「サムサッカー」見に行かない?と誘った相手に
「いいよ、サッカーものは…」
と軽くいなされてしまいました。違うよ。「フーリガン」じゃないってば。
カタカナタイトルは、あまり短いと考えものです…。そういう問題じゃないかな。
ま、それはさておきです。
お話は驚くほど単純。
17歳の高校生ジャスティンは、いい年して親指しゃぶり(サムサッキング)がやめられない男の子。自分でもやめたいとは思っているものの、不安になるとどうしてもこの癖が出てしまいます。
周りの大人たちからアレコレ注意されたあげく、お節介な歯科医に催眠術で癖を押さえこまれ、逃げ場がなくなったジャスティンは情緒不安定に陥り、抗うつ薬を処方される羽目に陥ります。ところが効き目は抜群で、彼はたちまち優等生に変身するのですが…。
「アルジャーノンに花束を」をもっと現実的にしたような話だなあと思いつつ見ておりました。演出はよく言えば直球勝負、悪くいえばヒネリがなくてそのまんまです。
主人公のジャスティンを演じたルー・ブッチは、大きな青い目、陶器のように白い肌でちょっと女の子みたいな男の子。もともとイライジャ・ウッドがキャスティングされていたと聞いていましたが、確かに感じが似てます。うーむ、アメリカ人が考える「頼りなさそう」「一人前の男としては如何なものか」というのはこういうタイプの人なんでしょうか。よくわかんないけど…。
良い子のはずなんだけど、周りに流されっぱなしで、ティーンエイジャー特有の「どう機嫌を取っていいかわからない」微妙な雰囲気を上手く出していました。お父さんが彼に対していう「やっとおまえに慣れたのに」というセリフがまさにドンピシャです。
彼はこの演技で賞を受けたそうなんですが、あまりにも掴みどころがなくて−−というか、同じような時期もあったはずなのに、感情移入が難しくなるほど自分が年とったってことなんでしょうが−−むしろ、彼の両親の気持ちの方が、実感として胸に迫りました。
ティルダ・スウィントン演じるお母さんは、映画俳優に熱を上げてます。息子であるジャスティンは、それを不倫ギリギリに受け止めている。でもお母さんは日常生活のちょっとしたアクセント(just a fun!)だと言い、大げさに言い立てられることにちょっと憤っています。こういうの、わかるなあ…。別に本当に憧れの人とお近づきになりたいとかいう訳じゃないのにねえ…。親指しゃぶりほど人目にはつかないけど、本当は俳優に熱を上げるなんていうのも、傍目から見れば、大人がおおっぴらにやることじゃないですよね。でも生きてる実感というのは、意外にそういうところにあったりもするもので。
彼女は実際に俳優に会うことになるんですが、現実と虚像を混同したりはしません。「無い答えを期待されている」17歳の少年の母親であることの大変さを語って聞かせるだけです。若者が自分で道を見いだして(または見いだせなくて)終わり、という単線の青春映画が多いなか、じゃ大人というのはどういうものかという点を複線で、愚かさも含めて描いているあたりが良かったです。
もう一つ面白かったのは主人公のジャスティンが所属するディベートクラブの描写。最近、日本でも学校でディベートを取り入れるべきだという話を聞きます。ある一つの事柄について、反対、賛成の立場で意見を述べてみよう、という活動らしいんですが、この映画で見る限りでは、アメリカの高校のディベートはそんな生やさしいものじゃなさそうです。この訓練を積んでいけば、言葉一つで黒を白に言いくるめることも簡単にできちゃいそう。
実際、裁判なんかではそういう局面もありそうですが、あまりに言葉で相手を巧みに操れるようになると周りが拒否反応を示すあたり、アメリカでもやっぱり行き過ぎはダメなんだなあと変な感心をしたりしました。
マイク・ミルズ監督
シネマライズ(渋谷)
地下のスクリーンで見ました。こちらは
数日前から座席を予約できます。GH列の10番あたりが
見やすいようです。


