2014年10月25日

息もできないほど/我想和你好好的(ネタバレです)

中国映画週間2014で見ました。李蔚然(リー・ウェイラン)監督作品。

実は、全く違う映画を観る予定だったのですが、手違いで入れなくなってしまい、代わりに取ってもらいました。お礼に感想を書いておきます。全然見る予定がなかったので事前に話さえ知らなかったのですが、とても面白かったし、良い映画でした。

今週はウィリアム・フォン強化週間なのか、アン・ホイ監督の《黄金時代》(→感想はこちら)と併せて2本も主演映画を観ちゃいました。それだけたくさん映画に出てるってことか、人気があるってことか…。


以下、結末までのあらすじを書いていますのでご注意ください。




お話の舞台は現代の北京。

停まってる車にいきなり乗りこんできて「出してよ」と命令する女。運転席にいた男は「オレは運転手かよ」と怒っているのですが、「車を壊されたくなかったら出すな」という男が現れるにいたって、いきなりカーチェイスが始まります。何とか振り切って車を止めた途端、女は礼も言わず、至極当然のごとく車を降りて、タクシーに乗って去ってしまう。

何だこりゃ。

すると今回はウィリアム・フォンは運転手の役なのか…?あるいはあの女の子のアッシー君(古いですね)なのかしら、と思っていると、次のシーンではスタジオみたいなところにいて、広告の撮影を見学している。じゃ、撮影助手の役なの…?でも、特に仕事らしいことはしてないし…。

で、その広告に出てた女の子を「送っていって」と言われて、初めて昨日の女の子だと気づく。ってことはあの子は彼女でもなんでもなかった(面識さえなかった)ってことか。まさか後で女の子に指摘された通り、“骗子”(詐欺師)の役…?

と、最初のうち、何だか話がよく呑み込めなかったのですが、だんだん分かってきたのは、彼(蒋亮亮 ジャン リャンリャン)は広告会社に勤めるしがないコピーライターで、女の子(喵喵 ミャオミャオ)はブレイク寸前の女優さんらしいということ。

送って行った帰りにミャオミャオとご飯を食べて、そのお姉さんが出てるお店で“灰姑娘”(シンデレラ)とかいう出来損ないのフォークソングみたいな歌を歌わされたりして、すっかり気に入られたらしい。

北京で流行の最先端っていうと、オシャレでこういう感じなんだな〜と、あか抜けてない頃が好きだった者にはちょいと寂しさも感じられますが、映像も部屋の中など、わざとフラットに撮ったり、街中の景色を最近流行りのミニチュア風に撮ったりして、とても洗練された感じです。

ついでに言うと、エンドロールを見ると提携先としてネット企業がずらりとならんでいたり、タイアップと称してノキアと組んでたり(なので、劇中の携帯は呼び出し音もノキア)、パソコンの中の画像が提携先のフィギュアだったりと、よくも悪くも広告畑出身の監督さんらしいメディア戦略も垣間見え、そのあたりも現代的だなと思ってしまいました。

さて、亮亮がちょうど引っ越そうとしていたところに、手伝いを買って出て、荷物と一緒にそのまま新居に来てしまった喵喵。なんだかいい雰囲気になったところで、いきなり元カノ、梅梅(メイメイ)が現れ、自分の置いて行った弦(彼女は古典音楽家)を探そうと、引っ越し荷物の山を漁り始めます。慌てるでもなく、のほほんと応対する亮亮。これまで付き合ってきた女の子の名前を並べ立てた挙句、自分は“不主动、不拒绝、不负责”(誘わない、拒まない、責任は取らない)って主義だとのたまう。

結局、二人はなし崩し的に同棲を始め、よくもこんな男の元に留まろうと思ったもんだ...と呆れたのもつかの間、喵喵の方も人の事は言えない行状で、まあ、ある意味お似合いのカップルではあります。

ところが、喵喵の方はかなり本気になってしまう。亮亮は、(彼のできる範囲内で)誠実に対応はしてるのですが、元カノとの関係もゆるいし、良く言えば女の子に優しいので、喵喵はだんだん不安にかられるようになり、携帯の履歴をみたり、元カノの写真を燃やしたり、だんだん常軌を逸してくる。

さすがの亮亮もキレてしまい、大家さんの前で大ゲンカをして飛び出し、下まで降りたところで喵喵から電話が来る。上を見て、と言われて振り向くと、18階の部屋から今にも飛び降りそうな彼女が見える。慌てた亮亮は電話口で説得しながら階段を駆け上がってるのですが、最後には毛沢東まで持ち出して忠誠を誓わされる、ここの対話が笑えます。

しかし、勝利を収めた喵喵のエキセントリックな行動はますますエスカレートする一方。彼女がテレビドラマのロケで3か月留守にすることになると(字幕では出てなかったけど“横店”に行く、と言ってましたね。そこは日本でいえば太秦の撮影所みたいなところで巨大なロケ地。《蘭陵王》もそこでロケしたそうです)、亮亮は空港で「旧正月には両親に合わせよう」とか言い出したりして、心のこもったお見送り。しかし彼女が出かけた途端、笑顔満開で同僚とクラブへ繰り出し、自由を満喫…しようとしたら、そこへ喵喵からの電話が…。

家にいるという嘘はもちろん見破られ、次の日帰宅すると、なんと家には喵喵の姿が。彼女の束縛はだんだんきつくなり、カードの残高を調べられたり、家には隠しカメラを仕掛けられていると知って、亮亮は「お前は頭がおかしい!」と言い捨て、今度こそ飛び出してしまいます。

追いかけてきた彼女に、上着は私が買ってあげたものよ、と言われれば上着を脱ぎ捨て、ズボンも私が買ってあげたと言われてズボンも脱ぎ捨てて逃げる亮亮が哀れ…もうこうなると自業自得とかって言ったらカワイそう。

ランニングとパンツ姿でタクシーに乗り込み、タクシーの運転手に「お客さん…行動芸術(パフォーマンス・アート)かい?」って言われるのがまた笑える(中国では“行動芸術”と称してストリーキングが流行ってるらしいので…)けど、本人はそれどこじゃありません。

同僚に頼んで逃げ込んだ先にも、結局喵喵が現れ、もはやホラーの域に達したところで、彼女は言います。「別れるから最後に送って行って」
そして二人は最初会ったときと同じように、無言で車に乗る…。
  *
車を壊され、冒頭から放送禁止用語を叫びまくる亮亮に、いったい中国の映倫ってナニを検閲してるんだろうと驚きを禁じ得ないこの映画、ウィリアム・フォンが嫉妬に狂った女に悩まされる不実な男の役を演じてるのを2本続けて見たことになるんですが、いったい何の意図が? いかにもそういうことしそう、という理由で決めたキャスティングなのでしょうか(謎)。

ていうか、中国の女の人ってこういう人が多いのか?

でも、多かったら映画にはならないでしょうから、それほどでもないんでしょうけど(と思いたい)。

倪妮(ニー・ニー)演じる喵喵は金持ちのぼんぼんに、オレに囲われないか?と持ちかけられて断ってますが、そういうのはイヤだと思ってるくせに、自分の方は実質上、亮亮を囲っ(“包养”)てて、相手もそれがイヤだということがどうしても分からないらしい。

原タイトル(《我想和你好好的》)通り、せっかく、お互い相手に良くしようと思っているのに、手にしたものを失いたくないあまりに、却って失ってしまう愚かな女の役、一歩間違えばただの怖いひとで終わりそうなところ、女王様然とした態度の裏に純情可憐な心を秘めた、倪妮のツンデレ演技が光っております。

亮亮の方も彼女が好きで、合わせようといろいろ努力はするものの、手を洗えだのなんだの、あれこれ指図されて反抗したくなる気持ち、分かるなぁ〜。

終盤では、“一点儿自由都没有”ちょっとの自由さえない、“像个囚犯”囚人みたいだ、と思ってしまう。もうこれはラブストーリーとかっていうより、尊厳を懸けた人間の戦いの様相を呈しております。

邦題の『息もできないほど』は「息もできないほど」愛してるのかと思わせて(喵喵の方は、あるいはそうかも)、「息もできないほど」束縛されてるという意味だったとは、なかなかやりますね。

亮亮は玄関先でやいのやいの言われ、ガラス瓶を自分の頭で叩き割って出勤してしまい(ドリフかよ…。これよく時代劇とかで、失敗した人がわざと自分を殴ったりするのに似てる)、プレゼンの時に頭から血を流してるのに気付いたときの茫然とした表情は、実に忘れがたいものがあります。

ちなみにこのプレゼン、コピー案から推すと“中国移動”(チャイナモバイル)の広告だったみたいですね。プレゼンが行き詰まり、代案を出せと言われて亮亮はノートに、“我能!”(オレならヤれる!)ってヘタウマ(?)なでっかい字で書いてますが、喵喵のために書いた手書きのお手紙とはだいぶ筆跡が違うような…。

亮亮は、不安がる喵喵に子どもを作ろうと提案し、「良いママになる自信がない」と言われると、じゃあ歳を取ったら誰が面倒みてくれるんだ、と聞く。“我伺候你”(私がお世話をするわ;かなり「かしずく」に近いニュアンス)と言われると、“那你先死了呢”(君が先に死んだらどうするんだ)…この問いへの答えが「毒殺するわ」なのが笑えるんですけど、その辺にいくらでもいそうな、こんなどうしようもないくらい普通の(情けない)男(そして、やっぱり劇中でお料理したりしている)の役に、ウィリアム・フォンは本当にピッタリです。

一つだけ言わせていただくと、オフィス勤めであろうコピーライターのくせに、ずいぶん日焼けしてるのが気になるんですが、広告をロケして撮ってるからかな。あと、最初から最後までものすごく眠そうで、働き過ぎじゃないかと、ちょっと心配です。会社勤めも大変ですね、どうかご自愛ください!

*ちなみに、ウィリアム・フォンさんへのインタビュー番組は、テレビドラマ「蘭陵王」を1話ずつ楽しむ記事→こちら で途切れ途切れにご紹介しております。この「息もできないほど」製作中のエピソードは第11話の記事→こちら に登場します。よろしければどうぞご覧ください。 


プリンスシネマ シアター1で見ました。
こじんまりしてますが、とてもいいシートです。
見やすい席は、D、E列あたり。
posted by 銀の匙 at 09:34| Comment(4) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
実は今まで、ネットで「我想和・好好的」を見てたところでした!(中国語音声・英語字幕ですが)。
東京ではいろいろ見られていいですね〜(地方在住です)。

最初は微笑ましいラブストーリーなのかと思って見始めたのですが、ヒロインの言動がどんどん狂気じみてきて、それがすごく痛々しくて、エキセントリックなだけでなく、とてもチャーミングなところもあるキャラクターだっただけに余計に、見ていてつらかったです・・・。

ウィリアム・フォンの出演作は「蘭陵王」のほかではこの「我想和你好好的」と「二次曝光」(こちらもネットで、中国語音声・英語字幕で見ました)しか見てないのですが、不実な男の役を演じることが多いんですか?^^;

出演オファが殺到しているそうなので、役柄も選りどりみどりでしょうに、にもかかわらずそういう役が多いってことは、本人がそういう役を好んでいるということでしょうか(笑)
それにしても出演作品の多さにビックリです。まるで大杉漣並み?(笑)


P.S.
「蘭陵王」の原語のセリフ紹介の件、翻訳が間違ってるといいたいわけじゃないことはもちろんわかってますよ^^
原語を知るとそこからいろいろヲタクなネタが出てくる・・・まさに、それを楽しんでます^^
Posted by 銀 at 2014年10月26日 03:03
銀さん、こんにちは!コメントありがとうございます。

ネットがあると、居ながらにして海外の映画やドラマも楽しめて、ありがたいことですよね…。

私は数日の間に「黄金時代」と「息もできないほど」を見てしまったので(特に「黄金時代」はひどかったというか、あっぱれな不実っぷり)、もうお腹いっぱいです。

それに『蘭陵王』だって、本人は全然そう思ってないみたいだけど、ヒロインから見たら「不実」と言われても仕方のない面も…(あれでそう言われちゃ気の毒ですが)

ま、ご本人様は、自分とは違うキャラを演じられて楽しいんだと、そういう事にしておきましょう!(^_-)

「演技」で美男子を作りだすのってスゴイなと毎回感心しながら見ているんですが、大杉漣さんみたいに、いろんな役が出来そうですね。

*

それから、翻訳の件、コメントに書かずに本文に書けばよかったですね。申し訳ありません。

実は以前、別の映画で似たような騒動があったのを思い出して、ちょっと注記しとかないとと思ったのでした。

またコメントに書いちゃって恐縮ですが、皆々様、私の中国語は純粋に「趣味」なので、お仕事で使われてる方とは比べ物にならないし、心構えからして違います。てきとーにお楽しみいただけますと幸いでございます。

Posted by 銀の匙 at 2014年11月01日 11:44
こんばんはー。お返事ありがとうございます!

ネットで見られるのは、ほかに見られる方法がないときには確かに有難いですけど、ホントは映画館で日本語字幕で見る方が100倍良いです・・・。

それに、もともと感情移入しやすい方なので、この映画の場合は夜中にネットで一人で見たのがイカンかったです。

蒋亮亮がただのダメンズならむしろ楽だったんですが、ズルい男ではあるけど、悪いヤツというわけではない。それどころか、「誘わない、拒まない、責任は取らない」がモットーの彼にしてはかなり本気で好きなんだなというのが伝わってきたんで、余計にやりきれない感じになってしまって。

でも、そこまで感情移入させられたというのは、いい映画ということでもありますよね^^

ところで、眠たそうだったウィリアムですが、確かこの映画、「蘭陵王」と同時に撮影していたんじゃなかったかな? そのせいかもです。

(ということはこの映画と「蘭陵王」の両方でウィリアムは、身に覚えのない浮気を疑われて責められてたわけですね・・・。そりゃ〜、キレもするだろう、笑)
Posted by 銀 at 2014年11月03日 01:11
銀さん、こんばんは。コメント、ありがとうございます。

最後の段落で涙ちょちょ切れるほど笑わせていただきました(お腹痛い)。

確かに映画は、映画館で見られれば一番いいんですけど、私の観たい映画って映画祭で2回こっきり、みたいなのが多くて、たいていはスケジュールが合わないので泣く泣くあきらめてます。

(そういう作品はDVDで見ると寝ちゃうっていう別の理由も...笑)

この映画は恋愛モノにしては珍しく、男性目線(たぶん)だったので面白かったんですが、映画館で観たから最後まで我慢できたのかも知れないなーと思います。

>蒋亮亮がただのダメンズならむしろ楽だったんですが、ズルい男ではあるけど、悪いヤツというわけではない

このあたり、絶妙でしたね…。そろそろ11月11日、独身の日ですよね(ホントにそんな日あるのか?と思ったら中国ではそうなってるらしいですね)。リャンリャンどうしてるかな…?

傍目にもすごく眠そうだったこの映画(ベッドシーンでそのまま寝ちゃうんじゃないかとハラハラした)、『蘭陵王』と同時期撮影だったんですね。いったい何本掛け持ちしてたんでしょう。出演作大杉…多すぎ。

ちょうど踏雪に踏まれたころに、ツイ・ハークの映画でヤンキー役、じゃないや、尉遅真金を演じてて相当困ってたと聞いてたんですが、片や尉遅迥と戦い、片や尉遅氏としてワイヤーワークやらされてた上に、浮気の濡れ衣も重ね着させられてた訳ですね。

まさに踏まれたり蹴られたり。

道理で、全ての作品でキレ方半端ないわけだ... (深く納得)
Posted by 銀の匙 at 2014年11月03日 19:16
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック