2014年08月25日

蘭陵王(テレビドラマ3/千言万語編)

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これで終わりにするぞと固く心に誓いつつ、蘭陵王も、はや4回目。
ごめんなさい、今回も終わりそうにないです。つーか、進みません。
ここまでのお話は(史実編)(有話即長編)(重箱四隅編)でどうぞ。

さて、このドラマ、いちおう時代劇だから、セリフは基本、書き言葉。

守株待兎」(ショウヂューダイトゥ)株を守る=待ちぼうけを食らわされる
とか、
九五之尊」(ジョウウーヂツゥン) 九五の尊=皇帝の貴い位にある人
とか、文字で見たことしかない言い回しを、実際に聞くのは結構新鮮。

四字成語がいっぱい出てくるので、頭の中で漢字に変換するのに時間かかるかかる(変換できても意味思い出せなかったりとか・爆)。

だって、「♪ 待ちぼうけ〜 待ちぼうけ〜 ある日せっせと野良稼ぎ〜  
       そこへウサギが飛んで出て〜 (以下略)

歌えば8分かかるところを4文字に圧縮してる訳ですからね。

ボケっと聞いてると、つい笑っちゃうのは、
「忠心ガンガン」忠心耿耿(忠義に篤い)
「皇后ニャンニャン」皇后娘娘(皇后陛下)
しかも、なぜか深刻なシーンに突然出てくることが多くて、不意打ちくらって「ぐふっ!」とか笑ってしまうのであります。

かと思うと、そこは時代劇なので、
心儀”(シンイー)心からお慕いする、とか、“仰慕”(ヤンムゥ)敬愛する、とか、ラブコメじゃ聞かないけど、そういや、こんな素敵な言葉があったわね…というような言葉が出てきたりとか。

逆に、セリフにときどき、平気で現代語が混ざってるのが、これでいいのか…?と思ったり。

弱水三千你偏偏只取一瓢飲(弱水河は三千里もあるのに、あなたはたった瓢箪ひとすくいの水しか飲まない=女は他にもたくさんいるじゃない。なんで私じゃなきゃダメなのよ?)

なんてセリフ、『紅楼夢』(18世紀)からですよね…。元々全く逆のシュチュエーションで使われたセリフですけど。(つまり、主人公の賈宝玉〈か ほうぎょく〉が「どんなにたくさん女性がいようとも、愛しているのはあなただけです」という場面で言ったの。)

こんな風に昔から言ってたのかも知れないけど、でもねー、「鳴かせてみよう、ホトトギス」なんて、ホントに秀吉が言ったかどうかはともかく、それ以前の人のセリフに使ったらヘンだもの。

清朝時代の時代劇だと返事ひとつでも特殊な言葉があるので、別の時代と混ぜて使うことはないみたいですが、ま、日本の時代劇だったら公家が「かたじけない」とか言ったらヘンだって私でも分かるけど、中国語じゃどこまで許されるのか、ガイジンだから、ちょっとワカリマセン。

もちろん、一口に昔の中国語って言ったって、地域も広いし時代もバラバラだから、ドラマのセリフのように話していたわけではありません。

項羽や劉邦の時代と蘭陵王の時代とじゃ、同じ漢字の発音だって、かなり違っていたはずです。

だけど、そこを時代考証しだしたら、現代人には全く分からないので、時代劇「風」の言葉を使ってるわけですね(日本でだって、源氏物語を全部古文でやったら、分かる人は下手すると脚本書いた人だけかも…)。

という訳で、以下の話は、中国の古代ではこうだった、という話ではなく、時代劇のセリフではこうなってます、という話とご了解くださいませ。

日本語吹き替えを聞いてても、時代劇「風」だけど、完全に時代がかった日本語にはしてないあたり、翻訳のご苦労がしのばれます。

自分や相手の呼び方も時代劇だと複雑。日本語も「わたし」「あたし」「じぶん」「オレ」...といろいろあって複雑ですが、このドラマを見てると、昔の中国語も相当ややこしい。

たとえば、蘭陵王は楊雪舞にあった当初、身分を隠していたので、
自分のことは“我”(わたし)と言ってました。(楊雪舞は“美女姐姐”(美人のお姉さん)と呼んでいたけど、目が悪い人はこの際無視すると)、おばあ様や村の童子は彼のことを
“公子”
と呼んでますね。

公子!

