2014年03月16日

窓花 中国の切り紙

s-窓花展.jpg
三軒茶屋(世田谷区)の駅前にど〜んとそびえるキャロット・タワー。
その中に、企画展を行うスペースがあります。
今回は中国の「窓花」(窓を飾る切り紙)の素晴らしい展示をやっていました。
(以下、写真はすべて会場のもの)

s-IMG_1106.jpg
「窓花」は農家の人がハサミだけで作る、素朴な室内装飾です。中国の北、黄土高原の民家である、
ヤオトン(窖洞)を飾るために作られています。ということで、展示に関連して、ヤオトン造りの過程を記録した映画が上映されるというので、行ってみました。

ヤオトンというのは、中国の黄土高原地帯に昔からある伝統的な住居のことなんですが、
これがリアルにホビット村なんだな。
s-IMG_1117.jpg
黄土高原はめったに雨が降らない乾いた土地なので、地面に横穴を開けて、そこに人が住んでるんです。住民たちによると、冬は暖かく、夏は涼しくて、エアコン要らずの大変エコな住居らしい(その割に、中にはパソコンがあったり衛星放送を見てたりと電気は使ってるっぽいけど)。

これをどうやって作るのか、以前から大変興味があったので、めったにないチャンスと上映会に飛びついてみたわけです。監督さんは、ヤオトン暮らしに魅せられてわざわざ北京電影学院に留学し、このフィルムを撮ったというフランス人女性、エロディー・ブロッソさん。

家は結果的に丈夫に建つんですけど、見てるだけで疲れるほど作業が大変そう。建築予定地の土を搗き固めるところから始まり、遙か山の下の方から石を切り出してきて運び上げ、「人力で」ブロック状に加工します。ヤオトンの外側に置かれている石にはとても綺麗な斜めの飾り模様みたいなものが入っているんですが、何とその模様も全部ノミで手彫り! 作業の様子は映画でも見られますが、とても綺麗に仕上がるのと、とても大変そうなのと両方の意味でちょっと信じられないような光景です。

基礎を作ったら、今度は風水師が呼ばれます。占い盤を持っていることを除けば、ビジュアルは工務店のおっさんそのもの。でも、家の風水の良しあしでその後の一家の運命も変わってしまう(風水師談)ので、あなどれません。家の向きが決定すると、石をどんどん敷いていきます。

その上にアーチを築きます。ここまで来ると、内部の形を含め、トンネルを作る工事とそっくりです。壁を築き、黄土を載せ(湿度を調整する役割があるそうです。日本でいったら珪藻土みたいな役割でしょうか)、庇を作り…と工事は人海戦術で着々と進みます。

家のファサードには明り取りを兼ね、趣向を凝らした木製の木枠が嵌められます。実物も会場に展示されていましたが、家によって異なり、とても美しいものです。

s-IMG_1103.jpg

この模様、施主の好みで決めることはできないらしく、ヘンな模様を選ばれないように、風水師にはしっかりごちそうしなければならないんだとか…。

家が基本的に出来上がると、土地神をお祀りします。お札に文字を書いていくのですが、たぶん地元の人なんだろうけど、めちゃ達筆。祭文の読み方もとても興味深かったです。お守りを家の基礎に埋めて封印してしまうのは、日本のやり方と同じですね。

こうして建てあがるまでに40日。後は住む人が内装や家具は自分で配置するのだそうです。カメラはヤオトンの中にも入っていきますが、トレーラーハウスみたいな印象で、いろいろなものが最低限、合理的に配置されているし、小上がりがベッドになっていて、とても住みやすそう。

家もできたし、良かったね、というところで映画は終わるんですが、上映後の質疑応答ではもっともな質問が次々と。

ヤオトンって、山にトンネル掘って作る袋小路屋敷形式かと思ってたんですけど、実際見ると、要は平屋の連棟式一戸建てってことですか?
――いえいえ、元々は横穴を掘っていたんです。しかも、白川郷みたいにぽつんと、というのではなく、この地方一帯にヤオトンがあるんです(ホント、リアルホビット庄です)。ただ、最近の異常気象でそのタイプのヤオトンが崩落する事故があり、石造りが奨励されたんです。建て替えには政府の補助金もでました、が…

黄土高原って雨降らないのかと思ったら、結構雨やら雪やら降ってましたよね。
――そうなんです。実は、未曽有の大雨に襲われ、石造りのヤオトンさえ崩落してしまいました。で、政府ももうヤオトンは危険なので補助を出すのはやめて、一般住宅の建築を奨励しているそうです。だから、将来ヤオトンはなくなってしまうかもしれません。もともと、ヤオトンというのは1回作ると30年、いえ、何百年単位の、とても長く使えるものでした。ここの展示に持ってきたファサードは清代のもので、元は木工師のヤオトンのものでしたが、もう人が住まなくなったので譲り受けてきました。

なんと、異常気象の影響がこんな形で…。

他にも、煙突はあるのか(あります。地下を通ってます!)、トイレは?(家の外にあります)などなど、いろいろな質問が出ていました。

上映スペースの外には2フロアを使って展示があります。とても厳しい生活なんだろうけど、展示から見る限り、何でも可愛く、味があります。少ないものを大事に使っているだろうな、窓の外に花畑などがない分、自分たちで工夫して、生活をうるおいを持たせているんだなというのが、よく分かります。

余り布に丁寧に刺繍して作る靴の中敷きとか、腰掛に置くクッションとか、生活雑貨とか、可愛らしいものばかりですし、素朴ながらも、驚異の手先の器用さを感じさせます。
s-IMG_1095.jpg

s-IMG_1088.jpg

s-IMG_1093.jpg

s-IMG_1120.jpg

こんなに素敵な展示で入場無料とは有り難い限りですが、なんと展示は3月16日いっぱいとのこと。
福岡アジア美術館とここの2か所での展示でしたが、また巡回してくれればいいのに…

とりあえず、図録がわりに本が出版されているので、そちらだけでもチェックしてみてください。!
『中国の切り紙 窓花』丹羽朋子、下中菜穂 著 エクスプランテ
(↑本の簡単な紹介は→別ブログにて)

展覧会は:
世田谷区文化生活情報センター 生活工房で2014年3月16日(日)まで開催
posted by 銀の匙 at 01:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 展覧会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック