2006年02月24日

マイ アーキテクト ルイス・カーンを探して

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謎の死を遂げた建築家ルイス・カーンの遺児・ナサニエルが、父の足跡を尋ねるドキュメンタリー。

ミステリーのようでもあり、
一人の建築家の生き方を描いた伝記でもあり、
家族とは何かを問いかける物語でもあり、
芸術とは何かについて語りかける映画でもあります。

とくに建築を志す方は

絶対に見てください。

音楽なら聞かなければいいし、絵なら見なければいいし、製品なら使わなければ済みますが、皆さんの作る建築はたいていの場合、いやがおうでもそこに住んだり、そこで働いたり、毎日通りかかって眺めなけたりしなければならない性質のものなのです。強制的に鑑賞させられる私たち一般庶民の 迷惑 ことも考え、良いものを作ってくださるよう切に希望致します。

とは言い条、
映画に登場したルイス・カーンの作品の中でいいなと思ったのはカリフォルニアの「ソーク研究所」(しかも、第一印象はまるで墓地のようだと思った)とフィッシャー邸だけで、後はなんだか随分大げさな建物だなあ…というのが偽らざる感想でございました。もちろん、どれも実地で見たことがないし、内部も見てみないと何とも言えませんけれども。

古代建築のような建物を目指したカーンの作品について、
どんな批評家よりも最大の賛辞を送ったのはパキスタン軍でした。
カーンはバングラデシュの国会議事堂(↑チラシの写真の建物)を設計しましたが、
その建設中パキスタンとの戦争がありました。
ところが、パキスタン軍はこの建物を古代の遺跡だと思い、
空爆しなかったそうなのです。

パキスタン軍、グッドジョブ!

もう一つ特筆すべきは音楽が良いこと。ベートーベンやカントリーミュージックが
ばっちり嵌っていました。
退屈に成らずに済んだのは、巧みな編集と音楽の力も大きかったと思います。

朝夕2回、
渋谷Q-AX(キューアックス)シネマにて上映中。
水曜日はレディースデイ料金が適用になります。
公式HPはこちら
posted by 銀の匙 at 23:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年02月20日

【改】2月〜3月上旬のリマインダー

【映画】
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「マイ・アーキテクト ルイス・カーンを探して」
渋谷QAXシネマ モーニング&レイトショー上映中 
☆すでに上映してますが、まだ見てません。早く見たい 
見ました!これはオススメです!!

「ブロークバック・マウンテン」
先行は3月4日から。都内ではシネマライズかTOHO系のみですか。シネマライズ混むんだもん…。

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「送還日記」
韓国のドキュメンタリー。あらすじを見ると暗くなりそうでヤダな…と思いましたが、チラシのこのおじさんが素敵すぎて…。
3月4日〜24日まで渋谷シネアミューズ
3月25日から渋谷シネ・ラ・セット

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「ククーシュカ」
ラップランドの物語。まずは風景が見たいかなと…。


【展覧会】
銅版画家 長谷川潔展2006年3月26日まで 横浜美術館
☆みなとみらい線の一日乗車券で団体料金に割引になります。提示をお忘れなく!

宇治山哲平展2006年4月9日まで 東京都庭園美術館

4月以降
【映画】
「ブロークン・フラワーズ」
GW公開。ジャームッシュ監督の最新作

【展覧会】
北欧のスタイリッシュデザイン フィンランドのアラビア窯
東京都庭園美術館 
4月22日−6月18日
posted by 銀の匙 at 23:38| Comment(0) | TrackBack(1) | 催し物 リマインダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年02月15日

ニューヨーク・バーク・コレクション展

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アメリカの資産家バーク夫人が収集した日本美術コレクションの里帰り展覧会。
なぜこれほどの宝が流出してしまったのかはさておき、収集範囲がとても広いのにビックリ。
やきものや掛け軸、屏風は見た目も豪華な美術品だからそれほど驚きませんが、
蕭白とか若沖とか髪の毛一筋の差で悪趣味にしか見えないものまでちゃんと揃えているのがスゴイです。

たくさんの屏風図が揃っているのが、屏風好きの私のツボをぐりぐりに押してくれました。「大麦図屏風」のようにモダンなものから洛中洛外図や南蛮屏風、源氏物語絵屏風までジャンルもいろいろ。絵巻もそうですが屏風図も大きな画面の中に何場面もが展開し、まるでアニメでロールセルに絵を描いて引っ張って撮影する技法みたいな感じなのが面白いんです。酒井抱一のような琳派の装飾的なものでも、季節の移り変わりや時間の経過など、確かな動きが描き込まれているのを見るのは楽しいものです。

東京都美術館のチラシ↑にも使われた蕭白の「石橋図」は掛け軸ですが、これも中央に目線を据えて下の方と上の方で別の時間が流れています。獅子は子を千尋の谷におとす、の図が描かれておりますが、画面中央の 星一徹 親獅子から上は見上げたアングル、下は俯瞰のアングルが同一画面に出現しています。誇張された動き、ロケット発射台みたいな大胆な構図に加え、水墨画らしい微妙なボカシではなく、輪郭の中をきっちり塗りつぶしてるのもアニメっぽく見える一因でしょうか。

出口付近には若沖の「双鶴図」が飾られています。「きょろちゃん」みたいな造形に思わずぷぷっと吹き出してしまいそうな鶴二羽ですが、尾羽のあたりのイヤに写実的な表現に画家です!という意地を見せてるのがまた笑わせてくれます。

正統派からヒネリの効いたものまで幅広いコレクションなので、誰と行ってもきっとお気に入りが見つかるであろうコストパフォーマンスの高い展覧会、ツウから入門者までオススメです。

2006年1月24日〜3月5日(日)まで
東京都美術館(上野)

平日午後に行きましたが、空いていました。
第三水曜日は65歳以上の方は無料です。
ってことは、それ以外の方は避けた方が良いでしょう…。
なお、中はそれほど混んでませんでしたが切符売り場が混んでるので、
前売りかJR上野駅で切符を先に買っておくとよいかも。

こちらに割引券もあり。
posted by 銀の匙 at 21:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 展覧会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年02月12日

花森安治と「暮らしの手帖」展

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最近、ロハスが注目を集めるにつれ、また盛り上がってきております雑誌「暮らしの手帖」。その編集長だった花森安治氏による装丁、装画等を中心にした展覧会です。
確か2002年にも銀座で展覧会があったんですが、そのときは1時間たりとも休めないほど忙しい時期だったので、結局行かれませんでした。今回、ゆっくり見ることが出来て本当に嬉しかったです。

花森氏といえば、おかっぱ頭のワンマン編集長というイメージが強くて、デザインワークもしていたということは、実はあまり知りませんでした。今回、氏が指定したレイアウト等の実物を見て、その卓越したセンスに改めて驚きました。

まずは表紙のための装画の展示があり、レタリングした新聞広告の原稿などもありました。壁の上部に展示された「暮らしの手帖」バックナンバーの表紙は、そういえば昔見たなあと懐かしく、子供の頃だったのにどれも覚えているところを見ると、かなりインパクトが強かったのでしょう。書き文字などの手仕事と、大胆なデザインの組み合わせに味があります。

雑誌全体を通してのレイアウトのリズムもよくて、今みても斬新でモダンです。

レイアウト原稿を印刷所へ入稿するときは、アタリといって、どんな位置にどんな写真を配置するかというスケッチを描くんですが、花森氏が鉛筆で輪郭を取ったその線がすでに素晴らしくて、素描として額装したいくらいの感じでした。

「暮らしの手帖」で話題になった商品や記事なども置かれており、なかでも商品テストで使われた昭和の電化製品たちも、キッチュなプラスチックのつまみや、鉄製のボディに微妙な色合いの塗装がしてあるのが、今見るととても可愛らしく感じます(記事では批判されてたりしますが…)

花森氏は戦時中、大政翼賛会に属していたそうです。これがドイツなら二度とマスコミの仕事なんて出来なかったに違いありませんが、幸か不幸か日本では戦後も言論関係の仕事を続けることができました。本当にこの仕事が好きでしょうがなかったのでしょう。

雑誌記事も含めて、彼の作品は素晴らしいし、言ってることはとても真っ当だと思います。言葉によって実際に人を動かすことのできる、稀有な才能の持ち主だったのでしょう。個人的には、追いつくどころか真似することさえ無理であっても、花森氏が職業人としての目標であり、尊敬もしています。

でも、主婦の目線で雑誌を作ってたにもかかわらず、その記事にはどうしても煽動者的なものを感じてしまうんです。時代がそうだったのだといえば、そうなんでしょうし、マスコミとはそういうもので、それ以外にどんな主張の仕方があるのかと言われれば、それまでですが…。

*2016年 追記*
本屋さんに行ったら花森安治氏についての本がたくさん積まれていて、ドラマの影響力ってすごいんだなと改めて感じました。

もう二度と戦争は経験したくない、日々の暮らしが大切にしたいものであれば、戦争は起こらなくなるに違いない、と考え、生活を主役にした雑誌を作った、というところは実に立派だし、自分のできることで行動を起こすという実行力も凄いと思います。

だけど、私にはどうにも釈然としないところがある。

以下は小さい頃読んだ本の内容なので記憶もあいまいなため、きちんと確認もせずに書くのは良くないのかも知れないけど、花森さんというと真っ先に思い出すことです。個人的な偏見だと思ってお読みいただければ幸いです。

『暮しの手帖』は「商品テスト」というのが看板記事で、耐久性を調べるために、商品を繰り返し使ったり、実際に使われる環境で性能をテストしたりしていました。企業からの干渉を避けるため広告も取らないなど、妥協を許さない編集方針だったので、中身はしっかりしていたし、勢いもあったのだと思います。

そういう雑誌だから、記者さん(編集者さん?)も妥協せずに仕事をしていたのだと思います。花森さんが書かれた記事の中に、そうやって頑張った猛烈女子編集者の話がありました。彼女は頑張って働き、優しい旦那さんとお子さんを遺したまま、若くして亡くなったそうです(確か、脳溢血か何かだったと思います)。

記事には彼女の頑張りぶりしか書かれていなかったのですが、読んで私は思いました。これは(今でいう)過労死じゃないんだろうか。雑誌のために頑張って、確かにやりがいはあったでしょうし、ご本人も後悔してないかも知れない。でも、もっと長生きして、家族団らんの時間も持てる働き方もあったんじゃないだろうか。

しかも記事を読むと、花森さんはこういう働き方をさせたことを全然悪いと思っていないみたい。それって戦時中の「一億火の玉」とどこが違うんだろう。結局、この方は、根本的なことは何も変わってないんじゃないか、と…。

今考えてみれば、社会全体がそういう雰囲気だったのだろうけれど、でも戦前の反省に立っているというならば、少しは気が付いて欲しかったと思ってしまう訳です。あるいは、時代の雰囲気に流されないということも、「啓蒙」する立場の人なら貫いてほしかったとか、さらに言えば、時代を先取りしてそういうことに気づいて欲しかったとか、尊敬できる仕事ぶりなだけにその辺が、納得がいかない原因なのだろうと思います。

もう1つ、これは花森さんとは直接関係ないと思いますが、今でも覚えているガッカリした記事はこんなものです。

路面電車がなくなるというので、上野のアブアブ(百貨店)の前で、いろいろな人にもらったコメントを集めたものです。年配の人は「寂しいね」等々、なくなるのを惜しむコメントを寄せているのですが、若い女の子たちのは「要らない、遅くって」みたいな人を小バカにしたような口調の発言しか載っていません。

読んだのはたぶん小学生の頃だったと思うのですが、何だか無性に腹が立ちました。子供なだけに、路面電車がなくなるのは残念だと素直に思ったので、年齢によってそんなにはっきりコメントの傾向が違うはずがないと感じたからです。しかも、あからさまに「年齢バイアス」が感じられるコメントの編集の仕方を見て、本当にちゃんと取材したんだろうか、と子供ながら疑問に思ったのです。

それ以来、あまり熱心に『暮しの手帖』を読むことをしないまま大人になってしまいましたので、この展覧会に行ったのは、全く偶然のきっかけからでした。

何の催しだったか忘れましたが、10数年前、雑誌が売れないと言われていた時期に、どうやったら雑誌を立て直せるか、みたいなことをいろいろな雑誌の関係者の人が話す、という会がありました。

マーケティングだとか、タイアップ記事だとか、普通の会社で聞くような提案が続くなか、暮らしの手帖社の人はポツンと『良い物を作れば経営はよくなると信じています』と言っていました。

あの雑誌はもう危ないんじゃないの? ずいぶんお花畑でノンビリしてるよなあ…と会場にちょっと呆れたようなムードが漂ったのは、よく覚えています。でも私はそのとき逆に、本気でそう考えているなら、良い物と信じて何を作っているのか見てみなくちゃ、と思ったのでした。

その後、松浦弥太郎さんが編集長に就任したりして、また『暮しの手帖』の話題をあちこちで聞くようになりました。そして今度はドラマで注目されています。行き詰っているように見えて、どこからか必ず援けの手が得られる状況を見るたびに、私はあのときの「良い物を作れば…」という言葉を思いだします。

(↑上の2枚の写真はこの展覧会のお知らせなんですが、デザインが面白いです。おわかりでしょうか?
広げるとポスターに、下を折り返した後じゃばらに畳むとパンフレットになるように出来ています。)

2006年4月9日(日)まで
世田谷文学館
もよりは京王線・芦花公園駅 

世田谷文学館の展示はこれだけではありません。
東宝の砧撮影所のご近所ということもあり、ゴジラに関する資料がいろいろあったのも驚き。
さらに、世田谷文学館ってどこかで聞いたなあ…と思ってたら思い出しました。
crannさんの
「Sextans 好奇心のコンパス」に関連の御紹介があったんでした。

人形作家・石塚公昭氏が作った
永井荷風、江戸川乱歩、中井英夫、寺山修司の人形と、
人形による世田谷ロケ(?)の写真が展示されてるんですよね。
ホントにすごいです。これです、これ
こちらは2006年3月31日まで。お見逃しなく!
posted by 銀の匙 at 21:27| Comment(0) | TrackBack(2) | 展覧会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年02月07日

天空の草原のナンサ

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Dalmatian Dot-matrix printer
のeticaさんからお勧め頂いて、見て参りました。

モンゴルの青い空、緑の草原、どこまでも続くような小川…という背景は見知らぬよその国のお話なんですが、撮りっぷりは思いっきりホームビデオ風で微笑ましいです。モンゴルの草原に暮らすある一家のささやかな日常生活(と言っても、9歳の少女・ナンサが馬に乗って放牧に行く、というような日常生活なんですが…)を描いたものです。

家財道具は最低限で、季節ごとに家まで畳んで移動する彼らの暮らしはは私の長年の理想であります。一切合切をキャンピングカーに積み込み、住所不定で放浪するのが夢なんですが、彼らのように自分の手で作り、自分の知恵に頼る生き方は到底無理そう。

演じているのは実際のモンゴル人一家で、監督さんはモンゴルの方だとか。そのあたりも地に足がついた感じがする原因でしょうか。さりながら、日本人の撮った作品で、お総菜を作ったり、畳替えをしたりといった日常風景を撮った劇映画があまりなく、むしろ外国人監督の撮った作品にわざわざそういうショットが入っていたりするように、この作品にもどこかしら、外部からの視線を感じます。

監督さんが海外から帰国したとき、こうした日常の暮らしに目が向くようになったのでしょうか。あるいは、もはやこの映画に見られる暮らしは、本国の人にとっても珍しくなったのでしょうか。

ちなみに、eticaさんの感想はこちら。子供…確かにむちゃくちゃ可愛かったです。

作品の可愛いHPはこちら
posted by 銀の匙 at 22:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする