2015年11月03日

蘭陵王(テレビドラマ24/走馬看花編 第12話)の2

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ハ〜イ、みなさま、ハッピー・ハロウィーン!

…って、アメリカじゃ言うらしいけど、いくら韻を踏んでたって、ハッピーとハロウィーンとはどうも食べ合わせ悪そうなんだけど、と秘かに思う今日この頃。

っていうか、もうハロウィーンは過ぎちゃったし(←完璧に乗り遅れている)。

この時期、東京の繁華街はさながらリアル「百鬼夜行図」(昼もだった)と化しているため、絶対通りたくないので用事の滞ること。しかし、ゾンビの餌食になるくらいなら、納期遅れで叱責された方が百倍マシ

このお祭り、元は冬の訪れと共に,死者の霊を迎えるためのものだったってことで、日本で近い行事っていったらむしろ「お盆」。

だからでしょうか、日本で怪談といえば夏ですが、英米の怪談はこれからがオンシーズン。

諸事情考えあわせると、なんで日本でハロウィーンが大人のコスプレ祭りになっているのかイマイチ理解できません。

どうせ跡形もなくアレンジするんだったら、カボチャ投げとかにしたらどう? 洛陽城の城壁から落としてみたら、今度はリアル「阿鼻叫喚の図」になりそうだけど…。

って、仮面をつけてコスプレしてるドラマを見ながらそんなこと愚痴ってみたって説得力なさすぎなので、とっとと始めますか。

正調ハロウィーンは、仮面をつけて悪霊追い払ったりもしてたみたいではありますが。

前話(第12話の1→こちら)までのあらすじ。

(蘭陵王関連の記事を最初からご覧になりたい方は、「蘭陵王」のカテゴリー(→こちら)を戻ってご覧ください)

恐喝、泣き落とし、おねだりと、持てる限りの先祖伝来のナンパ術を駆使して、楊雪舞〈よう せつぶ/Yang Xuewu〉をお屋敷に連れ込んだ蘭陵王〈らんりょうおう/Langling Wang〉=高長恭〈こう ちょうきょう/Gao Changgong〉=四爺(スーイエ/Si Ye〉
…って、何か違ってましたっけ?

ま、いいや、要約すると当たらずと言えども遠からずのこの状況下から離脱を図る楊雪舞は、韓暁冬〈かん きょうとう/Han Xiaodong〉に、故郷に帰るための馬車を調達するよう頼みます。

一方、可愛い孫娘を取り戻さんと、ボロずきんちゃん…じゃなくて、雪舞のおばあさまが、奔走する韓暁冬の前に姿を現します…。


にしても暁冬よ、

「ばあさん」

って、コラ、無礼者!そこに直らっしゃい!
年長者を何と心得る。

中国語はまあ、“老人家”(ご老体)だから許しといてやろう。

このなご老体が、まぁ、一服、って差し出した物体、最初はマリファナか葉巻かと思いました(笑)が、これはお手紙。当時の手紙は革に書いてたんでしょうか? 第7話(→こちら)の“雞毛信”(緊急の軍事郵便)も革製でしたけど。

驚く暁冬に、「雪舞に」と言って渡す手が、蘭陵王に引き続き、また手タレのようにキレイ(甲骨をも打ち砕く鉄拳なのに…)。

それにしてもおばあ様は、鳥かごを持って歩いてるのですが、“八旗子弟”じゃあるまいし、いったいなぜでしょう。

ちなみに“八旗子弟”というのは特権階級にあぐらをかいて遊び暮らしてる、高官の子弟たちのこと。

清(しん:1644ー1912)の時代は満州人の天下でしたが、支配階層である彼らは8つの軍事グループに編成されており、それを“八旗”といいました。ここに属する人たちは黙っていても実入りがあったため、だんだんに怠けて遊び暮らすようになります。

そのうち、道楽息子全般を指して“八旗子弟”というようになりました。

彼らはヒマだしお金があるので(いいなぁ〜)、いろいろとオタッキーな趣味に走るのですが、その一つが鳥を飼って籠に入れ、散歩させて歩くこと。

“八旗子弟”といえばコレ、ということなのか、《虎山行》でウィリアム・フォンが演じた「武道家のドラ息子」容寛〈よう かん/Rong Kuan〉も、登場シーンで鳥籠もってぶらついてたし、《宮》では康熙帝の第8皇子、つまり文字通りの“八旗子弟”の役なので、ちゃんと鳥かごと一緒にフレームに収まってるシーンがあります。

一方で、鳥とのお散歩は高齢者の間ではポピュラーな趣味で、90年代くらいまでは、朝、香港や広州の街中を歩いていると、鳥籠を手にしたお爺さんが公園を散歩していたり、飲茶屋さんに集まって、“早茶”(モーニングティー)などを嗜んでいたりする光景を見る事ができたものです。今もやってるのかな?

と話が逸れましたが、連れているのはナビがわりの五色鳥なんでしょうね。まさかコレがいないとおばあ様さえ村に帰れなかったりして…。

ですけど、第1話で、楊堅〈よう けん/Yang Jian〉は10年に一度、おばあ様を訪ねて占ってもらう特典を得ているという話でした。彼も鳥がいないと村の位置が分からないんですよね?ってことは、次の10年のために鳥を持って出ないと、二度と来られなくなるんじゃないでしょうか(10年の間に鳥がインフルエンザにでもなったら、それで終了?)。

その辺、どういう仕組みか分かりませんが、ひょっとしたら丹州城の門番のお兄さんみたいに、五色鳥にも兄弟がたくさんいるのかも知れません。

*

一方、こちらは蘭陵王のお屋敷。とっとと出ていくつもりの雪舞は、何かを繕っているのですが、あの〜、繕ったら却ってみっともないことになるのでは…、と部外者ながら心配です。

そこへ、邸内をノーマークで移動して、老女が現れます。

雪舞の安否が心配だからって四爺にさんざん頼まれてたのに、五爺=安徳王〈あんとくおう〉=高延宗〈こう えんそう/Gao Yanzong〉は言われたことをちゃんと守ってるんでしょうか、ホント…(と思わせる演出がニクイ)。

老女は“福姥”(フーラオ/Fulao/福ばあや)と名乗り、雪舞の身の周りのお世話をすると言い出します。力いっぱい辞退する雪舞ですが、何とかここに置かせてと懇願する福姥を追い出すわけにも行かず、困り顔です。

一方の福姥は、さりげなくご主人自慢を始めます。

“四爺休兵回府 向來不是讀書就是習武 從沒聽他說過中意哪家姑娘”
(四若様は戦地からお戻りになると、お勉強でなければ武術の稽古、どこかのお嬢様を見初めたようなお話はついぞ聞いたことがございませんでした)

“雪舞姑娘能得到四爺的青睞 妳必定有著閉月羞花之貌”
(若様のお目がねにかなうとは、雪舞さまはさぞや花も恥じらうご器量であろうと…)

“得到青睞”(お目がねにかなう)“青”は、“睞”は眼のこと。

♪青い目をしたお人形は〜♪ ウィリアム・フォンが大事にしてたらしい、のですが(この話はまた後ほど)、ここの“青睞”はドラマの時代背景である魏晋南北朝と関係のある言葉です。

戦乱の時代だった当時、浮世に嫌気がさした貴族たちは、浮世離れした議論を交わす“清談”というのに走っていました。その代表格が「竹林の七賢」で知られる奇人たちで、寒食散(第8話→こちら)を常用していた美男子ジャンキー(この時代、美男子多すぎでお腹いっぱいなのですが、やはり見た目が物を言った時代だったようですね)嵆康〈けい こう〉や、奇行で知られる阮籍〈げん せき〉もその一人でした。

阮籍は、自分の気に入るお客がくると“青睞”で、気に入らないお客が来ると“白眼”で出迎えた、ということから、“青睞”は歓迎する、“白眼”は嫌う、敵視する、という意味になったんだそうです。

「白い眼で見る」「白眼視する」というのは、ここから来た表現なんですね。
でも、よく考えたら、嫌いな人のところへ行って白目剥かれるなんて…ホラーかっ!

…という状態も、あったかもですが、これは要するに、マンガなんかでよくある、ふんっ!って斜めや横を向いたりしたときに、相手には白目の部分が多く見える状態を言うんでしょうね。

で、ふーん、阮籍って尉遅真金みたいに目が青かったんだ〜ということなのかと思ったらそうじゃなくて、ここの“青”は黒、“睞”は目線のこと。なので、「黒い目で見る」、ということです。

昔、何かのテレビ番組で、気に入ったものを見るとき、人間は自然に瞳孔が開く、という実験をやってました。瞳が黒い人だとあんまり違いが分かりませんが、青とか茶色とか目の色が薄い人だと明らかに濃い色の部分の面積が広くなるんですよね。

中国の人は瞳が真っ黒っていうより茶色の人が多いから、観察眼の鋭い人が、人間、好きなものを見ると目が黒っぽくなるな、と気づいたのかも。

まあ、ここではたぶん、相手を真っ直ぐに見る(「白眼視」に比べると黒目が多く見える)、ということなのでしょうが…。

ちなみに中国語では“青”が黒の意味になる言葉は他にもあり、例えば、“青衣”とは黒い服のことを指します。

」が「」なんて変なの〜とは思いますが、日本語だって「」が「」の意味のことがあるので(「青葉」とか、「青信号」とかね)、人のことは言えません。

四爺の瞳孔が開いてたかどうかはともかく、器量のことを言われると、途端に困っちゃう雪舞は、

“只能說 你家四爺的審美觀跟其他男人不太一樣”
(それはつまり、お宅の四若様の審美眼は他の男性とだいぶ違うということでしょうね)

と、謙遜ともとれるセリフを言いますが、福姥は、下を向くような動作をして、

“呸呸呸”〈pei pei pei〉

と言います。

ここ、面白いので中国語音声の方でご覧になってみてください。日本語には訳しづらい箇所ですが、このジェスチュアは文字通り「唾棄する」ということで、ナンセンス!!というときの芝居がかった表現です。日常では、日本語だったら「ちぇっ!」と言うような場面でに、“呸”と言ったりします。

“您的美是那種獨樹一幟的 與眾不同的美”
(あなたさまの美しさは独特のもの よそにはございませんよ)

“我們四爺是誰呀 奴婢相信四爺的眼光”
(私どもの若様をどなたと心得ておいでです。私は若様が人を見る目を信じております)

てことで、あはは、結局は四爺自慢ってことですよね、福姥。

ここで、福姥はセクハラまがいのマッサージに走ろうとしますが、雪舞が逃げるので、自分の手に力が入らないせいで嫌がられてしまうのだと言い出し、

“難道我真的老了 該告老還鄉啦”
(わたくしめも寄る年波で これではお暇をいただいて故郷に帰った方が)

と言います。

おや、このセリフは聞き覚えがありますね。

そうそう、周のラスボス(←@銀さん もうコレに決定)、大冢宰〈だいちょうさい〉・宇文護〈うぶん ご/Yuwen Hu〉のセリフにありましたよね。

こんなおバカな皇帝がいるなんて、あたしの監督不行き届きなんで、引退して国に帰らせていただきます。

てなこと、おっしゃってました。

宇文護はてっきり雪舞のおばあ様と対決するのかと思っていたけど、実は北周・北斉のラスボス対決は、宇文護と福姥だったのか…と予感される伏線が張られておりますね(ないない)。

雪舞がフォローすると調子に乗った福姥は、雪舞は子宝に恵まれそうな腰をしてると言い出し、

“個個都像我們四爺一樣 英俊彪悍”
(いずれも私どもの若様とおんなじ きりりと美しい皇子達でございましょう)

と言います。

これで分かる通り、雪舞に期待されてるのは蘭陵王のお世継ぎ、つまりは男の子を生むことなんですね…。

ところが、この時点ではお世継ぎどころかヨメにも来ないつもりの雪舞の他人事的な反応に、福姥は、いきなり必殺技を噛ましてきます。

“有五位千金將參加選妃...都入住到咱們府裡了”
(五人のお嬢様方がお妃選びに参加なさるそうですよ。皆さま、お屋敷の中にお泊りになられるとか)

こう言われて、途端に気になりだす雪舞。おっほっほ、第2話(→こちら)で、雪舞に求婚する男子をひと目みようと、つい成人式の会場周辺に居残ってしまった誰かさんのようですね。まったく似た者同士でお似合いですこと(←棒読み)。

しかし、視聴者として気になるのはセリフの中の“千金”って言葉。「一攫千金」(いっかくせんきん)の「千金」と同じですが、ここでは「お嬢様」の意味です。

この“千金”、大枚のお宝、という意味に違いはないんですが、サイト《互動》先生によりますと、初出は《史記》の項羽〈こう う/Xiang Yu〉本紀。

それによれば、

項王乃曰:「吾聞漢購我頭千金,邑萬戶,吾為若コ。」
(項王〈項羽〉は言った。「聞くところでは、漢は俺の首に黄金千金と万戸の領地の褒賞をかけたそうだな。お前にそれを恵んでやろう」)

ここの“千金”は文字通り、黄金千金分(本当の金ではなかったようですが)という意味です。

ちなみにこれは、項羽が漢に追い詰められ、ついに自害する直前に発した、今生最後の言葉。言われている人は、彼を裏切って漢についた人なのです。あぁ…。

時代が下ると、この言葉は黄金千金にも値する「男子」の意味に使われるようになりますが、元代くらいになると、未婚の女性の意味で使われた例が出てきます。

一方、千金=女子と結びつく、別系統の話もあります。

紀元前522年の春秋時代、楚〈そ〉国の伍子胥〈ご ししょ〉は父と兄を殺され、呉国に逃亡します。その途中、食べ物を恵んでくれた女子に、自分の行先を秘密にして欲しいと頼んだところ、彼女は石を抱いて河に身を投げてしまいます。驚いた伍子胥は、10年の後、必ず戻って恩返しをすると誓いました。

その後、恩に報いるために戻ってきた伍子胥は、女子が身投げをした場所に千金を投げ込んだという、それが“千金小姐”の由来だとか。

うーん、この話はちょっと出来すぎかも。

さて、場面は変わりまして、こちらは敵将・尉遅迥〈うっち けい〉将軍に“黄金千金”の褒賞を懸けられた斉の軍神・蘭陵王殿下の「お妃選び」メイン会場から中継でお届けしております。

主役の四爺は、これまた“千金”の名に恥じない、熱帯魚ばりにきらびやかなお嬢様がたを前に、いかにも慣れてない感じで挨拶の口上を述べています。

“令我王府蓬蓽生輝”
(わが陋屋に華を添えてくださり…)

“蓬蓽”とは、荒れ放題で雑草が生えてるようなあばら家、という意味…ですが、良いとこのお嬢様が、お付きの侍女たちも連れて住み込むくらいの大きな家をあばら家って言われちゃったら、将来そのあばら家に住まなきゃいけなくなるお嬢様方はどうフォローすれば…と余計な心配をしてしまうのは視聴者だけで、お嬢様方は、選ばれる気まんまんです。

そこへ、いきなり転がり込んでくる行儀の悪い召使い、もとい、天女・楊雪舞。
お嬢様方は眉をひそめて、
“哪裡來的丫鬟”
(どこから出てきた下女かしら)
と呆れておいでです。

“丫鬟”(メイド)の最初の漢字はアルファベットのYに似てますが、これで「ヤー」と読みます。この回に出てくる下女たちの髪型、まさにY字ですよね。
要は、髪の毛を真ん中で分けてそれぞれをアップにする髪型のことで、その髪型をしてる人というのが元々の意味です。

日本でも「縦ロール」はお嬢さま、「アフロ」は具志堅、と決まっていますよね(そうかな?)。

私たちが中国娘というと思いだす、頭の両サイドにお団子を作ってる髪型、あれも“丫鬟”の一種です。

髪型が職業(?)を表すといえば、「たまねぎ部隊」って人たちもいましたよね。マリネラ国王パタリロに、忠実に使える親衛隊。タマネギ頭とサングラス、ひし形の口で統一されたその素顔は絶世の美青年、らしいのですが…。

ある時は口元涼しきパタリロ殿下、またある時は敵国の親衛隊に紛れ込んでタマネギ部隊な我が主人公・その正体はドレッド四爺(かよ)ではありますが、何だかんだ言ってやっぱりお妃選びが気になってるらしい雪舞を見て、余裕の態度です。

“要聽就進來聽,就算在外面偷聽也要安分守己一點”
(聞きたいのなら入って聞くがよい 盗み聞きなら静かに頼む)

んなこと言いつつも見るからに“得意”(嬉しそう)な四爺の元へ、報せが飛び込みます。

“英國公遺女 鄭千金到”
(英国公形見の鄭お嬢様ご到着)

それを聞いて、思わず雪舞を見る四爺。

“四爺 許久不見”
(第四皇子殿下 お久しぶりでございます)

思い出せない四爺ですが、そこへかんざしを差し出す鄭児。
この様子だと、昔かんざしを贈ったことがあるのかと、思いますよね、ふつう。

“許久不見 你出落大方”
(これはしばらく。立派な娘御になられて)

という、四爺の返事は、まあ、親戚のお嬢さんなんかに久しぶりに会ったときの挨拶としては良くあるパターンですね。

“出落”というのは、娘さんが年頃になって綺麗になる、ということ。
“大方”というのは、優雅で上品だという、年頃の娘さんへの褒め言葉です。

しかし、これは決まり文句なので、文字通りには受け取らないのが普通。

普通はね。

ここの日本語吹き替えは実に上手いですね。
「ああ、あのときの。久方ぶりにて見違えた。」

“曾受四爺恩惠”
(かつて第四皇子殿下からは格別のお計らいをいただきました)

と何だかものすごく訳ありっぽい雰囲気を醸し出す鄭児。こういう発言を何気なくスル―してしまう四爺は、鈍いとしか言いようがありません。

「鈍いひと」
と、第12話で日本語吹き替えの雪舞が指摘した通りです。

ところで、噂に聞く天女さまはどこですか、と鄭児に聞かれて、きょろきょろあたりを見回す千金の皆さん。全員、雪舞が視界に入っていながら、他を探すのが、何とも言えずカワイそう。

そこで、パワハラ&セクハラの権化と化した四爺、いきなり雪舞を抱き寄せて、

“視如珍宝”(何よりも大切な宝)と言って紹介します。

「速報!! あの、第3話(→こちらで魅せた(あ、字が違う?)“衣冠禽獣”は演技ではなかった!!」と、斉の「東ス○」にスっパ抜かれそうなこの態度、当然女性の評判はさんざんで、千金の皆さんは言いたい放題。四爺は頭おかしいんじゃないの、くらいな勢いです。

ところが鄭児は雪舞に近づき、殿下は非凡な御方、きっと雪舞さまには特別なところがおありなのでしょう、と言います。

鄭兒の賢いこと、ここで咄嗟に四爺の反感を買わないような物言いが出来るとは、やはり宮廷で苦労して育ったからでしょうか。でも、このセリフも結局、雪舞を認めているというよりは、四爺を持ち上げてるってことですよね。

一方、こんなこと書くまでもないかと思いますが、四爺があのようなセクハラ行為に出たのは、「鄭妃」が現れてみたところで、自分が宝と思っているのは楊雪舞なんです、と公衆の面前で紹介したでしょ、と雪舞に納得してもらうためだと思います。

どうみても、ただのセクハラ部長が取引先に女子社員を紹介するときに、いやぁうちの○○クンは良い子でしてね〜ってどさくさに紛れて触ってるようにしか見えなくて迷惑なんですけど。

と、そこに五爺が“懿旨”(皇太后さまの命令)を読み上げにきたとの報が届きます。

“懿旨”は皇太后、皇后などの命令を指し、皇帝の命令ならば“聖旨”と言います。

“懿旨”“聖旨”ではどっちが上か! というのは微妙な問題なんですが、孝行が基本の古代社会では、とりあえずは“懿旨”の方を上と見做したのではないかと思われます。皇帝の命令とぶつかっていれば、臣下が必死で調整したのでしょう。

と、そのような最重要指令が届いた瞬間、ウィリアムは息を呑むという細かい演技をしてるんですが、なぜなんでしょう…?(笑)

皇太后さまは、今回、自らお妃選びのお題を出すおつもりだそう。後ほど、その真の理由は明らかになりますが、この回では孫バカ+ババ孝行を強要する、ワガママ成分多めな印象です。

この「お妃選び」というアイディアはなかなか秀逸なので、ドラマではもうちょい膨らませても面白かったかと思いますが、でもちょっと待ってくださいよ。なんか…違和感ありませんか?

この手の、求婚相手に試練を課して、勝ち残った者が愛を手にする、というパターンは世界中に類話があります。誰でもすぐ思い出すのは「かぐや姫」でしょうが、「長くつをはいた猫」とかもそうですよね。

これらの話に共通しているのは、「試練をくぐりぬけ」たあと、勝ち取るものは「お姫さま」だってことです。でもこのドラマの場合、試練に遭うのはお妃候補たちで、獲得する賞品(?)は四爺。さすが、女人に見まごう美形の軍神なので、「お姫さま」待遇なんですかね? 「トロフィーワイフ」ならぬ、「トロフィーハズバンド」ってヤツかしら?

と、攻守入れ替わってはおりますが、この手の類型のお話を「難題婿譚」(なんだいむこたん)といいます。

思うにこの作品は、意識的なのかどうかは分かりませんが(たぶん、計算してやってるんでしょうけど)、「貴種流離譚」の変形バージョンなど、物語の類型の枠を巧みに使っています。

ぱっと見、何だかいろんな少女マンガを継ぎはぎしたような作品だなぁという印象なんですが、実は、そのさらに内側に、こういう民話のパターンが隠されているんですね。だから、観る人の潜在意識に働きかける力も強いのでしょう。そもそも、少女マンガ自体、パターンを利用していたりするのですが…。

このドラマのプロット全体もそうしたパターンの1つを見事に利用していると私は見ていますが、そのパターンを分析するには最終回の内容が鍵となるので、最後に改めて振り返り、考察してみたいと思います。

なお、史実として、“選妃”というのはありますが、正妃はほとんど政略結婚なので、それ以下の“貴妃”“美人”を選ぶときに“選妃”を行ったようです。つまり、宦官たちが宮女を容姿や妃にふさわしい立ち居振る舞いかどうかで篩にかけてゆき、残った人が選ばれるというシステムだったようです。

さて、1,000両に相当する懸賞金・四爺争奪戦の第1問は、蘭陵王はお祖母さま孝行な孫なので、その妃にもぜひ同じようにしてほしい、との願いから、皇太后の御膳を用意するようにとのこと。

どうせ、お嬢様方なんて、ご自分でお野菜を洗ったこともないんでしょう、私はお妃選びに参加しなくていいからよかったわ、と喜ぶ雪舞に五爺は、ダメダメ、皇太后さまは、雪舞にも参加するようにと特にお申しつけになった、といい、これからお言葉を読み上げる、と言います。

で、五爺がここで四爺に、ウィンクしてますね。この意味は、のちのち明らかになるでしょう。

この勧進帳の場、必死に笑いを堪えながら聞いている四爺の後ろで、真面目くさって聞いている千金の皆さんが笑えます。

雪舞について、わざわざ設定された、

“未能通過考核 我都不會接納 孫媳婦 請她另選出路”
(もしも全うできなければ、孫の側室扱いなど許しません。出て行ってもらいます)

という「失格条項」が読み上げられると、なんとまあ、鄭児は今から嬉しそう…。

雪舞は相変わらず、私はお料理もヘタだもの、今すぐ出てってもいいわ、と、横で四爺が尉遅迥もビビらすほどの物凄い顔をして睨んでいるのに、涼しい顔をしています。

五爺はそこで、そんな箒で掃きだされるみたいに簡単には行きませんよ、出ていくときは百叩きの刑ですからね、と、これもスゴイ顔をして言います(ぜひ、DVDを止めて見てみてください(笑))。

この“杖打一百大板”という刑罰、お尻ペンペンなんていうのとは訳が違います。

何せ、この場に生き証人がいますから。ね、五爺。

それでは動かぬ証拠、正史《北斉書》巻11を見てみましょう…しかし…これはまたお下劣な…お食事中の方、下ネタ勘弁な方はどうかスルーお願いいたします。

“為定州刺史,於樓上大便,使人在下張口承之。以蒸猪糝和人糞以飼左右,有難色者鞭之。孝昭帝聞之,使趙道コ就州杖之一百。道コ以延宗受杖不謹,又加三十。”

(安徳王・高延宗は)定州刺史(長官)だったとき、階上で大をして、階下にいる者に口で受け止めさせた。蒸し豚に人○を混ぜて左右の者に供し、嫌がった者を鞭で打った。報告を受けた孝昭帝(斉の第3代皇帝)は趙道コを遣わして延宗を百叩きにした。しかし、反省の態度が見られなかったとして、道徳はさらに追加で三十回叩かせた。

こらこらっ!! 何やってるんだか高一族はもう…。
史書の続きを見ると、五爺は相当体力があった人らしく、なので100回叩かれても悪びれる様子もなかったんでしょうが、この刑罰で亡くなる人もいるくらい、本来は酷刑。

こんな、百叩きが常態化してるような家にヨメに行くなんてとんでもないわ!と憤慨してるかと思いきや、

「仲良き事は美しき哉」(かぼちゃ)

と、揮毫していると思しき雪舞。頑張っているっぽいのですが、タマネギだのカブだのの絵を描いて料理ができるようになるんでしょうか…?と視聴者が心配するまでもなく、もうこの時点でほぼギブアップの様相です。そりゃ〜、あのエオウィンスープ(第7話こちら)を皇太后さまに差し出した時点で、ゲームオーバー&百叩きは確実です。

でも、絵はなかなか上手いですよね?(←褒めるとこはそこか?)

家の中では明るさが足りないのか、なぜか屋外で作業していますが、机の上を見るとこんな感じです。

s-硯.jpg

火薬同様に中国で発明され、当時ようやく一般にも普及しだした“紙”を惜しげもなく使い、硯で墨を擦って筆で描いています。

この、硯・墨・紙・筆の四つを総称して「文房四宝」(ぶんぼうしほう)といい、文人たちは昔から、ブランド硯やブランド墨にこだわりました。いつの時代にも形から入る人はいるもんです。

“文房”という言葉は、どうやらこのドラマの時代である南北朝あたりから使われ出したらしく、そもそもは文人の“房”(部屋)つまり、書斎を指しました。そこに必携の道具として備えられたのが、硯、墨、紙、筆というわけです。

上の写真の硯は、豪華ではありますが、今でも作られていそうな石製の硯のようですね。中国では古くから、いろいろな材質の硯が使われていたようなのですが、隋、唐あたりまで主流だったのは石製ではなく、陶器で出来たもの。

形は四角もありましたが、当時好まれたのは円型だったようで、出土品は、これは何かって聞かれたら、京○ラ製の大根おろしですか…?としか答えようのない代物。

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ご丁寧に色つきのものまであります。

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同じタイプの硯は日本でも作られていて、奈良時代のものが東京国立博物館に展示されています。

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そんな白い服着てお習字なんてしてると汚すわよ…と視聴者をスリルとサスペンスの世界に誘っている雪舞とは違って、賢いお嬢様方は、「将を射んとすれば、まず馬を射よ」とばかりに、安徳王攻略に乗り出しています。

この故事の出典は杜甫の詩《前出塞》にあり、元々は「人を射らばまず馬を射るべし」でした。相手を倒そうと思ったら、まず相手の大きな力を削ぐべしというほどの意味だったのでしょうが、今はもっぱらラブ方面で、結婚したい娘がいたら、まずお父さんに気に入られるべし、というような場合に言ったりしますね。

それを忠実に実行して、見事ヤン・ミーのお母様に気に入られるという、なかなか策士なところを見せた、ウィリアム・フォンこと中の人でしたが…。

では、ちょこっとだけ、その顛末をご覧いただきましょう。
2012年1月のインタビュー番組、《非常静距離》http://video.sina.com.cn/m/fcjjl_61643533.htmlから。
検索エンジンによってはヒットしないことがあるみたいです。Googleだと見られました

ゲストは楊冪〈ヤン・ミー/Yang Mi〉と馮紹峰〈ウィリアム・フォン/フォン・シャオフォン〉ですが、別々に出演しています。2011年にテレビドラマ≪宮≫で共演した二人は、この番組でもほとんどカップルのように扱われています。

これからご紹介する箇所は、番組中、ウィリアムが出演した部分です。司会の李静お姐さんが、ヤン・ミーに電話を掛けています。

=李静
=ヤン・ミー
=ウィリアム・フォン

10:00ごろから

:ヤン・ミー、ニーハオ。
:あ、李お姐さん。

思い出していただけますでしょうか。こうして相手の名前を呼ぶのは親しい同士の挨拶の代わりですね。親しみと敬意を示すために“姐”を付けています。

:いまね、紹峰が私の向かいに座ってるの。何かメッセージはありますか?
分かってもらえると思いますけど、今日の話題はずっとお二人に関してなんだけど。早いとこ答えを聞かせてくれないかしら。

(電話中、お芝居か天然か分かりませんが、ずっと物凄いボリュームで咳払いしているウィリアム)

:みんながその時になったら…ちょっと、紹峰。ダメよ。わざと私たちの会話を邪魔しないように。
ヤン・ミー、あなたのお父さんは、すごく彼が気に入ってるんですって?
:母がすごく気に入ってるんですよ。
:どうして?
:母は私を見るたびに、聞くんです。ほら、紹峰は最近どうしてるの?
どう、あの作品に出てるけど、どうかしらね。最近、連絡取ってるの?
:あなた自身はどうなの。お母さんはもう二人で付き合ったらいいじゃないの、って言おうとしてるんじゃないの?
:私が、そんなに彼のことが気になるんだったら、番号教えるから自分で電話したら、って言ったら、母はね、
(すごく落ち着かないウィリアムが映る)
もう電話もらったわよって。



はははは。
馬は落としたけど人は陥ちなかったみたい。残念でしたね。

そんな効果の薄い策を弄しているうちに、将を落とすどころか、弟の五爺に
“將你一軍”
と、「王手」を掛けられてしまう実に不甲斐ない四爺。中国では、将棋って宇文邕〈うぶん よう〉が発明したと言われているんですが、そんな敵の皇帝の遊びを楽しんでていいのでしょうか。それとも攻略のための研究かしら?

古来、士大夫(したいふ。ドラマの時代背景になっている魏晋南北朝のころは上流階級の人を指しました)が身につけるべき嗜みとしては、“琴”“棋”“書”“画”“剣”がありました。

“琴”は7弦の「古琴」のこと。弾くとぼよよよ〜ん、と渋い音がします。諸葛孔明が「空城の計」のとき、余裕がありそうに見せかけるため奏でていたのがコレですね。

“書”は書道のこと、
“画”は中国画。
“剣”は武器の剣ですが、文人は剣を佩び、武人は刀を佩びる、と言われます。一種の装身具として持ってた人もいるし、道士がお祓いのために必ず剣を持っているように、“避邪”(へきじゃ;魔除け)の意味もあるのでしょう。日本では魔除けの武具といえば「矢」ですが…。

また、“棋”が入っていますが、これは実は「将棋」ではなく、「囲碁」のこと。現代語では“圍棋”と言います。だから、史実の蘭陵王府で指していたとすれば、将棋よりはむしろ囲碁のはずです。

当時、他にどんな遊びが盛んだったかということを知るうえで、面白い資料が《顔氏家訓》という本に出ています。

この本は、顔之推〈がん しすい〉という人が、子孫のために記した家訓です。もともと、南朝の梁にいた顔之推は、内乱や戦乱に翻弄され、何度か捕虜になった挙句に、北斉に逃げ込みました。

斉では文宣帝(第2代皇帝。四爺パパの弟)に仕え、斉が周に滅ぼされると周に、周が隋に滅ぼされると隋に仕えた、ということで、まんまこのドラマの背景になった激動の時代を生き抜いた知識人です。

つまり、ちょうど蘭陵王の時代に宮廷に出入りしていた人物であり、なんと、「蘭陵王のお宅訪問」もしていたことが分かります。では、著作《顔氏家訓》から、そのことが分かる「雑芸」の巻を見てみましょう。

この本、平凡社の東洋文庫から訳が出ていたのですが、何と絶版になってしまい、参照できる資料がないので、和訳は超テキトーです(図書館にはあるかも知れないけど、ちょっと行くヒマがなくて)。

投壺之禮,近世愈精。古者,實以小豆,為其矢之躍也。今則唯欲其驍,益多益喜,乃有倚竿、帶劍、狼壺、豹尾、龍首之名。其尤妙者,有蓮花驍。汝南周璝,弘正之子,會稽賀徽,賀革之子,並能一箭四十餘驍。賀又嘗為小障,置壺其外,隔障投之,無所失也。至鄴以來,亦見廣寧、蘭陵諸王,有此校具,舉國遂無投得一驍者。彈棋亦近世雅戲,消愁釋憒,時可為之。

「投壺の礼」は、近年ますます精緻になってきた。昔は、壺の中に小豆を詰めて、矢が外へ弾き出されないようにしていたが、今では逆で、いったん入ってから外に弾き出される矢が多ければ多いほど良く、倚竿、佩剣、狼壺、豹尾、龍首などの名がついている。中でも最も華麗な技は「蓮花驍」であろう。汝南の人・周璝は周弘正の息子で、会稽の人・賀徽は賀革の息子であるが、2人とも1本の矢を投げて、40数回も跳ねかえらすことができた。賀徽はまた、小さな衝立をつくり、その外側に壺を置いて、衝立越しに矢を投げたが、外したことがなかった。
 私は鄴〈ぎょう〉の都に来てからというもの、広寧王(蘭陵王の2番目のお兄さん。画才で有名で、後年、周の捕虜になりました)や蘭陵王のところでこの類の屏風を見かけたことがあったが、この国では、矢を投げて跳ね返らせることのできる者はない。
 「弾棋」(おはじきのようなゲーム)も最近の風雅な遊びである。手持ちぶさたの折に、たまに遊ぶこともある。


「投壺」とは、ダーツの的が壺になったような遊びで、最初は投げ入れた矢の数を競っていたのが、だんだん、どんな風に刺さるかとか、リバウンドした矢を連続何回入れられるか、みたいなことを競うようになったようですね。

投壺の「礼」と書いてあります通り、もともとは礼の一環で、高貴な方々の酒席で遊ばれたゲームでした。南朝では大変盛んで、臣下が遅刻してきたので怒り狂った皇帝に、「昨晩、投壺でフィーバーしちゃって…」(古っ!)って言い訳したら、投壺ファンの皇帝は大喜びで、妙技を披露させて褒美を下した、なんてエピソードもあります。

それはともかく、同時代の特権(?)を行かして、高兄弟のおうちにお呼ばれに行くなんて、羨まし過ぎる。当時は、南朝の文化の方が洗練されていたので、そこから来た知識人ということで厚遇されたのでしょう(例の「却扇」の詩を書いた、当時の人気詩人、庾信〈ゆ しん〉(第4話。→こちら)と似たパターンですね)。

南朝ではあんなに盛んだった投壺も、質実剛健な北朝の斉に来てみると、道具だけは揃ってるんだけど、きちんとしたプレーヤーがいなかった模様。

それにしても高兄弟も、遊びもしないのに最新式のゲームグッズを揃えてるなんて、流行り物に弱かったのかしら...。

と、華やかなパーティーゲームの歓声に引き寄せられるように、東屋から走り寄る雪舞。

実はこのシーン、中国語の雪舞にはセリフがないので、なぜわざわざお嬢様方のいる場所へ近づいて行ったのか積年(ってか半年)のナゾでございました。吹き替え版は、

「何を話してるのかしら」

と補ってますね。ナイス補足。

皇太后さまのお好みを教えてくださいませ〜(はぁと)と、お嬢様方に迫られている四爺を見て、女に全然不自由してないくせに、五爺は兄上を、

“艷福不淺”
(モテモテだな)とからかいます。

この言葉、日本でも「艶福家」とそのまま使ったりしますが、中国語では“眼福”“耳福”“口福”(目の保養、耳の保養、口の保養)に並ぶ“福”の1つ。

こういう「現世の楽しみ」を否定しないあたり、中国文化もなかなかのラテン系とみました。

でも、非モテ歴二十数年の四爺はモテてる状態に馴れてないらしく、お嬢様方はすぐ安徳王の攻略に切り替えます。実際、安徳王の方が人気あるんですよね。「堅物」の四爺は、高一家の中では変わり者なのでしょう。

五爺みたいな、女にモテモテな人を“桃花運”がある、と言ったりします。あぁ、桃はピンクだから…とかそういうことではなく(そもそも、中国語でそっち方面は“黄色”)、もっと古式ゆかしい、中国最初の詩集《詩経》の詩から来た言葉です。

桃之夭夭,灼灼其華,之子于帰,宜其室家。
桃之夭夭,有蕡其實,之子于帰,宜其家室。
桃之夭夭,其葉蓁蓁,之子于帰,宜其室人。


桃の夭夭〈ようよう〉たる  灼灼〈しゃくしゃく〉たり其〈そ〉の華〈はな〉
之〈こ〉の子于〈ゆ〉き帰〈とつぐ〉ぐ 其の室家〈しつか〉に宜〈よろし〉しからん

桃の夭夭たる 蕡〈ふん〉たる有〈あ〉り其の実〈み〉
之の子于き帰ぐ 其の家室に宜 しからん

桃の夭夭たる 其の葉 蓁蓁〈しんしん〉たり
之の子于き帰ぐ 其の家人に宜しからん


教科書に必ず載ってる有名な詩なので、ご存じの方も多いと思います。

瑞々しい桃の 鮮やかなその花。
この子は嫁いでいく きっと婚家にふさわしい


以下同、てな詩ですね。

日本でいうと「万葉集」に収録されてる歌みたいな、素朴な詠いぶりが日本でも好まれているこの詩ですが、中国の人はこの詩を見ると、咄嗟に「高跳び」を連想しちゃって、ぐふっと笑っちゃうらしい。

たまたま、桃之夭夭 tao zhi yaoyao が、
逃之遙遙(とっととズラかる)と同音だかららしくて…。

実は、“桃花運”の由来として、この詩の他にもう1つよく知られているのは、“人面桃花”という故事。

相思相愛の男女が故あって別れたあと、別れた女性を男性が追慕する、というロマンチックな意味なんですが(又の名を「未練がましい」ともいう)、私なんかこっちの方がぐふっと笑っちゃうんですけど。

だってどうしても!「人面魚」を思い出しちゃうんだもの…(♪ポ〜ニョ ポ〜ニョポニョ…
( -_-)=○)゚O゚)ぐはっ!

...カボチャ投げは危険ですのでご遠慮ください。

さて、実はバックグラウンドで高跳びプログラム走行中の楊雪舞ですが、表面的には何事もなかったかのように、ゲーム会場に姿を現します。

その有様を見て、よっこらしょ、と立ち上がった四爺。
(お屋敷は椅子じゃなくてお座敷が中心らしく、座る動作に慣れてないらしいウィリアム・フォンは、その姿勢から立ち上がるまでも結構大変そう)

ここは中国語が面白いですね。

“我不知道你為了留在我身邊那麼拼命
把字都寫到腦袋上去了”

(知らなかった、君が私の側に留まるために、そんなにも必死だなんて。額に字を書いてまで)

“不如我直接告訴你 我姥姥喜歡吃什麼吧”
(いっそ、直接君に伝えた方がいいな、私のおばあ様がお好きな物を)

“我不聽”(聴かないわよ)

“我得告訴你 我告訴你 我告訴你啊”
(さあさあ、教えてあげるから)

おほほほほ〜! つかまえてご覧なさい〜って、いつの少女マンガよこれは、とこのバカップルに開いた口がふさがらないお嬢様方を前に、五爺が何とかこの場をフォローします。
“大家都看見 我四哥的態度了。”
(さて皆さま方、我が兄上の態度はご覧になったでしょう)
あとは自分で何とかしてね〜、と勝手にセルフサービスの店宣言です。

…ちょっと奥様、どうなんでしょう、鄭児と真逆の、四爺のこの態度。

お妃選びに参加してるのは建国の元勲のお嬢様方ですよ。
こんな態度で、要らない敵を作らなきゃいいですけどね…。

ところが、心配するのは視聴者ばかりなりで、お嬢様方はドライなものです。
“四爺的眼光是不是有問題啊”
(四爺さまの人を見る目にはどこか問題があるんじゃないの?)

ご発言、誠にごもっともではございますが、こんなん言ってる相手にまだ嫁ごうとするとは、お嬢様方にも問題あるんじゃないかと、ついついついつい思ってしまう視聴者。

しかし、この時代(ひょっとすると今も)、女性の地位は嫁ぐ相手によって決まるので、相手が“衣冠禽獣”だろうが“眼光有問題”だろうがどうでもよく、王妃の座はやはり魅力的だということなのでしょう。

なので、また似たような地位の花婿候補が現れれば、さっくりそちらに乗り換えるだろうから、お妃選びの戦いに八百長があってもそれほど大ごとにはならなさそうという読みもあるのでしょうが、ひとり、鄭児の本気らしい様子は、さすがの四爺も気になるようです。

“不傷和氣”
(何とか穏便に済ませたい)

なんて、そんなの、ストーカー女と後腐れなく別れようなんて、恋愛初心者には無理じゃないでしょうか。

ウィリアム・フォンのお母さまが忌み嫌う(第9話→こちら)、あの天下の遊び人・沈朝宗〈しん ちょうそう/Shen Zhaozong〉ですら失敗したのに…。

一方、雪舞は自室に戻り、ヤケ酒ならぬヤケ茶をあおります。

“他應該是姓鄭的人 共結連理 我姓楊”
(彼は鄭って苗字の人と結ばれるはずなの。私の苗字は楊よ)

“共結連理”とはまたまたクラシックな言い回しですが、これはもともと、2本の樹の枝が互いに絡み合って離れない状態である、“連理枝”から来ています。

絡み合った枝というと、「トリスタンとイゾルデ」の話を思い出しますが、自然界では結構あることなんでしょうか…?

また、“連理枝”といえば、白居易の有名な詩、《長恨歌》を思い出す方もおられるでしょう。

在天愿作比翼鳥 在地愿為連理枝

楊貴妃と玄宗皇帝のカップルは、天にあっては、(翼を並べて飛ぶという)比翼の鳥に、地にあっては連理の枝に、というほどの仲でした、という詩ですが、“比翼鳥”“連理枝”はおしどり夫婦の形容としてよく使われます。

ここで雪舞は、つと、隣の福姥にお茶を渡します。もらって飲んで、お茶碗を返す福姥の様子が実に良い演技なんでご注目くださいませ。

福姥が、自己紹介した通りの人ならば、ご主人からお茶をいただいての一連の動作は、全くお作法にかなっていませんが…。

でもここの思い悩む雪舞の態度がとってもカワイイから、おじさん、許しちゃうぞ!(←ダレ?)

おじさんじゃない福姥は、とっとと仕事を始めますが、ここでベッドの様子が映りますのでご覧になってください。掛け布団は筒状にして奥に寄せてありますね。これは第2話(→こちら)で四爺がやっていた方法と同じです。

ベッドメイクをしようとして咳き込む福さんのために、雪舞が取りいだしたるは一枚のハンカチ。
おや、これって、四爺を救った例のハンケチですかね。

感激する福姥には悪いけど、ちゃんと消毒したのかな〜、と、つい思っちゃいますよね。

そうこうしてるうちに約束の酉の刻、すなわち夕飯どきになり、いよいよ第一ラウンドの開始です。

この重要シーンの四爺がまた眠そうで…せっかく料理を作ったお嬢様方が、この人大丈夫…?という不安のまなざしで見つめる中、プレゼンテーションが始まります。

婁〈ろう〉将軍家のお嬢様が作ったお料理は、次のようないわくつきのもの。

“南齊書 虞愿傳 載 宋明帝 素能食”
(《南斉書》の虞愿伝には、宋明帝が平素は健啖家であったと伝えております。)

ってことなので、《南斉書》の該当箇所を見てみましょう。

列伝第34巻 良政
帝寢疾,愿常侍醫藥。帝素能食,尤好逐夷,以銀缽盛蜜漬之,一食數缽。謂揚州刺史王景文曰:「此是奇味,卿頗足不?」景文曰:「臣夙好此物,貧素致之甚難。」帝甚ス。食逐夷積多,胷腹痞脹,氣將絕。左右啓飲數升酢酒,乃消。疾大困,一食汁滓猶至三升,水患積久,藥不復效。大漸日,正坐,呼道人,合掌便絕。愿以侍疾久,轉正員郎。


(南朝・宋の)明帝が病に伏せっていたとき、臣下の虞愿はいつも薬を持って控えていた。明帝は平素から大食いで、ことに“逐夷”(えびすを平らげるの意)が好物だった。銀製の器ではちみつ漬けにし、何杯も平らげた。王は、楊州刺史(長官)の史王景文に言った。「これなる珍味を卿は飽きるまで食べたことがあるかね」王景文は答えていわく、「昔からの好物ですが、貧しくてなかなか口にはできません」。帝はこれを聞くと大変喜んだ。“逐夷”を食すること重なるに及んで、腹は膨らみ、息も絶えそうになった。周りの者が酢酒を勧めてようやくこなした。病が重くなっても、一度に三升のかす汁を飲んだ。水膨れになり、薬も効かなくなった。いよいよの日、正座し、僧侶に声をかけ、合掌をすると息絶えた。虞愿は長らく病床の傍らで仕えたので、正員郎に引き上げられた。)

長々と引用しましたが、“逐夷”すなわち、「異民族を追い出す」という意味のこの食べ物、確かに将軍家にはふさわしい名前ですが、いったい何なんでしょうか。

これは、魚の浮き袋か、ワタを塩漬けにした食品のことらしい。香港ではいまでも、魚の浮き袋を使ったスープはご馳走として高級レストランで供されます。

しかし、ここは内陸の鄴のみやこ。魚は遠くの沿岸部から運んでこなければなりません。四爺は、そんな浪費はお気に召さないようです。

他のお嬢様方の料理も似たり寄ったりで教養をひけらかしつつ、高価な材料を使った手の込んだもの。四爺は礼儀上、丁寧な態度は崩しませんが、いささか食傷気味の様子です。

対して鄭児は、豪華に金箔を散らしているとは言え、お粥を作ってきます。

雪舞が福姥からアドバイスをもらってようやく気付いたことを、自分で(たぶん)思いついたところに、頭の良さをうかがわせますね。しかも、シンプルなおかゆの中にも“学問”(道理)がある、と《名藥列錄》を引用するなど、教養の高さも伺えます。金箔を散らしたのも皇太后の健康を慮ってのこと、と披露。

本当に皇太后のためを思って作ったとおぼしきこのお料理はお気に召したらしく、四爺は初めて褒めたあとに、鄭児の切り傷を見て、愛用の傷薬を差し出します。

恩を受けたら必ず返す、という四爺の行動原理が行動に現れていますよね。しかし、脈のない人に優しくするというのは、一番罪作りなように思うんですが、まあ何ていうか、お父さんのDNAですかね…。

その有様を目撃した、同じDVAを受け継いでる&女の扱いに慣れてる五爺の、ものすごく何か言いたげな表情がナイス演技です。

お料理の紹介も終わり、いい加減締切時間が過ぎたころに、雪舞が飛び込んできます。

持ち込まれた料理らしきもの(?)を見て、五爺はひとこと。

“這三碗混濁的東西它 也是粥嗎?”
(この三椀の混濁した物体は…これも粥か?)

いえ、違います!
♪ ♪ ♪
ここで、せっかくテーマソングも流れたので、「雪舞さんの30時間クッキング!」と行きたいとこですが、時間がないので説明ははしょらせていただきます。

ちなみに、3分クッキングのテーマソングはクラシック音楽のアレンジですが、「きょうの料理」の方のテーマソングはオリジナル。「のだめカンタービレ」で、ストラビンスキーの「ペトルーシュカ」とまぜこぜになってしまい、結局コンクールに失敗する原因になった、あの着メロの曲です。資料を見たら、何と作曲者は電子音楽の雄・冨田勲先生でビックリ。

「未来少年コナン」の池辺晋一郎先生とか、「赤毛のアン」の三善晃先生とか、贅沢な作曲家の人選してるな〜と思う番組は多々ありますが、意外性では「きょうの料理」はピカいちでした。

おっと、放置しちゃいました雪舞の30時間クッキングの成果物の方ですが、、濁り湯…いや混濁スープのうち、セロリ(キンサイ)のスープ、ナシとリンゴのスープはともかく、バナナのスープは、はっきり言ってその当時、婁将軍家のお料理より材料の入手が困難だと思うんですが…。

80年代に入ってからさえ、長距離列車に乗り合わせた北中国の人に南中国の人が、持ってたバナナをすすめると、止める間もなく皮ごと食べちゃった、という実話がございます。つまり、一般の中国の人にとってバナナとはごくごく最近まで、それほどまでに珍しいものでした。

中国ばかりじゃございません。日本でも以前はバナナが珍しく、台湾から輸入される貴重品だったと聞いたことがあります。

たぶん、この脚本家はバナナが身近にある、台湾の方なんでしょうね。中国側のスタッフも気づきそうなもんだけど、こだわるポイントでもないから、スルーしちゃったのかな…。

それとも、皇太后さまの高貴な身分に合せて、豪奢な材料を使ってみたのでしょうか??

日本語はその辺、漢字を音読みしてるので何となく漢方薬っぽくなって上手く誤魔化してますね…。

次のセリフも日本語は、
「お通じが滞りやすいけれど、これを飲めばたちまちスッキリよ」
と言っていますが、中国の方は、もう少し分かりやすい表現になっております…ま、ここでご披露するのは遠慮しておきましょう。

そして、スープの効能について述べるくだりは、薬売りの口上みたいです。
“胸悶頭疼芹菜湯 
清喉化痰水梨蘋果湯
如廁困難香蕉湯”

(胸のつかえにセロリスープ、のどのイガイガにナシリンゴスープ、お通じすっきりバナナスープよ)

そこへ、先ほど博学なところを披露した鄭児がコメントします。
“雪舞姑娘真是博學啊”
(雪舞さまは本当に博学でいらっしゃるのですね)

そのあと、含みがあるのかないのか、もう一言付け足します。
「だけどこれだけではお腹が空きませんか?」

すると雪舞はこう返します。
“如果單指要吃飽 那些還不夠嗎?
(もしお腹を満たすというなら、そこにお料理がたくさんあるでしょう?それでは足りない?)

自分が作ったのは、消化によくてもたれないもの、と説明する雪舞に、五爺は興味深いけど、どうやって考え付いたアイディアなの?と聞きます。

雪舞が、四爺が手配してくれた“福佬”からは、いろいろ学ぶことが多かった、と答えますが、そこで分かったのは、この見た目は超地味なスープ“養生湯” のアイディアソースである「乳母」“福佬”は3年前に亡くなった、ということ。

“奶娘”(乳母)なのに“佬”(ばあや)なんだ...20歳で乳母をやってたとしても、20年数年後に「ばあや」はヒドイですよねぇ。

四爺、ひょっとしてご自身の年齢、サバ読んでないですか?

と、日本語はサバ疑惑を回避するためか、「世話係」にしてますね。ナイス補足。

おっほん、それはいいんですけど、自分で言わないまでも使用人からヒントを言わせるなんて、ずいぶんエコヒイキですよねぇ。

それでは、ここで、エコヒイキがトレードマークの方にご登場いただきましょう。
幼少の頃よりエコヒイキ人生を歩んで来られた、ウィリアム・フォンさんです。

引き続き、今度は今年(2015年)3月1日のインタビュー番組、《非常静距離》、https://www.youtube.com/watch?v=JpdzH63FP2Aから、ご覧ください。
検索エンジンによってはヒットしないことがあるみたいです。Googleだと見られました

李静(リー・ジン)
馮紹峰(フォン・シャオフォンFeng Shaofeng/ウィリアム・フォン)

6:42から
:今日は他にも可愛いゲストをお呼びしています。さ、拍手でお迎えしましょう。
:マダ兄貴!
:じゃ、紹峰に紹介してもらいましょう。
《后会無期》のマダガスカルです。
:(客席に)覚えてる?映画《后会無期》(邦題「いつか、また」)見ましたか?
:マダ、お手。ほら、お手。
(伏せてしまう)
:なんだよ、僕と握手したくないのか、うん?
  食べ物をこっちにもらえる? そしたらお手すると思うから。
  …マダ、ご覧、何持ってるかな?
(投げると食べるマダ)
:いいぞ、さ、お手だ。
:動物ってホント可愛いわね。
(やっとお手してくれる)
:紹峰、この子との撮影時のエピソードを教えて。
  そのときいくつくらいだったの?ちっちゃかった?
:僕の手に粗相しただろ、覚えてる?
:イヌは人間の手にウンチなんかしないもんでしょう…
:仔イヌだから。
 (客席:笑)
  マダ兄貴、水飲もうか。
  飲んで飲んで。いいから。
 (自分のカップから水を飲ませる)
:慌てないで。
:どう、オオカミに似てない?
:ええと、ハスキー犬はちょっと似てますよね。
:次のゲストにもそのカップ使ってもらうわ。
:僕の水、全部飲んじゃった。
  じゃ、李お姐さんのも飲もうか。
  (引っ張って向きを変えようとするが、全然無視される)
:おすわり、おすわり。
  (座る気配すらないマダガスカル)
:このままじゃメンツ丸つぶれよねえ…。
  全然聞いてないわ。
:おすわり。
  (全然聞いてない)
  わかった。僕が座るよ。
  (ソファから下りて、スタジオの床にあぐらをかくウィリアム)

:オオカミだって馴らしたっていうのに…。
  この犬とオオカミって…
:全然違いますよ。犬は人を主人だと認めるけど、あ〜もちろん、彼は僕を主人とは思ってませんけど(ウケる客席)、だけど、
:見てあの絵づら。笑っちゃうわ。
:オオカミは友だち止まりです。(マダに)いいから、もうおやめ。
  探したって食べるものはないよ。落ち着け。
:そうやってずっとイヌと話していられるの。
:僕…バカみたいですよね…?
:草原地帯から帰ってきてからずっと、
:(マダに)こら、その花は食べられないぞ。花をむしっちゃダメ。
  内モンゴルから帰ってきてからっていうもの僕は、動物と付き合う術を身に着けたっていうか、特にオオカミとはですね、(と、表情が固まる)
:お飲み。
  (李お姐さんのカップからも水を飲むマダ)
:李お姐さんの水は僕のよりちょっと甘いだろ。
:舐めちゃいなさい。…行っちゃった。
:行っちゃった。
:ご主人様を探しに行ったのよ。バイバイ。
:さあ、李お姐さん、お水をどうぞ。
  (マダガスカルが舐めたコップに水を注ぐ)
:あなたこそ、どうぞどうぞ。
:李お姐さんも飲まないもの、僕も飲まないぞ。
:悪い人ねぇ…。

(ナレーション:馮紹峰は上海・万航渡路の古い路地裏で生まれました。幼いころから多芸多才で、幼稚園時代から舞台やコンクールに出場、数々の賞を受けました。芸術的な環境に恵まれて育ったおかげで、高校三年生のときに芸術系の入試を受験して、上海戯劇学院にストレートで合格しました。)
*
万航渡路ですか…ホントに街の真ん中ですね。
*
:今回は非常に彼を良く知っているクラスメートをゲストとしてこの場にお呼びすることができました。
  いきなり出ていただきますけど。
:いきなりですか。
:あなたは…大学時代に女子学生と恋愛経験がありますか。
:(すごく微妙な表情)
(客席:(冷やかして)おぉ〜!)
:あるいは、誰かが秘かにあなたに恋していたとかは?
:それは、知りようがないですね。
(客席:バカ受け)
:じゃ、誰かを秘かに恋したことは?
:(こずるい表情で)それは、言えませんね。
(客席:バカ受け)
:それでは、クラスメートですけど、もうすくこの場に現れますが、
 3つまで質問して良いですよ。私はイエス、ノーでお答えします。
 当てられるかしら。
:男性ですか?
:イエス。
(ウィリアムのアップにかぶせて)
:この場に女を呼べると思うの?
(客席:バカ受け)
:二つ目の質問。
:僕と寮は同室でしたか?
:イエス。
  同じ部屋だったかどうかは知らないけど、同じクラスです。

*
今は違うと思いますが、以前、中国の大学は全寮制でした。ウィリアムは地元出身ですが、それでも寮生活だったんですね。

話の省略した部分に出てくるのですが、寮の建物が地元の人とそうじゃない人用に分かれていたようです。ただし、彼は授業が終わると寮には泊まらず、バイクに乗ってさっさと家に帰っちゃってたらしい。大学でおとなしくしてた彼は、名前ではなく、「授業が終わるとバイクで帰っちゃう人」と認識されていたそうです...。
*

:…じゃ、この質問はナシでいいですか。
  同じクラスかなんて、聞く必要ありますか。
(客席:バカ受け)
:じゃ、三つ目の質問。
(唖然とするウィリアム)

:男性で、あなたと同じクラスで…
:同じクラスっていうの、質問にカウントしないでもらっても…?
(未練がましい態度に客席大ウケ)
:だって…ク・ラ・ス・メ・ー・トを呼んだんですよねぇ?
:そうですよ…。で、三つ目の質問ね。
  もう一つ質問できますよ。
:(あくまでも食い下がる気)クラスメートだって、あなたが言ったんですよね?
:そうです!
:だったら二番目の質問はナシでしょう!

*
このくらいのことで何をムキになってるのでしょうか…。
でも皆さま、分かりましたか。実は、彼はそーとーな負けず嫌いですよね、私の見るところ。の割に、ふにゃふにゃとツッコんでくるので、攻撃されている相手すらそうと気づかないあたり、タチが悪いわ…。
*

:わかった、じゃもう、あなたが当てられるかどうか、やってもらおうじゃないの。
  ほら、質問質問。
:僕と同室…あ、知らないのか…
:違います。
:違うんですね。
:僕とクラスメートで同室じゃなくて、しかもしょっちゅうこの番組に登場する、

*
ウィリアムが、刑事さんばりにものすごく真剣に聞いているのが笑えるんですけど…
*

:皆さん、よくご存じの男性スターと同室でした。
  クラスメートの佟…あの、目が細い…
(ウケる客席)
:佟大為。
:そう、彼と同室だったんですよ。
:佟大為のところは三人部屋だったんだ。その三人のうち、可能性があると言ったら、委員長しかいない。
:それは誰か、もう聞かなくてもいいですね。皆さん、拍手でお呼びしましょう、
  そうです、彼は、クラス委員長さん!
:馮師!

*
中国では、俳優さんや漫才師など、演芸関係の仕事をしている人に対しての敬称は、学校の先生への敬称と同じで“老師”といいます)
*

:(陝西なまりで)任山(レンシャン)!
(ハグする)
:委員長さん、ようこそ!
  あなたのドラマ、最近人気爆発ですね。
  彼、(《武媚娘伝奇》で)魏王を演じてるのよ、観てます、みんな?
(客席:観てる〜!)

(中略)

17:30ごろから

*
当時、クラスで誰が一番イケメンだったかという話になって…
*

:あのころ、一番イケてたのは厳寛(厳屹寛)だと思う。
(客席:おお〜っ!)

*
厳屹寛は、ウィリアム・フォンとヤン・ミーが出演したテレビドラマ《宮》で、現代でのヤン・ミーの婚約者を演じた人。最初と最後の回に登場します。彼は、確かに正統派の二枚目ですね。
*

:彼も確かに二枚目だ。だけど、この人(ウィリアム)も二枚目で、品格が違うもんな。
:佟大為もモテたよね。
:特にあの胸板がね…。
(客席:バカ受け)
*
そのあと、同窓生の暴露ビデオが登場。
*
(ビデオ:楊結宇)
:彼はね〜、クラスの中でも飛びぬけてイケメンだったの。
 それにね、普段もすごくオシャレに気を遣ってて、外出するときもバチッとキメないと気が済まないの。特に印象に残ってるのは、僕らの時代だとムースとかって、誰もが持ってるわけじゃなかったんだけどさ、紹峰は持ってたんだよね…外出するときは髪型とかキッチリしてさ…

 もう1つ印象に残ってるのは、オートバイのライダーが着るようなスーツね、物凄くピッタリしたやつ、ハイウェストの。アレを着て、凄くカッコ良かったな。
 出かけるときは小ぎれいにしてライダースーツ着て髪にはムースでしょ。
 見たとこ、なんだか弱っちい書生みたいなのに、あの大人しそうな外見の下のハートは、結構大胆でね。

 大学一年のときに、発表会があったんだけど、マイケル・ジャクソンを踊ってさ、ステージの下のクラスメートは男女を問わず熱狂してたね。ダンス、凄く上手かったよ。

*
ふ〜ん、そーなんだー、と、他人事みたいに聞いてるウィリアム・フォンですが、そんな特技があったのかとしっかりディレクターにチェックされた模様で、2016年の旧正月に「西遊記」のプロモでテレビに出演したとき、しっかり踊らされてました。

おっ、出来るじゃん、ムーンウォーク!

ってことで、気になる方はこちらからご覧ください。
《王牌対王牌》という対決番組で、《西遊記》チームの一員として32:20秒ごろから踊ってます。
https://www.youtube.com/watch?v=biervrdaw4U&feature=youtu.be

ちなみに、その直前に、アーロン・クォックご本人の目の前で、彼のヒット曲《對你愛不完》を歌わされる&踊らされるという、罰ゲームか?なシーンもあります(すごく上手いけどね)ので、気になる方はついでに30:00くらいからどうぞ。

*

:良く覚えてるわねえ、彼。
:彼が僕と同室だったんですよ。
:一緒に寝てたんですよねー。
:ムース持ってたとか覚えてるのねぇ〜はは!あの当時ね。
:任山だって、使ったことあるって言ってますよ。
:オレはこっそり失敬したの…ゴメンな。
:道理で、そう言われて僕、どうして覚えてないのかなって思ったよ。
:お前がいるとこで使うわけないだろう。
:ムースって、あのプシューって白い泡が出るやつ。
:そうです。
:持ってる人は珍しかったわ。
:その通り。
:紹峰のスゴイこと。革のジャケットとかどうやって手に入れたの。
:淘宝(中国のオークションサイト)で。いや、当時はまだ存在してなかった(笑)。

:まだその服のこと覚えてる?
:覚えてますよ。ハッキリとね。ライダー用のジャケットって黒もあるけど、彼のは色がついてて、二本線がね。
:あら、全部覚えてるのね。
:肩が盛り上がって丸くなってるやつね。
  彼は痩せてるんで、着るとピターっとしてて、それにジーンズね。
  それから、ハイカットの黒いブーツ。とにかくカッコいいの。
  注目の的だったんですよ。ヤマハの250を転がしてさ、見ない女はいませんよ。
  妬けるね、ホント、妬けますよ。
:私はてっきり、男性は女性しか眼中にないのかと思ってたけど、
  男のこともしっかり見てるのねぇ…。
:誰だって好きでしょ、綺麗な顔して足が長かったらさ、オレだって好きだもん。
:彼だって、足は長いですよ。

:紹峰、当時、あなたを追っかけてた女の子、たくさんいた?学校で。
:いませんって。(任山に)いた?
:この人(ウィリアム)はね、絶対いますけどね、あまり口を利かなかったんで、たぶん、女の子たちは近寄り難かったんでしょうね。
:女の子にジョーク言ったりふざけたりはしないの?
:ないですね。取り澄ました感じでね。実働部隊はオレらだったんで。
:(はは〜ん、という感じで任山を見る)
:学校ではどんな学生でした?
:はにかみ屋で内気でしたね。すぐ顔が赤くなるし。
:僕は実際、目立たなかったと思います。学校では。
  あまり目に止めた人もいなかったんじゃないかと。
:この頃はわざと目立たないようにして誤魔化してたんですよ。
  やや、気が小さかったですからね。
  シャイでしょ。女の子のこと話題にすると、すぐ顔が赤くなるんですよ。
  先生に注意されても顔が赤くなるし。
:学生のときの恋愛っていうと大学じゃなくて、中学(中国で中学というと、高校も含まれます)のときです。
  だから大学のときにはない…
:だけど、大学のときに良い感じだった女子もいたんですよ。あの二人、付き合ったらお似合いだな〜って感じのがね。覚えてる?
:(考えている)
:だけどもう結婚して子どももいるからさ。やめとこ。
:な〜んだ。
:こっそり教えてあげてもいいよ。
:こっそり教えて(笑)。
:(耳打ちする)どう。
:ああ、彼女(顔が赤い)。
:だもんで、当時はよく彼女のこと話題にしたんですよ。
  ひとつには、二人がくっついて欲しかったからで、もう1つは、赤くなるのが見たかった(笑)
:(赤くなっている
:だけど、そういう性格が、俳優をやるには良い方に働いてるかもしれないわ。
  妙にすれた感じもしないし、ずっと気が張ってる感じを保ってるでしょう。
  私とだって知り合って割合長いのに、それでもちょっと緊張してるものね。
  こういう気質は、俳優をやっていく上では大事よ。
:任に、さっきマダが舐めたカップを勧めている)
:(にっこりして)飲んでもいいんですか?
:いいですよ。さっき、あなたが恵みの雨を降らせてくれて、だいぶ持ち上げてもらったから、ここは水を飲んで頂こうっていうことなんでしょう。
:(飲んで)ありがとう。

:彼の実家は結構金持ちで、僕らを家に呼んで、すごいご馳走を振る舞ってくれました。あのとき君んとこのおばあちゃんもいたよね。おやじさんも。

*
この話題が出たときのウィリアム・フォンの手つきを見てください。やきもきしている気持ちが手に現われてるような…。

実は彼には、ものすごい資産家の跡取り、という噂が付きまとっており、ここでいきなり、真実を知るクラスメートが何か暴露するのではないかと焦ってる、ようにしか見えないからヤメた方がいいのに、その動作(笑) 
*

 (中略)
:あのときは10数人…20数人…のクラスメートが一斉に家に来て…あのころ家を買ったばっかりで、小さな家で100平米ぐらいしかなくて…

*
上海で100平米だったら十分大きいよ!!と思うのは、私がウサギ小屋に住んでるからでしょうか。
でも四爺のウサギが住んでる小屋は絶対、私んちより大きいと思いますけどね(僻み)
*  

:部屋にはまだ何もなくて、テレビが一台だけ。それで、クラスメートを呼んでパーティーしたんだけど、テレビを見て、みんな手足を投げ出して、そのまま寝ちゃった。次の朝、父が入ってきたら、床にはいきなり、数十足の靴が…!
:いったい何のパーティーなんだよ。
:父はへなへなと崩れちゃいました。だってドアを開けたら僕たち全員、雑魚寝してるんだもん。
:そりゃまた印象深いわね。しかも部屋にはテレビしかなくて。あなた方、その、ドキュメンタリーを見るパーティーしてたわけね。
(意味ありげに笑う)

:では、お次の暴露VTR参りましょう。

(ビデオ:楊蓉
:彼はボディシェイプ(基礎的な身体訓練のことです)のクラスはあまり得意じゃなかった。
  ですけど、先生方は彼が特にお気に入りだったんですよ。
  彼にはね、上海語でいう、“搗漿糊”(むにゃむにゃとごまかす)ってワザがあるの。
  たとえば、宿題やってないとするでしょう、私だとしたら、良くて、「私やってきませんでした」って言って、怒られるときは怒られるって感じなんですけど、彼だとね、「僕、やってきませんでした。先生、僕ね、どうしてやって来なかったかって言うとね…」ってこうムニャムニャっとね、
  おしまいには先生が、ああ、いいから、次やってくればいいのよ、って。
  彼にはこういう特技があるの。

*
“搗漿糊”(ダオジャンフ/dao jianghu)!これ、上海語なんだ..? 昔何かの本で見た気がするけどこんなところで再会しようとは。ウィリアム・フォンは、常にこのワザ、愛用してますよね〜。

2007年に、彼は《虎山行》というテレビドラマに出演します。武侠世界の実力者にして人徳者・容蒼海〈ロン・ツァンハイ/Rong Canghai〉の跡取り息子・容寛〈ロン クァン/Rong Kuan〉の役どころ。

カンフーの師匠の家に生まれた容寛ですが、正義感あふれる好青年ながら、甘ったれで何事も親がかりのドラ息子。それなりに武術もできるのが間違いの始まりで、やることなすこと親や周囲に大迷惑を引き起こしてしまいます。

その彼が、武芸百般にもまして使い手なのが、甘えてワガママを通そうとする、この“搗漿糊”のワザ。まさか、ご本人も得意技だったとは…!!(←呆れている)

《虎山行》は80年代の香港ドラマのリメイクなうえに、全国放送じゃなかったみたいでそれほど話題になっていませんが、民国期を舞台に、広東省の佛山そして上海を行き来する、スパッと単純明快な物語、武林にその名を轟かす2人の達人・容蒼海と姜鉄山役の2人ののシブい演技や、脇を固める名優たちの熱演も見どころで、気に入っている作品です。

ウィリアム・フォンは、たま〜にオーバーアクトな時もありますが、自然な演技でなかなかハマり役だと思います。

日本語のDVDが出ているかどうか、ちょっと分からないのですが、中国語は全巻セットのDVDがあります。参考URLはこちら→http://www.yesasia.com/global/%E8%99%8E%E5%B1%B1%E8%A1%8C-dvd-%E5%AE%8C-%E5%8F%B0%E6%B9%BE%E7%89%88/1023596871-0-0-0-zh_CN/info.html(私は利用したことがないので、もし購入される場合は
申し訳ありませんが、自己責任でお願いいたします)

と、何の話でしたっけ? そうそう、ご本人さまの必殺技の話でしたね。

*
:彼女の「ぶりっ子(するウィリアム・フォン)のマネ」がカワいすぎる。あなた、よくぶりっ子してたの?認める?
:ないです。あった?
:あるだろ。
:(爆笑)
:(苦笑いして頷く)
:委員長さんがあるって言うならあるのよ。
:彼の性格にもおかしなところがあるんですよ。パッと見はね、
:(何かヤバいことがバレそうと悟ったのか、必死に阻止して)
  そうそう、思い出した。その、その先生が、僕にはすごく…
:お気に入りでしたね。
:特に李莉先生。実は入試のときに、特にひいきしてくれたんですよ。
  どういう理由だかわからないんだけど、僕が踊ったマイケル・ジャクソンに惹かれたのかも…
:魅入られたんだな。
:実は僕、ダンスを習ったことがなくて全然できないし、股関節が硬くて、開脚ができないんです。それで、入試のときに、三次試験だったんですけど、全員で180度開脚するっていうのがあって、僕はちょっと…角度が足りなくて…他の人は左右開脚とか前後開脚とかできるのに。そしたらボディシェイプクラスの先生が、まったくあなた、紹峰、試験のときにジーパン穿いてきちゃダメでしょ、ごらんなさい、開脚できないじゃないの。
(客席:笑)
:(笑)
:って一言。
:ハシゴを掛けてくれたわけね。
:それで通りました。
:えこひいき過ぎる。
:入学したあと、レッスンで頑張って練習しましたよ。だって先生に…
:実はテストのときだってジーパンなんか穿いてなかったんでしょ。濃い青のストレッチパンツを穿いてたんじゃない? それでも開脚できなかったんじゃ?
:とにかく、何を穿いてたにしても、できませんでした!

*
ウィリアム・フォンはほかのインタビュー番組(《鲁豫有约》)に、同室だったクラスメートと一緒に出てるのですが、ストレートで入学した学生は皆、このクラスがダメだったようです。戯劇学院は、1年生のときの学年末の試験の成績が悪いと退学になるらしく、放課後必死で練習したと2人は言っていました。

開脚が出来なきゃ、カンフードラマの役なんて受けられなかったでしょうよ。先生に感謝しないとね…。それにしても、中国で役者になるなら、歌やバイオリンはもちろん、カンフーも練習しとくに越したことはなさそうですね。

どうやらドラマでは、えっ、こんな人も使い手だったの ? みたいな意外性が求められるようなので、一見できそうもない人ほど抜擢されがちらしい。

それにしても、幼稚園時代から、何でも文字通りの「顔パス」だったウィリアム・フォンのエコヒイキ人生。ここまで来るとあっぱれ。
*

:(大笑い)紹峰は学校では他に、どんな風だったの?
:彼はやっぱり、よく勉強した方だと思いますね。何せ、“重点高中”の出ですからね。

*
“高中”というのは“高級中学”の略で、日本の高等学校に当たります。

“重点高中”というのは昔の呼び方で、現在は“示範性中学”というそうですが、要は進学校のことで、現在では上海市内に53校あります。ずいぶんたくさんあるように感じますが、高校進学率ほぼ100パーセントの上海において上位10パーセントくらいの生徒が合格するとのことで、狭き門には違いありません。

特に、ウィリアムが通っていたとされる高校は、“示範性中学”の中でもさらに市内に28校ある“実験性示範性高中”の1つに指定されているほどなので、相当なエリート校と思われます。

ウィリアムが受験した当時はまだ一人っ子政策の時代じゃなかったから、きっと結構な競争率だったことでしょう…。
*

:成績面での「おかしら」ですね。
“重点高中”の出なの。成績は良かったですか、当時。
:絶対良いです。
:ええっと…“重点中学”の中では悪かったです。
(客席・笑)
:だけど、大学では、
:成績は良かった。
:だって、ほとんどの人は、高校から直接進学するわけじゃないですから。
  芸術系の大学は。
:社会人で受ける人が多いわよね。
:自活したり、社会経験を積んでますからね。
  彼はクラスでは文系の成績トップでした。だけど他の人に比べると、歳も若いし、社会人経験もないので、短編を作るなんて課題の面では不利で、先生に年かさのクラスメートに話を聞いて来いって言われて僕のところに来てましたね。
:そしたらいつも、怪談ばっかり聞かせてさ。
:怖がらせたかったの。
:夜、怖かったよ。
:彼は良い子で大事に育てられたからね。さもなきゃそんなに色白のはずないし。

(中略)
28:28ごろから

:なんで彼に陝西方言を教えたかっていうとね、彼も僕らの荒くれた、ワイルドな雰囲気を身に付けたかったんでしょうね。それに僕らもときどきは、彼のお上品なところから引きずり下ろしたかったの。だって、絶対マネできないですもん。育った環境が丸ごと違いますし。

*
陝西省は中国の西北寄りにあり、中国では“北方”(北中国)出身の人はガサツで乱暴者、“南方”(南中国)、特に上海や蘇州など江南の人は優雅で気取り屋というイメージがあります。

この違いはもちろん、気候風土によるものなんでしょうが、蘭陵王の時代、つまり魏晋南北朝の時代に、江南地方には「六朝文化」と呼ばれる貴族文化が栄えたこととも無縁ではないと私は思います。その時代から現代まで脈々と続く伝統の力は、やはり無視できないんじゃないでしょうか。
*

:ホントに皮肉ね。それで《狼圖騰》(神なるオオカミ)を演じたんだから。あの乱暴な(笑)。
:絶対、僕らが教えたおかげだと思いますよ。ねえ。
(客席、大拍手)

(中略)
:僕ら、彼のことを陰で“十万个为什么”(10万回のなぜ?)って呼んでました。
  いつも聞いてばっかりいるんで。「なんでそんな風にするの?」
  「なんでそんな風に着るの?」「なんでそんな風に食べるの?」

*
“十万个为什么”というのは、中国では誰もが知っている児童書シリーズのタイトルで、「なぜキリンの首は長いの」とか「なぜイギリスの裁判官はかつらを被っているの」とかっていう素朴な疑問に短いエッセイで答える形式の科学読み物のことです。
*

:そうだっけ?
:質問ばっかりで。
:いま、思い出した。
:思い出したの(笑)。
:自分を解放する、というワークショップで、動物を演じるっていう課題のときに、やっとそれが出来たの。そういえば、演じたのはオオカミだった。 

(中略)

*  
このあと、馮紹峰が演じた喜劇のVTRが流れる。「面白い」って言葉がありますが、中国の劇では伝統的に、顔を白く塗ってるのは笑いをとる役の人なんですよね
*

:卒業したあとはどうしたの?
:実は、僕たち同じ職場だったんですよ当時。
:どこ?
:「上海話劇中心(上海現代劇センター)です。
:それはすごいじゃない?選ばれたわけでしょう?
:それはそうですが、僕たちのクラスからは12人入ったんですよ。
  約半分ですね。わりあい優秀なクラスだったので。それにまあ、割にイケメンで(笑)。
:入ったあとに、紹峰、あなた、性格的に上手くやっていけたの?
:最初は結構大変でした。人見知りしたから。
:うん。
:在学中だって内向的だったのに、人と打ち解けるのが苦手で。
:人に取り入るのがね。
:受け身なんですね、いつも。今でも覚えてるけど、とある監督さんが、本当は僕を起用してくれようとしてたみたいで、隣に座ってね、  
  僕は、監督、こんにちは。
  (監督は)やあ、こんにちは。
  それきり僕、何も言うことがなくて。
:彼は僕たちが普通やってるような、相手と近づきになったり、自分を分かってもらおうみたいな社交的なことがあんまり得意じゃないんですね。
:僕は監督が演じ手を探してるって聞いてたから、絶対、監督の方から、何か撮りたいんだけど…演じるのはこんな役柄で…みたいな話があると思ったんですよ。それにつなげて発言しないと、何だか唐突な感じがするかなと思って。
:それで結局どのくらい黙ってたの。そこに座って。
:じっとそこに30分間、座ったっきり黙りこくってました。
(客席 笑)
:それで、落ち込んだりしなかった? 俳優だったら自分を売り込まないとダメでしょう。
  そうでないとチャンスも来ないし。当時、挫折感とかそんなものを味わったりしなかった?
:いつもクラスメートに頼んでました。皆が撮影に行くので、僕は、
:あら、皆、映画に出たのね。
:いっぱいいましたよ。
:僕は遅かったですけどね。
:僕、自分が一番最後だと思ってた。
:焦りました?
:僕は、何かチャンスがあれば、カメラテストがあるの?連れて行ってくれない?とか頼んで、それでやっと行って、受かったんです。
:でも、それでどうしたの。シャイで顔が赤くなっちゃうんでしょ。どのくらい経ってた?
:それでも、《宮鎖心玉》(宮〜パレス)の後だったと思います。
:だったら、《宮》は? 卒業してどのくらい経ってたの?
:10年でしょう。
:だいたい10年かな。

*
いま気が付きましたが、後ろに流れてるBGM(ピアノ)って、ライブ演奏なんですかね?
話が「宮」になったら、さりげなく、「宮」の主題歌の伴奏に変わったけど…。
スゴイな、無声映画みたいです。
*

:それじゃ10年の間は、俳優をやってはいたけど、ずっと…
:たぶん、知ってる人はいたと思うけど、主演もしたし。だけど、すごく知られてるとは言えなかったと思います。
:そうね、だって当時、私はてっきり、あなたが全くの新人で、ぱっと人気に火が付いたんだと思っていたわ。私はテレビドラマを見ないし…どんだけ忙しいか。
  じゃ、その10年、芽が出なかったのは性格のせいじゃないの?
:芽が出ないって…(苦笑)、そんなの、50本は出ましたよ、《宮》の前に。そんなに出てたのに、あなたもご存じなかったでしょ。
:だからね、クラスメートはみんな俳優でしょう。私もたくさんの俳優さんたちにインタビューしたけれど、心の持ちようがとても大事だと思うのね。
 
 スターになるっていうのは運でしょう。でも、俳優というのは仕事でしょ。自分の大好きな仕事のわけですよね。だから気持ちがしっかりしてないとダメだと思う。クラスメートの中には先に有名になる人もいる。遅れて人気が出る人もいる。

 一方で、一生、さほど有名にはなれない人もいる。だけど、演じるお仕事はできる。
  そこそこのお給料でちゃんと生活もできるわけだから、心がけが大事なのよ。
  委員長さんがおっしゃってたのも、そういうことでしょう。クラスメートの人たちと、いつもそういうお話をされてたんですよね。

:会えばいつも言ってましたね。まずは心がけだよなって。
  彼はね、自分なりのやり方で、いつもきちんと自分を律していました。
  だって僕、この目で見たんですよ。ぼくたちの劇団のジム棟の5階でね、トレーナーの友だちに、毎日トレーニングに付き添ってもらって筋トレしてたんですよ。僕も舞台に出るので鍛えてたんですけど、心の中では、モヤシっ子が筋トレしてどうすんだよって。
(客席:笑)
:だけど一か月経ったら、効果が出てたんですよ。これが努力の積み重ねってやつなんだなと思いましたね。
:トレーニングの成果ね。
:ジムの5階で鍛え上げたと。
:そうですよ。
:(笑)
:(ドヤ顔で)今だって、筋トレしてますからね。
:今も?
:僕、腹筋8パックですから。
(客席:ウケる)

*
なるほどね。皆(←自分)、太っ腹だとかなんだとか言いたい放題言ってるけど(←自分)、あれは腹筋だったんですねぇ…。
*

:あなた、着込み過ぎよ。
:だけど、ここで脱ぐわけにもいきませんよ。
:いいんじゃない?
:(咳払いして、手を振る)
:そりゃ委員長さんの前では無理ですよね。
  見て、委員長の逞しいこと。
:そんなの、そんなの、とんでもないです。
:ぴっちぴちのセーターだって着ちゃうのよ。
:歳も食ってしまいましたので。

:じゃ、ここでお手紙を読みましょうね。
  あなたの、世界で一番大切な方からのお便りです。とても良い手紙なのよ。
  こういうお手紙を読ませていただくのは、いつだって嬉しいですね。
  お母様から。
:(なるほど、といった感じで頷く)
:この番組のためにお寄せくださいました。
  (読む)
  紹峰、ずいぶん長いこと会えないけど、お仕事は順調かしら。
  いつもお前の事を思っていますよ。
  2014年も慌ただしく過ぎてしまったけれど、
  《后会无期》(いつかまた)と《黄金時代》という2本の素晴らしい作品を残してくれましたね。
  南中国で生まれ育った男の子が、
  北中国の荒々しい殿方を演じるなんて
  それがどんなに難しいか、よく分かりますよ。

*  
と、なぜそこへ金髪のお人形さんを抱きかかえた子ども時代のウィリアム・フォンの写真を映すかな?
*

:(読む)
   どんな作品にも精一杯取り組めるのは、どんなときでも挫けない、強い前向きな気持ちがあるからこそ。あなたが日と、よりよく演じ、成長し続けているのを感じていますよ。

   内モンゴルの大草原でロケ地を訪ねて、あなたがたの苦労を直接目にしました。危険を冒して大自然や狼たちと対峙する、常人には想像もつかない大変な毎日を送ったのでしょう。
   母はどれほど心配していたことか。
   この映画が観客の皆さまから好意を持って迎えられることを願っています。
   それと同時に、どんな時でも、健康に気を付けて欲しい。無理をしすぎないで、
   怪我をしないで、あなたを大事に思ってくれるお友達の皆さんを心配させないで。
      
   我が子よ どうかこの一年、あなたが健康で、心安らかに、幸せで楽しく過ごせますように。
   お疲れさま。あなたに感謝している母より。

:わぁ…お母様は何をなさっている方なの? 素晴らしい文才をお持ちなのね。
:(ものすごく嬉しそう)
“戦天闘狼”(天と戦い、オオカミと闘う)ですって!

*
っていうかお母様、“爺們”(殿方)って書いちゃうのがステキなんですけど。
*

:母はいつも…ものすごく大変で劣悪な環境なんじゃないかと想像して心配してるんです。
:俳優さんは大変よね。身体が資本なんだから大事にしなくちゃ。愛してくれる家族のためにも。 
 (深くうなずく)

ってことで、ウィリアム・フォンは怪談が苦手だったんですね〜(←こんなに長々紹介しといて、結論はコレ?)

四爺は、何事もなかったように福ばあやの「幽霊」の話をしてますけど…。

“大費周折趕回來 因為你根本就不想走”
(ばあやも、そんなに手間をかけて戻ってきてくれなくても良かったのに。だって君はまったく出ていく気なんてないんだから)

言われて雪舞は、
「ずいぶんと驕っていらっしゃいますこと。
あなたは鄭妃を迎えて、私は村に帰るさだめなの。」

日本語の雪舞はこの程度ですけど、中国語の雪舞はもっと嫌味たらたらです。

“你少自以為是了這位高長恭公子 我恨不得後天的選妃快點來到”
(あら随分お偉くていらっしゃいますこと、こちらの高長恭公子様は。私はね、とにかく早く明後日のお妃選びが始まればいいのにって思っているの)

ずいぶんな言われようですが、四爺はそれでも優しく雪舞の手を取って、
“我是在無法相信 這雙為了夫婿 親手做養生湯的手的主人願意離開 我看 這手都已經紅腫了”
(信じられないな。夫君のために手ずから「養生湯」を作ってくれた手の持ち主が、出て行こうとしているなんて。ほら、手がこんなに赤く腫れているのに)

ここでもやっぱり、自分のために何かしてくれた人をねぎらうことは、デフォルトなのですね。

その答え、
「自惚れだわ」
という訳は正しいんですが、中国語の字面は相変わらずスゴイですね。
“少臭美”(思い上がるのも大概にしたら)

百叩きの刑に遭うのが嫌なだけ、という雪舞に四爺が、

“你們白山村的女人 說話都怎麼不乾脆嗎”
(白山村の女性は、素直にものが言えないものなのかな)

と言うと雪舞はなぜかつっけんどんに、
“你們村外的男人 一點矜持美コ都沒有”
(あなたがたよその男性こそ自尊心ってものがないのね)

“隨隨便便就可以跨人家氣質都好 長大以後漂亮的都認不出來”
(ひとさまに軽々しく 家柄にふさわしいお心映えだとか、美しく成長されてどなたか分からなかったとか言うなんて)

日本語では、2つのセリフを併せてこんな風。
「お嬢様たちにお世辞ばっかり言って、見た目も中身も娘御みたい」
だから雪舞よ…どこが美人のお姐さんなんじゃい…

しかし、女の人についおべっかを使ってしまうのは、ご本人さまも同様らしい。

《大牌駕到》
https://www.youtube.com/watch?v=3QxeQllrVH4

に似たような受け答えがあるんで笑っちゃいます。

21:10 ごろから
検索エンジンによってはヒットしないことがあるみたいです。Googleだと見られました

司会者が、共演した女優さんたちについて聞いています。

華少(ホワ・シャオ/Hua Shao)
馮紹峰(フォン・シャオフォン/Feng Shaofeng/ウィリアム・フォン)

 :もし彼女たちの中で、「萌え」「悪女」「引きこもり」「男前」を選ぶとしたらどうですかね。
 :「オトコ前」って言ったらアンジェラ・ベイビーでしょう。自分で認めてますもんね。
 :「萌え」は誰ですか。
 :全員、すごく「萌え」ですよ。
 :じゃ、一番の「悪女」は?
 :(即答)「悪女」はいません!

(テロップ:マジあったまいい〜!)

 :共演した女優さんたちはみんな良い人でした。
: (苦笑)むちゃくちゃ上海人らしいな。どこへでも良い顔しようっていう。
   じゃ、引きこもりだったのは?
 :ヤン・ミーだと思いますね。
   だって、撮影してるとき以外は、彼女を全く見かけませんでしたから。
   撮り終わると永遠に自室に籠っちゃいます。

*
あ〜、それは、共演者によって…いや、何でもない。
*

 :じゃ、いちばん優しかったのは?
 :みんなそれぞれに優しいところがありますよ。
 
(テロップ:誰の恨みも買いたくないらしい)

:つまり、どんな時にどう優しいかがそれぞれ違うんです。
   アンジェラ・ベイビーはいつも差し入れしてくれて、
   僕が退屈そうにしてると、自分がやってるゲームを見せてくれたりとか。
   皆が和やかなムードになるように気を遣ってくれます。

(テロップ:アンジェラ・ベイビー :優しい、気遣いのひと)
   
 :ヤン・ミーは僕があまり気分が乗っていないとき、近寄って来てなだめてくれます。
   彼女はエネルギッシュな人なので、ポジティブな気づきを与えてくれるんです。

(テロップ:ヤン・ミー 魂の鶏スープ)

*
おほほ、中華圏でチキン・スープと言えば、滋養を与えてくれるものの代名詞なんですね。
誰かさんも、一生懸命作ってたけど…。
*

:ファン・ビンビンはサバサバしてるというか…。オーラがあるんですよね。

(テロップ:ファンの旦那 強大なオーラの持ち主)

:最近、タン・ウェイとも共演したそうで。
:タン・ウェイとは誕生日が一緒なんですよ。

(テロップ:縁がある!)

:同じ星座なんですね。
:だから僕たちお互いに、何も言わなくても分かりあえるところがあるんです。
  (中略)

(テロップ:タン・ウェイ:心が通じてる) 

*
こういうことしてるから逃げられ(ごほごほごほごほ)えぇ、でも、まー、見てください、雪舞の、ヤキモチ妬いてるとしか思えない発言を聞いてホッとしたというか嬉しそうなこの四爺の表情。

この後のセリフが面白いですよ。
“你 吃醋了? 哎呀,醋意很濃啊。”

直訳するとこんな感じ。
(君は酢を飲んだのかな? おや、ものすごく酸っぱい匂いがするなあ。)

中国語では「ヤキモチを焼く」ことを“吃醋”(酢を飲む)と言います。確かに、胸やけしそう。

ここの日本語は、「香ばしい匂いだ」と上手く訳しました。
私なら、「焦げ臭い」くらい訳しちゃうところですが(笑)、もちろん、ここはちょっとしたヤキモチな上に、四爺には、雪舞のやることが何でも可愛く見えるんですから、プラスイメージの訳語を使うのが正しいですね。

こういうちょっとしたヤキモチは、カワイイもんですよね。

ちょっとした ヤキモチならね…。

そこへ鄭妃が通りかかるんですが(何しに来たの)、ちょうど四爺が、
“我不會要她 即便她是皇后的人”
(私は彼女を選ぶことはない 皇后陛下の人であってもだ)って言っているところだったので、涙ぐんでしまいます。

それにしても、中国のお屋敷って全然プライバシーないんですね。
盗み聞き放題じゃん...。

しかも、不法侵入三昧でもあるらしく、四爺が去ったあと、いきなり現れる韓暁冬。
雪舞に差し出したのは、ボ…おばあ様から預かった、“五色籤”(五色箋)なるもの。

こういう特別な書式があったのがどうかは分かりませんが、“五色”というのは第9話→こちら)でご紹介した、五行に対応する色のことで、 を指します。

画面で見る限りでは、単色の地に、この五色で模様が描いてあるみたい。五行(世の中の根本原理)を表す色だから、神秘的な呪力のようなものが籠ってるイメージなのでしょうか。おばあ様の連れてる鳥も「五色鳥」だし。

「五色」って言われて私がすぐ連想するのは、麻雀牌なんだけど…。

さて、五色で公式文書というと、この場所に縁がある、もう1つの言葉があります。それは陸翽〈りく かい〉という人が記した《鄴中記》〈ぎょうちゅうき〉という本に書かれています。

何代もの王朝の都となった鄴の様子を記した貴重なこの本は、早くに失われてしまったものの、いろいろな文献に引用されて一部が遺っています。

その中に、五胡十六国時代(三国→晋→五胡十六国→北魏→南北朝)の覇者の一人だった石虎〈せき こ〉の浪費と乱脈ぶりを記した箇所があります。

石季龍與皇后在觀上為詔書 五色紙著鳯口中
鳯既銜詔 侍人放 數百丈緋繩轆轤回轉
鳯凰飛下 謂之鳯詔 鳯凰以木作之 五色漆畫 腳皆用金


石季龍(石虎の名で知られる。後趙〈こうちょう〉の武帝〈295―349〉)は皇后と一緒に高殿に登り、五色紙の上にお触れを記した詔書〈しょうしょ〉をしたため、鳳凰の口の中に収めて、下僕が街中を触れて回った。鳳凰は数百丈の赤い縄でウインチにつながれ、回転した。飛翔する鳳凰によって触れられるので「鳳詔」と呼ばれた。この鳳凰は木製で、五色の漆で彩色され、足は金色だった。

こんなことやっているので国がとっとと滅んでしまうのですが、まあ、この時代の人はエネルギー余っていたのか本当にやることがメチャクチャです。それはともかく、この故事から、詔書のことを“五色詔”と呼んだりします。なので、「五色箋」という言葉自体に、権威があるというか、一種の命令的なニュアンスも感じます。

そこに書かれていたのは漢字二文字だけ。暁冬のみならず私も読めませんでしたが、雪舞によるとこれは、Shan qiと読みます。

“山蘄 當歸的別稱”(さんきは、「当帰」の別名よ)

“應當歸去”(意味は、まさに帰るべし)

この二文字は漢方薬の生薬「当帰」〈とうき〉の別名。当は「まさに〜すべし」の意味なので、つまり、帰んなさい、という暗号だってことです。

こんなオヤジギャグでそんな真剣な顔されても…と視聴者は呑気に構えていますが、暁冬は落ち合う場所や時間を決める、と具体的に話を詰めてきます。言われて雪舞は、

“那不就代表我得離開四爺啊”
(それは四爺のお側を離れなければいけないということ?)
と寝言をかまします。

あんたに頼まれて苦労して馬車を探しに行ったんだぞ、四爺のおねだり癖+叶えたら放置の癖が伝染ったのかよ、みたいなことは言わない優しい暁冬は、

“這麼說 你還是捨不得四爺啊 那就留下吧”
(ということは、やっぱり四爺を諦められないんだ。じゃ、残れよ)

と言いますが、雪舞は、

“鄭妃都已經出現了 我更沒有留下的必要了”
(鄭妃もすでに現れたのだもの、私にはますます残る必要はなくなったのよ)

と言います。それを「五色箋」に仕込んだマイクで聞いているのか、ボロ…おばあ様は、

“你該接受自己的命運”
(自分の運命を受け入れなければ)
と嘆息します。

皇太后さま、ボロず…おばあ様、いずれも孫を想う祖母の情が表れた回でしたが、果たしてそんな心遣いが奏功するのか? 

何せ、ここはハロウィーンの渋谷も真っ青な、魑魅魍魎の跋扈する、北斉は鄴のみやこ。いかなる魔物が潜んでいるか分かったもんじゃありません。

その正体は次回、第13話こちらにて!
posted by 銀の匙 at 12:58| Comment(8) | TrackBack(0) | 蘭陵王(テレビドラマ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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ハ・・・ハッピー文化の日っ(・∀・;

今日は昭和風に和洋折衷で行ってみました(笑)
ご無沙汰してしまいましたが、時間中3倍速で仕事&残業&持ち帰り仕事&休日出勤でヘロヘロになっていた9月〜10月中旬をなんとか生きぬき、ちょっとずつ戻ってきました。

今回も長編大作、ありがとうございます!
読むのに1時間かかりましたが(笑)、とても面白かったです。
出勤時間なので、とりあえずは御礼と足跡のみで…また来まーす(^^)/

Posted by 銀 at 2015年11月04日 09:15
銀の匙さま、いつも楽しく拝見させて頂いてます。
膨大な資料に裏打ちされた銀の匙さまのブログは
中国ドラマ初心者の私にはなくてはならないものです!
中国語のセリフの訳、たまりません!
このブログで四爺の事がもっと好きになりました。

これからも、いくら時間が掛かってもいいので大好きな『蘭陵王』を最後まで書いて下さいね。
ずっと待ってます。
Posted by 長恭四姉 at 2015年11月05日 10:30
銀さん、こんばんは。

早速コメントありがとうございます...っていうより、だ、大丈夫ですか。

イ、イキロ…!

赤いナショナルカラーなら3倍速い…とか言ってる場合じゃないですよね。そのような貴重なお時間を1時間も使って閲覧+コメントいただきまして恐縮です。

次の土日はお休みじゃないかもですが、とりあえず世間的には週末なので、あと一日、頑張って乗り切ってくださいませ!

取り急ぎ、お見舞いまで。
Posted by 銀の匙 at 2015年11月05日 23:34
長恭四姉さん、こんばんは。

初めまして、コメントありがとうございます。
いつもだらだらとお待たせしていてすみません。しかもパソコンを買い替えたため、打ちづらくて、今激しく後悔しています。

↑と、さりげなく、遅くなる伏線を張ったりしてみましたが、励ましていただいたので、何とか頑張ってみようと思います。

実は私も中国の時代劇ドラマを見たのはこの作品がほとんど初めてで、あまり詳しくないんです。割とそういうお仲間も多いということがわかって、ちょっとホッとしております。

それにしても、放映からかなり時間が経つのに、まったく人気が衰えていませんね。最初にこのドラマを見て、ラッキーでした。

ゆるゆるとですが、続きも書いておりますので、どうか今後ともよろしくお願いいたします。ご一緒に楽しんでまいりましょう。
Posted by 銀の匙 at 2015年11月05日 23:44
こんばんは。やっと来られました〜。
仕事の山は10月中旬に抜けて、今は持ち帰りと休日出勤はなくなって、三倍速くらいなのでだいぶ楽になりました^^

ということで改めて。
籠に入った鳥が出てくるのはそういう理由があったんですね。「宮」を見る前にそれを知っていたら良かったな〜。
それにしても、鳥を籠に入れて散歩させるって…いろいろとアレな感じがしますが、道楽息子の感覚っていうのはそういうもんなんでしょうね。

「竹林の七賢」、懐かしい!
漢文で習ったんだったかな? 世界史だったかな? なんだか怖いイラストつきで見たような記憶があります。

福さんの言う〈pei pei pei〉はさしづめ、
人差し指を左右に振りながら「ちっちっち」っていう感じなのでしょうか。

ボロずきんちゃん(アラかわいい)と福さんの対決、ちょっと見てみたかったですね。
黒魔女VS白魔女って感じでかなり見応えある戦いになりそう…(違うジャンルの話になりそうですが。笑)

Yの文字に似た「ヤー」のことですが、この文字は今も中国語の文字として使われているのですか? この髪型を差すとき以外に使われることはありますか?

>日本でも「縦ロール」はお嬢さま、「アフロ」は具志堅、と決まっていますよね(そうかな?)。

縦ロールと言われて浮かんだのが假屋崎省吾と高見沢俊彦、アフロと言われて浮かんだのがパパイヤ鈴木にスキマスイッチに平井堅だったのですが・・・

この回でついに鄭児が登場しますね。
いかにも特別な縁があります的アピールをしたり、四爺が雪舞をお気に入りと見てとるとすかさず皆の前で雪舞をかばってみせて、四爺に好感を持ってもらうことに成功したり…
この小賢しさが災いの種になることを匂わせてありました。

傷薬を渡す場面、このあとに傷薬が果たした役まわりやその後の展開を考えると、ある意味、象徴的なシーンに思えますね。
鄭児のように、自分に都合よく解釈し思い込むストーカー体質の相手に不用意にこんなことするからあんなことに…(´-ω-`)

五爺が懿旨を読み上げる場面は、何度見てもおかしくて笑ってしまいます。
五爺は当然、皇太后とグルですよね。
たぶん潜入捜査官・福さんのことも知っていたのではないでしょうか。

五爺のあのウインクは、皇太后がちゃんと四爺の気持ちをわかっていて、なんとか望みが叶うように力を貸してくれようとしているということを四爺に伝えたんだろうと思いました。

このドラマが物語の類型の枠を巧みに使っていること、ホントにその通りですね!
ドラマの最後も…かなり長いことモヤモヤしていたのですが、最近になって、あのラストに帰結するために逆算的に作られていったドラマだったんだなと思うようになりました。

またまた長くなっちゃったんで、あとは急ぎ足で…

五色箋に30時間クッキングに硯などなど、今回もタメになる情報をたくさん、ありがとうございました!

バラエティ番組の翻訳も、とてもとてもありがたかったです。
残念ながら「大牌駕到」の方は削除されていて見られなかったのですが(「非常静距離」は大丈夫でした)、丁寧な翻訳のおかげで、見てるように楽しめました。
13話も楽しみにしております\(^o^)/
Posted by 銀 at 2015年11月08日 02:48
銀さん、こんばんは。

忙しいお時間を割いて、コメントいただき有難うございます。

相変わらずお仕事早送り中なのですか…。あまり早く巻くと擦り切れちゃうから(って昭和な発想ですけど)、どうかくれぐれもご無理なさいませんように...。

「Y」の漢字は現代語でも使うんですけど、女の子/小娘、というときの「Y頭」(ヤートウ)か、木の枝、みたいな意味の単語しか使い道ないように思います。もっとも、古代でもプラス「下女」くらいしかないので、割と生産性低い漢字かと思います。枝毛、とかY字路、とかに使えたら面白いんだけど...。

かくいうウィキッドの戦いですが(勝手に命名)、コメントを拝読してからというもの、假屋崎省吾と高見沢俊彦の対決に脳内で変換されてしまい、濃くて困っています。何とかならないでしょうか。

おっと、↑上の何とかならないでしょうか、は質問ですが、本文で「分からない」と書かずに、「でしょうか」って書くのは、たいてい何話か先に答えがあるからなんです(「でしょうか?」と思わせるように、脚本がミスリーディングを狙ったり、伏線を張っている)。

でも、後から自分で読んだら、確かに、読んでる方に質問してるようにしか見えないですよね...う〜む、ブログで伏線を張るっていうのがそもそも間違いなのか(笑)時間があるときに、本文を直しておきますね。

いちおう、毎回のお話よりも先のことはネタバレになるので、各話で分かっていないはずのことは、なるべく伏せるようにしてます。ま、たいていの人が最後まで見ちゃってるでしょうが、ときどき、DVDでぼちぼち見てる、という方もいますので、五爺と福さんのことは、まあ、おいおい。

鄭児のことは、このクール(10番台)で書くか、最終話で書くか迷ってます。いったん書いて、最終話のときに「よく考えると」、って書こうと思ったけど、この時点までの話で書くと、ここだけ読んだ人が誤解しそう(でもネタバレになるから、それ以上のことは書けないし)。やっぱり、やめとくか...。

そうなんです、バラエティ番組のアーカイブって、ある程度経つと消されちゃうのもあるみたいですね(はなはだしきは、番組そのものが終了して、アーカイブごと消滅してたり)

私が今一番恐れてるのが、2016年に入ったとたんに、2014年以前の番組が消されちゃうことなんです。かなり前の番組を素材としてご用意してたりしますので...。もっと早く書けばいいだけなんですけど! 今は亡き番組の記録として(泣)お楽しみいただけましたら幸いです。

*追記:URLをyahooで検索すると出てこないことがあるみたいです。GoogleではOKでした。

だんだん風邪引きさんも増えてきました。どうかくれぐれもご自愛ください!
Posted by 銀の匙 at 2015年11月12日 01:24
銀の匙さま

今回も力作ありがとうございます。
白眼視とか千金の由来など中国語ならではの蘊蓄感心して読みました。
前回あたりからお話ししている、結末に向かって巧妙につくられたストーリー展開。銀さんはさすが、薄々気づいていたようですが私にはまだピンときません。これからどんな仕掛けなのかますます目が離せなくなりますね。

とても面白く拝見したのですが、コメントするにはあまりにライブ(CNbl−ー)のスケジュールが立て込みまして、遅くなりすみません。
(遅くなったからといって、出来のいいコメントというわけでもないのですが)
ライブ友の指摘ですが、私はただのイケメン好きらしいのです。
確かに音楽的に素晴らしいものを何度も聞いているわけでもなし。微妙ですな!
ということはこの蘭陵王もそのせいかと。イケメン揃いでで王道少女漫画的なのが嬉しいだけ?
極めて反省しております。もっと格調高くアプローチしなければと。せっかくの雅楽にさえも残る実在のヒーロー。

あの、こう言いながら、なんなんですが、お姫様抱っこの件。
腹筋8パックになるほどのトレーニングが支えているのですね。まさかあのインタビューでそんなことを話しているとは気づきませんでした。
銀の匙さん、本当にありがとうございます。
最近朝ドラにディーンフジオカが出てますけれど。以前話された台湾ドラマの格好いい日本人を演じた役者さんですよね。
もっと内容にコメントするつもりだったのですが雑談してしまいました。お許しください。

中国語むづかしくなってきました。漢字も3種類覚えないといけないと最近本気で考え、その手のワークブックも購入したくらいです。感だけではおぼつかないです。発音と声調も種類は覚えたけれど聞き取れない。

余談(雑談と余談ばかりで申し訳ない)ですが、盆栽は手のひらに載るようなのを名人の友に付き合い作りました。なぜか私だけ3日で枯らし。話題にしないようにしてます。
銀さん、ミスマープルとクローニンの城塞がガーデニングのきっかけです。
銀の匙さま、どんなにゆっくりでも良いので、また次回もお願いいたします。どうか、無理なさいませんように。(私たちが無理させているのかも。)




Posted by 深雪 at 2015年11月21日 03:09
深雪さん、こんにちは。

お返事遅くなりまして、失礼いたしました。

とても残念なことに韓国のバンド事情に疎いのですが、コメントで教えてくださったバンドを見てみたら、確かにとても綺麗ですね。韓国の人は男女とも、お肌が綺麗でうらやましいです。色も抜けるように白くて、北国の人って感じですよね。

ドラマの蘭陵王の方は、表面はいかにもなラブストーリーに作ってあるんですけど、そこを早送りして見ますと、また、別の面白さが...いえ、ツッコミのネタとしてということではなく...(笑)

ということで、次回の第13話は最初飛ばし飛ばし見たので、後で話がよく分かんなくなって結局見返したという、全くもって何だかななんですが、記事ももう出来てるんですけど、書き手の態度が如実に反映されており、全然面白くないです。何とかならないかと足したり引いたりしてみましたが、如何ともし難く…すみません。

その次の14話の方がいろいろあるので、そっちにご期待ください。ていうことで、引き続き、よろしくお願いいたします。
Posted by 銀の匙 at 2015年11月29日 12:34
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