
監督: 押井守
直近の作品:「イノセンス」
ネタ: 「うる星やつら」に関係あるらしい
イコール: 大作の後はいい加減疲れただろうから、今度はギャグ映画
と勝手に決めつけて渋谷シネクイントへ。30分も前に行ったにもかかわらず、休日だったためか押し寄せる善男善女の列すでに階段2階分以上。ものすごい人気でありました。
並んでるうちに疲れてきましたが、なーに笑って元は取るさ!とまた勝手に決めつけてスクリーンを眺めておりましたところ、待てど暮らせどギャグが出ません。
まったく新しい映像表現とかいうスーパーライヴメーションも、戦後史モノという先入観があったうえ、コラージュが動いてるような唐突なアニメーションにどういう訳か田名網敬一を連想してしまい(色はあんなにサイケじゃなくて渋かったけど)、懐かしいなあという変な感想を抱きつつ見る羽目に。
そして内容はというと、日本の戦後史を象徴するかのごとき立喰師の面々を、時代を追って紹介していくというもの。
とにかく最初っから最後まで、「タイムボカン」の「説明しよう〜」よろしく、山寺宏一さんのナレーションが音の空白を許さぬが如くしゃべりまくります。しかもその内容ときたらほとんどが、遊民だのゴトの本質だの、手垢のついた都市民俗学的用語の羅列と、耳にタコができるほど聞いたことのある蘊蓄ばかり。
ずばり言えば、予算が足りなくなったか製作が間に合わなくなったテレビアニメ番組が、動きの少ないのをナレーションで誤魔化してるという、あれです、あれ。
すっごく真面目で大げさな話にしといて笑わせようって魂胆かしら、と善意(?)に解釈するも、要らん考察はどんどん深まってゆくばかり。
よくもこんなにゴタクを思いついたものだ…と呆れながらも感心してしまい我を忘れてしばらく座っていましたが、もともとセリフの多い映画がキライなので、4人目の立喰師が出てくる頃にはキレかかっており、これは「スワロウテイル」以来10年ぶりに中途退場か、と思ったところへはっとするエピソードが出てきて、また座り直しました。
やはり押井守は天才か…。
全然見当違いかもしれない&ネタばれとなりますので、
それでもOKな方のみ以下をどうぞ。
この作品の中では、敗戦直後からバブル直前くらいまでの世相が、各期に現れる無銭飲食を生業とする「立喰師」の特質によって語られていきます。
海千山千の店主と一騎打ちのすえソバ一杯を勝ち取る一匹オオカミとしてのアウトローたちは、戦後色が消し去られて行くと共に変質してゆきます。
このへんまでは、口先ばかりで大したことはせず、結局は体制順応的だった団塊世代の行動と重ねて、日頃腹に据えかねているだけにムカムカしてしまいました。つまり、それだけよく実情を反映してたということでしょうか。そしてその後の変貌ぶりの描写も見事なものでした。
外食産業が登場するに至って立喰師はテロリストと化し、システム全体を壊しにかかります。管理の隙をついて発注を仕掛け、店を自滅に追い込む…そこにはもはや一匹オオカミの面影はなく、組織の影さえちらついて見えます。その一方では、日本人でありながら無国籍を装う者が現れます。このあたり、アジアバックパッカーを気取った世代にはギックリくる描写ですよね…。
さて、ここまでは映画の世界では実際に起こったことですが、映画の中ですら虚構、というエピソードも登場します。私が思わず座り直したのはこの話で、「(ピーッ・笑)ズニー・ランド」に固執する立喰師が登場します。
一時期、虚構の世界に生きる人の起こした事件が世間を騒がせましたので、そうした人々を表象するエピソードと取れなくもないですが、それにしても異質です。
男は遊園地でフランクフルトをせしめながら、頭はいつも、「(ピーッ)ズニー・ランド」の事を考えています。考えまいとするけれど上手く行かず、他の事が手につかない。
しかし、考えまいとするあまり、本気で、「(ピーッ)ズニー・ランド」と向かいあったことがない。そう指摘されて男は初めて気づきます。そこは夢の国だ。何でもあるが、何もない…。
彼はそんな立喰師に関する小説を書き、母親から電話を貰います。まるでオレオレ詐欺の現場みたいなやりとりが続き、母親は立喰師なんて真似はするなと諭します。息子には返す言葉がない。これは虚構で、読んで喜ぶ人もいるのだと説明しても分かってはもらえない…。
唯一このシーンにはナレーションがなく、素材が剥きだしのままです。
このエピソードは無かったことについて語っているのに一番現実に近いので、クラインの壷を見るように、一番内側のはずがひっくり返って現実と接しているような奇妙な感覚に陥ります。他は全て大上段に歴史を語っているのに、ここだけ押井監督自身に触れたような…でも、先にも書いたように、こういう形で世界と接触している人がクローズアップされたこともあるし、異質なエピソードではないのかも知れない…。
こうしてすっかり押井ワールドに取り込まれてしまったことに気づくとすでにエンディングになっていました。
一体この映画は何だったんでしょう。



立喰師列伝は、すごかったです、
もう一回見ちゃお、
もう一回見るのはいいが、
最初に見たときのおあしは
払っておくれよ…
と思わず亭主側になっちゃいまして失礼。これ、チャイナ編を作って、
お客さん同士戦ってとっととズラかる
というパターンも入れて欲しかったなあ。