2005年08月24日

拘束のドローイング9

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*東京での上映が行われます!2006年2/11(土)→3/3(金) 渋谷シネマライズにて。
※鑑賞券は上映3日前の初回上映開始1時間前からチケット売場にてご購入頂けます。
※特別興行につき、「毎週日曜日最終回は1000円均一」料金の対象外となります。
※《ぴあシネマリザーブシート》による限定枚数の指定席販売があります。
 
とのことです。詳細はこちら

金沢21世紀美術館で、同タイトルの展示と同時期に公開された映画です。
前作「クレマスター」が素晴らしかったので新作を楽しみにしておりましたが、日本を題材に撮ったと聞いて一抹の不安を感じました。反面、彼なら日本趣味の罠をくぐり抜けて面白いものを作るのでは、という期待もありました。

映画を観てみると、ここまで真っ向勝負で来るか!とまずは驚きました。まるでこちらの心配を見透かしたかのように、長崎、捕鯨船、阿波踊り、海女、茶道、ゆず風呂、和室、和服、樽酒、笙、等々、日本の伝統文化を挙げてみなさい、はーい、という連想ゲームみたいに、「いかにも」日本文化らしいモチーフが次々と登場します。しかもマシュー・バーニー風のアレンジというのがこれまたいかにも「よくある間違えた日本認識」みたいな感じで、まさか狙ってやってるのでは??と思ったほどです。

映画が終わると連れ(←外国人)は大絶賛で、この映画を観にわざわざ金沢まで来た甲斐があったと大満足の様子でした。私はといえば、監督が意図したかどうかは別として、日本文化の中で育った観客には一段高いハードル、いうなれば強力な「拘束」がかせられ、それを解くのは容易ではないということに思いを馳せておりました。

日本文化の中で育った以上、日本で撮られた画面に映ったものを文化の干渉なしに見るというのは難しいものです。何か字が描いてあれば読んでしまうし、仕草や登場する小道具からさえ、「元の意味」を排除してこの映画なりの解釈を受け入れることは厳しい。

しかしながら、後半、茶室のシークエンスに至って、ようやく私もこのジレンマが見せてくれるものに目が慣れ始めました。

ビヨークとバーニー演ずる西洋からの客人は、捕鯨船の上での茶会に招かれます。毛皮で出来た奇妙な和服に身を包み、型通りに茶を嗜む客人二人。対する主人は、貝殻の茶器に巻き貝の茶筅で立てた茶を供します。(内心、げっ、あのアオミドロみたいなものホントに飲む気?と思っちゃいましたが)。使われる道具や物の配置はユニークで奇妙な美しさがありバーニーらしいとはいえ、一歩間違えば噴飯モノのこのシーン、しかし道具立てが奇妙であれば一層、主人の型と所作の確かさ、一連の動きに込められた精神に心が向かいます。

それはルールの決まった行為、拘束の中にある美として現れ、茶の所作、贈り物を包む行為、服を着せ替える仕草、抑制され説明されない事柄の中に垣間見えるものです。

定まったルール、決まった形式、約束事。
形に美を見る日本人さえネガティブに受け取りがちなこれらの事柄を、こういった決まり事から自由になる方向を目指してきた文化で育っていながら否定してかからないということ自体に作者の自由な精神を感じます。

展示の中では身体的な拘束によって作品を生み出そうとする行為(とその結果)が提示されていましたが、映画では同じテーマをまた一つ別の側面から見ることができ、興味深く感じました。音楽も素晴らしかったです。

マシュー・バーニー監督
150分 
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posted by 銀の匙 at 01:43| Comment(0) | TrackBack(1) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月15日

Sprout(スプラウト)

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夏休みが終わっちゃった皆さん、これから夏休みの皆さん、夏休みって何、な皆さん(T T)
ゆく夏を惜しむ気持ちをお持ちなら、どうぞこの映画を御覧ください。

本作は、波乗りを心から楽しむ人たちの幸せな様子を収めたサーフィン映画。これまでもサーフィン映画は観たことがありますが、大会に出るために頑張るとか、ビッグウェーブに挑戦するとか、何かしら目的があるものでした。この作品に登場する人たちは、サーファーの間では有名人なのかも知れませんが、とりあえず映画の中では、波に乗れるのが嬉しくてしょうがない人たち、という風にしか見えません。

その喜びが見ているこちらにも乗り移ってきて、見ている間思わず笑顔になってしまうという、実に楽しい映画なのです。

プロとしてサーフィンをする人がいる、ということを今回初めて知って驚いたくらい、サーフィンについては何も知らないので、いちいちビックリしながら見ていました。サーファー個人の波乗りのスタイルは様々ですが、地域によっても、サーフィンのスタイルが全然異なることとか(そりゃ波の特徴が違うのですから、当然といえばそうだけど)。カリフォルニアのいかにもノンビリした波と、それに合わせた訥々としたサーフィン。東インド洋のダイナミックな波と、それに負けないゴージャスなサーフィン。見せるためのテクニックに走ったりせず、波と一体化したサーファーたちの姿はまるでダンスを踊っているようで、大変美しいものです。

一番ビックリしたのはボディーサーフィン。ボードを使わずに、波にすいすい乗っていく究極のサーフィンで、思わずスゴイ…と声が出てしまいました。

波待ちの間の時間のつぶし方も、絵を描いたり、単語ゲームをしたり、皆ニコニコ楽しそう。

ちょっと実験映画的なシーンをはさんだりする巧みな編集のおかげで単調になることもなく、音楽ともタイミングがばっちりあったこの作品、見終わったら幸せな気分になれることでしょう。

