2014年09月07日

蘭陵王(テレビドラマ4/龍虎相搏編)

蘭陵王関連の記事も、はや5本目。

(ここまでの記事は、(史実編)(有話即長編)(重箱四隅編)(千言万語編)となっております。)

このドラマ、見返すといくらでも小ネタが拾えそう(またの名を、突っ込みどころ満載という)

うっかりか、はたまたあまり気にしてないのか、背景に駐車場だの、扇風機だのが映り込んでたりします。
これなんか↓公式FBのアルバムにある、悲愴なシーンのスチルなんですけど、後ろが駐車場だし。
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(公式FBはこちら。もちろんネタバレありです。https://www.facebook.com/Lanlingwang2013

ま、↑は撮影風景を撮ったと強弁もできましょうが、本放送でも大小さまざまなネタを提供してくれており(日本だったら放送事故クラス?)、NG番組の恰好の餌食になっております。

このシーン、DVD見てたら絶対気づくはず。↓
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ヒロインの楊雪舞(大人)が登場する、最初のシーンなんですけど…。

超冷静な語り口でdisっているのが面白すぎなので、続きは↓でご覧ください。字幕がついてるので、中国語がわからなくても、たぶん楽しめると思います。

https://www.youtube.com/watch?v=os9ktJ4nuj8

(追記:現時点では↑はネタバレになるためご紹介しませんが、全部のシーンが登場した回以降の記事で解説する予定です→解説しました。ご覧になりたい方は第16話→こちらをどうぞ)

このドラマ、NGネタからトリビアネタまで、あらゆるネタが満載なので、いっそ1話ずつ記事を書こうかとすら思ったけど、そんなことしてたら永遠に終わらなくなりそう。

ということで、そろそろストーリーの話に入ってまとめて行きたいと思います。
すいません、毎度、大した内容もないのに引っ張りまして。

↓以下、途中の36話までの内容に、若干触れている箇所があります。ご注意ください。
*未見でネタバレNG(と言っても全部のネタバレではないですが…)の方は、直接第1話編へどうぞ。

さて。

この話は戦乱の世が舞台なので、第10話までの導入部分は危機また危機の連続。それをどうやって乗り切るかが、各話の山場になっています。

多勢を相手にどうやって戦うか。
敵陣に人質を取られたけど、どうやって救い出すか。
明らかに敵のスパイとおぼしき人物に、どうやって自ら尻尾を出させるか。
敵方にしかない毒矢の解毒薬を、どうやって手に入れるのか。
(私が蘭陵王なら絶対飲みたくないけど、あの解毒薬。
 知らぬが仏とは、まさにこの事)

たった500騎で、どうやって10万の敵陣を突破するか…。

最後のは第9話に出てくる「邙山〈ぼうざん〉の戦い」(「邙山の戦い」については、詳しくは、第9話からの記事をご覧ください。→こちら)なんですけど、史書(の蘭陵王の伝記の箇所)には味方の陣にたどり着いた後のことしか書いてないので、具体的にどうやって敵の囲みを突破したかは分からないし、そもそも数が圧倒的に違うのに、こんな多勢に無勢で、なぜ勝てたんだろう....と誰しも不思議に思いますよね。

ドラマだとそこは、
・無人トロイの木馬(?)策、
・地形を利用した陽動策
で前進して、
・功を焦って出陣した周帝・宇文邕〈うぶん よう〉と、彼に軍功を立てさせまいとする大冢宰〈だいちょうさい〉・宇文護〈うぶん ご〉との内紛を利用した「離間(りかん)の策」
を用いて、ほとんど戦わずして勝つわけね。

敵国・斉の重要拠点、洛陽城を目前に見ながら、
宇文護の牽制で兵を引かざるを得なかった悲運の皇帝・宇文邕。

ただでさえ体調悪かったところに、「私は良い人なんです!」と妙な自己紹介をしてくる危なそうな女(楊雪舞)に大八車に乗せられて市中を引き回されたり、
おとなしく捕まってあげてるというのに、問答無用で斬りかかってくる嫉妬に狂った男(蘭陵王)にトラと戦わされたり(勝ったけどね〜♪(だいたいなんでトラが陣内にいるのよ。間違って逃げたらどうするつもり)

ほとんど死ぬ目に遭って突厥〈とっけつ〉から援軍を借りてきた彼としては、さぞや悔しかったことでしょう。

しかも借り先はお舅さん(アシナ皇后のパパ)だった訳だから、面目丸つぶれなんてもんじゃ済まないことでしょうよ(しかもまだ全話の4分の1の時点だっつーのにあらゆる意味で負け犬の烙印押されてカワイそうな人…)。

それでもアシナ皇后は賢明で夫に忠実な人だから、取り乱したりはしない。
テレビドラマでは独特の存在感を示してますが、史実でも、
「皇后は容貌が麗しいうえに、物腰が折り目正しく、高祖(宇文邕)は深く彼女を敬愛していた」とされております。

そんな、皇后の鑑のような彼女でさえ耐えられない、三角関係の恐ろしさよ。

前半の奇計知略を巡らすお話が、お話らしくて面白いな〜と思っていたので、ラブ・ストーリーの方は正直、どうでも良かったんだけど、このドラマのキモはむしろそっち。女の戦いは、スケールこそ小さいけど、権謀術数の面では遙かに高度ですからね…。

それに、1回目に見たときはいかにも少女マンガチックな展開だなぁと流してしまった部分も、見返してみると、なかなか奥が深い(←私が気づかなかっただけですが)。てことで、以下はラブ・ストーリーの中身を見てみましょう(ヒマ人にお付き合いいただいてすみません)

さて、このドラマには大きく2つの三角関係が絡んでいます。1つは蘭陵王を巡ってのもので、もう1つはヒロイン、楊雪舞を巡ってのもの。

後者の方がお話が簡単なので、こちらを先に見てみましょう。

表だって雪舞を取り合っているのは、斉の“戰神”(軍神)・蘭陵王と、周の皇帝・宇文邕ですが、それに加えてもう1人、庶民代表の韓暁冬〈かんきょうとう〉という、大事な登場人物がいます。演じているのは上海の俳優さん、魏千翔(ウェイ・チェンシャン)。
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最初は、「高四郎」の忘れ物を届けに町までやってきた田舎娘・楊雪舞を騙して女郎屋に売り飛ばし、小銭を稼いだ男ですが、いちおう良心が咎めていたところに、役目を果たして村に帰ろうとしていた雪舞と、まさかの鉢合わせをしてしまい、過去を反省させられる羽目に(
あの程度のはした金を稼ごうとしたばっかりに…なんてカワイそうな韓暁冬
)。

それ以降は、自分の身さえ危ういような場面で、何度も雪舞を助けています。

それなのに、いつでも自分の分をわきまえていて、雪舞に負担をかけるようなことは、一切言ったりやったりしない。

楊雪舞の婚礼の日(第19話)には、参列者の中に並んで、
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こんな顔しているのが、ぐっと来ますね…。

(そういえば、婚礼の参列者の中に楊士深がいなかったように思うんですが、気のせいかしら?それとも、婚礼で皆出払ってしまった壺口関を独り寂しく守っていたんでしょうか。)

吼えたり泣いたり忙しい登場人物の中で、常に安定していて目立たない彼の存在は、大変貴重。

彼には、彼自身の役柄に加え、庶民の代表として、そしてもう1つ、お話の構造上、ヒロインの合わせ鏡という非常に重要な役割を担っています(これについては、最終話の記事で書く予定)。

それに暁冬は本当に彼女を助けているんですけど、楊雪舞は毎度、蘭陵王を助けているというより、彼女が干渉したせいでさらに危険なことになっているような…

ま、楊雪舞本人としてはすごーくたまに殊勝にも、韓暁冬的であるべきだった、自分の使命を思い出すこともあったみたいでしたけど、かなりときどき忘れちゃうのはやはり、もう片側の当事者である、この御方のせいでしょう。

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この人の勘はまさに野生動物並み。さすが斉の“戰神”(軍神)と呼ばれるだけのことはある。

出会って数時間もたたないうちに、楊雪舞の弱みは「困った人を放っておけない」ということだとガッチリ感知した模様で、以降、楊雪舞におねだりのオンパレード。

そのたびに視聴者としてはツッコミを入れたくなるのであります。

馬がケガしたんで治して欲しい←ちょっと四爺、その頼みを聞いたら死んでご先祖に詫びを入れなきゃいけないんですけど?

あんたの刺繍した帯をください←雪舞のおばあ様激怒蘭陵王より怖い

仮面を人ん家に忘れていく届けろってこと?!(楊雪舞のおばあ様に、何も持っていくな、何も置いていくなと厳しく申し渡されたにも関わらず、置き忘れとはどういう了見なのでしょうか。しかも、どう見ても、追っかけてきた雪舞が取り出すまで、失くしたってことに気が付いていないみたいだし…ひょっとして、縁日のお面みたいにどこででも買えたりしてね〔敵の将軍・尉遅迥〈うっち けい〉も同じの持ってましたよね〕

義兄弟を助けるんで、花嫁に化けて、一緒に来てもらいたい←作戦が終わったら、ちゃんと村まで送り届けるって約束してませんでしたっけ? 用が済んだら戦闘地帯に女の子を(ってタマではないけど)独りで馬に乗せて放り出すって、どういうこと?(ま、この約束破りは高くつきましたよね四爺)

←言っときますけど宇文邕は第15話で雪舞を連れ去周までお招きした際に、“朕親自送回齊國”(姪を看病してくれた後には)朕みずから斉まで送り届けようって約束をちゃ〜んと守って、頼んでないのに付いてきたきたもんね。
←でもその後の“一言九鼎會派人通知蘭陵王”って約束の方はさっくり破りましたけど。鼎の軽重を問われたら「軽い」方らしいわね…。

7日間の猶予をやるから村中の疫病を治しとけ←とは言わなかったけど実質そういう命令なのでは?

敵方にしか解毒剤がない矢毒を、何とかしてくれ←なんつームチャぶり…←確かに雪舞のせいで、蘭陵王は毒矢に当たったのですが、元はと言えば、女の子を送らずに独りで帰したのが間違いだったのでは…←それで、雪舞が死ぬ思いで解毒薬を手に入れてくると、蘭陵王は「敵の陣地へ乗り込んで、同じ毒まで飲んで助けてくれるなんて…」と感激してますけど、蘭陵王・高長恭公子、あなたが何とかしろって頼んだんじゃないですか

・それで「これ以上居残ってると、別れられなくなるから村に帰る」とゴネた楊雪舞に、自分の側に留まって欲しいとおねだりするのですが、トドメの一言がこれ。
如果今天讓你走了,本王定會相思成疾,終身遺憾
(もしも今あなたを手放したら、思い余って病に倒れ、一生後悔することになるだろう)

「人を見殺しにできない」がモットーの楊雪舞は不承不承、おばあ様が占いで予言した、「蘭陵王の運命のお相手」が現れるまでは残っといてあげる、と約束する。
(蘭陵王もずいぶん古典的なこと言うのねって、思ったけど、古代の人だから当たり前か…あぁ、いぇ、しかし、あとで書きますが、蘭陵王のこんな脅しのようなセリフ、あまり「らしくない」ですね)

雪舞にしてみれば悩んだ末の選択、というのは良く分かりますが、観てる側としては正直、いささか面倒くさい女だと思わざるを得ない(そして、これが後々エスカレートするだろう、という予想の通りに展開するのがまた何とも)。

とにかく、“國色天香”(傾国の美女…って自分で言うか?)の魅力か、相手が逃げるとなぜか無性に追いかけたくなるという『ルールズ』(この本)の法則が功を奏したのか、蘭陵王は楊雪舞を正妃として迎えることになります。

第19話の結婚式では、蘭陵王はとにかく嬉しそう。こんなに嬉しそうな新郎、見たことあります?そして、このカップルの仲むつまじい様子は大変微笑ましく、可愛らしい。

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はいはい、分かりました。(またまた、おかずを取ってあげてるシーン)
(おかずを作ったのは蘭陵王ですけどね

でも、実はこの2人、仲良しなシーンはいくらもないんですね(全部足しても30分くらいなのでは…?)。

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↑これは公式FB掲載のスチル。この“超絕相配”(超お似合い)のシーン、視聴者からの、

好了~誰幫我來在右下角打上"全劇終"
(わかったから、とにかく誰か右下にエンドマーク入れてよ〜)

ってコメントが、全くもってその通り。ここで話が終われば、どんなにか良かったでしょう。
運命の第36話
雪舞が手に持ってる「柳」(“留”=自分の元に留まってくれる、という言葉と同音だと、逆の(雪舞を引き留める)立場だったときに四爺が説明していましたね)の枝が泣けますな…。

全46話もあるっていうのに、残念すぎる、この成り行き。でも、ハッキリ言ってこれは雪舞が悪いのよ。そりゃ、いつまでも奥さんに信用されなかったら、旦那さんとしては涙目にもなるし(まさか蘭陵王が泣くとは思わなかったのでちと驚いたけど)、家に帰りたくもなくなるでしょうよ…。

だいたいあなた、おばあ様の予言を信じているなら、「1年しないうちに四爺は死ぬ」という予言も信じてるはず。だったらもうちょい、仲よくしても良いんじゃないの…?

まあ、この二人は似た者同士で、余計なことを知らせて相手に負担をかけたり、迷惑かけまいと思う、奥ゆかしいところがあるのですが、それは実質、相手を本当の意味では信頼してないということになっちゃうんですよね。

一方の四爺はといえば、誰かが自分のために怪我をしたり、虐げられたりすると、その恩に報いなければと思う「いただきものはお返ししないと気が済まない奥さま」スイッチが入るらしく、その「奥さまスイッチ」を、また別の野生動物(鄭児)に利用されてしまう訳ですね。

その利用されっぷりたるや、これで一国の将が務まるのかと呆れるほど。放映当時、リアルタイムで出演者が番宣のtwitter書いたりしているんですけれども、

“本来就笨,就这点智商怎么在宫里混啊”
(頭、大丈夫? こんなんで宮廷でやっていけるの?)

とご本人役のウィリアム・フォンにまで心配されてる始末。

それもこれも、冷静なのかと思えば肝心なところで激高しやすい蘭陵王の性格に問題があるんじゃないかと愚考するのですが、いえ、もっといえば脚本のせいなのですが(いくらなんでも、ここまでやらなくても良いのに…いちおう主人公なんだからさ)、この時点(第21話あたり)で相当程度の視聴者が主人公を見放し、寝返ったものと思われます。

この方に...。

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周の皇帝・宇文邕(うぶん よう)!
(おっと、この人も四男坊だから“四爺”なのでした)

虎も組み伏せ、石造りのテーブル(ですよね?)を叩き割る男!

覇者という割には、どこか寂しそうな、悲しそうな表情をしているのね...
と思いましたら、DVDのおまけインタビューを見ると、ご本人様の素の表情も割とそういう感じなんですね。歌しか聴いたことなかったから知らなかったわ。

演じるダニエル・チャン(陳曉東)は、今さらいうまでもない、麗しいファルセットで聴かせる香港の大歌手(ちなみに、今回の劇中歌も歌ってます。第26話などで皇帝陛下の美声を聴くことができますよ)。演技は、(というかビジュアルも)初めて見ましたが、すごく上手くてビックリ。

「邙山(ぼうざん)の戦い」(第9〜10話)までは、主人公・蘭陵王の敵国・周の皇帝ということで敵役。しかしながら、あからさまな悪人は出てこない(強いて言えば斉の佞臣・祖挺(そてい)くらいかしら...?)のがこのドラマの面白いところ。

登場してしばらくは、薄気味悪いけど実はなかなかの好青年なのでは?と思わせる役どころだし、
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またまた、おかずを取ってあげてるシーン(しかも、楊雪舞からのみならず、周り中の人からおかずを提供されている超人気者)

楊雪舞はドラマの中で三回、周に滞在することになるのですが、雪舞と一緒に周の宮廷にいるうちに、見てるこっちも、だんだん状況を「周目線」で捉えはじめてしまうのであります。そうなると、戦さには強いけど内政メチャクチャな斉に、だんだん愛想が尽きてくる…。

でもって、太平の世を願う雪舞に、自分が天下を統一すれば、世の中は平和になるのだとマインドコントロール作戦で畳み掛けてくるので、彼女より先に、観てるこっちが、確かにそーね、となぜか説得されている。