久しぶりに聞きました、この優美な言葉。
日本じゃあまりそのまま使わないけど(伊達公子くらい?)、思いつくのは「貴公子」とか「小公子」とか、それなりにステキな言葉ではないでしょうか。でも現代中国語で“公子”っていうと、私が思いつくのは、
花花公子(プレイボーイ)とか
公子哥兒(お坊っちゃま君)とか、ロクな言葉じゃないのはなぜ?

…あー、で、一方の雪舞は、彼が高四郎と名乗ったので(ま、それなりの身なりをしている人だから)、お姉さん呼ばわりはやめて、“四爺”と呼んでます。

ははは、漢字で書くと笑っちゃうわ。悪いけど…。

まさか吹き替えで「よんじい」とか呼んでないよね?と念のため確認してみたら、身分がバレてないうちは「高(こう)どの」、バレてからは「殿下」って呼んでました。ちぇっ、残念。

中国では、儒教思想の影響か、年齢が上ならば偉いということになっているので、相手への敬意を示すために、実際よりも年寄り方向にシフトした呼び名を使います。

だもんで、うら若き頃、中国のお子方に、“姐姐”(お姉ちゃん)って、呼んでね(はぁと)というと、またまたご謙遜〜って感じで、たいてい“阿姨!”おばちゃん)って呼ばれちゃうので、一瞬殺意が芽生えるというか何というか…ぜいぜい。

ということで、旦那様は“老爺”(ラオイエ)、 若旦那さまは“少爺”(シャオイエ)、同じおうちに何人も若様がいるときは、順番に“大爺”(ダーイエ)、“二爺”(アルイエ)、…“四爺”(スーイエ)と呼ばれる訳ですね。

この「スー」は、日本語の「すう」と違って、口をはっきり横に引いて発音するので、キリッと音が立って、とてもカワイイ響きなんですよ。

蘭陵王ご自身も、ストーカー女・鄭児〈ていじ〉に「楊雪舞が私を、スーイエ、と呼ぶときの言い方が好き」とおっしゃっておられます(四爺様、そのご感想はあなたの勝手ですが、のろける相手を激しく間違ってると思う)。

なお、いとこである皇太子の高緯〈こう い〉にとって高長恭は、身分では下なんですけど、排行(親族間での長幼の順序)では目上のため、四「哥」(兄)と呼んでいる訳ですね。

なおなお、蘭陵王は幼名が「粛児」なので、27歳にもなって、皇太后に「粛児(スーアル=粛坊)」と呼ばれてるのがカワイイ。

で、蘭陵王自身は自分のことを、

“我”、おばあ様に対しては“在下”(わたくしめ:あ、ごめん、最初のうちは雪舞に対しても)→“爺”“長恭”〈ちょうきょう〉→“本王”

と出世魚のごとく、呼び換えています。

目下の人に対しては「“本王”(王侯の場合)」「“本将軍”(将軍の場合)」「“本宮”(皇后の場合)」とか言うんですけど(雪舞は“本姑娘”とか言ってるし)、聞いてるとどうしても『天才バカボン』の「本官」を思い出しちゃって…。

部外者に自分の事を「本職」って言っちゃダメ、と通達したお役所があると聞いたことがあって、内輪のことばだからかな、と思ってましたが、中国語での「本○○」の使い方を見てると、もともと目上の人にはあまり使わない言い方なので、エラそうと思われる、ということなのかも…。

