
映画「ロード・オブ・ザ・リング」のための音楽を作曲者みずから6楽章のシンフォニーにまとめ、それをロンドンで2日間だけ演奏するというので、わざわざ出かけて参りました。
実はこの8月に、東京でも同趣旨の演奏会があったのですが、指揮は違う人でしたし、第一、演奏がほとんど聴くに耐えないレベルだったので、まあ、あれよりはましだろうと思っておりました。(なお、2004年12月の東京でのコンサートについては、こちらにちらっと感想を記しました)
演奏会が開かれた9月22日というのは、指輪物語のファンにとっては特別な日です。
「ホビットの冒険」の主人公ビルボと「指輪物語」の主人公フロドの誕生日だからで、映画冒頭でもこの日を祝う盛大なパーティーのシーンがありました。そんな晴れがましい日にロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで、映画と同じロンドン・フィルが演奏するとなれば、ひょっとしてゲストにクリストファー・リーくらい来ちゃうかも…?とミーハーな望みを抱くのも無理はない…ですよね?
残念ながら、ゲストは誰も来ませんでしたけど、演奏は素晴らしいものでした。
総勢200人ものフルオーケストラとコーラスが一気に揃っただけでも、その迫力たるや圧倒されるものがあります。久々に、指の先まで音楽に浸る喜びをたっぷりと味わうことができました。エルフ行軍のときの音楽や「旅の仲間」のテーマは、CDで聴くとちょっと俗っぽく、あまり好きではありませんでしたが、演奏会ではこれらのパートで音量MAXになり、これぞライブの醍醐味!という感じでとても良かったです。フルート、バイオリンなどソロ演奏はもちろん、女声合唱も厚みがあってさすがでした。
タクトは作曲者のハワード・ショアが自ら振り、これがなかなかの見ものでした。DVDなどで録音風景を見ていると、淡々と指示を出しているように見えますが、さすがは生演奏、メリハリの利いた力強い指揮ぶりに目が釘づけです。あまりにも力が入ったため、指揮台をがっつん!と痛打した音が響いた一幕もあり、背景に映るアラン・リーのイラストもそっちのけで見入ってしまいました。
思えば、ポピュラー音楽なら作曲した人の演奏を聞くのは当たり前ですが、オーケストラの場合、きちんとしたホールで現代の作曲家の演奏を、作曲家の指揮で通して聴ける機会はまれです。そういう意味でも貴重な機会でした。
とどめは最終楽章です。戴冠式のアラゴルンの歌をうたった男性歌手は、
日本公演とは違い、ばっちり鼻声でした(…わざと…?)。シセルの歌うInto the West
が柔らかく会場を包んだあと演奏は終わり、当然ながら満場の観客のスタンディング・オベーションとなりました。
会場となったロイヤル・アルバート・ホールは円筒形をしており、音響のいいホールです。予約はホームページから簡単に入れることができ、日数があれば日本までチケットを郵送してくれます。
イギリスのホールの例にもれず、値段の高い席が見やすい席とは限りません。貴族様が後方に陣取った名残なのか、少し遠めのところの席種が高いのです(すりばち状になっているので、上の方が残響がいいのかもしれませんが…)。私が取ったのはアリーナで、2番目くらいに安いところでしたが、ショアの表情までばっちり見え、楽団員とは席の高さが同じだったため、音楽を全身に浴びることができました。ただ、今回アリーナには椅子が並べてありましたが、演目によっては立ち席になることもあるそうです。
今度の12月にはショアの指揮で日本再公演があるそうです。今度はロシアのオケと組むそうですが、さてどうなりますことやら…。


