2005年05月05日

コーラス

chorus.jpg

あらゆる楽器の中でも、いちばん優れたものは人間の声−映画を見たあとに改めてそう感じました。

舞台は大戦後、大人も子供も生きていくのに精一杯だったころのフランス。「池の底」と呼ばれる寄宿学校には、身よりのない子や、親が手を焼いて預けられた問題児が集まっていました。そこへ「失敗続きの音楽家くずれ」と自らを語るクレモン・マチュー先生が舎監として赴任してきます。体罰と規則で縛られ心を開かない子供たちと、歌を通して交流しようとするのですが…。

この映画の面白いところは、あくまでも主人公のマチュー先生=大人の立場から視点がブレないところです。生徒たちの心の動きは事細かに描写せず、さらりと流しています。そのため、果たしてこの子たちが本気で先生のことを信じているのかどうか、観客の側もずっと確信がもてないままで、それだけにいっそう、ラスト付近の描写が胸に迫ります。

この映画のもう一つの大切な主役は「歌」です。知っている歌をうたえといわれて、生徒たちが一人ひとり調子っぱずれにうたう歌は、フランスのごく普通の歌を知らない者にとってはとても新鮮です。「3キロ歩いてもうクタクタ」の歌とか「元帥殿」の歌とか「ブルターニュ人」の歌とか…。

そして、コーラスを覚えた彼らの歌声ももちろん素晴らしいものです。ことに、ラモーの「夜」は、歌詞も歌も信じられないほどの美しさでした。

明らかにフィクションの語り口調でありながら、奇妙にリアリティがあるのも、フランス映画らしいと感じました。たとえば、人生の転機となった先生の名前をすぐには思い出せないというあたりとか…。

シネスイッチ銀座
休日に行ったせいか、とにかく混んでました。
posted by 銀の匙 at 00:20| Comment(4) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。
ありがちな話と言えばそれまでですが、よかったです。泣いてしまいました。
映画関係のサイトで、いろんな人の感想を読んだのですが、「子どもたちがなぜコーラスに夢中になったのかがわからない」という感想を読んで、「やってみたらわかるのに」と思いました。
歌というのは生理的快感ですよね。しかも、他の人と一緒になってハーモニーを奏でるということは、それまであまり音楽に親しんでいない人ほど、ほとんど戦慄に近いものを覚えるはずだし、ハマってしまうものです。

フランス映画というのは、子どもが出てくる映画でも、大人の視点で描かれることが、非常に多いような気がします。それが「お子様文化」の日本とは大きな違いかも。だから、フランスのものは、日本の大衆レベルではほんとうの人気をかち得ることができないのでしょう。それ自体は別に悪いことではないのですけれど、フランス関係で飯を食っている人間としては、歯がゆいところです。
Posted by かおる at 2005年05月05日 21:13
こんばんは!
あらすじは「よくある話」なのに(だからこそ、なのか)、忘れがたい映画ですね。

生徒たちを惹きつけることが出来たのは、マチュー先生が音楽の先生だったからというのは大きいでしょうね。同じ芸術でも絵だとなかなかこうは行かないでしょう。他の教科だったらもっと大変だったかも。いつも「静かに」とばかり言われていたのに、思いっきり声を出していいのも、嬉しかったんじゃないかなと思います。皆と揃って何かするってこともなかったでしょうし…。

うーん…。日本で紹介されるフランスの文化って「わかる人がわかればいい」っていうのが多いですからね。ちょっと一段オシャレというか…。大衆レベルで人気がある外国のものというと、アメリカのものくらいしか思いつきません。アメリカは大衆ウケすることに価値を見いだしてますから、ベクトルが全然違いますもんね。日本はわりあい外国の文化を受け入れやすい国だと思いますけど、アメリカ・イギリス文化を除くとそれ以外の外国文化のパイは小さいですよね。
Posted by 銀の匙 at 2005年05月06日 01:02
こんにちは。こちらでははじめまして。

先日、駆け込みで観てまいりました。


声って説得力がありますね。
子供達の声がはりを増し、ハーモニーが厚くなるにつれて、子供達の目が変わってくるところがとても良かったです。とにかくまっすぐで、音だけを見つめているところが、リアルに感じられました。
子供達と周りの先生達の、マチュー先生に対する反応の違いも、双方を際立たせているように感じました。
先生が夢中で作曲しているシーン、コーラスは子供達だけでなくマチュー先生にとっても必要なことだったんだなと思いました。
そして、紙飛行機〜〜(ううう)。
静かに染み入るような映画だったと思います。

実は「池の底」を「地の底」と思い込んでしまってました(汗)。バルログとのバトルと、ホビットダイビングとどっちがいいだろう(←こらこら・笑)。
Posted by kali at 2005年06月14日 12:06
kaliさん、こんばんは!

上映に間に合って良かったですね。きっとDVDなんかも出るでしょうけど、とても映画らしい映画なので、劇場で見たい作品だと思います。

>コーラスは子供達だけでなくマチュー先生にとっても必要なことだったんだなと思いました。

おっしゃる通りです。一番コーラスが必要だったのはマチュー先生だったのかも…。(数学の先生にも…(笑))

紙飛行機のシーン、よかったですよね。
先生が全部を拾い集めたりしないのもいいなあと思いました。逆に生徒の方では、音楽家になるころには人生の転機を与えてくれた先生の名前なんて忘れてしまうんですよね…(しみじみ)

地底でのバトル、杖と火のムチの他、バルログとの歌合戦というのも良かったかも知れませんね。旅の仲間代表はやっぱりピピンかな。後の人はちょっと心もとないです…。
Posted by 銀の匙 at 2005年06月15日 01:42
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