2014年09月28日

蘭陵王(テレビドラマ6/走馬看花編 第2話)

調子に乗って続けております『蘭陵王』のエントリー。
第1話(こちら)のお次は第2話へ参りましょう。
さくさく行かないと永遠に終わらなそうだもんね。

第2話のあらすじ
さて、天女の透視パワーか、視聴者には誰ひとり見えない(ですよね?)美人のお姉さんを目撃した楊雪舞(よう せつぶ)ですが、我に返るとそこにいたのはメタ…いえいえいえいえいえ、怪我した馬を連れた貴公子、高四郎。

愛馬を何とか治したいという頼みにほだされて、雪舞は禁を冒して村へと案内します。

高四郎、すなわち斉(せい)の第四皇子・高長恭(こう ちょうきょう)の運命を知る雪舞の祖母は、何とか彼を雪舞から遠ざけようと、馬の手当をした翌日には立ち去るよう、厳しく命じます。

約束通り、村を去るその日は雪舞の成人式。しかし彼女が刺繍した、婚約の証の帯を受け取る男子は誰もいません。村娘たちに嘲笑される雪舞を見かねた高長恭は…。


さて。
温泉場で“美女姐姐”(綺麗なお姉さん)を見かけた雪舞は、
“雖然不能同年同月同日生 但是能同年同日在這兒泡溫泉也是挺難的”
(同年同月同日に生まれるのは無理でも、同年同月同日に温泉に入れるのは得難いことよね)とか言って近寄ってきます。
(このときの、蘭陵王の困った顔が見ものなんですけど、
でもね〜何かの計略だったらどうするんだろう、背中を向けちゃって…。)

おや、日本語では、
「私たち合ったばかりだけど、知らない人と温泉に入るのも何かの縁かもしれないわね」と言ってますね(中国語をまんま訳したら、くどいもんね)。

それにこの元のセリフ、結構含みがありますしね。

何といっても、すぐに思い出すのは、『三国演義』の「桃園(とうえん)の誓い」でしょう。

桃の花の咲き誇る中、劉備(りゅうび)、張飛(ちょうひ)、関羽(かんう)の3人が、義兄弟の契りの杯を交わす、有名な場面で言う有名な、

“不求同年同月同日生…”(同年同月同日に生まれることはできないが)
という誓いの言葉の一節です。
(あまり馴染みがない方は、「三銃士」の誓いみたいなもんだとご了解くださいませ)

となると、この言葉の続きもすぐに思い出されます。

“只愿同年同月同日死”(同年同月同日に死することを願う)

うぅ…。

この言葉、当然というべきか、武侠モノのみならず、恋愛ものでも、わんさか出てくる鉄板フレーズとなっております。

本作は王道少女マンガドラマなのですから、ここも当然、観る側に「運命の恋人たち」という印象を与えるためのセリフなのかと思われます。

まー、ホント王道な展開だこと〜と、半ば呆れながら観ていると、当然のことながら、賞金首のくせにお忍びなんて無理に決まっており、蘭陵王はやっぱり敵にがっちりマークされています。

それなのに丸腰。さすがは軍神、よほど武芸に自信があるものと思われます。
弓をもってくれば勝てたのに、惜しかったね、周兵のみんな。

仮面を被ってるときや、衣装を着てるときは、立ち回りはスタントでいけるでしょうが、この襲撃シーンは本人がやるしかないから大変だったでしょうね。(ロングショットのときはスタントかも知れないですが)

で、賊を退治して彼を助けたつもりの雪舞も面倒見なくちゃならず、お疲れ様です、皇子さま。

だいたい、雪舞は蘭陵王を助けていると思っているけど、実は本当に助けになったことって、話も終わりに近くなってからの、監禁場所から脱出した1度くらいしかないんじゃない?
(それも、直接にではなく、雪舞が昔使った技を応用したという流れ)

後は、そもそも彼女がいなくても何とかなったか、
彼女のせいで危なくなったので、それを何とかしたか、
助けはしたけど、却ってさらに危ない目に遭わせたか…

むしろ蘭陵王とは関係ないところで彼女がした行いが、回りまわって蘭陵王を助けることになるとみた方が良いのかも。

さて、我に返った雪舞は、自分の勘違いから始まったのを棚に上げ、こんなあられもない姿を見られたと村人に知られたらお嫁にいけない、早く立ち去ってと責め立てておりますが(人のせいにするか?)、蘭陵王がすごく真面目な顔をして、口元は秘かに笑いを堪えているのが、ナイス演技。

ここで雪舞に愛馬の治療をお願いして、日本語では
「高(こう)と申す」と、
苗字だけ名乗っていますね。

ちなみに、斉の皇帝は「高」一族なのですが、「高」は中国に多い苗字トップ20に入っており、同姓の人が全中国に数千万人はいる模様。
(「楊」姓はトップ10に入っているので、もっと多いですが)

中国語では名乗ってないけど、
“還請姑娘幫幫我,高四郎必定感激不盡”(どうか助けてほしい、高四郎、感謝に堪えません)
というのが挨拶代わり?になってます。

お願いをされると弱い楊雪舞が、結局彼を村へと案内すると、村の入り口には桃の花が咲き乱れています。
温泉場は赤い花(?)の他、遠景はオレンジや赤に染まっていて、おそらく紅葉の季節かと思われるのですが、ここだけ別世界ということでしょうかね。

さて、禁を冒して無理やり雪舞の家までやってきた高四郎と愛馬・踏雪ですが、やっぱりおばあ様に見つかってしまう。

雪舞はおばあ様に説教されたうえ、杖を振り上げられたところを、高四郎が止めに入ったので、何とか打たれずに済む。

雪舞は「賊に襲われ、危ういところを助けてもらった恩人」と思っていますが、賊とは実は蘭陵王を狙ってやってきた周兵ですよね。おばあ様は当然その辺を承知しているから、余計に怒ってるのでしょう。

で、高四郎は、お詫びの言葉をめちゃくちゃ丁寧に述べているのですが、それは目上の方には敬意をもって遇するという礼儀に加え、逆らったら殴り殺されると野生の勘で察知したからかと思われます(笑)

そんな怖いおばあ様に、愛馬・踏雪を鍼治療していただき、愛馬への想いを縷々述べる高四郎ではありますが、実はカワイイ顔してこの馬は、ご主人様を踏みつけにしたらしい。

公式のブログに、「踏雪」はその名の通り、ご主人様の足を「踏」みました。とニュースになっております。
https://www.facebook.com/Lanlingwang2013/photos/a.442870499062101.120831.44284186906496/468569473158870/?type=1&theater
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ご本人さまもブログにてメッセージ。
https://yahoo.tw.weibo.com/user/fengshaofeng/3444547579473631

昨天被我的馬兄踏雪踩了一腳,(昨日(2013年5月10日)、愛馬の踏雪兄いに踏まれました。)
腳小趾不爭氣的骨折了,(足の小指が、不甲斐なくも骨折してくれました)
接到很多朋友的問候,特別感動!(たくさんのお見舞いのメッセージ、とても感激しています)
還多了位新友,拐杖兄!(それに新しい友達も増えたしね、松葉杖の兄貴!) 
小傷而已,沒什麼大礙,(ちょっとした怪我で、困るほどのものではありません)   
就是石膏太熱,正在努力研究怎麼拆了它!(ただ、ギブスが暑すぎて、外すべく努力中)
                    
大家勿念!在這裏謝謝所有朋友們![憨笑][憨笑](心配しないで!皆さんありがとう!(^^)(^^)

だって。

馬に裏切られ、おばあ様にも「馬が治ったらすぐ出てけ」と冷たくあしらわれる高四郎ですが、ここでおばあ様はちょっとしたミスをしてしまいます。

“公子走了以後,不要留下什麼 也不要帶走什麼”
(ここを離れるときは、何も置いていくな、何も持っていくな)
までは、まあよかったのですが、ついつい、
“我的孫女...資質平凡 我希望你 忘了這裡 也忘了她”

言わなきゃいいのに、孫娘が心配なばかりに、孫は世間知らずで平凡な娘、この村もこの子の事も忘れて欲しい、と、まるで反論してくれと言わんばかりなお言葉。

当然、つい公子に、
“奶奶何處此言 雪舞姑娘並不平凡 她純真善良 博學多才 四郎從未見到過 如此純真的姑娘”
(おばあ様はなぜそのようなことを。雪舞どのは平凡ではありません。優しくて博学多才、私はこのように真心あふれる娘さんを見たことがありません)

と言わせてしまう。誰があんたのおばあ様か! じゃなくて、こうなると、もう自分で自分に暗示をかけてるようなもの。(この先の回で、もう1つ(2つかな)、四爺が雪舞を気に入ったポイントの話があるんですが、それはまた後ほど)

心優しいのはともかく、博学多才までなんでこの時点で分かるの?
っていうか、じゃあ、あなたが見たことある女の子ってどんなのよ?
…じゃなくて、まともに女の子見たことあるわけ
という視聴者の激しいツッコミをよそに、観察日記をつけてる虫好きの子みたいに、じいーーっと雪舞を凝視している高四郎。

ああ、おばあ様、人の恋路を邪魔したら、ウィリアム・フォンじゃなくて、
あなたが馬に蹴られることになるのですよ! お気を付けあそばせ。

第一、おばあ様はもちろん高四郎の正体を知ってるので、最初から“公子”(若様)と呼んでいますが、目が不自由そうなのになぜ身分が高いと分かるのか、雪舞も高四郎もあまり気にしてないみたい。(これが韓暁冬だったら、おばあ様も“公子”たぁ呼ばないでしょう)

もちろん雪舞は相手の言葉遣いや身なりで、身分の高い人だとは分かるのでしょう、高四郎が名乗ったあとは、彼を“四爺”(よんじい…もとい、スーイエ:四男坊の若様)と呼んでます。中国語の方は、終わりまでほとんどずっと、この呼び方です。

で、四爺は雪舞の部屋で食事を出してもらうけど、あの後召しあがったのでしょうか。
(雪舞が作った食事なら、それは正解...ということが、第7話→記事はこちらにして判明・笑)
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このとき、窓辺に剣を置いて、その上に仮面を載せてるように見えるんだけど、剣はもっていったのに仮面は置いてったのかしら?

後で話をしながら仮面を着けてみせたときに、テーブルの上に置き忘れたのかと思ったけど、第3話を観ると、ちゃんと元の場所に戻っている…。

さて、お部屋で飼われてる雪舞のペット(?)のヒキガエル、名前は「招財」と「進宝」。
文字通り、財を招くという意味で、中国では、こんな風に書いて縁起物として貼ったりします。
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ただ、雪舞の時代には、まだ存在してない言葉かも…。
(だいたい、次の回を観るとわかりますが、村ではお金も流通してないのに、「儲かりますように」って名前をどこから考え付いたんだか)

日本の「招き猫」は中国でも大人気ですが、訳語は“招財貓”ですね。

日本でもお財布に「お金が帰る」ように、ってカエルのチャームを入れたりしますけど、中国でもカエルとお金は関係があります。

中国語で、前髪をぱっつんと切りそろえた髪型を“劉海”(リュウハイ)と言うんですが、この言葉の元になったのが劉海という道士。

銭に目がない妖怪“金蟾”(三本足の金のヒキガエル)を、銭で釣って捕えたために、劉海が行くところ金蟾が吐き出す銭がまき散らされた、という伝説があって、ガマガエル=お金を呼ぶチャームとなったようです。

劉海は道士だけに、歳を取っても童子のように若く、前髪ぱっつんの子どもの姿で絵に描かれています。それで劉海=前髪ぱっつん、なんだけど、これは唐代以降(雪舞の時代→隋→唐だからまだまだ先)にできた伝説らしい。

さて、「きゃりーぱみゅぱみゅ」とガマガエルの意外な接点が明らかになったところで(←別になっていません)、友だちを紹介してもらった高四郎は、雪舞に
“你這個房間 怎麼佈置得這麼奇怪呀?
還有我覺得 你跟其他女孩也不一樣 你喜歡自言自語 還喜歡跟動物講話”

と言います。

「君の部屋は、なんでこんなに風変わりなんだ?
(それは理科実験室だからですよ、四爺様)
それに、君は他の女の子と違って独り言が多いんだね、しかも動物に話しかけるのが好きみたいだ」って事ですが、日本語では秒数の関係か「友達はあのカエルたちか」とだけ言ってます。

雪舞は、自分は早くに両親を亡くして友達もいないので、動物に話しかけることがあるの。気にしないで、といったような返事をしています。

それはともかく、これまでのしゃちほこばった大仰な話し方はやめて、いきなり口語ですね!
中国語にしろ、日本語にしろ、突然距離を詰めてきてますよ!

だいたいあなたが言う他の女の子っていったい…(後略)

さてさて、牡丹、飛燕(ひえん)、落花の村娘三人組に、
「はた迷惑」
「器量が悪いのはしょうがないけど」
「おばあ様も恥さらしと思ってる」
と指摘され、踏雪の包帯代わりに使ってた帯の洗濯もそこそこに、部屋に戻ってくる雪舞。

この帯は、翌日の成人式で意中の人に贈るものだと知らされて、申し訳ないと思ったらしく、四爺は夜なべをして、手袋編んで…じゃないや、持ってた飾りを、その帯に縫い付けている。

追記:ここで、なぜ夜になって、四爺がまた雪舞の部屋にやってきたのか、という大きな謎があるんですが、全然ツッコんでませんでしたね(びちさん、ありがとうございます)。

そうですよ、明かりがついてるとはいえ、夜の夜中に乙女の部屋にずかずか入ってくるなんて、何を考えているのでしょうか(いやむしろ、何も考えていないのでしょうか)。

・陣中を見回って歩く癖が抜けない
・ほとんど吹きっさらしの部屋をあてがわれ、寒いので歩いて暖を取っていた
・出してもらった食事を食べ損ねたのでお腹が空いており、お膳を置きっぱなしにしてた部屋に戻って来ようとした

…すいませんすいません、温泉場の滝に打たれてきます…


さて、お裁縫の方ですが、針と飾りは腰帯のところにしまってあったのを出してきたみたいなんですが、ここ、いったいどういう構造になってるのでしょうか。
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この先も、ドラえもんのポケットみたいに、ここから何でも出てくるんだけど…。

ああ、まあそれはいったん置いて、縫い物は良いんですけど、一体何のため?

(正解)これは特別な帯です、という印

そうは言ってますが、この帯、誰か(男子)にあげるために作ったんでしょ。 
そういう意味合いのアイテムに、男性が自分の持ってる飾りを足す意味が、よく分からないのですが。
ではここで、三択いってみましょう。

1.刺繍がグズグズなので見るに見かねて(または、鶴の恩返し)
  →高そうな飾りをプラスしとけば、お金に目がくらんだ誰かが、受け取ってくれるかもしれない
2.敵に塩を送る
  →と見せかけて、未来の恋敵を威嚇しようとの心づもり
3.おばあ様への無意識の反抗
  →何も置いていくなと言われたのに、聞いちゃーいない
4.空気が読めない
  →あっ、四択になっちゃった。

うーん、分からない…どのみち回収する予定ですというお名前シールのようなものなのかも知れない…。

と視聴者が寝られず悩んでいるまま朝になり、

追記:と、思いましたら、コメント欄で素敵な5択目を考えていただいたので、ご紹介いたします。
「帯の飾りの4択ですが・・・第5の選択肢として、サプライズギフトというか、単純に雪舞の喜ぶ顔が見たかったんじゃないかな?と思いました。
結婚式に絵を贈ったりとか、皇太后に養子縁組を頼んだりとか、蘭陵王って、こっそり準備して喜ばせるのが好きなのかなと思います。」

おお、きっとそうですね。銀さん、ありがとうございます!


と、ここは解決しましたところで、雪舞は別れの挨拶をしに、四爺を泊めた部屋へ…っていっても、これ、ほとんど屋外ですよね。野宿と変わらないんですけど(冷遇してるということなのか?)
秋だっていったって北中国なのに…あ、ここだけ桃源郷だから暖かいのかしら...

ともあれ、借りたは借りた部屋なので、皇子さまと言えども、ちゃんとベッドメーキングをしています。今、四爺がやっているような、掛け布団の足の側の辺と、長い方の両端を、内側にちょっとずつ折り込むのは簡易なやり方で、寝るときは、この春巻きみたいな筒状の掛け布団の中に寝ます。
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もう少し先の回で、雪舞も同じ風にベッドを整えているので、ご覧になってみてくださいね。

宿舎や軍隊だと、まず布団の長辺を真ん中で合わせ、次に短辺を真ん中で合わせて、内側にもう一回たたみます。こうして、正方形に近くなった掛け布団を、足の方へ枕と重ねておいておきます。こうすると場所を取らないので、昼間はベッドを長椅子代わりに使うことができます。掛け布団が薄いから、こんな風に折ったり出来るんですけど…

で、お互い朝の挨拶をします。

2人が言ってる、“早!”は、ごくくだけた挨拶。漢字で書いてあると、つい心の中で、「はやっ!」って読んじゃいますけど。

でもまあ、挨拶をしあうのはまだちょっと距離があるかな。

会った人に、“你好”“你早”“晚上好”(こんばんは)という挨拶ことばを掛けることはもちろんありますけど、親しい間柄だと、相手が何してるところ、というのを言うことが挨拶代わりになります。
たとえば、朝なら、“上班去”(ご出勤ですか)、昼なら“吃飯了”(お昼は食べました?)等々々です。
(日本でも、「お出かけですか、レレレのレ」と、言うときありますよね←ちょっと例が古いか)

習慣的なものですけど、相手を気にかけていますよ、という意味が含まれているんだと思います。

先の方の回で雪舞が四爺に、“你起來了”(あら、起きたの)と声を掛けるシーンがありますが、単に、起きたのね、と言ってるというより、胸きゅんバージョンの朝の挨拶の一環ですね。

逆に、身分が違うときは、こんな挨拶したら首が飛びますので気を付けてください。
先の回で出てきますが、蘭陵王府(蘭陵王のお屋敷)みたいに、礼儀作法がてきとーな所でさえ、使用人は、
“四爺請安”(四若様にはご機嫌麗しく)と決まり文句で挨拶します。

さて、ここは蘭陵王府じゃないので簡単な挨拶をした後、四爺は、登場以来ずっと自信なさげな雪舞を励まします。

このとき、口の端がきゅっと上がっていますね。
これはわざわざ、こういう表情をしてますが、ふつうに口を閉じてても、口の端がこんな風に上がってるひと、中国でよく見かけます。
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日本じゃあまり見ない気がするけど…。
そうさね、パタリロくらいかな。
(知らない方はいないと思いますけど、こんな口

で、んか?つながりか…。

そして、雪舞はといえば「オバケのQ太郎」のP子

あー、いやいや、昨日は“天機不可洩露”(天の機密は漏らすことができない=それはちょっと言えない)と言ってたくせに、ここで雪舞はパタリロに向かって、
“當今世上唯有四人能撼動天下 周齊各有兩人 其中一位便是能帶給天下百姓平安的蘭陵王”(天下を動かす人は周と斉に2人ずついるけれど、人々に平穏をもたらすのは蘭陵王)とか、ペラペラしゃべってしまう。

四爺も、日頃“戰神”(軍神)などと呼ばれている訳だから、この手の話は噂レベルでいろいろ耳にはしているでしょうが、この時点で、雪舞が天女だと知っているので、おっと…という顔をしていますね。

そのとき、成人式が始まってしまったので、雪舞は別れを告げて式場へと去ります。
ここで四爺がため息をつくのが、非常に意味深ですね。

さて、古代の中国では、成人の証として、男性は「冠礼」、女性は「笄礼」という儀式をする。男子は20歳、女子は15歳で、儀式を経ると男女とも婚姻が許される、ということになっております。
ドラマの儀式中で唱えられている句は、宋代(ドラマの時代→隋→唐→宋だからだいぶ先)の『朱子家礼』に書かれているのと同じ文句のようです。

斉でもこの成人式の習俗が守られていたとすると、この時点で雪舞は15歳ということになる。ってことは、西暦552年の生まれということでしょうか。帯をもらってる村の男子の方は20歳過ぎには見えないから、まだ婚約中ってとこですかね。

一方のおばあ様はもうすぐ80歳。この時代、女性は15歳くらいで結婚したとすると、雪舞のお父さんは晩婚だったのかしらん…。

雪舞も、この時点で誰も帯を受け取ってくれないとなると、上手くいっても晩婚の運命は逃れられないんじゃないでしょうか(晩婚の家系?)。おばあ様、他に貰い手がないのに、四爺止めてる場合ですか? 

逆に、四爺が受け取って儀式が終わったら、この後どうするんでしょう…? 温泉で誰かに見られたどころか、よそにいいなずけが居るってことになって、ますます結婚できなくなるんじゃないの…? まぁ、私が心配することじゃないですけど…。

昔風の衣装の下に、村人からおばあ様までがバッシュを履いてることとかも、部外者が心配したって始まらないですね。

あ、それからおばあ様が儀式で使ってるこのタオルは、バッシュと並んで気になるアイテムです。覚えておいてくださいませ。
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さて、成人式でまたもや面目丸つぶれになってしまった楊雪舞。ひどい仕打ちに泣いていると、おばあ様がやってきて、なぜ四爺を追い払ったのか、理由を語って聞かせます。

ここでおばあ様は第2のミスをする。雪舞に向かって、
・四爺が邙山(ぼうざん)の戦いで奇跡のような勝利を収めること、
・それが却って嫉まれ、災いを招くこと、
・四爺が結婚する相手は「鄭」(てい)姓の女性であること、
という占いの結果を話して聞かせて、四爺の未来には別の女人がいるからと諭す。

ここまででやめとけば、まだ良かったのかもしれませんが、うっかり、
“最多一年以後,他必死”(長くても1年で、彼は必ず死ぬ)と言ってしまう。

この時点で雪舞は、四爺が蘭陵王だとは知る由もないのですが、たぶん、もうすでに、おばあ様が心配する程度には四爺が好きなことに加えて、「人を見殺しにはできない」という日頃からの信念があるので、どうしても助けなければ、と思ってしまったらしい。まさに痛恨の失言…。

さて、一晩のアバンチュール(とは言わないか、この場合)を終えて、帰路につく四爺。

あっ、しまった、襟帯もって出ちゃった…じゃなくて(またおばあ様の言いつけに背いたわね、あなた)、
一晩留守にしてしまったね、って、踏雪に言ってる。

雪舞にあんなこと言ってるけど、四爺、あなた様も結構、独り言多いし、動物に話しかけてますよ。

勘の良い視聴者は気づくと思いますが、つまりは四爺も早くに親はおらず、友達と呼べるような人はいない(義兄弟や弟がいるだけマシですが)、同じ境遇だってことの伏線ですね。

怪我した馬に乗って、何事もなく陣地に帰りつく四爺。

尉遲迥(うっちけい)将軍ったら、斛律須達(こくりつ しゅだつ)には、あんなに手の込んだ計略を用意してたのに、肝心の四爺の方には、無策だったのか..(どうせひっかかるはずないし、と諦めてたのかしら)

あるいは将軍自身が、コスプレしたかっただけ?(あんなガニ股の四爺は嫌だ〜!)

と、疑惑を孕みながら(ないない)、どこかズレてるなぁ将軍は、と思いつつ、物語は第3話へ続くのであった...次回はもっと短く済ませたいものよのう…
posted by 銀の匙 at 23:25| Comment(6) | TrackBack(0) | 蘭陵王(テレビドラマ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月23日

蘭陵王(テレビドラマ5/走馬看花編 第1話)

皆さま、こんにちは。

特に最新情報が載ってる訳でもなし、どなたかのお役に立つことがあるのかと危ぶまれておりましたこの『蘭陵王』関係のエントリーに、何とリクエストをいただきました(銀さん、ありがとうございます)。

ということで、あと1エントリーだけというお約束をあっさり撤廃して、もう少々ネタを追及してみたいと思います。

“君子一言,駟馬難追”(君子が口にした言葉は取り消しが効かない:君子に二言なし)と、第3話で高長恭=蘭陵王=四爺様はおっしゃっておられますが、私は君子でも雅子さまでもないし。

不要跟本王深究這些(そんな処にツッこむな:第17話と言われそうですが、四爺様だって、かなり約束破ってるじゃないですか(公子だけど君子じゃなかったのね)。そうよそうよ。

何をどう書くか迷ったけど、構成(何をエラそうに)を考えてる時間がないから、この際、第1話から通しで途中の36話まで見てみましょう! 毒を喰らわば、毒杯まで!(消化に悪そうだけど!)

はぁ、でも、そこまででもDVDにして13枚もあるのね。終わるのかな…。
実は最初、すごく急いでいたので、中国語音声でしか観てませんでした。改めて日本の吹き替えも確認するとなると、単純に時間が倍かかっちゃう。

ま、途中、大したネタもない回もあるから、そこを流せば、そのうち終わるでしょう。

現時点ですでに、どの話に関連付けるか迷うネタもあるので、とりあえず書いた後に動かすかも知れません。なので、いったん書いたものをちょこまか直すと思いますが、どうぞお許しください。

なお、ここまでの記事は、(史実編)(有話即長編)(重箱四隅編)(千言万語編(龍虎相搏編)となっております。

なお、ドラマの進行に沿ってご紹介する本シリーズ「走馬看花編」は基本的に当該回以降のネタバレはなしで進めてまいります。コメント等くださる場合、先の回の内容についてはできれば言及を避けていただき、どうしてもネタバレありのときは、どうぞこれからご覧になる皆様のため、【ネタバレあり】などと文頭に注記をお願いいたします。

以下、本シリーズはドラマ『蘭陵王』から、お話の背景になっている中国の歴史や文化、中国語の面白さを皆様とシェアしよう(または、他人様が一生懸命製作したドラマをネタに遊んじゃおう)!という趣旨でございます。

原文のセリフなど引用は青字で、訳文は( )内に赤紫字で、日本語訳を引用させていただいているときは紺字で表記しています。

なお、念のために申し上げますが、私はこのドラマの日本語吹き替えは非常にクオリティが高いと考えております。こちらで訳をつけているのは、訳の批判や吟味のためではなく、あくまでも、元の中国語のセリフを直接ご覧いただくための補助用です。どうかその点、ご理解くださいますようお願いいたします。

さて、さすがに私のヨタ話だけでは中身なさすぎなので、まずは、公式エピソード集をご覧いただくことにいたしましょう(と言っても、もうご覧になった方がほとんどでしょうけど)。

ヒロイン楊雪舞(ようせつぶ)を演じた、アリエル・リン(林依晨)の登場です。

http://www.youtube.com/watch?v=T5tjvdZBVzU
第1話、飼ってるニワトリを追って村の外へ出る…はずなんだけど、なぜかニワトリが動かず。脅したり、すかしたりしてる雪舞がカワイイです。

そして、おばあ様に理科実験がバレそうになり、机の上のものをどけているシーン。
小道具を思いっきり窓の外へ捨ててます(壊れる音までしてるけど、これ、演技じゃなかったのね・笑)
(“糟糕”は、「しまった!」って意味です)

続いて蘭陵王役のウィリアム・フォンがアリエルについて話しています。
「アリエルはポジティブでプロ意識が高いです...お互い、言わなくても演技の呼吸が合うんです」
そして彼のしゃべり方は相変わらずふにゃふにゃです。

おっと、ここでいきなり第36話の「蘭陵王が泣く」芝居のシーンがありますね。

「私まで泣きそう」というアリエルに、スタッフが
「言っとくけど、我慢してよ(“你要HOLD住”って何語・笑)。君は知らないって事になってるんだからね」
アリエルは役に入り込んでます…
(この場面、いちおうカットまで撮ってるけど、本番では使ってないですね。)

お次は宇文邕(うぶんよう)を演じたダニエル・チャンがコメントしてます。

「アリエルと共演するのはとても楽しいです。彼女はいい女優さんだし、真面目で可愛らしい人なんです。台湾に帰る彼女に、からかうつもりで、「保温マグくれるって言ったよね」って連絡したんです。それで彼女が戻ってきてすぐに、「僕の保温マグどうした?」って聞いたら、ホントにあったの」。
「(アリエル)えっ、シャオドン(ダニエルの中国名)、私、渡したわよね」
「(ダニエル)もらったもらった」
「(アリエル)ああ、良かった」
「(ダニエル)この人、10箱くらい注文してるんだもん」

傍らのジョージ・フー(蘭陵王の弟・安徳王役)が、役のまんまの笑い方なのがおかしい。

アリエルもコメントしてます。
「このドラマの撮影はね…結構大変でした。すごく暑いのに、こんなにぶ厚い時代劇の衣装を着て…」

ははは。お疲れさまでした。

このドラマ、お話自体も時代劇と現代の恋愛ドラマが混ざったようなつくりですけど、俳優さんの方も、まるっきり時代劇風の演技の人に交じって、アリエルとウェイ・チェンシャン(韓暁冬)は時代劇がかった所作をしないですね。

ちょっとヘンだなと思うときもあるけど、現代風な2人がいるから、時代劇でも何とかついて行けるのかも…。

ということで、第1話

前にも2度ほど紹介しましたが、改めて。

(第1話のあらすじ)
時は西暦557年。戦乱の世から霧で隔てられた桃源郷・白山村へ、10年に一度の占いを頼むため、黒衣の武将・楊堅(よう けん)が現れます。村に住む巫〈ふ〉族の長老であり、予言の力をもつ「天女」(てんにょ)である楊林氏は、この先10年の天下の行方を語って聞かせます。

天下の行く末を左右するのは、周の権力者・宇文護(うぶん ご)、若き皇帝・宇文邕(うぶん ゆう)、そして敵対する斉の皇太子・高緯(こう い)、その従兄・高長恭(こう ちょうきょう)の4人。

なかでも、領地の名から蘭陵王と称される高長恭は、太平の世をもたらす力はあるが、兄弟の手にかかって非業の死を遂げると予言されています。楊堅は、話を物陰で聞いていた楊林氏の孫娘・雪舞(せつぶ)に、蘭陵王との縁を感じますが、楊林氏は孫娘に天女の使命を託す気はないと憤ります。

10年後。周と斉の国境に近い壺口関(ここうかん)を守備する蘭陵王は、敵将・尉遅迥(うっち けい)を計略により破るも、愛馬・踏雪(とうせつ)に怪我を負わせてしまいます。配下の楊士深(ようし しん)から近くに傷に効く温泉があると聞き、愛馬を引いて出かける蘭陵王。

一方、祖母の誕生祝いのために花火を作ろうと奮闘する雪舞は、祖母の止めるのも聞かず硫黄を採りに温泉場に行き、絶世の美女と出会うのですが…。


日本でいえば、聖徳太子が活躍するひと世代くらい前(古墳時代)の話です。
三国志が終わって、晋が天下を統一したのかと思いきや、国は南北に3つに分かれてしまいます。そのうちの北の2つの国が舞台になっています。

やおら登場する楊堅は、中国語では庶民に向かって敬語で話しているのですが、日本語吹き替えだと、かなり上から目線ですね。もちろん、日本語だとそれが自然なんですが…。

中国語の方は、身分が上=礼儀をわきまえている、ということを示すのと、一般庶民とは距離を置くために、わざと丁寧にしゃべっているのかと思われます。

蘭陵王も、どう見たってただの庶民の小娘(=雪舞)に対して、自分のことを“在下”(あなた様の下座にいる者:まぁ日本護でも「拙者」と言いますけど)と言ったり、“沒有請叫大名(お名前もお伺いしていませんでした)と言ったり、ものすごーくへりくだった話し方をしていますが、きっとそういうものなんでしょう(この場合、初対面の女の子にどういう口を利いてよいか分からなかったという可能性もなくはないが…)。

楊堅の言葉遣いに気を取られて最初見たときは話の中身を聞き流していましたが、周が新たに丹州城を攻め落としたと言ってるようです。ってことは、丹州城はもともと斉の町だったのですね。

いまの日本で見てるから、国境というと国全体のへりにあるような気分でいましたが、日本でいえば戦国時代と同じなんですよね(スケールは違いますが)。国境の町は、きっと取ったり取られたりしてる場所なんでしょうね。こうした事情は第3話、第4話とちょっと関係してきますので、またのちほど。

さて、楊堅が庶民に「魚を食べるな」と忠告するこのシーン、せっかくのラブ史劇の始まりだというのに残虐な印象で、しょっぱなからかなり引く人が多かったんじゃないかと思いますが、私は実は初回ここを見たときに、おっ、なかなかリアリティがあるな、これはイケるドラマかも…と思ったのでした。

この時代を記した歴史書である、《北斉書》卷二十八にこんなエピソードが出ています。このシーンの設定の557年から2年後のお話です。

短いので、せっかくですから原文と一緒にご覧いただきましょう。

ドラマの舞台になっている斉の国は、もともと「北魏」という国だったのが東西に分裂し、そのうちの1つ(東魏)を蘭陵王のじっちゃんが乗っ取って作りました。

蘭陵王のじっちゃんとパパの時代までは、まだ魏の皇帝をお飾りで置いていたのですが、パパの弟・文宣帝の時代に、ついに皇帝の位も乗っ取ってしまいます。そして…。

元韶字世冑,魏孝莊之姪。性好學,美容儀。
(元韶<げんしょう>は字<あざな>は世冑<せちゅう>といい、北魏の孝荘帝の甥だった。学問を好み、容姿の美しい人だった。)

元韶は斉の前の王朝の皇族でもあり、スタイルの良いイケメンで頭も良いという、折り紙つきのセレブ。ただ、この先、嫌というほどご紹介いたします通り、この時代、なぜか知らないけど、美貌の男子が次々登場します。主役の高一族が美貌揃いだったので、類友でそうなったんでしょうか、よく分かんないけど…。

(中略)
性行溫裕,以高氏婿,頗膺時寵。能自謙退,臨人有惠政。好儒學,禮致才彥,愛林泉,修第宅,華而不侈。
(性格は温和で、高家の婿でもあり、世間でももてはやされた。謙虚な性格で、良く領地を治めた。儒学を好み、才能のある人に礼をもって遇した。自然を愛し、その屋敷は華やかではあったが贅沢ではなかった。)

元韶を婿にすれば家名に箔が付く、ばかりではなく、どうやら高一族は、彼が継承した国宝を狙っていたらしい。ホント、盗人たけだけしい一族であります。

文宣帝剃韶鬚髯,加以粉黛,衣婦人服以自隨,曰:「我以彭城為嬪御。」譏元氏微弱,比之婦女。
(文宣帝(蘭陵王のパパの弟)は、しょっちゅう彼のヒゲをそらせては化粧をして、女装させて侍らせ、「朕は元韶を側室とするぞ」といった。元韶が軟弱で女のようだとからかったのである)

どうも、女装をさせる/するのがお好きだったのは、高一族のDNAの為せる技なのかも知れません。何せこのあと、嫌というほど(以下略)

十年,太史奏云:「今年當除舊布新。」
(天保10年<559>、太史が「今年は古きを除き、新しくすべき年です」と上奏した。)

まったく、おべっか使いが要らん事提案するのはどこの時代のどの国も同じようです。

文宣謂韶曰:「漢光武何故中興?」
(文宣帝は元韶に聞いた。「光武帝はなにゆえ漢を復興できたと思うか」。)

光武帝というのは、劉邦〈りゅう ほう〉が建てた漢の国が、いったん王莽〈おうもう〉によって滅ぼされたあと、それを復活させた皇帝です。

韶曰:「為誅諸劉不盡。」
(元韶は答えた。「なぜなら、(いったん漢を奪ったが)劉氏を殺し尽くさなかったからです」。

光武帝がなぜ漢を復活できたかといえば、国を奪った王莽が、前王朝の皇族を生かしておいたからです…なんて、ホントに答えたのかこんなこと?

当然の帰結として、

於是乃誅諸元以厭之。
(そこで文宣帝は元姓の者を殺し尽くすよう命じた。)

…ですよね。

(中略)
韶幽於京畿地牢,絕食,啗衣袖而死。
(元韶は都の地下牢に幽閉され、食べ物を与えられず、自らの袖を飲み込んで死んだ)

及七月,大誅元氏,自昭成已下並無遺焉…皆斬東市。
(7月になると、またも元姓の者を虐殺し、昭成帝の子孫は例外なく…すべて東市で斬殺された)

其嬰兒投於空中,承之以矟。
(赤ん坊は空中に放り上げて、矛で刺し殺した)

前後死者凡七百二十一人,悉投屍漳水,剖魚多得爪甲,都下為之久不食魚。
(殺された者は721人に上り、死体はすべて漳〈しょう〉河に投げ捨てられた。魚をさばくと、人の指が出てくることが重なり、都の人々は長いこと魚を食べなかった。)

ってことで、このエピソードはちょっとシュチュエーションは違うけど史実を参考にしてるらしい。

この先も、トンデモエピソードとか、あり得なさそうな髪型とか、何だコレみたいな小道具とか出てきますが、そう思ったのに限って史実に基づいてたりするので、油断なりませんこのドラマ。

で、そんな凄惨な風景をよそに、村では収穫の季節のようです。村人は豊作だと喜んでますが、蔵が足りなくなるほど、何を栽培してるのでしょうか。

春の花が満開だから秋じゃない(桃源郷のような場所という設定なので、一年中桃の花が咲いてるのかも知れないけど)し、北中国だからお米じゃないですよね。ちょうど、このお話の時代・魏晋南北朝の時期から、中国では小麦の栽培が一般的になったそうなので、小麦なんでしょうか。花が咲くといっても、北国なら5月ごろだろうし…

もう一つここで不思議なことは、村人たちが自分たちのご先祖様を巫族だと言ってること。でも、どう見てもすごい能力がありそうには見えないので、巫族の中でも、楊林氏や楊雪舞のような、天女の家系だけが特別なのかしら。だとすると、おばあ様(楊林氏)がいなくなったら村を霧で隠せなくなっちゃうけど、どうするの…?

と心配してる間に楊堅は、おばあ様が遣わした五色鳥の導きで、村の中へのこのこ入ってきます。

あれ? 外の人を中に招き入れたら、ダメなんでしょ?
何だかんだ言ってこの話、おばあ様が一番タブーを破ってるんじゃ?…とか言うと杖で殴られそうだから、追及するのはやめとこ。

なんせ齢80歳で、コレ↓
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を粉々に砕く握力の持ち主ですもんね。

亀のおなかに書いてある、文字通りの「甲骨文」(ちなみに、中国ではOracleのことを「甲骨文」といいます。OracleのCEOは「甲骨文総裁」。なんか、スゴクないすか)、

実は、甲羅に何て書いてあるのか読もうとして時間がかかってたんですけど、引っ越した後、甲骨文を読むアンチョコ本がどこに行ったか見つからなくて…最初の字は「月」で間違いないと思うけど…本を探しだせたら、追記しときますね(分かる方がいらしたら、教えてください!)

なお、日本語吹き替えだと第1話ですでに楊林氏となっています(今回吹き替え版見て初めて気づいた)が、中国語版ではテロップで雪舞の祖母、という紹介のされ方をしています。おばあ様が楊林氏だと分かるのは、中国語版ではもっとずーーと後(第27話だったっけ)のことです。ってことで、この話はまたそのとき。

さて、のこのこ現れた楊堅が、なぜ明君を助け、戦乱を止めないのかと尋ねると、おばあ様は、
自古以來 狡兎死 走狗烹(古来、ウサギが死ねば猟犬も始末されてしまうと言う)
と答えています。これは《史記》に出てくる言葉。漢文で習った方もいることでしょう。
史記の中でこの言葉を言った范蠡(はんれい)という人は中国史に登場するあまたの人物の中でも抜群に優れた人。あやかりたいものです。

さて、禁を破って楊堅は、何かスゴイ劇画の解説つきで、この先10年を占ってもらいます。なぜ蘭陵王が鳳凰と関係あるかが私には聞き取れないんですが(高緯は、星回りが朱雀と関係あるらしい)、後の回で、蘭陵王府のトレードマークとして鳳凰が出てくるので(斉のマークが鳳凰なのかも知れないけど)、またその時考えることにして、先、行きましょう。

ここでおばあ様が蘭陵王について語る、
扶搖直上九万里”(九万里=遠くまではばたく)というのは『荘子』に出てくる有名な言葉です。でも、鳳凰っていうより「大鵬」のことじゃなかったっけ。

鹏程万里(前途洋洋)って成句もありますよね。まぁどっちも鳥だから細かいことは気にしない方がいいのか(杖で殴られるのがやっぱり怖いし)。

その後、ただし爪がないので樹には止まれないといってますが、そういう話は知らない…。

止まれない鳥、といって私が思い出すのは、ウォン・カーウァイ監督の『阿飛正傳』(欲望の翼)ですね。あれは良い映画だったなぁ…。

主役のヨディ(レスリー・チャンが演じた)のセリフだったと思いますが、「世の中には足のない鳥がいて、どこまでもどこまでも飛んでいくんだ。生涯で一度だけ地面に降りるのは、そいつが死ぬときなのさ」っていうの、ありましたよね。

私が知らないだけで、中国に何かそういう伝説があるのかも。

おばあ様の話を聞いてた雪舞が、五色鳥を舞わせると、楊堅は鳳凰を手のひらで踊らせることができる娘、と驚いてますが、ここですでに

雪舞の手のひらで踊らされる蘭陵王

という不吉な未来(笑)が暗示されているように思うのは、私だけ?

それから、おばあ様がここで言っている「貴人の助けがなければ…」の「貴人」というのは、占いでいう、未来に助けをもたらす人のことで、身分の高い人とは限りません。日本でも、おみくじ引くと、この言葉が出てくるときあるでしょ?

さて、時は流れて10年後。

10年経ったけど、楊堅はまた占ってもらいに来たのかな? 最初に出てきたときは、おばあ様から贈られた鳥を籠に入れて携えてますよね。でも、この年、おばあ様は鳥を連れて出かけてるけど…。何羽もいるのか、それとも楊堅はポイント失効したのか…。

まぁ、いいや。

周との国境にある壺口関(ここうかん)を守備するのは、斉の第四皇子(現皇帝の兄の第4子)・蘭陵王=高長恭〈こう ちょうきょう〉とその異母弟、安徳王(あんとくおう)=高延宗〈こう えんそう〉、大将軍の息子・斛律須達(こくりつ しゅだつ)、配下の武将・楊士深(よう ししん)たち。

ここで彼らは、壺口関のあたりに住まうという、巫族の天女の話をする。
天女は未来を占える他に、国を興したり、ほろぼしたり、百病を治し、
濁水を清水に変えることもできる…

最後の一言は、尺が足りなかったのか、日本語では出てきません。
(後の話に関係ありすぎるのでカットしたのかも)
安徳王は、あとでがっかりするとも知らず、天女は絶世の美女と聞いていると相変わらずのチャラ男ぶり。

さて、対する敵の将軍、尉遅迥(うっち けい)は、実は史実じゃこの中の誰よりも(楊士深は分からないけど)長生きした模様。

それはともかく、どうもこれまで何度も蘭陵王にしてやられてるらしく、まずは配下の斛律須達を捕えた者に賞金五百両を出す、と言ってる。

これがどんな金額かは分かりませんが、あとで「邙山(ぼうざん)の戦い(第9話―10話)」(記事は→こちら)の時に、このドラマでは太っ腹で有名な(物理的に太っ腹“胖蘭”“蘭胖子”(メタボ王…。胖は太っちょ、という意味)ってあだ名まで推戴してるのはウィリアム・フォンの方ですが)、周の皇帝・宇文邕(うぶん よう)が、最初に洛陽城(らくようじょう)の門を破ったものに千両を取らせると言っているので、結構な額かと思われます。

ところが、蘭陵王が現れると、尉遅迥が提示する額が、

賞金一万両と三階級特進

に跳ね上がってます。
おいおいおいおい、須達の20倍かよ!

後に行くと、蘭陵王1人で壺口関の10倍の価値はある、と言ってる。
すごいインフレっぷり。

(と思ったけど、でも洛陽城の門が1000両だとすると、それを十倍したら1万両だから、相場はそんなもんかな)

そんなことより、壺口関の陣中で、居残り3人組が移動する間中、この↓
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なぜかフォーカス合いっぱなし

何かの丸焼きがフィーチャーされてるのがとても気になる私。なんか、おいしそう…

と言ってるうちに、だいぶ長くなっちゃいましたね。

たった1話でこの長さ、先が思いやられるわ…2話はさらにツッコミどころ満載だから、どうしよう。

遙遙無期的路啊...”(そりゃ遠い遠い道のりだよ:第15話って周の禁衛軍の同僚に同情して貰えるかも、と思いつつ、続く(→こちら)。
posted by 銀の匙 at 01:40| Comment(6) | TrackBack(0) | 蘭陵王(テレビドラマ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月14日

大いなる沈黙へ―グランド・シャルトルーズ修道院

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その昔、ツァイ・ミンリャン(蔡明亮)監督の『愛情万歳』という映画を、劇場で見たことがあります。お話自体はフィクションで現代ドラマなのですが、BGMが全くない。監督の狙いはともかく、映画に音楽がないのが、こんなに辛いとは…。音楽がない分、画面を注視せざるを得ないし、劇中の音が必要以上に大きく聞こえ、ハイヒールの音とか、頭に刺さってくるようで苦痛でした。全く拷問のような映画でしたね、あれは…。

それなのに、さらにセリフまでないという、こんな映画を観てしまうあたり、自分の学習能力のなさに呆れますが、基本、『愛情万歳』と同じだなぁと、まずは感じてしまいました。

音がないので、起きてようと思えば、画面に食いつくしかない。

しかも、『愛情…』の方には一応、ストーリーらしきものはありますが、こちらはドキュメンタリーなので、特にシーンの間に脈絡がある訳ではありません。フランスの険しい山中にあるカトリックの男子修道院。その中の修道士たちを、ひたすら映し出していくドキュメンタリー作品です。

修道士たちは、特定の場合を除いて会話が許されていません。祈りを捧げる彼らの周りを、しかし、時には耳障りな雑音が取り巻いています。音源の方は映らないので、いったい何なんだろうと気になるのですが、彼らの日課を追っていくうちに、隣の部屋で薪を割ってる音だなとか、食事を運んでる音だなとか、察しがつくようになる。そうしてだんだん、観ている方も祈りの中へ入っていくのです。

画面にじっと集中していると、外界の光や降りしきる雪など、ちょっとした変化に敏感になってきます。目は修道士たちをじっと見つめながらも、半分瞑想をしているような状態になり、いつのまにか、観ている自分も、この修道院の時間を共有していることに気が付くのです。

清貧を旨とする生活ながら、食事の量は意外に多いし(さすがフランス)、自足自給という訳でもないらしく、ラベルの貼られた果物を食べてたり、貫頭衣みたいな昔風の修道衣の足元は、登山靴みたいなものを履いていたり、飛行機に乗ることもあるようだったりと、意外に現代的だと思う瞬間もあるのですが、映画のパンフレットを観ると、一日のうち、何をいつから何時間やる、というような日課が厳格に定められているそうで、その点は全く中世の修行僧と変わらない生活のようです。それでも修道士たちは、人嫌いという訳ではなさそうで、なかなか無邪気だったり、お茶目だったりする面もある。

日曜の散歩の際だけ、交わすことを許される会話は、和やかながらウィットに富んだもので、なるほどだからこそ、普段に沈黙を課すというのも分かるような気がしました。人と話すことで得られるものは多いですが、自分と対話することでしか得られないものも多いのでしょう。

そして、信仰をもつ人ならば、神と相対することは極めて個人的な行為であり、逆に言えば、神と対話しようとするとき、他の人の援けは借りることができない。そういった意味の厳しさも感じ取ることができる、美しい3時間でした。

フィリップ・グレーニング監督
posted by 銀の匙 at 22:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月10日

超高速!参勤交代

今年(2014年)見た映画の中ではブッチギリでお薦めの作品。
まだ観られる地域の方、映画館でぜひぜひっ!

8日もかかる江戸からの参勤交代を終えて、やっと故郷、湯長谷〈ゆながや〉藩に帰ってきた藩主たち。これで少しはノンビリできる…と思った矢先に、まさかの参内命令が!

どうやら、金山発見の誤報を真に受けた御庭番が幕府要人に注進したらしく、5日以内に参内して申し開きをしなければ、藩はお取りつぶしの危機に。

しかし、弱小藩ゆえ、ようやく終えたばかりの参勤交代で蔵は空っぽ、時間も足りない。

ほとほと困り果てた藩士たちの前に、怪しげな忍びの者が現れ、自分が山道を案内すれば5日で江戸までたどり着けると言い出す。そして知恵者の家老、相馬(そうま)がそろばんを弾き直し、たった7人で立派な大名行列に見せかける奇策をひねり出す…。

中国の時代劇を見たばかりのところで、これも久しぶりに日本の時代劇を見ました。コメディですが、セットや衣装は本格派。きらびやかではないものの、素材感が本物っぽいしつらえは、さすが松竹映画。

前半は軽〜い感じで始まるものの、中盤からの殺陣も本格的。特に藩主・内藤政醇を演じた佐々木蔵之介の居合のシーンはカッコいいのなんのって…。所作や発声も武士らしくピタッと決まっていました。

家老の相馬はじめ、藩士たちも愛すべき人物ぞろい。せりふがお国言葉なのも良いですね。アイドルグループからの出演者もいたそうですが、あまりにも良い具合に馴染んでいて、言われなきゃ分かりませんでした。

出てくる地名が高萩、土浦、取手…とJR常磐線沿線の大きな駅名と同じなんですが、昔からの宿場町だったとは知らなかったです。

湯長谷藩は、現在でいえば福島県いわき市にあたるとのこと。弱小藩が見せる意地と郷土愛、現代へのメッセージも発信しつつも、さりげない程度に留めている脚本の匙かげんも良いですね。

公式HPを見ると、(残念ながら7月中旬までだったようですが)日本語字幕のついた上映もあったんですね。とても良質のエンターテイメントなので(忍者も大量に投入してますし)、ぜひ海外でも広く上映して欲しい映画です。

公式HPはこちら

角川シネマ新宿2で観ました。
スクリーンが高い位置にあるので、どの席もあまり見やすくありません。
強いていえばD列5あたりか…。段差がない映画館って見づらいな…。

そのほかの映画に関するエントリーは→こちらから、
フェイバリット映画100のリストは→こちら です。

posted by 銀の匙 at 23:38| Comment(2) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月07日

蘭陵王(テレビドラマ4/龍虎相搏編)

蘭陵王関連の記事も、はや5本目。

(ここまでの記事は、(史実編)(有話即長編)(重箱四隅編)(千言万語編)となっております。)

このドラマ、見返すといくらでも小ネタが拾えそう(またの名を、突っ込みどころ満載という)

うっかりか、はたまたあまり気にしてないのか、背景に駐車場だの、扇風機だのが映り込んでたりします。
これなんか↓公式FBのアルバムにある、悲愴なシーンのスチルなんですけど、後ろが駐車場だし。
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(公式FBはこちら。もちろんネタバレありです。https://www.facebook.com/Lanlingwang2013

ま、↑は撮影風景を撮ったと強弁もできましょうが、本放送でも大小さまざまなネタを提供してくれており(日本だったら放送事故クラス?)、NG番組の恰好の餌食になっております。

このシーン、DVD見てたら絶対気づくはず。↓
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ヒロインの楊雪舞(大人)が登場する、最初のシーンなんですけど…。

超冷静な語り口でdisっているのが面白すぎなので、続きは↓でご覧ください。字幕がついてるので、中国語がわからなくても、たぶん楽しめると思います。

https://www.youtube.com/watch?v=os9ktJ4nuj8

(追記:現時点では↑はネタバレになるためご紹介しませんが、全部のシーンが登場した回以降の記事で解説する予定です→解説しました。ご覧になりたい方は第16話→こちらをどうぞ)

このドラマ、NGネタからトリビアネタまで、あらゆるネタが満載なので、いっそ1話ずつ記事を書こうかとすら思ったけど、そんなことしてたら永遠に終わらなくなりそう。

ということで、そろそろストーリーの話に入ってまとめて行きたいと思います。
すいません、毎度、大した内容もないのに引っ張りまして。

↓以下、途中の36話までの内容に、若干触れている箇所があります。ご注意ください。
*未見でネタバレNG(と言っても全部のネタバレではないですが…)の方は、直接第1話編へどうぞ。

さて。

この話は戦乱の世が舞台なので、第10話までの導入部分は危機また危機の連続。それをどうやって乗り切るかが、各話の山場になっています。

多勢を相手にどうやって戦うか。
敵陣に人質を取られたけど、どうやって救い出すか。
明らかに敵のスパイとおぼしき人物に、どうやって自ら尻尾を出させるか。
敵方にしかない毒矢の解毒薬を、どうやって手に入れるのか。
(私が蘭陵王なら絶対飲みたくないけど、あの解毒薬。
 知らぬが仏とは、まさにこの事)

たった500騎で、どうやって10万の敵陣を突破するか…。

最後のは第9話に出てくる「邙山〈ぼうざん〉の戦い」(「邙山の戦い」については、詳しくは、第9話からの記事をご覧ください。→こちら)なんですけど、史書(の蘭陵王の伝記の箇所)には味方の陣にたどり着いた後のことしか書いてないので、具体的にどうやって敵の囲みを突破したかは分からないし、そもそも数が圧倒的に違うのに、こんな多勢に無勢で、なぜ勝てたんだろう....と誰しも不思議に思いますよね。

ドラマだとそこは、
・無人トロイの木馬(?)策、
・地形を利用した陽動策
で前進して、
・功を焦って出陣した周帝・宇文邕〈うぶん よう〉と、彼に軍功を立てさせまいとする大冢宰〈だいちょうさい〉・宇文護〈うぶん ご〉との内紛を利用した「離間(りかん)の策」
を用いて、ほとんど戦わずして勝つわけね。

敵国・斉の重要拠点、洛陽城を目前に見ながら、
宇文護の牽制で兵を引かざるを得なかった悲運の皇帝・宇文邕。

ただでさえ体調悪かったところに、「私は良い人なんです!」と妙な自己紹介をしてくる危なそうな女(楊雪舞)に大八車に乗せられて市中を引き回されたり、
おとなしく捕まってあげてるというのに、問答無用で斬りかかってくる嫉妬に狂った男(蘭陵王)にトラと戦わされたり(勝ったけどね〜♪(だいたいなんでトラが陣内にいるのよ。間違って逃げたらどうするつもり)

ほとんど死ぬ目に遭って突厥〈とっけつ〉から援軍を借りてきた彼としては、さぞや悔しかったことでしょう。

しかも借り先はお舅さん(アシナ皇后のパパ)だった訳だから、面目丸つぶれなんてもんじゃ済まないことでしょうよ(しかもまだ全話の4分の1の時点だっつーのにあらゆる意味で負け犬の烙印押されてカワイそうな人…)。

それでもアシナ皇后は賢明で夫に忠実な人だから、取り乱したりはしない。
テレビドラマでは独特の存在感を示してますが、史実でも、
「皇后は容貌が麗しいうえに、物腰が折り目正しく、高祖(宇文邕)は深く彼女を敬愛していた」とされております。

そんな、皇后の鑑のような彼女でさえ耐えられない、三角関係の恐ろしさよ。

前半の奇計知略を巡らすお話が、お話らしくて面白いな〜と思っていたので、ラブ・ストーリーの方は正直、どうでも良かったんだけど、このドラマのキモはむしろそっち。女の戦いは、スケールこそ小さいけど、権謀術数の面では遙かに高度ですからね…。

それに、1回目に見たときはいかにも少女マンガチックな展開だなぁと流してしまった部分も、見返してみると、なかなか奥が深い(←私が気づかなかっただけですが)。てことで、以下はラブ・ストーリーの中身を見てみましょう(ヒマ人にお付き合いいただいてすみません)

さて、このドラマには大きく2つの三角関係が絡んでいます。1つは蘭陵王を巡ってのもので、もう1つはヒロイン、楊雪舞を巡ってのもの。

後者の方がお話が簡単なので、こちらを先に見てみましょう。

表だって雪舞を取り合っているのは、斉の“戰神”(軍神)・蘭陵王と、周の皇帝・宇文邕ですが、それに加えてもう1人、庶民代表の韓暁冬〈かんきょうとう〉という、大事な登場人物がいます。演じているのは上海の俳優さん、魏千翔(ウェイ・チェンシャン)。
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最初は、「高四郎」の忘れ物を届けに町までやってきた田舎娘・楊雪舞を騙して女郎屋に売り飛ばし、小銭を稼いだ男ですが、いちおう良心が咎めていたところに、役目を果たして村に帰ろうとしていた雪舞と、まさかの鉢合わせをしてしまい、過去を反省させられる羽目に(
あの程度のはした金を稼ごうとしたばっかりに…なんてカワイそうな韓暁冬
)。

それ以降は、自分の身さえ危ういような場面で、何度も雪舞を助けています。

それなのに、いつでも自分の分をわきまえていて、雪舞に負担をかけるようなことは、一切言ったりやったりしない。

楊雪舞の婚礼の日(第19話)には、参列者の中に並んで、
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こんな顔しているのが、ぐっと来ますね…。

(そういえば、婚礼の参列者の中に楊士深がいなかったように思うんですが、気のせいかしら?それとも、婚礼で皆出払ってしまった壺口関を独り寂しく守っていたんでしょうか。)

吼えたり泣いたり忙しい登場人物の中で、常に安定していて目立たない彼の存在は、大変貴重。

彼には、彼自身の役柄に加え、庶民の代表として、そしてもう1つ、お話の構造上、ヒロインの合わせ鏡という非常に重要な役割を担っています(これについては、最終話の記事で書く予定)。

それに暁冬は本当に彼女を助けているんですけど、楊雪舞は毎度、蘭陵王を助けているというより、彼女が干渉したせいでさらに危険なことになっているような…

ま、楊雪舞本人としてはすごーくたまに殊勝にも、韓暁冬的であるべきだった、自分の使命を思い出すこともあったみたいでしたけど、かなりときどき忘れちゃうのはやはり、もう片側の当事者である、この御方のせいでしょう。

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この人の勘はまさに野生動物並み。さすが斉の“戰神”(軍神)と呼ばれるだけのことはある。

出会って数時間もたたないうちに、楊雪舞の弱みは「困った人を放っておけない」ということだとガッチリ感知した模様で、以降、楊雪舞におねだりのオンパレード。

そのたびに視聴者としてはツッコミを入れたくなるのであります。

馬がケガしたんで治して欲しい←ちょっと四爺、その頼みを聞いたら死んでご先祖に詫びを入れなきゃいけないんですけど?

あんたの刺繍した帯をください←雪舞のおばあ様激怒蘭陵王より怖い

仮面を人ん家に忘れていく届けろってこと?!(楊雪舞のおばあ様に、何も持っていくな、何も置いていくなと厳しく申し渡されたにも関わらず、置き忘れとはどういう了見なのでしょうか。しかも、どう見ても、追っかけてきた雪舞が取り出すまで、失くしたってことに気が付いていないみたいだし…ひょっとして、縁日のお面みたいにどこででも買えたりしてね〔敵の将軍・尉遅迥〈うっち けい〉も同じの持ってましたよね〕

義兄弟を助けるんで、花嫁に化けて、一緒に来てもらいたい←作戦が終わったら、ちゃんと村まで送り届けるって約束してませんでしたっけ? 用が済んだら戦闘地帯に女の子を(ってタマではないけど)独りで馬に乗せて放り出すって、どういうこと?(ま、この約束破りは高くつきましたよね四爺)

←言っときますけど宇文邕は第15話で雪舞を連れ去周までお招きした際に、“朕親自送回齊國”(姪を看病してくれた後には)朕みずから斉まで送り届けようって約束をちゃ〜んと守って、頼んでないのに付いてきたきたもんね。
←でもその後の“一言九鼎會派人通知蘭陵王”って約束の方はさっくり破りましたけど。鼎の軽重を問われたら「軽い」方らしいわね…。

7日間の猶予をやるから村中の疫病を治しとけ←とは言わなかったけど実質そういう命令なのでは?

敵方にしか解毒剤がない矢毒を、何とかしてくれ←なんつームチャぶり…←確かに雪舞のせいで、蘭陵王は毒矢に当たったのですが、元はと言えば、女の子を送らずに独りで帰したのが間違いだったのでは…←それで、雪舞が死ぬ思いで解毒薬を手に入れてくると、蘭陵王は「敵の陣地へ乗り込んで、同じ毒まで飲んで助けてくれるなんて…」と感激してますけど、蘭陵王・高長恭公子、あなたが何とかしろって頼んだんじゃないですか

・それで「これ以上居残ってると、別れられなくなるから村に帰る」とゴネた楊雪舞に、自分の側に留まって欲しいとおねだりするのですが、トドメの一言がこれ。
如果今天讓你走了,本王定會相思成疾,終身遺憾
(もしも今あなたを手放したら、思い余って病に倒れ、一生後悔することになるだろう)

「人を見殺しにできない」がモットーの楊雪舞は不承不承、おばあ様が占いで予言した、「蘭陵王の運命のお相手」が現れるまでは残っといてあげる、と約束する。
(蘭陵王もずいぶん古典的なこと言うのねって、思ったけど、古代の人だから当たり前か…あぁ、いぇ、しかし、あとで書きますが、蘭陵王のこんな脅しのようなセリフ、あまり「らしくない」ですね)

雪舞にしてみれば悩んだ末の選択、というのは良く分かりますが、観てる側としては正直、いささか面倒くさい女だと思わざるを得ない(そして、これが後々エスカレートするだろう、という予想の通りに展開するのがまた何とも)。

とにかく、“國色天香”(傾国の美女…って自分で言うか?)の魅力か、相手が逃げるとなぜか無性に追いかけたくなるという『ルールズ』(この本)の法則が功を奏したのか、蘭陵王は楊雪舞を正妃として迎えることになります。

第19話の結婚式では、蘭陵王はとにかく嬉しそう。こんなに嬉しそうな新郎、見たことあります?そして、このカップルの仲むつまじい様子は大変微笑ましく、可愛らしい。

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はいはい、分かりました。(またまた、おかずを取ってあげてるシーン)
(おかずを作ったのは蘭陵王ですけどね

でも、実はこの2人、仲良しなシーンはいくらもないんですね(全部足しても30分くらいなのでは…?)。

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↑これは公式FB掲載のスチル。この“超絕相配”(超お似合い)のシーン、視聴者からの、

好了~誰幫我來在右下角打上"全劇終"
(わかったから、とにかく誰か右下にエンドマーク入れてよ〜)

ってコメントが、全くもってその通り。ここで話が終われば、どんなにか良かったでしょう。
運命の第36話
雪舞が手に持ってる「柳」(“留”=自分の元に留まってくれる、という言葉と同音だと、逆の(雪舞を引き留める)立場だったときに四爺が説明していましたね)の枝が泣けますな…。

全46話もあるっていうのに、残念すぎる、この成り行き。でも、ハッキリ言ってこれは雪舞が悪いのよ。そりゃ、いつまでも奥さんに信用されなかったら、旦那さんとしては涙目にもなるし(まさか蘭陵王が泣くとは思わなかったのでちと驚いたけど)、家に帰りたくもなくなるでしょうよ…。

だいたいあなた、おばあ様の予言を信じているなら、「1年しないうちに四爺は死ぬ」という予言も信じてるはず。だったらもうちょい、仲よくしても良いんじゃないの…?

まあ、この二人は似た者同士で、余計なことを知らせて相手に負担をかけたり、迷惑かけまいと思う、奥ゆかしいところがあるのですが、それは実質、相手を本当の意味では信頼してないということになっちゃうんですよね。

一方の四爺はといえば、誰かが自分のために怪我をしたり、虐げられたりすると、その恩に報いなければと思う「いただきものはお返ししないと気が済まない奥さま」スイッチが入るらしく、その「奥さまスイッチ」を、また別の野生動物(鄭児)に利用されてしまう訳ですね。

その利用されっぷりたるや、これで一国の将が務まるのかと呆れるほど。放映当時、リアルタイムで出演者が番宣のtwitter書いたりしているんですけれども、

“本来就笨,就这点智商怎么在宫里混啊”
(頭、大丈夫? こんなんで宮廷でやっていけるの?)

とご本人役のウィリアム・フォンにまで心配されてる始末。

それもこれも、冷静なのかと思えば肝心なところで激高しやすい蘭陵王の性格に問題があるんじゃないかと愚考するのですが、いえ、もっといえば脚本のせいなのですが(いくらなんでも、ここまでやらなくても良いのに…いちおう主人公なんだからさ)、この時点(第21話あたり)で相当程度の視聴者が主人公を見放し、寝返ったものと思われます。

この方に...。

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周の皇帝・宇文邕(うぶん よう)!
(おっと、この人も四男坊だから“四爺”なのでした)

虎も組み伏せ、石造りのテーブル(ですよね?)を叩き割る男!

覇者という割には、どこか寂しそうな、悲しそうな表情をしているのね...
と思いましたら、DVDのおまけインタビューを見ると、ご本人様の素の表情も割とそういう感じなんですね。歌しか聴いたことなかったから知らなかったわ。

演じるダニエル・チャン(陳曉東)は、今さらいうまでもない、麗しいファルセットで聴かせる香港の大歌手(ちなみに、今回の劇中歌も歌ってます。第26話などで皇帝陛下の美声を聴くことができますよ)。演技は、(というかビジュアルも)初めて見ましたが、すごく上手くてビックリ。

「邙山(ぼうざん)の戦い」(第9〜10話)までは、主人公・蘭陵王の敵国・周の皇帝ということで敵役。しかしながら、あからさまな悪人は出てこない(強いて言えば斉の佞臣・祖挺(そてい)くらいかしら...?)のがこのドラマの面白いところ。

登場してしばらくは、薄気味悪いけど実はなかなかの好青年なのでは?と思わせる役どころだし、
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またまた、おかずを取ってあげてるシーン(しかも、楊雪舞からのみならず、周り中の人からおかずを提供されている超人気者)

楊雪舞はドラマの中で三回、周に滞在することになるのですが、雪舞と一緒に周の宮廷にいるうちに、見てるこっちも、だんだん状況を「周目線」で捉えはじめてしまうのであります。そうなると、戦さには強いけど内政メチャクチャな斉に、だんだん愛想が尽きてくる…。

でもって、太平の世を願う雪舞に、自分が天下を統一すれば、世の中は平和になるのだとマインドコントロール作戦で畳み掛けてくるので、彼女より先に、観てるこっちが、確かにそーね、となぜか説得されている。

そして視聴者が大量に、斉の民とともに皇帝陛下に寝返ってしまう…という脚本なのですね。

加えてこの皇帝陛下、きわめて太っ腹。

「恩返しモード」発動中につき、雪舞を馬賊にさらわれるという大失態をやらかした蘭陵王に代わり、宇文邕は雪舞を取り戻すため、皇帝しか持っていない宝玉、火龍夜明珠を惜しげもなく差し出します(第26話)。

夜明珠といえば、『資治通鑑』(しじつがん)のエピソードを思い出します。そこでは「夜光珠」は、夜になると輝き、前後10台の車を明るく照らすことができる…という国王自慢のお宝なのです。

つまり日本で言えば、「阿修羅像」とか「奈良の大仏」とかを、盗賊に身請け料として、ぽ〜んと気前よく上げちゃう、ということですね(阿修羅像はともかく、大仏は要らんと思うが)。

しかも、馬賊の要求に応え、自らを傷つけることも厭わない。
つね日頃、臣下や皇后が、龍体にもしものことがあってはと、下へも置かない扱いをしてるというのに。

なんたる男気!

もうこの時点で、完全に宇文邕の勝ちだと思いますけど?

残念ながら雪舞は、恩義を重んじる蘭陵王とは違って、この大恩に報いようという気にはならなかったようですが。

あぁ、まあ宇文邕にはすでに、アシナ皇后という賢夫人がいるんですけれども、正妃は政略結婚の道具ですから、好き嫌いっていう次元の話じゃないですもんね…。

だいたい、2度目に周に連れ去られ乞われて赴いたとき(第15話〜17話)、宇文邕は楊雪舞が斉でどういう身分なんだか、今ひとつ把握してないような印象を受けるのは私だけでしょうか。

皇帝陛下自らかどわかしお願いに参上した際、楊雪舞にはっきり、「私は斉の王妃なの」と言われてる上に、自分でも、「周の皇帝が殺されたとき、隣に斉の王妃がいたと分かったら」大変なことになる、と脅してる。

その割には、蘭陵王と共に周の宮廷を逃げ出した楊雪舞が、周に残ってくれと懇願する宇文邕に「この人(蘭陵王)と結婚するんだからダメ」みたいなこと言うとショックを受けてるようだけど、なんで?(やっぱり結婚はやめます、って言うと思ったのかしら…?? それとも何か私が見落としてるのでしょうか??)

しかも国宝まで投げ打って(いつも国宝持ち歩いてるのかな、この人?)、雪舞を救ったというのに、第27話では「自らを傷つけてまで雪舞が逃げるチャンスを作った」宇文邕をガン無視して、蘭陵王に駆け寄った雪舞を見た後、蘭陵王に向かって“她已經在我和你之間做出了選擇(彼女はすでに、私とお前のどちらを選ぶかを決めたということだ)と勝手な事を言っていますが、選ぶ候補にすらなったことがないというのは、認めたくないんでしょうか。ないんでしょうね。

こういうところ(プラス、いつも宇文神挙に楊雪舞を見張ってるようの動向を探るように言いつけてるし)、鄭児同様のストーカー気質で困ったもんです。

でも、蘭陵王と比べてしまうと(比べたとたん、蘭陵王には壁ドン(笑)されてしまうでしょうけど)、やはり宇文邕は皇帝、器が違うって思ってしまいます。

蘭陵王は、五爺と一緒に町に出て、お屋敷で待つ雪舞に何か買って帰ろう、と思っている。それはそれで優しいとは思いますけど、宇文邕の方はどうかといえば、姪の病気を治してくれた御礼にと、書庫にある、すでに散逸したと思われている稀覯本(竹簡ですが)を惜しげもなくくれるという。しかも《考工記》(いまでいうと、日本工業規格マニュアルみたいなものかしら?)とか物騒な事に使いそうな資料をよくもまあ…。

何かつまんない比較のようですが、結構この差は大きいんじゃないでしょうか。

楊雪舞は結婚したとたんに、“四艘(四爺の嫁)、“夫人(奥さま)と呼ばれる身分になり、やってる事と言えば、お屋敷をかき回しにきた鄭児に対抗するために手料理を作ったり、皇太后のお世話をしたり。蘭陵王の公務には表立って口をはさまず、いわゆる「内助の功」に徹しようとする。

まさしく彼女のセリフの通り、“嫁雞隨雞,嫁王也就只能當王妃了”(鶏に嫁げば鶏に従い、王に嫁げば王妃になるしかないわ)ということです。
(後ろの句は、ホントは“嫁狗隨狗(犬に嫁げば犬に従う)なんですけど)

これは現代ドラマじゃないし、本人が良いんだから、これで良いんでしょうが、「天女を得た者は天下を得る」とまで言われてるのに、これでは全く、蘭陵王の言うとおり“大才小用”(正しい方の意味の役不足)ってやつですよね。

加えて彼女には、強烈な「お世継ぎプレッシャー」がかかってくる。とてもほのぼのと描写されてるから、スルーしてしまいそうになりますが、婚礼の場から始まって、皇太后から大将軍、大師までもが言ってくる。

この段階で、雪舞自身は、大切にされていると思って喜んでるみたいだけど、その裏には、第3話で図らずも四爺が婚礼を装う計略に使った通り、「世継ぎを得られなければ、側室を娶らなければいけない」という暗黙の了解がある。

しかも、側室を娶るというのは雪舞が提案しなくちゃいけないんですよ、昔の上流階級の道徳観から言えば。宮中のしきたりも知らない雪舞には、まだまだ新婚のこの段階で及びもつかないでしょうが、皆、そんなことを雪舞にさせたくないので、何とか盛り上げようとするわけね。

脚本はあからさまには描写してませんけど、深読みすれば、たぶんそういうことだと思います。こういうことを視聴者に意識・無意識に気づかせるのは、エンタメ・ラブ史劇としては珍しい展開のような気がする。

一方の宇文邕は(もちろん、周には他に正妃もいることだし、斉にいるときとは雪舞の立場は全然違うのですが)、雪舞を必ず国政の場に出す。

最初こそ「天女」の言い伝えを利用しようとしていたのかも知れませんが、彼は雪舞の能力の方にも、全幅の信頼を置いている。だから三度目に周に滞在したとき(第39〜41話)は、朝廷で発言させるし、献策を求める。

皇后や妃を朝政に参加させることは皇帝と言えども、もちろんマズい(多くの王朝はこれで滅んでるし)のですが、楊雪舞には「天女」という身分があり、実績もあるので、むしろ周国は賢者を厚遇していると見てもらえるわけです。

アシナ皇后としては、当然、心穏やかでは居られません。ついに楊雪舞を宮廷から追ってしまう。すると、宇文邕は、なんと雪舞を郊外に住まわせて、その場の経営を任せるようにするんですね。こういう役目をすることが彼女を悲しみから救うと知っている。

かつて、楊雪舞の故郷の村をそのまま周に再建したい…と言った通りのことをしてみせる。

こういう処遇は蘭陵王のような「王侯」クラスの人にはできないこと。さすがは皇帝陛下、格が違います。

だから、聖徳太子が「日出処の天子、書を日没するところの天子へ致す」という文書を、隋の煬帝(ようだい。覚えてますか?第1話で出た、あの方の息子)に送りつけたときに、「王」クラスの分際で生意気な…と思われたのは想像に難くありません。足利義満はおとなしく、「日本国王」って書いてるもんね。

…またまた話が逸れてしまいましたが、とにかく宇文邕には皇帝の器量がある。蘭陵王にそれを求めるのは、どだい、無理な話なんですね…。

だけど、これほどの差がありながら、女の子がなびくかと言えば、そうでもないのが世の常。この脚本書いた人は、よく分かってる(脚本家は、絶対、女の人だと思うんですけど…)。

楊雪舞が本当に望んでいたことは何なのか、本人さえよく分かってないのではと思いますが、彼女は「士」ではないので、自分を高く買ってくれた方の人に忠誠を尽くすという考えは当然ありえません。

情というのは条件では決まらない不思議なもの。

それに、蘭陵王にだって、客観的に見て、宇文邕が持っていない美質は当然ある。

その中でもいちばん優れているのが“體貼”(にはピッタリした訳語が思いつきませんが、思いやりの心から出る優しさ)で、これは一朝一夕には真似できません。

例の蘭陵王の、「あなたを手放したら病気になる」発言(第10話)の直前に、雪舞は自分のおばあ様の占いはよく当たると説明して、予言ではそのうち、正妃となるはずの運命の女性が現れるのだから、自分のことは諦めるように蘭陵王(と自分自身)を説得しにかかります。

そのとき、彼女は、おばあ様が過去も未来も言い当てることができると信じるか、と聞くと、蘭陵王は(「信じる」という意味で)返事をします。雪舞は畳み掛けて、それでは、2人は一緒になれない運命だというおばあ様の予言を信じるでしょう?と蘭陵王に聞きます。

彼は当然、そんなこと信じていないと思う。

だから、この問いに「頷く」わけね。

なぜなら、「君子に二言はない」というのが彼の信条だから、ここで「信じる」と口に出せば、信条に違反することになる。その一方で、予言なんて信じない、と頭から否定してかかる事も絶対しない。

それは、楊雪舞が予言の威力と自分のおばあ様を信じているからです。ここで、そんなもの信じないという態度をとれば、彼女は傷つくでしょう。だから、彼女のロジックに沿って、自分自身の予言はこうだ、と言って、例の発言をするんですね。彼にとっては譲れない局面であっても、相手が傷つかないように気を遣う。

楊雪舞が一番初めに(周の皇帝とは知らずに)宇文邕をかばったときもそうでした。

これが“體貼”な態度であり、とっさにそういう態度がとれるという点で(ウィリアム・フォンにIQの程度を疑われているにも関わらず・笑)、とても賢い人だという印象を与える。

翻って宇文邕は、「邙山の戦いでは蘭陵王が勝利する、(おばあ様の)占いはよく当たるのよ」という雪舞の発言に対し、“佛擋殺佛,神擋殺神”(仏が邪魔をするなら仏を殺し、神が邪魔をするなら神を殺す)、自分は予言なんて信じない、と言い放ちます。

これは皇帝として、当然あるべき態度(この時点では敵役扱いだったので、しょうがないとも言えるけど)ですが、文字通り“霸道(横暴)な印象しか与えない。

蘭陵王より先に知り合ってたら、雪舞は自分を選んでいたはずだ...と思っている宇文邕は、まだまだね。

と、こちらの三角関係には落ちがついた(?)のですが、この話にはもう一つ、非常に厄介な三角関係がある。

それは恐らく最終回にも関係してくるので、ネタバレ以外の何ものでもないですから、また改めて(今度こそ最後です)書きたいと思います。“就這一次!我求求你嘛 拜託你啦...(あと一回だけ!どうかお願いよ…)

追記:と、思っておりましたら、なぜか続きのリクエストをいただいたため、前言はあっさり反故にいたしまして、ドラマを1話ずつ見ながら、ツッコんだり、中国語のセリフを楽しんだり、という記事を書くことにいたしました。ってな訳で、第1話編へつづく。
posted by 銀の匙 at 11:22| Comment(6) | TrackBack(0) | 蘭陵王(テレビドラマ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする