2016年12月03日

私の少女時代 Our Times(我的少女時代)〜表記以降、ネタバレあり

台湾で2015年にナンバー・ワンヒットを記録した作品、しかも《蘭陵王》のプロデューサー・陳玉珊(フランキー・チェン)女史の初監督作品ということで、先入観バリバリで鑑賞してまいりました。

内容は、言わずと知れたド直球青春恋愛ドラマで、少女マンガがそのまま三次元になったよう。

林真心(リン・ヂェンシン)は、一流の大学を出てやりたい仕事についてステキな男性と結婚する、という夢とは裏腹に、さえない男友達を持ち、さえない職業生活を送っています。彼女はふと、不美人な平凡女子だった自分の少女時代を思い出します。

高校生の頃のこと、彼女は不幸の手紙を受けとり、それを憧れの人気者男子・欧陽非凡(オウヤン・フェイファン)に因縁をつけた不良の徐太宇(シュイ・タイユィ)に転送したところ、差出人がバレてしまい、パシリとしてこき使われる羽目になる。

しかし真心は、徐が美少女・陶敏敏(タオ・ミンミン)に告白して速攻ふられたのを目の当たりにして、彼のため、ひいては陶と欧陽を引き離すため、徐と失恋同盟を組むと言い出す。そのうち、ただのワルだと思っていた徐の意外な面を知るにつけ、だんだんと彼に惹かれていくのだが…という、要するに王道の恋愛ストーリー。

さすがに、転校してきたヒロインがパンをかじりながら登校すると、出会いがしらに男子生徒とぶつかって…というお約束の展開はなかったものの、それ以外はだいたい予想つくんじゃないかと思います(笑)

でも、眼鏡ドジっ娘のヒロイン、林真心を演じたビビアン・ソンがとても上手くて、こういう真っすぐで一生懸命な青春もあるよね、きっと…とつい引き込まれるあたり、さすがにヒットメーカーの技。

少女マンガ的な作品にありがちな傾向として、女子の心理は凄くきちんとつかんでいると思うのですが、その正確さに比べると、男子の方の描写は、あり得なくね?って感じなんだけど、ま、いっか。男子の皆さん、いかがだったでしょうか…?

台湾最難関の大学を目指す進学校ってこんなものなの…?とか、受験2か月前でこの余裕は何?とか(あ、優秀だから、これでいいのか)、細かいツッコミはさておき、この手の話で上映時間2時間越えは、自分的には結構辛いものもありました。

でも、お話のほとんどが台湾の90年代の回想シーンで、小道具も凝っていたし、学校生活やお店の作り、携帯やパソコンのない日常、「不幸の手紙」やアイドル全盛期などの時代的な感覚が、同時代かそのちょっと前の日本と似ているところがあり、そういったディテールは、恋愛モノが苦手な自分にも大変興味深かったです。

挿入歌も、当時流行した、グラスホッパーの《失恋陣線連盟》とか、鳳飛飛の《追夢人》、アンディ・ラウの《忘情水》なんかが上手く使われていましたね。

たま〜に、セリフが21世紀風のことがあるのが、笑っちゃうけど…(“超”とか)。

それにあなた、欧陽非凡(オウヤン・フェイファン)! すっごいキラキラネームな気がするけど、よくある名前なの? それとも、欧陽菲菲 (オウヤン・フェイフェイ)の親戚筋? 

とまあ、ツッコミも含めていろいろ楽しめるし、後味が爽やかな映画なので、機会があればどうぞご覧になってみてください。

とりあえず私は、アンディ・ラウ(劉徳華)の偉大さを改めて思い知らされました。まだ現役アイドルだなんて、華仔、いったい今年、歳、いくつ…。?

お話の細かいところはネタバレになるので、OKな方は以下をどうぞ。

新宿武蔵野館で観ました。
ずいぶん綺麗に、シネコン風(?)になってたけど、改装したのでしょうか。
せっかくだから化粧室の個室も増やしたらよかったのに…。でも、係の人は親切だし、小さい方のスクリーンも見やすいので、その他は文句なしです。

以下、ストーリーの内容に触れています。








いくつか、元の中国語が分かると面白い箇所があったので書いておくと、不良の徐太宇に説教を噛ましていたときに引き合いに出していたのが“周処”の話。

周処は三国時代の人で、地元の連中にトラやミズチと並んで「三害」認定されたワルだったのを悔い改め、最後は将軍の位を贈られ、三国一のイケメン・潘岳(はんがく)に追悼詩まで詠んでもらうほど出世しました。

中国では今でも、不良に説教するときは、映画同様、周処の話を持ち出すそうで、ワルからは一番嫌われている歴史上の人物だそうです(笑)

しかも“処”の字には発音が二つあり、ワルは必ず読み方を間違えて説教されるっていう、これまた定番のムカつくおまけつき。

それから、徐太宇が初めて林真心と出かけるシーン、メイクに気合いが入りすぎた真心を見て、「村祭りか?」というセリフがありますが、中国語では“廟会”(ミャオホイ)と言っていて、要は日本でいう、神社やお寺の縁日のことです。

でも、「縁日かよ?」って訳しても面白くないですよね…「村祭り」は上手いなっ、って思いました。

最後の、コンサートのタイトルのダブルミーニングもちょっと分かりづらかったかも知れませんね。

アンディ・ラウのコンサートのタイトルは徐太宇が考えたことになっていて、《真心愛妳》(心からあなたを愛しています)と、“真心,愛妳”([林]真心、[私は]あなたを愛してる)の意味が込められてるんですね。

90年代の風俗習慣を知るという意味では面白く観たものの、正直、映画というよりはテレビドラマっぽい作りだなあとは思いましたが、それだけに一層、フランキー・チェンの手腕には脱帽せざるを得ません。

この映画は、そもそもかなり話も単純明快だと思うのに、さらに回顧シーンの終わりには、欧陽が真心に、彼女が知らなかった徐の行動の真相を解説して聞かせます。

いちいち全部フラッシュバックで再現するのですでにくどい上に、そのときの徐の気持ちも併せて説明するので、興が削がれることおびただしいものがあります。

そもそも、徐の気持ちは回顧シーンでベタに暗示しているわけだし、最後に大人になった二人が会うシーン以降の展開が、高校生のときの徐がどう思っていたかを示しているので、それより前では敢えて説明せず、観客が補って観るように演出するのが普通の映画の定石だと思うのですが、全部セリフにして言わせてしまう。

なんか、コメンタリーつきのDVDを観てるみたい。

しかし、日ごろ映画を観なれない観客に対して、登場人物の気持ちは自分で考えろと投げ出すこれまでの映画のやり方の方が不親切で、新規市場開拓には不適切だったのかも知れません。

さらに映画が終わると、短くない時間のおまけメイキングビデオが付いていて、聖地巡礼に来いと言わんばかり(ちょっと行ってみたくなったけど・笑)、どれが名セリフだったのか、どこが名場面だったのかも、日本語吹き替えによる再現Vでガッチリ解説していただけます。

何なんだこれは…とその場では脱力しましたが、余韻と引き換えに、絶対に観客に分からなかったと言わせない、誤解させない、有無を言わせないサービス精神というかおもてなしの心というか、それを徹底したあたりが、大ヒットの秘密なのかも知れません。

となると、この映画の功労者はやはり、監督なのでしょう。アンディ・ラウという線も、残しときたかったところではあるのですが…。


ぴあ映画生活


posted by 銀の匙 at 04:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする