2017年08月26日

ありがとう、 トニ・エルドマン

s-tonierdmann.jpg

暑いところに暑苦しいチラシ画像、失礼いたしました。

この毛むくじゃらの図に添えられたコピーが、全てを物語っております。

「愛は不毛じゃない」

さ…

…寒っ!

一言でこの映画の本質を表した、まさに秀逸なるコピーでありますが、お話はまさにこの通り、全編これ全然笑えない、しばらく考え込む、腹立たしくなる、あるいは気づかない、痛々しいおやじギャクがさく裂しております。

いや、ギャグというよりは、イタズラというかむしろ嫌がらせの領域に両足を突っ込んでいるのですが、それでもヴィンフリートはめげません。多国籍企業で働く氷のようなキャリアウーマン、イネスの父として、娘を心配するあまりに後をつけまわす、カルガモの逆バージョンみたいなことを平気でやってのけます。

娘の海外出張先・ルーマニアに堂々と乗り込み、明らかに厄介者扱いされるだけでは飽き足らず、妙なカツラに謎の入れ歯をはめて、勝手に人生コンサルタント、トニ・エルドマンを名乗り、娘の行くところ行くところに現れ、結果的に仕事の邪魔ばかり。

そんな強烈かまってちゃんな父親の行状に切れ者イネスもだんだん歯車が狂ってきて、上司や同僚を交えた大事な場面で、ついに突拍子もない行動に出てしまいます…。



いや〜、わたくし、リアルで行動がトニ・エルドマンそっくりの傑作なお父さんを存じ上げているのですが、端から見てるとすごく面白いんですけど、娘さんは相当ウザく思っているでしょうね...。映画館でこのお2人にトークショーをしてもらったらどうかと思うけど、娘さんはきっとうんとは言わないだろうな(笑)

もっとも、自分は娘の立場とはいえ、ヴィンフリートの気持ちはすごくよく分かります。いつまでも小さな子どもにしか見えない娘が、大人ぶって危なっかしいことばかりしている。ただもうおろおろと、後ろにくっついてちょっかいを出すことしかできない。

娘の方は絶対心底嫌なんだと思いますが(笑)、どこかで、自分の今している仕事の非道さを感じていたのでしょう。何とかそれにフタをしてクールに振る舞ってきたけれど、ついに臨界点に達するときが来る。それは、父の存在がなければ、こうも早く表面化しなかったものかも知れない。

娘と違って父は芸術家(音楽家)なので、奇行もそれなりに許されてきたのでしょうが、いきなり思い切ったことやっちゃう娘も、やはりそのDNAを受け継いでいたんでしょうかね…?

この映画を観るまで、ルーマニアってどんなところか全然知らなかったのですが、今はこんな感じなんですね。石油資源を求めて企業が群がり始めているようですが、日本でもときどきルーマニアの話を見聞きするようになったのはそのせいなんだろうか、と思ったりしていました。ちょっとトニ・エルドマンにちょっかい出されているのかも知れません。

なんて、映画を観ながらあれこれ詮索するヒマがたっぷりあります。全体に話の展開がスローだし、エルドマンは笑えないし。

ハリウッドでリメイクの企画があるそうで、それだと気の利いたエピソードやら盛り上がるシーンやらが巧みに配置され、飽きず、楽しく、感動しながら観られるのでしょう。だけど、私はこの作品の、訥々とした不器用なベタさが愛おしいです。

単館公開は終了しましたが、秋口からまた全国各地で上映されるようなので、機会があればぜひご覧になってみてください。
posted by 銀の匙 at 13:39| Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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