2008年05月29日

屋上庭園

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この展覧会、これまで出かけた展覧会のうちでは(わたくし的には)間違いなく上位5番には入る企画でした。チャンスがあれば是非お出かけください。

「屋上庭園」をテーマにした企画展で、これと言って中心になる展示はありません。強いていえば、出品作品がもれなく良かった珍しいケースだと思います。

そう思わせてくれた最大のポイントは、抑制のきいたストイックな作品選びにあったと言えるでしょう。館蔵品中心とはいえ、美術館主導のテーマ展というと、あれもこれもとコンセプトにそって詰め込みがちですが、今回は静かな庭園の回廊をゆっくりと巡っていくような気持ちで、用意された10通りのアプローチが楽しめました。

天井が高く、柔らかな光を天窓から取り込んでいる美術館の建物が一方の主役となっています。

入り口で迎えてくれるニコラ・ビュフの作品に、まず度肝を抜かれます。白地に黒のポスターカラーで描かれた門をくぐると、一面に広がる黒字に白抜きの線画。一見、宮殿の内装のようなきらびやかさですが、よく見るとあちこちにマンガのキャラクターのような造型が…。ドカンとかドスンとかカタカナの書き文字まであるのがご愛敬です。西洋と東洋の要素を巧みに混ぜ合わせていながら、いずれもいかにもそれらしく描かれており、力のある作品です。

当初、この展覧会を見に行くきっかけとなった藤森静雄の作品を展示している版画のスペースも良かったです。明治から昭和にかけての版画同人誌が並んでおり、実際に手にとれる復刻本もありました。いずれもこの美術館の図書館が収蔵しているものだそうで、さすが良い本を持ってるという感じでした。

次なる目玉はマティスです。まさか出品しているとは知らなかったので嬉しい驚きでした。ナチス占領時代のフランスにとどまった画家が胸中の思いを込めて制作した「ロンサール恋愛詞華集」「シャルル・ドルレアン詩集」は、前者は茶色の線画、後者は手書き文字にわずか数色の線画と非常にシンプルでありながら、心のこもった必見の作品です。挿絵と文字の配置の巧みさが強く印象に残っています。

後半は、モノクロのデッサンで構成されたブロワ・ブロワザの映像作品《Bonneville》を面白くみました。単なる3Dアニメなのかと思ったら、デッサンと紙の模型を組み合わせて作ったのだそうです。画面に降りしきる透明な物体、如何にも立体なのに、横に回ると薄っぺらで、肝心なところでホワイトアウトして切れてしまう記憶、なんだかグレッグ・イーガンのSF「順列都市」を連想してしまいました。

そして圧巻は、チラシにも使われた内海聖史の作品、「三千世界」「色彩の下」です。美術館の壁そのものを生かした作品で、天空の庭園にふさわしいスケールが最小限の要素で表現された大作です。

いつもは目玉の作品を中心に割合駆け足で見ることの多い美術展ですが、今回は本当にほっとした気持ちで、じっくり見ることができました。展示と展示の間の余白を楽しめる心のゆとりがあるときに、お出かけください。

2008年7月6日(日)まで
東京都現代美術館(清澄白河)
posted by 銀の匙 at 22:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 展覧会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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