思わせてくれる作品です。

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