で、面倒くさいのはそれだけじゃありません。相手との関係によって、自分の言い方も変える必要があります。

人質に取られた義兄弟、斛律須達〈こくりつ しゅだつ〉を救うため、庶民のふりをして、敵将・尉遅迥〈うっち けい〉を欺こうとしたとき、蘭陵王は自分のことを“少民”と呼んでましたが、結構ハラハラしますよね。
変装してるときにうっかり“本王”とか言おうものならたちまちバレちゃうもんね。

さて、皇帝陛下に謁見するときは、まず
“參見皇上”(皇帝陛下にお目通りをいたします)と挨拶して、膝をつき、陛下から“平身”(ピンシェン)と言われるまではうずくまってなくちゃいけません。お言葉をかけていただいたら初めて、“謝皇上”(ありがたき幸せ)といって顔を上げることが許されます。

日本語じゃ「平身低頭」って言ったら這いつくばったままなのに、中国語で“平身”って言ったら立ち上がっていいのね。面白いなぁ…。

皇帝陛下と話すとき、自分のことは“末將”(将軍の場合)、“臣”(臣下の場合。ちなみに子が皇帝に対しての自称なら“兒臣”)、“臣妾”(妃の場合)などと、最大級にへりくだらなければダメです。

首が惜しかったら、間違っても雪舞のように“宇文邕!”「ユィウェン ヨン!」なんて呼び捨てにしてはいけません。

その点、現代中国語は基本 私は“我”、あんたは“你”しかないから、(首も)助かるわ。

さて、このドラマを見たあと、銀座に行ったんですけど、デパートの入り口で店員さんにお辞儀されると、“平身”(ピンシェン)って言いたくて、ウズウズしてました…

そんなモヤモヤのまま、話は「龍虎相搏編」(→こちら)に続く…
posted by 銀の匙 at 22:56| Comment(2) | TrackBack(0) | 蘭陵王(テレビドラマ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
つい1記事ごとに米りたくなる〜w
・・・会社の講習で自身のスキルUP講座てのが
出来まして、今年から中国語講座があるのです。
語学は向いてないとエルフ語で痛感したけど
ポイント欲しいし来年受けようかな〜とか
思ってましたが、ドン引きましたw
そーいえばウチの妹が北京語?ならってた時
寝言が中国語でした←うなされるとも言う^^;
まるでダーコヴァのキャスタのように
いや、ソレ以上ですね〜複雑〜
そら、他民族が操れなかったら田舎モン扱いに
なるよなぁ・・・この秩序と統制w
私、上海でシャオチェて呼ばれましたが
若く見えたのねヲホホホホ

もはや何を※りたかったのか中国語と同じく
ワケが分からなくなってきましたので
次の匙さんの解説を楽しみに、この辺に
しておきますw
TUT○YAにあるかな〜DVDw
Posted by Elfarran at 2014年09月03日 15:22
エルさんこんにちは。

会社にスキルUP講座なんてあるのですね。なんていい会社なんでしょうか。

中国語、ぜひ挑戦してくださいませよ。このドラマでもあるように、中国はたくさんの国に分かれたり、統一したりした関係で、いろんな人が国を渡り歩いていて、「中国語」は皆で使える「国際」共通語として発展してきたので、文法や熟語も割と合理的に整理されてて覚えやすいと思います。

しかも、文字が漢字だから、日本人にはかなり有利だと思います。

このDVDに中国語字幕がついてたら教材になって一石二鳥だったのに残念。でも○SUTAYAでバッチリ借りられますよ。

何かダラダラ長くなったので、もうやめにしとこうかと思ったけど、コメントいただいたので頑張って記事を書いてみました。

5回目にしてようやく弓を引く貴公子も出てまいりましたので、中国語と本エントリーをお見捨てなきよう…よろしくお願いいたします。
Posted by 銀の匙 at 2014年09月07日 13:56
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