そして視聴者が大量に、斉の民とともに皇帝陛下に寝返ってしまう…という脚本なのですね。

加えてこの皇帝陛下、きわめて太っ腹。

「恩返しモード」発動中につき、雪舞を馬賊にさらわれるという大失態をやらかした蘭陵王に代わり、宇文邕は雪舞を取り戻すため、皇帝しか持っていない宝玉、火龍夜明珠を惜しげもなく差し出します(第26話)。

夜明珠といえば、『資治通鑑』(しじつがん)のエピソードを思い出します。そこでは「夜光珠」は、夜になると輝き、前後10台の車を明るく照らすことができる…という国王自慢のお宝なのです。

つまり日本で言えば、「阿修羅像」とか「奈良の大仏」とかを、盗賊に身請け料として、ぽ〜んと気前よく上げちゃう、ということですね(阿修羅像はともかく、大仏は要らんと思うが)。

しかも、馬賊の要求に応え、自らを傷つけることも厭わない。
つね日頃、臣下や皇后が、龍体にもしものことがあってはと、下へも置かない扱いをしてるというのに。

なんたる男気!

もうこの時点で、完全に宇文邕の勝ちだと思いますけど?

残念ながら雪舞は、恩義を重んじる蘭陵王とは違って、この大恩に報いようという気にはならなかったようですが。

あぁ、まあ宇文邕にはすでに、アシナ皇后という賢夫人がいるんですけれども、正妃は政略結婚の道具ですから、好き嫌いっていう次元の話じゃないですもんね…。

だいたい、2度目に周に連れ去られ乞われて赴いたとき(第15話〜17話)、宇文邕は楊雪舞が斉でどういう身分なんだか、今ひとつ把握してないような印象を受けるのは私だけでしょうか。

皇帝陛下自らかどわかしお願いに参上した際、楊雪舞にはっきり、「私は斉の王妃なの」と言われてる上に、自分でも、「周の皇帝が殺されたとき、隣に斉の王妃がいたと分かったら」大変なことになる、と脅してる。

その割には、蘭陵王と共に周の宮廷を逃げ出した楊雪舞が、周に残ってくれと懇願する宇文邕に「この人(蘭陵王)と結婚するんだからダメ」みたいなこと言うとショックを受けてるようだけど、なんで?(やっぱり結婚はやめます、って言うと思ったのかしら…?? それとも何か私が見落としてるのでしょうか??)

しかも国宝まで投げ打って(いつも国宝持ち歩いてるのかな、この人?)、雪舞を救ったというのに、第27話では「自らを傷つけてまで雪舞が逃げるチャンスを作った」宇文邕をガン無視して、蘭陵王に駆け寄った雪舞を見た後、蘭陵王に向かって“她已經在我和你之間做出了選擇(彼女はすでに、私とお前のどちらを選ぶかを決めたということだ)と勝手な事を言っていますが、選ぶ候補にすらなったことがないというのは、認めたくないんでしょうか。ないんでしょうね。

こういうところ(プラス、いつも宇文神挙に楊雪舞を見張ってるようの動向を探るように言いつけてるし)、鄭児同様のストーカー気質で困ったもんです。

でも、蘭陵王と比べてしまうと(比べたとたん、蘭陵王には壁ドン(笑)されてしまうでしょうけど)、やはり宇文邕は皇帝、器が違うって思ってしまいます。

蘭陵王は、五爺と一緒に町に出て、お屋敷で待つ雪舞に何か買って帰ろう、と思っている。それはそれで優しいとは思いますけど、宇文邕の方はどうかといえば、姪の病気を治してくれた御礼にと、書庫にある、すでに散逸したと思われている稀覯本(竹簡ですが)を惜しげもなくくれるという。しかも《考工記》(いまでいうと、日本工業規格マニュアルみたいなものかしら?)とか物騒な事に使いそうな資料をよくもまあ…。

何かつまんない比較のようですが、結構この差は大きいんじゃないでしょうか。

楊雪舞は結婚したとたんに、“四艘(四爺の嫁)、“夫人(奥さま)と呼ばれる身分になり、やってる事と言えば、お屋敷をかき回しにきた鄭児に対抗するために手料理を作ったり、皇太后のお世話をしたり。蘭陵王の公務には表立って口をはさまず、いわゆる「内助の功」に徹しようとする。

まさしく彼女のセリフの通り、“嫁雞隨雞,嫁王也就只能當王妃了”(鶏に嫁げば鶏に従い、王に嫁げば王妃になるしかないわ)ということです。
(後ろの句は、ホントは“嫁狗隨狗(犬に嫁げば犬に従う)なんですけど)

これは現代ドラマじゃないし、本人が良いんだから、これで良いんでしょうが、「天女を得た者は天下を得る」とまで言われてるのに、これでは全く、蘭陵王の言うとおり“大才小用”(正しい方の意味の役不足)ってやつですよね。

加えて彼女には、強烈な「お世継ぎプレッシャー」がかかってくる。とてもほのぼのと描写されてるから、スルーしてしまいそうになりますが、婚礼の場から始まって、皇太后から大将軍、大師までもが言ってくる。

この段階で、雪舞自身は、大切にされていると思って喜んでるみたいだけど、その裏には、第3話で図らずも四爺が婚礼を装う計略に使った通り、「世継ぎを得られなければ、側室を娶らなければいけない」という暗黙の了解がある。

しかも、側室を娶るというのは雪舞が提案しなくちゃいけないんですよ、昔の上流階級の道徳観から言えば。宮中のしきたりも知らない雪舞には、まだまだ新婚のこの段階で及びもつかないでしょうが、皆、そんなことを雪舞にさせたくないので、何とか盛り上げようとするわけね。

脚本はあからさまには描写してませんけど、深読みすれば、たぶんそういうことだと思います。こういうことを視聴者に意識・無意識に気づかせるのは、エンタメ・ラブ史劇としては珍しい展開のような気がする。

一方の宇文邕は(もちろん、周には他に正妃もいることだし、斉にいるときとは雪舞の立場は全然違うのですが)、雪舞を必ず国政の場に出す。

最初こそ「天女」の言い伝えを利用しようとしていたのかも知れませんが、彼は雪舞の能力の方にも、全幅の信頼を置いている。だから三度目に周に滞在したとき(第39〜41話)は、朝廷で発言させるし、献策を求める。

皇后や妃を朝政に参加させることは皇帝と言えども、もちろんマズい(多くの王朝はこれで滅んでるし)のですが、楊雪舞には「天女」という身分があり、実績もあるので、むしろ周国は賢者を厚遇していると見てもらえるわけです。

アシナ皇后としては、当然、心穏やかでは居られません。ついに楊雪舞を宮廷から追ってしまう。すると、宇文邕は、なんと雪舞を郊外に住まわせて、その場の経営を任せるようにするんですね。こういう役目をすることが彼女を悲しみから救うと知っている。

かつて、楊雪舞の故郷の村をそのまま周に再建したい…と言った通りのことをしてみせる。

こういう処遇は蘭陵王のような「王侯」クラスの人にはできないこと。さすがは皇帝陛下、格が違います。

だから、聖徳太子が「日出処の天子、書を日没するところの天子へ致す」という文書を、隋の煬帝(ようだい。覚えてますか?第1話で出た、あの方の息子)に送りつけたときに、「王」クラスの分際で生意気な…と思われたのは想像に難くありません。足利義満はおとなしく、「日本国王」って書いてるもんね。

…またまた話が逸れてしまいましたが、とにかく宇文邕には皇帝の器量がある。蘭陵王にそれを求めるのは、どだい、無理な話なんですね…。

だけど、これほどの差がありながら、女の子がなびくかと言えば、そうでもないのが世の常。この脚本書いた人は、よく分かってる(脚本家は、絶対、女の人だと思うんですけど…)。

楊雪舞が本当に望んでいたことは何なのか、本人さえよく分かってないのではと思いますが、彼女は「士」ではないので、自分を高く買ってくれた方の人に忠誠を尽くすという考えは当然ありえません。

情というのは条件では決まらない不思議なもの。

それに、蘭陵王にだって、客観的に見て、宇文邕が持っていない美質は当然ある。

その中でもいちばん優れているのが“體貼”(にはピッタリした訳語が思いつきませんが、思いやりの心から出る優しさ)で、これは一朝一夕には真似できません。

例の蘭陵王の、「あなたを手放したら病気になる」発言(第10話)の直前に、雪舞は自分のおばあ様の占いはよく当たると説明して、予言ではそのうち、正妃となるはずの運命の女性が現れるのだから、自分のことは諦めるように蘭陵王(と自分自身)を説得しにかかります。

そのとき、彼女は、おばあ様が過去も未来も言い当てることができると信じるか、と聞くと、蘭陵王は(「信じる」という意味で)返事をします。雪舞は畳み掛けて、それでは、2人は一緒になれない運命だというおばあ様の予言を信じるでしょう?と蘭陵王に聞きます。

彼は当然、そんなこと信じていないと思う。

だから、この問いに「頷く」わけね。

なぜなら、「君子に二言はない」というのが彼の信条だから、ここで「信じる」と口に出せば、信条に違反することになる。その一方で、予言なんて信じない、と頭から否定してかかる事も絶対しない。

それは、楊雪舞が予言の威力と自分のおばあ様を信じているからです。ここで、そんなもの信じないという態度をとれば、彼女は傷つくでしょう。だから、彼女のロジックに沿って、自分自身の予言はこうだ、と言って、例の発言をするんですね。彼にとっては譲れない局面であっても、相手が傷つかないように気を遣う。

楊雪舞が一番初めに(周の皇帝とは知らずに)宇文邕をかばったときもそうでした。

これが“體貼”な態度であり、とっさにそういう態度がとれるという点で(ウィリアム・フォンにIQの程度を疑われているにも関わらず・笑)、とても賢い人だという印象を与える。

翻って宇文邕は、「邙山の戦いでは蘭陵王が勝利する、(おばあ様の)占いはよく当たるのよ」という雪舞の発言に対し、“佛擋殺佛,神擋殺神”(仏が邪魔をするなら仏を殺し、神が邪魔をするなら神を殺す)、自分は予言なんて信じない、と言い放ちます。

これは皇帝として、当然あるべき態度(この時点では敵役扱いだったので、しょうがないとも言えるけど)ですが、文字通り“霸道(横暴)な印象しか与えない。

蘭陵王より先に知り合ってたら、雪舞は自分を選んでいたはずだ...と思っている宇文邕は、まだまだね。

と、こちらの三角関係には落ちがついた(?)のですが、この話にはもう一つ、非常に厄介な三角関係がある。

それは恐らく最終回にも関係してくるので、ネタバレ以外の何ものでもないですから、また改めて(今度こそ最後です)書きたいと思います。“就這一次!我求求你嘛 拜託你啦...(あと一回だけ!どうかお願いよ…)

追記:と、思っておりましたら、なぜか続きのリクエストをいただいたため、前言はあっさり反故にいたしまして、ドラマを1話ずつ見ながら、ツッコんだり、中国語のセリフを楽しんだり、という記事を書くことにいたしました。ってな訳で、第1話編へつづく。
posted by 銀の匙 at 11:22| Comment(6) | TrackBack(0) | 蘭陵王(テレビドラマ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
ドラマ「蘭陵王」にはまってネットをさまよっているうちにこちらのサイトにたどりつきました。
「史実編」から3の「千言万語編」まで読ませていただきましたが、中国にも中国ドラマにも疎い私には勉強になることがたくさんあり、さらにツッコミも面白くて、とても楽しませていただいたので、一言お礼を言いたくて書き込みました。
続きも楽しみにしています!(あと1回だけと言わずもっと続けていただいても嬉しいです〜!)
Posted by 銀 at 2014年09月12日 18:30
銀さん、こんばんは、初めまして。

コメントと温かい励ましのお言葉、ありがとうございます。

『蘭陵王』本当に面白いですよね。別の調べ物の資料として観たはずだったのに、本体そっちのけで、すっかり嵌ってしまいました。

いったい何のためなのか、自分でも分からないまま書き始めてしまいましたが、楽しんでいただけたとのこと、とても嬉しいです!

大したことない内容の割にはあれこれ確認しないと書けないのと、本来やるべきだった調べ物の方に手を取られ、続きにちょっと時間がかかっておりますが、お付き合いいただけますとのこと、予定より増量し、頑張って取り組みたいと思います(←自分、尉遅迥将軍並みの深追いキャラですので…)

それでは引き続きご一緒に、ドラマを楽しみましょうね!
Posted by 銀の匙 at 2014年09月16日 00:26
銀の匙さま
お返事ありがとうございました。
増量予告、小躍りして喜んでおります!(それにしても、尉遅迥将軍並みの深追いキャラって・・・爆)

私はこれが初めて見た中国ドラマで、ウィリアム・フォンの名前すら知らなかったので、ウィリアム・フォンと蘭陵王の顔立ちのタイプの相違や演じている俳優の訛りのことから史実まで、とにかく「なるほど〜!」と勉強になることがいっぱいでした。

ウィリアム・フォンの吹き替えのことはとても不思議なのですが、中国では一般的なことなのでしょうか。とても面倒な気がしますが^^;

続きの方は、お仕事の方が落ち着かれてからで構いませんので・・・と言いつつ、首を長くしてお待ちしております!(宇文護風に上品にプレッシャーかけてみました^^)
Posted by 銀(偶然ですが似た名前ですみません^^;) at 2014年09月16日 17:56
銀さん、こんばんは。
(ホント、お名前奇遇ですね。)

コメントありがとうございます。
実は私も時代劇を観るのはほぼ初めてなので、とても新鮮でした。こういうドラマは、私など及びもつかないほど中国や中国史にすごく詳しい方が観るものだと思っていたので、細々したことは書かなかったのですが、そういうことなら(忠心)ガンガン行かせていただきます!

ウィリアム・フォンさん、実はインタビューを聞いていても、特段訛っているという感じはしないので、なぜ吹き替えが必要なのか全くわかりません。

吹き替えを担当している張震さんは数々の主人公の声を当てている有名な方です。ほとんどが香港や台湾の役者さんの声ですが、なかには中国の人、しかも標準語地域の人もいるので、役柄によっては吹き替えを使うということなのかも知れません(この方はウィリアムさんの他の作品の声も担当したことがあります)。

もし、このドラマの監督さんにお会いすることができるものなら、なぜ蘭陵王の声が吹き替えなのかと、なぜ蘭陵王の家に鳥居があるのかについて、じっくりお話を伺いたいと思います(笑)

ただいま大変タイミングの悪いことに、7日で馬賊を退治してこいとか、5日で解毒薬を取ってこいとかムチャぶりしてくる方にお仕えしているため、若干お待たせすることになってしまい、申し訳ありません。

私めも早く1400年前にトリップしたいので、心中、大変遺憾でございます。何とぞ命ばかりはお助けくださいませ。
(まさか7日ごとに1本書かないと虫毒が、とはおっしゃいませんよね、宇文護さま…! ばったり)
Posted by 銀の匙(いえいえ痛み入ります) at 2014年09月17日 02:57
ご多忙ななか、お返事ありがとうございます!
(大変な方にお仕えのようで・・・毒杯を贈られないようにお気を付けくださいっ!)

>こういうドラマは、私など及びもつかないほど中国や中国史にすごく詳しい方が観るものだと思っていたので、

一般的な時代劇はそうなのでしょうね。「蘭陵王」はそういう意味では、あまり時代劇っぽくないのかもしれません。

吹き替えの件、訛りが原因とは思われないということなのですね・・・それならばやはり、こういう役柄の主人公はこういう声じゃないと、という中国的な感覚が理由なのかもしれませんね。

蘭陵王の家の鳥居は・・・やはり般若の面とセットでの演出でしょうか(そんなわけない)。いろいろと謎の多いドラマですね(笑)

お疲れのことと思いますが、どうぞお身体ご自愛ください。
ガンガン書いてくださるというお約束を信じて、大人しく待っています!(まさか、蘭陵王のように誓いを破ったりはされませんよね・・・笑)
Posted by 銀 at 2014年09月19日 08:55
こんにちは。
コメントありがとうございます。
大変遅くなりましたが、おかげさまで、何とか続きを書きました。

四爺とは違うということを、証明できたでしょうか…(家に鳥居もございませんし・笑)

深追いしすぎて流砂に嵌ったのか、もうヤケになってるので、逐一、皇帝・皇后陛下にご報告する宇文神挙キャラにへんげして、あい勤めたいと存じます。なかなか時間が取れないので、ぼちぼちということになりそうですが、今後ともどうぞよろしく…
Posted by 銀の匙 at 2014年09月23日 11:51
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