映画の公式HPはこちら。穏やかで美しいシーンの数々をご堪能ください。

日本語の公式HPはこちら。上映館情報もあります。

トーマス・キャンベル監督
91分
posted by 銀の匙 at 02:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月13日

ギュスターヴ・モロー展

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画家本人の自宅兼アトリエを美術館にした、パリのギュスターヴ・モロー美術館所蔵品による展覧会。ぜひこの展覧会には行こうと思っていたものの、それは「出現」という絵の本物を見たかっただけで、他にどんな作品があるか、などの予備知識はまったくありませんでした。それほど悪趣味じゃないといいなあと思ってただけでした(無知)。

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(写真はチラシから)

これが「出現」です。最初に見たのは教科書か何かに載っていた小さな図版でしたが、それでも十分過ぎるほどインパクトがありました。空中に浮かぶ首とそれを指さす人物の強烈な対比、床の上の強い光、建物に差し込むぼんやりとした光、おぼろげな背景…。

実物を見てみると、印刷のせいではなく、実際に全体が朦朧としていることがよくわかります。ことに空中のヨハネの首を指さすサロメは主役にもかかわらず、背景から生え出てきたかのように輪郭があいまいで、口の部分などはこすったように描かれています。首の下にいる人物は、輪郭がはっきり描かれている割に彩色は真ん中の部分だけ。よくみると、建物の装飾も輪郭だけがあるのです。

その装飾はユダヤの宮廷というより、どうみたってインドの寺院そのもの。ここまでの作品にも、西洋の人物でありながら、飛天のように描かれたものがありましたっけ。何の説明もなしに持ち込まれた東洋趣味と、聖書から得た画題のミスマッチが、この作品の不思議さをさらに強調しているように思えます。この他「一角獣」(冒頭のチラシの図版)という美しい作品にも使われている輪郭を強調した描き方には、東洋趣味とともに、油絵の技法を越えた現代性を感じます。実体がすでにないのに残像だけが見え、一つの画面にいくつもの時間軸が描き込まれているような感じを受けるのです。フェード・イン、フェード・アウトが描かれているとでもいいましょうか…。

この絵には緻密に描かれた水彩画のもの、さらに大きなものなど、いくつかバージョンがあるそうなので、今回のバージョンは習作なのでしょうか。しかしながら、きっちり完成したバージョンよりも、より抽象度の高いこの作品の方が面白いし、主題にも合っていると思います。

実際のところ油絵でいいなと思ったのは上記の「出現」「一角獣」の2点だけ(を見るだけでも十分価値はあります)でしたが、意外や水彩画がとても気に入りました。下の作品はトロイア戦争での美女ヘレネを描いたものですが、このような水彩画らしい作品はむしろ少なく、油彩が朦朧としているのに比して、水彩画の方はぱきっとした色遣いのものが多くて、むしろ伝統的な西洋画に近い印象を受けました。ですので、逆にもやもやっとした水彩画しか知らない自分にとっては、とても斬新に感じられました。

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(会場で買った絵はがきから)

具象はどうも…という方にもお勧めです。

Bunkamura ザ・ミュージアム(東京・渋谷)
2005年10月23日まで。
途中、9月13日から展示替えがあります。
目の前がカフェ・ドゥ・マゴなので、お茶する
場所には困りません。
posted by 銀の匙 at 00:49| Comment(4) | TrackBack(1) | 展覧会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月08日

マイケル・リカルド・アンドリーブ展

本当は更新している場合ではないのですが、会期が2005年8月10日までとHPに書いてあったので慌ててUPしています。

所用がありまして、裏原宿はキャットストリートに参りました。ここはとても面白い通りで、ブラブラするには最高なんですけど、私ゃ仕事があったものですから、ゆっくりしてるヒマはございませんでした。で、終わって戻る道すがら、ひょいと覗いたBBSというお店で、とても面白い絵を見たのです。

ニス引きのような白で塗ったキャンバスの上に、ニードル版画のような黒で得体の知れない物体を書いた小さなドローイングが壁にたくさんかかっていました。このお店は真ん中で洋服を売っていたりしてギャラリーと言う訳でもないのでしょうか?いちおう、ペインティングには値段がついていて、1点ものの絵としては高くも安くもないという感じでした。

サイズがサイズだけに(結構小さいのです)なんかこう、アヤシイ雰囲気のCDジャケットにぴったりだなあという絵ではありますが、その手のイラストにありがちな安っぽい感じではないのです。

たぶん、魂を抜かれたような表情をしていたのでしょう、お店の人が(哀れに思ったか)いろいろ画家について説明してくれました。マイケル・リカルド・アンドリーブ(MICHAEL RICARDO ANDREEV)という人で、アメリカ在住のようです。

絵を買う気もないのにギャラリーに入るのはどうも気詰まりなんですけれども(美術館とは違いますもんね)、こういうアンテナショップみたいな雰囲気だと勇気が出ていいですね。

展覧会のお知らせはこちら
お店の人は9月に展示替えだとおっしゃっていたので、もう少し長く飾ってあるかもしれません。オススメです…とHPをよく見ると、この絵を支持している人の中にビリー・コーガンの名前を発見。う、うーん、喜んで良いのかどうか…。結局いつまでもスマパンの呪縛から逃れられないのでしょうか(T T)
posted by 銀の匙 at 20:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 展覧会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする