2015年09月05日

蔡国強展:帰去来

kikyorai.jpg

↑展覧会のポスター。これが〈壁衝き〉です...でも、横浜美術館なんかスペースたくさんあるのに、なんで折りたたんだチラシしか置いてないんでしょう。残念すぎる。

横浜美術館で開催中の、中国現代作家によるインスタレーション/ドローイング展です。

タイトルの「帰去来」は有名な陶淵明の詩のタイトルからつけたのでしょうか。
英語訳もあり、

There and back again

だって。

なるほど、『ホビット』でビルボが書いた本は「帰去来」だったのか…。

と、またまた強引に指輪つながりなのね、と思ったあなた。

本展覧会最大の見せ場、〈壁衝き〉を体験いただければ、さらに「ワーグに襲撃される」というエクスカーションもお楽しみいただけますよ。これを指輪つながりじゃなくて、何だと思えと(略)。

実物大(?)のオオカミの群れが、サンタのトナカイみたいに空へ駆け上がり、透明なガラスの壁にぶち当たって崩れ落ちるというこの作品、横から眺めるだけではなく、作品の中を歩き回ることもできますが、ただの作り物でこれだけの迫力、実際こんな群れに直面したら、足がすくんで動けないでしょうね…怖くて。

…と、それはともかく、作家は以前日本に滞在していて、当時から、火薬を使ったドローイングで有名だったように記憶しています。

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↑横浜美術館の入り口ホールに設置された、火薬を使った巨大なドローイング。ここは写真に撮ることができます。


作品は見たことがあったのですが、今回初めて、会場のビデオで製作過程も見ることができました。

http://magcul.net/focus/cai-guo-qiang/
↑こちらでも一部、動画を見ることができます。

キャンバスの上に絵や下地を用意し、下絵に従って火薬を撒きます。
キャンバスに布を掛けて、導火線に火を点け、爆発させます。

火を消すと、そこに点々と爆破の跡が残り、モノクロームの濃淡がつきます。

今回の展覧会では、キャンバスばかりではなく、白磁を使って同様に行った作品もありました。花や鳥など四季折々の風物を白磁で作り美しく配置した白いタイルに爆破で濃淡がつくと、廃墟のような寂寥感と同時に、秘めたエネルギーをも感じさせます。

この作品を作ったときのビデオは、白い陶器の上に線香花火のように散る火花、雪のように舞い落ちる炎などを捉え、大変美しく、印象深いものでした。

あるところまでは作家が作りますが、あるところからは偶然、自然に任せる。

「易」にも通ずる哲学をそこに感じます。

同時に、花火となって人を楽しませるという本来の使い方よりも、全てを破壊してしまう殺戮者としての用途の方がポピュラーになってしまった火薬を、作家は自在に操りながら、後者の使われ方しか知らない人にその美を体感させ、両面を知る人には、また新たな意味を見出させようとしているように思えます。

それは恐らく、火薬を発明した人々の子孫だという矜持もあってのことでしょう。

彼は現代作家として世界各地に招聘され、いくつもの大がかりなプロジェクトを行っています。会場でその様子が上演されていましたが、どれにおいても、現地の人とつながり、平和を希求する強い気持ちが表れています。

と同時に、自らのルーツを問い直し、内省する姿勢をも感じ取ることができます。

作家はきっと、海外で展覧会を開けば、どこへいっても政治とのかかわりを聞かれ、立場を問われているのではないかと思います。現代美術とはそういうものだといえばそれまでですが、私などは、ずいぶんつまらない、矮小化された作品のとらえ方だし、本人もうんざりしてるんじゃないかとか思っていたのです。

しかし、会場でインタビューを見ると、彼は超然としつつも、自分は自分の土地に責任がある、自分の文化に責任がある、といった受け答えをしています。自分が受け継いだ文化を慈しみ、自分なりに解釈し、外の世界とも分け合おうとするその姿勢に強い感銘を受けました。

お客さんは結構入っているようでしたが、美術館自体が広いので、混んでいる感じはしません。後々、語り草になるような展覧会だと思います。ご都合つく方はぜひ。

2015年10月18日まで開催。
公式ページは
http://yokohama.art.museum/special/2015/caiguoqiang/
←こちらです。
posted by 銀の匙 at 03:03| Comment(2) | TrackBack(0) | 展覧会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
おおおおぉ
遠すぎます横浜・・・
もう当分強引な指輪遊びしか
できないのか〜と寂しいかぎりですが
かといってクリチャー好きの
あの方のシルマリルは見たくない・・・
ような見たいような・・・・
・・・・
半端なコメ失礼いたしました^^;
Posted by elfarran at 2015年09月06日 14:10
Elfarranさん、こんばんは。

そうですね、こちらにあの転送装置があれば、ワーグを送って差し上げたのに…(って要らない?)

あの方がシルマリルをやったりしたら、スランドゥイルがクリーチャー化した以上の災いが上のエルフにふりかかることでしょうよ。くわばらくわばら。

それでも、まだデル・トロよりはマシだったとイルヴァタールに感謝の踊りを捧げる私です。

では、今週もお互い、頑張りましょう!
Posted by 銀の匙 at 2015年09月07日 00:29
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