
トーキング・ヘッズといえば、有名は有名ですけど、凄いバンドとは正直思ってませんでした。ニューウェイブかと思うとそうでもないし(といっても、トーキング・ヘッズが流行ってた当時は、ニューウェイブは勿体つけすぎでダサい気がしてあまり好きじゃなかったんです。今聞くと、あのダサさが愛おしいけど)、ファンクというには黒さが足りないし、何だか中途半端な気がしてました。
しかしまあ、当然といえば当然ですが、この映画を観たことによって、自分がいかに浅はかであったかを思い知る羽目になりました。
しゃれたタイトルロールに引き続き、ステージにはたった一人、黒髪の青年が現れます。足下にカセットデッキを置き、ピコピコした如何にもニューウェイブな伴奏を流しつつ、手にしたアコースティックギターをかき鳴らしつつ歌い始めます。そのありさまはどう見ても、オンドリがエサ箱に向かって歩いてるようにしか思えません。
彼こそがトーキング・ヘッズのボーカル、デイヴィッド・バーンなのですが、どうもどこかで見たような顔だよなあ…と記憶を探っていくと思い当たりました。そう、「変身」のフランツ・カフカそっくり!
しかし、そんなマイナス面(?)をモノともせず、憂鬱そうな顔に似合わぬ激しいパフォーマンスで、彼のワンマンショーは盛り上がって行きます。ステージが進行するにつれ、ベーシストが増え、ギタリストが増え、ダンサーが増え、舞台の後方にはドラムセットやパーカッションが用意されて、堂々たる大バンドが出現します。
その後は踊らずにはいられない、ファンキーなナンバーが次から次へと演奏されます。そのノリっぷりが楽しくて、映画館じゃなくてお隣のライブハウスで上映してもらいたかったなと惜しくなるほどのステージ映像が繰り広げられます。
全編、この1ステージを撮っただけの本当にシンプルなつくりの映画ですが、それだけでここまで見せることができる、素材の良さと監督の手腕には脱帽です。
フロア総立ちのラストナンバーが終わると、エンディングにはライトを落とし、がらんとしたステージが映し出され、そこに最初の、ピコピコしたカセットの音が流れてきます。思えば遠くへきたものだ…と感慨深いラストシーンでした。
雨で日曜日ということもあって、お客さんがまばらなのが何とも悲しかったです。これが日本最終上映ということなので、ぜひ、ユーロスペースの最高の音響で最高のパフォーマンスを体感してください!
ジョナサン・デミ監督
ユーロスペース(渋谷)
整理券方式の映画館。1階にカフェもあります(2006年11月現在、味はいまいち…)。映画館内には自動販売機のみ。ドリンクホルダーがあり、持ち込み可です。


