2013年05月25日

貴婦人と一角獣/カリフォルニア デザイン

一角獣.jpg
中世ものが大好きなので、ずっと憧れているフランスのクリュニー中世美術館。行きたい、でも行けない(うぅ…)

と、そんなある日曜日、そんな私の目の前に、赤い紙袋を差し出す人が!
「…コレ、なんですか」
「無料でお配りしております」
「あぅ、ありがとうございます。ところでコレはなんですか」
「今度、六本木で展覧会をやるんですよ。その宣伝なんです」

ふーん、こりゃまた洒落た宣伝だこと。
紙袋に印刷された赤地に織られた貴婦人とユニコーンのモチーフ、これは有名なタペストリーの柄です。紙袋をよく見ると、国立新美術館でこのタペストリーの展覧会をやるらしい。って、そんなミイラの展示じゃあるまいし、幾ら貴重な美術品といっても壁掛け1枚を見に六本木まで行くのはちょっと…と迷いつつ、でもこれはクリュニー美術館の所蔵品だから、いくらなんでも他の展示品もちょっとは来るだろう…と、会場のHPにアクセスしてみると、
http://www.lady-unicorn.jp/
なかなか面白そうなので行ってみることにしました。

このタピストリーについてはおぼろげな図像のイメージしか持っていなかったので、展示をみて初めて、これが6枚で1つの作品になっていること、1つ1つのタピストリーの図案にはそれぞれ寓意が込められていること、を知り、大変興味を惹かれました。

この作品は、描かれた人物の服装や髪形、文様のスタイルから、1500年ころ、ゴシックの末期に織られたものとされています。注文主ははっきりとは分かっておらず、画面に描かれている紋章から、ブルターニュ地方のアルシー城の城主、ル・ヴィスト家と推定されています。

展示はこのタピストリーを6面にぐるりと配したスペースと、関連する展示品を集めたスペースとに分かれていますが、軽く仕切られているだけなので、タピストリーを見た後、展示品と説明を読み、また気になるタペストリーを眺める、という鑑賞の仕方ができる、よく考えられた構成になっています。

タピストリーは見上げるような大きさで、そのうちの5枚は視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚の5つを表すと考えられています。絵柄をよく見ると、楽器や花の匂いを嗅いでいるサルなど、五感を象徴する事物が描きこまれています。中世にはこのように、寓意を表す美術品がいろいろと作られたらしく、展示にも類例が挙げられていました。

タペストリーの制作年代を推定する決めてとなった、当時の服装や流行の図像スタイルについても、紹介の展示があります。この時代のファッションはスレンダーで、華美ではないのですが凝っており、今取り入れたらカッコいいだろうなぁというような意匠にも惹かれてしまいます。

タピストリーの地紋に描かれた草花や動物を紹介するコーナーもあります。図柄の背景には、空にあたる部分にも、大地にあたる部分にも、千花文様(ミル・フルール)と呼ばれる色とりどりの植物が所狭しと敷き詰められており、それがタペストリーを豪華に見せています。また、ウサギやキツネ、鳥など一角獣以外のちいさな動物も画面のあちこちにちりばめられており、見ていて飽きません。おそらく主題同様、装飾という以外にも、たとえば豊饒とか、何らかの寓意があるのでしょう。

五感を表すタピストリーは図柄だけですが、最後の1枚には文字が書かれています。野に立っている他の5枚と異なり、人物は豪華な幔幕を背にしており、その上部に「Mon seul désir 我が唯一の望み」と記されています。

我が唯一の望み…。

謎めいた言葉です。これが何を意味するかについては定説がなく、五感に続くものとして第六感を表すのであろうとか、中世当時の考え方から推して、愛を意味するのであろうとか、いろいろな説があるようです。

六本木国立新美術館のワンフロアを半分くらい使った展示で、それほど大規模ではありませんでしたが、細部までじっくり分析した展示が面白く、会場を出たら2時間近く経っていました。図録もとてもよくできていて、読み応えがあります。
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冒頭に、このタピストリーに触発された他作品についての言及があるのですが、そこで挙げられていたのは
「機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)」。ファースト・ガンダム(本放送で見ましたとも!)以降見てないので、へぇこんな作品あるんだ?というのがまず驚きでしたが、紹介を読むと、タピストリー―の寓意をうまく設定に使っているらしい。長い話みたいですけど、ちょっと見てみたくなりました。いまどきの学芸員さんは、サブカルもちゃんと押さえているんですね。っていうか、まさかUC見てこの展覧会を企画したんじゃ…?ってそんなことないか。

カリフォルニアデザイン

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ついでというと語弊がありますが、下のフロアでは「カリフォルニア・デザイン1930-1965」の展示があり、そちらも覗いてみました。先ほどの展示の半券をもっていたのでお安く入れて有難いことです。
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住宅から水着まで、職人的な技と工業デザインがちょうどいい具合にかみ合っていた時代のデザインはスタイリッシュな中にも手仕事のぬくもりが感じられ、また、カリフォルニアの気候も反映されているのか明るい色遣いのものが目立ちました。映像展示も交えてイームズ夫妻が大きく取り上げられていましたが、何と言っても魅力的だったのは、入口近くのキャンピング・カー。銀色に輝く丸まっこいボディにキッチン、ベッド、リビング、シャワー施設も組み込んだコンパクトなデザインでとってもオシャレでした。これ、カリフォルニアからわざわざ運んできたんですか、と展示の横にいる人に尋ねたら、日本人が買い取ったものなんだとか。確かに日本人好みかも。いいなぁ〜!
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見学に訪れる生徒さん向けなのか、一人一部のみ、ということで無料のミニ冊子が用意されていました。半透明の表紙から透けて見える図柄が何パターンもあって、さんざん迷ったあげく地味なのをチョイス(…)。こんなおまけ(?)も楽しめる展覧会、ぜひお出かけください!

2014年7月15日まで(一角獣)
2013年6月3日まで(カリフォルニア)
 国立新美術館(六本木)


posted by 銀の匙 at 13:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 展覧会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月04日

2013年 ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 1日目(5月3日)

毎年ゴールデンウィークにはかかさず鑑賞/出演している音楽祭です。今年も銀座の東京国際フォーラムで開かれました。

今年は前売りの時期に体調が悪く、ひょっとして5月は入院かも…と怯えていたのでチケット入手を控えていたのですが、大丈夫そうで一安心。でも、争奪戦に乗り遅れてしまい、鑑賞は1日のみ。もう1日は出演側にまわります。

さて、風は冷たかったですが、陽射しは明るかった今日、詰め込むも詰め込んだり、5プログラムを聴きました。

まずは
122番 
アンサンブル・アンテルコンタンポラン。
曲目は、ラヴェル「序奏とアレグロ」とブーレーズ「シュル・アンシーズ」。
この演目、いちばん期待していたのですが、ラヴェルは(ハープの人は上手かったんだけど)曲が凡庸(に聞こえた)。ブーレーズが逆にぶっ飛びすぎ。最初は面白いかと思ったんですけど、このぴかん、どかーんを1分以上聞いていると、最初の新鮮味も薄れて飽きてきてしまいました(泣)。ピアノの上を猫が跳ねたらこんな音楽になるでしょう。現代音楽は私には高尚すぎます。ジョン・ケージは好きでしたが、あれが気に入ったのは単にキノコが好きな人を気に入ったからかもしれない。

133番 
聖なるパリ、というタイトルつきのコンサート。
去年、私の中ではナンバー1の演奏集団だったヴォックス・クラマンティスの公演で、
デュリュフレ グレゴリオ聖歌による4つのモテット
「慈しみと愛あるところに」
「まったくうるわしき」
「汝、ペテロ」
「語れ、我が舌よ」
ギョーム・ド・マショー
「ノートル・ダムのレ」
プーランク
「悔悟節のための4つのモテット」
メシアン
「おお聖なる饗宴」
でした。一人ひとり、歌いながら入場する演出で、一人ずつだと本当に素朴な歌いぶりなのに、コーラスになると素晴らしい3D絵巻が出現するのには感心させられます。曲も響きが美しいものばかりで終わってしまうのが残念なほどでした。

124番 
リチェルカール・コンソートによるバロック音楽。
指揮とヴィオラ・ダ・ガンバはフィリップ・ピエルロ。公演に先立ち、いきなり主催者トップのルネ・マルタンさんが登場。おや、どうしたのかなと思ったら、予定されていたソプラノ歌手が急病で来日できずプログラムが変更になったため、その説明とおわびの口上を述べにきたということらしいです。

全体にキャンセルになったならともかく、演目の差し替えのみだったので、もしこの音楽祭を日本が主導していたら、出演者が説明して終わりになると思うのですが、こういう対応はとてもきちんとしている印象を与えるし、お客さんを大事にしているなあと感じました。

演奏自体は、予想通りの安定した内容でした。最後の、インドの虎狩り…じゃなくてインドの優雅な島々、から「未開人」という曲、今回のような上品な編成でやると面白いですね。私ゃタイコ入ってるバージョンも好きですが。


175番
ボリス・ベレゾフスキーのピアノ演奏で、
ラヴェル「夜のガスパール」
デュティユー:ピアノ・ソナタ op.1より 第1楽章
ドビュッシー:「前奏曲集 第1巻」より。

この演目は会場が国際文化フォーラム内ではなく、よみうりホールでした。
(場所は国際文化フォーラムのななめ前、ビッグカメラの7階です)。初めて入りましたが小ぢんまりしてていい会場ですね(ちょっと古いけど)。

「夜のガスパール」をベレゾフスキーが弾くと知ったので、何としてでもこの演目は聴こうと心に決めておりました。この曲、とても好きなのですが、これまで聞いた演奏はどれも線が細すぎ/感傷的すぎてイマイチ、自分の中のこの曲のイメージとしっくりきませんでした。当たるを幸いブルドーザーみたいになぎ倒す、ロシアの白クマ・ベレゾフスキーなら違う解釈のを弾いてくれるかも、という私の予想を300パーセント裏切らず(なぎ倒し過ぎだってばさ)、ほんとこれラヴェル?ロシア音楽じゃないよね?という演奏を聴かせてくれました(…)。

人によっては乱暴すぎると思ったかも知れませんが、思い切りのよい、切れ味爽快 黒ラヴェル、いや〜最高でした。音符飛ばしたとか細かいこといちいち気にすんな!てやんでぇ江戸っ子でぇっ!もはや何を褒めてるのか自分でもわからん。

デュティユーのピアノ・ソナタっうのも弾いてくれたらしいんですが、全然覚えてません(ラヴェルだと思ってた)。変だなと思って、youtubeで聴いてみましたが、こんな曲やったっけ?相当違って聞こえたけど…? ま、その程度の聴き手なのであまりあてにしないでください。

かと思うとドビュッシーはそれらしかったです。アンコールも気前よくやってくれたんですが、このあとすぐ
次の演目のために国際フォーラムCホールにダッシュしなくちゃいけなくて、後ろ髪をひかれつつ会場を後にしました。アンコール弾いてくれようとしているのに、お客さんががんがん退場するってやりづらいし、失礼ですよね…でも、実際はこの会場からホールCの席まで、移動に5分強しかかからなかったので、それほど慌てなくてもよかったのでした。すみません。

147番 パリ×ジャズ。
小曾根真とオルケスタ・デラ・ルスの塩谷哲によるピアノ2台のコラボ。 
最初、それぞれ一人ずつ演奏したときは、つい直前のシロクマと比べてしまい、うーん、ちょっと器用にまとまりすぎてるかな?などと思っていたのですが、2人で弾き始めたら、その壊れっぷりが物凄い。

チック・コリア「スペイン」とラヴェル「クープランの墓」、と言われても絶対わからないくらいにアドリブ入りまくった演奏で凄まじかったです。ノリも素晴らしかったし、本日最後の演目ということで、かなり長いアンコール曲を弾いてくれました。2台のフランスの車(プジョーとルノー)がコンサートに遅れそうになってすっ飛ばす、という設定の曲らしくて、なんと本日が初演とのこと。大変息の合った楽しい演奏を聴かせてもらいました。

さて、それではそろそろ明日に備えて、おやすみなさい…


posted by 銀の匙 at 02:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台/パフォーマンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする