2013年03月19日

ロシアン・カルト その3

昨日書くつもりが、結局バラバラのアップロードになってしまいましたが、今回の特集上映で初めてみた作品がこちら、

妖婆 死棺の呪い

整理券もらうとき、どうしてもこのタイトルを口に出すのに抵抗があって…(笑)
はぁ、でも、ホラー映画ファンにはあまりお勧めできませんが、ロシア映画ファンにはぜひにとお勧めしたい作品です。確かにこの邦題の方がお客は入ると思いますが、ゴーゴリの原作通り、「ヴィー」にしといた方が、誤解は少なかったかも。

当初、ガチなホラー映画かと思ったので実はあまり見たくなかったんですが(連れがどうしても見たいというので仕方なく)、でも全然怖くなくて、雰囲気としては、そうですねぇ…「まんが日本昔ばなし」でお化けが出てくる回なんかの感じでしょうか。

その気で見れば、いろいろと見どころには事欠かない映画なんですが、特にすごいなーと思ったのは、棺桶美女が魔除けのために描いた円に阻まれ、ぐるぐる回りを回るシーン。当然CGなんてものはない上に、特撮じゃなくて「透明な壁がある」演技をしてるわけですが、これがパントマイムのお手本級に上手い!さすがロシアの女優さんは美人なだけじゃございませんね。

以下、内容について触れますので、これからご鑑賞予定の方は、スルーしてくださいませ!




さて、この作品、ソ連時代に作ったので天罰も怖くなかったのか、出てくる神学生も教会もかなりグタグタな感じですが、美化されてないぶん、実際きっとこんな感じだったんだろうなーと思わせるものがあります。

神学校も休暇に入り、校長先生のお説教もむなしく、(かなりトウのたった)神学生たちはやりたい放題。哲学専攻のホマーをはじめ、ワル3人組も羽目を外していますが、夕闇迫るころ、やっとたどり着いた農家で、泊めてもらおうと門を叩くと、中からはまるで妖怪のような老婆が…。

納屋に通されたホマーは老婆の妖術に嵌りますが、辛くも難を逃れ、老婆をメッタ打ちにして逃げ去ります。ところが瀕死の老婆はみるみるうちに、絶世の美女のビジュアルに。これがまた、ものすごく整った、お人形さんみたいな顔立ちの女優さんなんですよね…。

何食わぬ顔をして学校に戻ったホマーの元へ、地元の富農から、瀕死の令嬢のため祈祷をするようにとお呼びがかかります。逃げる気満々のホマーを阻止しようとする使いの男たちとのやり取りが、ロシア民話タッチでコミカルに描かれているのがなかなか面白い。民謡や農村の習俗などもふんだんに盛り込まれ、ロシア情緒が存分に味わえます。

さて、ついに逃亡もかなわず富農の前に引き立てられたホマー。令嬢はちょうど亡くなり、ホマーは生前名指しされたということで相当疑われていますが、とにかく遺言通り、3晩の間、棺桶が安置された教会で令嬢のために祈るようにと依頼されます。

いよいよ、村のひなびた木の教会で、3晩にわたる棺桶美女と神学生との対決が始まります。ドリフのコントもかくやと思わせる、朝が来るとバタっと閉まる空飛ぶ棺桶、キョンシー飛びが思わず笑っちゃう美女との一騎打ち、3晩の死闘(?)の末、ついに現れる怪物ヴィーなど、脱力ものの見どころ満載です。

神のご加護もあったのかなかったのか、ついに力尽きてしまったかに見えるホマーですが、本当はどうなったのか、この話自体が噂なのか、真相は全て藪の中、といった終わり方も、いかにも民間伝承を映画にしてみました感を醸し出して、なかなか良い感じです。

ちょっと「ピロスマニ」なんか思い出させちゃったりする色彩も味がある本作品、珍品とはいえおススメいたします。
posted by 銀の匙 at 23:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ロシアン・カルト その2

さて、前回に引き続きましてロシアン・カルト第2弾。

アエリータ
文芸大作の趣もあり、おススメの逸品です。これも以前、映画祭で見たことがあるのですが、すっかり忘れておりました。なんと1924年制作の無声モノクロ映画で、今回はピアノ伴奏がついており、それも含めて楽しめます。

お話は少々混みいっており、技師ローシが主人公のロシア革命後の混乱期である現実世界と、ローシが夢想する火星での幻想の世界が平行して進みます。

ある日、技師ローシは「アンタ オデリ ウタ」という不思議な文言の電文を受信します。まるで火星からのメッセージのようだ…。すっかり魅せられたローシは火星ロケットの研究をはじめるまでになります。研究が行き詰まると、彼は火星の様子を夢想します。そこには美しい女王がいて、地球の様子を好奇の目で見つめ、ローシ自身のことも気にかけている、と…。

現実世界では甘い新婚さんだったローシですが、ちょっとした行き違いから妻の不貞を疑い、ついに彼女に向かって発砲するという、取り返しのつかない罪を犯してしまいます。

執念深い刑事に殺人容疑で追い詰められたローシは、完成したロケットに乗り込み、火星へと逃げ出す羽目に陥ります。ついには、アエリータの愛を手に入れ、火星にも革命を起こして、虐げられた火星の人々を救いだした、はずだったのですが…。

あらすじからすると深刻な話っぽいですが、要所要所はコミカルで軽いタッチにまとめられています。とはいえ、モノクロならではの重厚な質感で描かれるロシア社会のリアルな描写と、ジャポネスクな衣装に身をまとう女王やアヴァンギャルドな舞台を思わせる火星の描写の対比が素晴らしいのはもちろんのこと、1920年代の雰囲気をそのまま味わうことができる貴重な作品です。

ピアノの伴奏は全くの即興だそうですが、演奏家の方は、「今回、必ず『インターナショナル』は使おうと思ってました」ということで、とても印象的に、ときに皮肉に、曲のモチーフを使っていらっしゃいました。

【以下、ネタバレです!】



この作品もかなり諷刺が効いていて、当時意図されていたかどうかはともかく、今日の眼から見ると、かなり思い切った内容に見えます。救護所に勤めながら、ブルジョワ生活についふらふらと惹かれてしまうローシの妻。彼女の不貞を責めながら、空想の中とはいえ、アエリータに靡くローシ。限られた物資をめぐる腐敗と不正。集団の都合で個人の邪魔をする革命というもの。とどのつまり、革命や戦争が生活の手段になっている赤軍戦士。

特に最後の、人々を煽って革命を起こし、政敵を抹殺したら自分が権力の座につこうとする女王のエピソードは印象的です。クーデターではよくあることなのかも知れませんが、皆が革命に酔っていたであろうこの時代に、現実の世界でだって革命も結局はこうなると見通していたのでしょうか。ここまで醒めて冷静に描けるものなのか、本当に脱帽です。

逆に、21世紀の今、自分に、自分のいま置かれた状況をここまで客観視しろと言われても、到底できません。後の世代の人から見れば、きっと何かに酔っていて、周りが見えていないんだろうということは、予測がつきますが…。

最後の「アンタ・オデリ・ウタ」
とは、広告ポスターに書かれたタイヤの商標名だったというオチも、もう空想にふけるのはやめて、祖国の建設に邁進することにするよ、といういかにもとってつけたような(当時は大まじめだったかもしれませんが)ローシの態度と考え合わせると、美しい理想も商業主義の前には膝を屈するという皮肉に思えて実にキョウレツです。

原作はSF作家、トルストイ(「戦争と平和」のトルストイとは別のひと)の作品とのこと。ちょっと読んでみたいです。








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2013年03月18日

ロシアン・カルト その1

2013年3月アップリンクで公開されているロシアン・カルト映画。
(公式サイトはこちら) ゴールデンウィークにもアンコール上映があるとのことで、楽しみですね。
今回は初日と2日目で4本見てまいりましたので、その感想をば。

まずはこちら、
ドウエル教授の首
映画は1984年のものですが、原作は1926年の同名小説で、日本語訳もちゃんと出版されているらしい(→Amazon)。

舞台はドウエル教授の研究所(映画ではどこにあるのかよく分からない)。人格者としても知られた教授は交通事故でなくなり、弟子の外科医コルン、助手のマリーが研究を引き継いでいるらしい。しかし、研究資金も底をつき、大手化学会社「メルクリ」が、研究成果に触手を伸ばしている。

父の銅像の除幕式を前に、ジャーナリストとして長らく戦場にいた息子、アルトゥールが帰ってくる。彼は、昔から研究所で働いている職員から父親の事故にまつわる疑惑を耳にする。現場からはコルンのタバコケースも見つかり、謀殺は決定的かと思われた。ところが、ドウエル教授は生きていた。ただし、自らの発明した培養液によって生きながらえる、首から上だけの姿となって…。

ちょうどゴルバチョフ政権誕生前夜に制作された映画ですが、南国抒情(英語の歌なんかも出てくるんですが、なんとなくロケ地がキューバっぽい)、水着美女のセクシーショットもあり、なかなかサービス満点な作品であります。

公開年に動員数トップだったというのはこうした営業努力(?)のおかげもありましょうが、ゲテモノ映画かと思いきやテーマはなかなか深く、こういう映画がウケるところにロシアの観客の懐の深さを感じます。

身体の中の何の組織にでも変えることができる構造体の研究は、今はやりのiPS細胞を思わせますが、人助けのためであっても、勝手に命を操作してもよいのかという倫理的な問題や、純粋に学問的に真理を追求しようとしても結局軍事に使われるだけと嘆くドウエル教授の苦悩、発明した結果に対する責任の問題など、30年も前の作品でありながら(原作からも引き継いでるとすると、100年近く前から!?)今日的な課題を扱っています。

しかも80年代のソ連は日本どころではない科学技術命の国だったはず。その方向に懐疑の目をむけるようななこうした作品が制作され、人々に歓迎されたというところに感心します。いえ、むしろ、金儲け第一の現在の方が、撮りにくいタイプの作品なのかも知れません。

宇宙旅行
こちらは1935年のモノクロ映画。以前映画祭で見たことがあり、今回は2回目の鑑賞です。昔懐かしいサンダー・バードや円谷プロの特撮を思い起こさせるロケット開発・月旅行モノの作品ですが、アールデコ風のロケットのデザインといい、構成主義風(制作時にはもう衰退してたんでしたっけ?)のセットといい、とてもオシャレです。

実際のロケットに乗り組むのが、いかにもな英雄パイロットを押しのけ、爺さん、ギャル、子どもという組み合わせなのも良いですね。宇宙旅行の考証も、無重力状態の描写などすごくキッチリやっているかと思えば、寝るときハンモックですかみたいなトホホな部分があるのもご愛嬌。とても和める癒し系SFです。
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2013年03月16日

映画2題

渋谷アップリンクで見た予告でおもしろそうだったもの


ダイアナ・ヴリーランド 伝説のファッショニスタ

無題.png

ヴォーグの元編集長。かなりキョーレツな人だったらしい。アナ・ウィンターといい、ヴリーランドといい、ファッション誌で時代にインパクトを与えることができるっていうのがスゴイですよね。
公式HPはこちら http://dv.gaga.ne.jp/

花開くコリア・アニメーション2013無題2.jpg

公式HPはこちら http://anikr.com/2013/top.html





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