2006年03月11日

ブロークバック・マウンテン

brokeback.jpg

久しぶりに良い映画を見させてもらいました。

過去に「アイス・ストーム」という素晴らしい作品があったので、
アン・リー監督の新作はなるべく見るようにしていました。でも、
思えばここ数回、肩すかしを食らわされっぱなしでした。
「グリーン・ディスティニー」しかり、「ハルク」しかり。
期待して見たのに、娯楽作品というにはあまりにも退屈で、
もう彼の映画を観るのはやめようかと思ったぐらい。

今回も、賞はいっぱい獲ったものの素直には受け取ってませんでしたが、
心の機微に触れる演出が見事な作品でした。

俳優達がとても自然で、繊細な演技を見せます。
「アイス・ストーム」のときもそうでしたから、
これにはきっと監督の力量が貢献するところ大なのでしょう。

どんな紹介記事にも書いてあるので、
ネタバレとは言えないと思いますから書きますが、
お話の中心になっているのは、男性同士の恋愛です。

イニスとジャックはブロークバック・マウンテンという場所で
羊の番をして暮らすうちに、関係を持ってしまう。
はたで見てると何だか単なるハプニングみたいに感じてしまうため、
は、そんなことで本当にいいんですか?と驚いてしまうんですが、
見た目のあっさりさ加減とは裏腹に、
物語が進むにつれ、実際には彼ら二人には強い結びつきがあることが
苦しくなるほど伝わってきます。

身分違いの恋、人種違いの恋、年齢差のある恋など、
恋愛物語をドラマチックに盛り上げる要素としての障害はさまざまですが、
それらもだんだん(現実は厳しいとはいえ)取り除かれつつある現在、
物語的に一番説得力のある許されざる恋は、
もはや同性愛しか残ってないというのが、
このテーマを選んだ理由にあるのかもしれません。

なにしろ、異性であれば結婚してハッピーエンドという終わりもあろうものを、
この作品のような関係では落ち着いて行く先がないからです。

打算も未来も何もなく、
ただ愛するためだけに愛するというのはどういうことか、
そこを痛いほど突いてくる。

しかし、この話が心の機微に触れてくるのは、
許されざる愛を繊細に、克明に描いているという点だけではありません。

彼ら二人は家庭を持ち、別々の人生を歩んでいくのですが、
心はいつもブロークバック・マウンテンと共にある。
それはもちろん、愛のためでもありますが、
そこには父親や家族・妻などの他の人間とは結べなかった絆があり、
選ばなかった人生に対する苦い思いと憧れとが
常につきまとっています。

そこが、同じく同性愛をモチーフにした「モーリス」とは
決定的に違うところです。
「モーリス」では少なくとも、愛に人生を狂わされながら、
どこまでも愛を第一義に生きた人物が登場する点、
あくまでも、テーマは愛であったと思います。

「ブロークバック・マウンテン」では、
相手への愛とは同時に、がんじがらめに縛られた今の人生にはない、
自由をも意味しています。
だから、特に愛について考えることがない人の心にも
触れてくるところがあるのだと思います。

観る人は誰でも、こんなはずではなかった人生、
しかし、選ぼうにも他には道のない人生に、
向かい合わざるを得ないのです。

後半は、どこでこの映画が終わっても完結しそうなくらい、
心に残るシーンの連続でした。
ラストのワンショットがありがちな感じだったのだけは意外でしたが、
その直前まで本当に素晴らしかった。

今や、ようやく世界は寛容になり、
まだまだ偏見があるとはいえ、同性愛という障害も取り除かれつつあるので、
この映画に描かれていることが昔語りになる日は、そう遠くないでしょう。
(そうだといいのですが)

それでもやはり、選べそうでいて選べない人生というのは
いつまでもあるでしょう。
そんなことを思いながら見ておりました。


【追記】
その後、トラックバックを頂いたりして、考えたことがありますので追記致します。

私個人の、この映画についての感想は上の通りなのですが、なぜこの作品を描写通り「ゲイを描いたもの」として見ず、一般化するのか、という疑問をお持ちの方々の記事も読ませて頂きました。

そういった記事を見て、私が最初に連想したのは、「フェミニズムSF論争」のことでした。

そのとき論争の焦点になったのは、フェミニズムをテーマにしてSF作品をつくったのに、世間は勝手にそれを一般化して、わざとフェミニズムからテーマをそらそうとする…といった内容だったかと思います。

そういった何かの主義主張を作品の形で世に問うということはもちろんあるでしょうし、作者がある意図を持って作っているのに、それをまるっきり無視、または忌避されてしまっては何のための創作かと、抗議したい気持ちはわかります。しかし、そういう、ある思想の宣伝のために書き、その思想のために奉仕する作品は(その思想に賛成でも)私にとってはつまらない作品です。

しかも、今回の映画の場合は、誰が観てもこれはゲイを描いた映画だとわかる(描写が正しいのかどうかは検討の余地があるのかも知れませんが)ので、少なくとも見る人がまったくその点を無視することはあり得ませんし、かなりの人が真摯に受け止めることでしょう。

その上で、中には自分の問題に引きつけて観る人だっているでしょう。大体、監督が作品のテーマをゲイへの理解に絞っていると公言しているわけでもないし(少なくとも私が知っている限りでは…)、プロパガンダ映画でも、記録映画でもない訳ですから。

よしんば監督がゲイへの理解を深めるつもりで撮った作品だったとしても、それは制作側の意図に過ぎません。鑑賞のレベルが低く作者の意図を掴み損ねた場合も含め、作品をどう捉えるかは、受け手の自由に委ねられていると私は考えます。聖書でさえ様々な解釈があるというのに、芸術作品が一つの解釈しか許されず、他の人の多様な解釈を読んでなるほどと感心したり、驚いたりする余地がないのはつまらないからです。


上映中
シネマライズ(渋谷)
今のところ、地下と2階の2スクリーンで上映しているため、
思ったほどは混雑していませんでした。
上映3日前から予約ができます。
2階の方が大きなスクリーンですが、地下もE列以降は
段差が大きく見やすいです。

地下階はスクリーンが湾曲していますので、
一番オススメはリザーブシートに近い、
I列J列の10、11番あたりです

2006年3月18日〜
新宿武蔵野館
シネ・リーブル池袋
posted by 銀の匙 at 23:57| Comment(2) | TrackBack(10) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月09日

イキングット(Ikingut)

アイスランド映画祭 2006で上映された映画です。

古ぼけた教会の前で遊ぶ男の子。咎めるお姉さんは随分クラシックな格好を
しています。ふうーん、アイスランドの田舎(?)って、伝統的な暮らしを
してるんだなーと感心しながら見てたら、袖にレース飾りをした男性が登場するに
至り、どうやらこれは現代の話ではないとようやく気づいた次第(^^;)。

子供映画と思って見たのに、だんだんホラーっぽい展開になってきて
ちょっとドキドキしながら見ていましたが…大丈夫でした(ほっ)。

内容はアイスランド版「ET」みたいなお話なんですが、
具体的にどこの話かも、実はいつの頃のことかも良くわからないのです。
中に国王のことがちらっと出てくるのですが、
アイスランドは独立するまでずっとデンマーク王の統治下にあったとのことなので
時代を特定する手がかりにはなりませんでした。
観る人が観ればすぐわかるのかもしれませんけど。
むしろ曖昧なのが子供のお話らしくて、とても良かったです。

昔のアイルランドの人の暮らしぶりが伺えるのも面白いです。
肩を寄せ合うように建っている家々の様子や、
冬の厳しさなどが、お話に沿ってうまく取り入れられています。

室内のシーン、雪原のシーン、夜のシーンなど、
光の加減が美しく、絵になります。

お子さん方には1時間半の上映時間はちょっと長いかも知れないけど、
きっと主人公の気持ちになって見ることができると思います。

上映時に操作がうまく行かなかったために気づきましたが、
どうやら日本版のDVD(リンク先にはあらすじの紹介がありますのでご注意ください)発売されてるらしいですね。
アイスランド語バージョンを見ましたが、間違えて
日本語吹き替え版が一瞬流れてました。

滅多にないアイスランド語を聞く機会を逃すまいと、
一生懸命でした。北欧語一般にそうなのかもしれませんが、
注意していると、英語の綴りそのままに発音しているような語に気づきます。
「シンクル」(歌う)とか、「ヒョルプ」(助けて)とか
「コメン」(入る)とか…(間違ってたらごめんなさい)。
rは巻き舌で、ドイツ語のとはまたちょっと違うようにきこえました。
それからthの音が耳につきます。全体に、エルフ語のシンダリンっぽい言語ですよね…
(アイスランド語を参考にしたというから当然?)
そんなオタクな楽しみもある映画でした。

タイトルの「イキングット」は、アイスランド語ではありません。
この意味がわかったとき、とても感動しました。
(察しがついても良さそうなものですが、
映画の中で説明されるまで全然わかってなかった…)

ギスリ・スナイル・エリンソン監督
2000年 87分
渋谷ユーロスペースにて。
映画祭は、このあと神戸に巡回する予定。
あらすじがわかっても良い方はこちら。
posted by 銀の匙 at 23:49| Comment(0) | TrackBack(1) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年02月24日

マイ アーキテクト ルイス・カーンを探して

myar.jpg

謎の死を遂げた建築家ルイス・カーンの遺児・ナサニエルが、父の足跡を尋ねるドキュメンタリー。

ミステリーのようでもあり、
一人の建築家の生き方を描いた伝記でもあり、
家族とは何かを問いかける物語でもあり、
芸術とは何かについて語りかける映画でもあります。

とくに建築を志す方は

絶対に見てください。

音楽なら聞かなければいいし、絵なら見なければいいし、製品なら使わなければ済みますが、皆さんの作る建築はたいていの場合、いやがおうでもそこに住んだり、そこで働いたり、毎日通りかかって眺めなけたりしなければならない性質のものなのです。強制的に鑑賞させられる私たち一般庶民の 迷惑 ことも考え、良いものを作ってくださるよう切に希望致します。

とは言い条、
映画に登場したルイス・カーンの作品の中でいいなと思ったのはカリフォルニアの「ソーク研究所」(しかも、第一印象はまるで墓地のようだと思った)とフィッシャー邸だけで、後はなんだか随分大げさな建物だなあ…というのが偽らざる感想でございました。もちろん、どれも実地で見たことがないし、内部も見てみないと何とも言えませんけれども。

古代建築のような建物を目指したカーンの作品について、
どんな批評家よりも最大の賛辞を送ったのはパキスタン軍でした。
カーンはバングラデシュの国会議事堂(↑チラシの写真の建物)を設計しましたが、
その建設中パキスタンとの戦争がありました。
ところが、パキスタン軍はこの建物を古代の遺跡だと思い、
空爆しなかったそうなのです。

パキスタン軍、グッドジョブ!

もう一つ特筆すべきは音楽が良いこと。ベートーベンやカントリーミュージックが
ばっちり嵌っていました。
退屈に成らずに済んだのは、巧みな編集と音楽の力も大きかったと思います。

朝夕2回、
渋谷Q-AX(キューアックス)シネマにて上映中。
水曜日はレディースデイ料金が適用になります。
公式HPはこちら
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2006年02月07日

天空の草原のナンサ

tenkuuno.jpg

Dalmatian Dot-matrix printer
のeticaさんからお勧め頂いて、見て参りました。

モンゴルの青い空、緑の草原、どこまでも続くような小川…という背景は見知らぬよその国のお話なんですが、撮りっぷりは思いっきりホームビデオ風で微笑ましいです。モンゴルの草原に暮らすある一家のささやかな日常生活(と言っても、9歳の少女・ナンサが馬に乗って放牧に行く、というような日常生活なんですが…)を描いたものです。

家財道具は最低限で、季節ごとに家まで畳んで移動する彼らの暮らしはは私の長年の理想であります。一切合切をキャンピングカーに積み込み、住所不定で放浪するのが夢なんですが、彼らのように自分の手で作り、自分の知恵に頼る生き方は到底無理そう。

演じているのは実際のモンゴル人一家で、監督さんはモンゴルの方だとか。そのあたりも地に足がついた感じがする原因でしょうか。さりながら、日本人の撮った作品で、お総菜を作ったり、畳替えをしたりといった日常風景を撮った劇映画があまりなく、むしろ外国人監督の撮った作品にわざわざそういうショットが入っていたりするように、この作品にもどこかしら、外部からの視線を感じます。

監督さんが海外から帰国したとき、こうした日常の暮らしに目が向くようになったのでしょうか。あるいは、もはやこの映画に見られる暮らしは、本国の人にとっても珍しくなったのでしょうか。

ちなみに、eticaさんの感想はこちら。子供…確かにむちゃくちゃ可愛かったです。

作品の可愛いHPはこちら
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2006年01月26日

鴛鴦歌合戦

oshidori.jpg

この作品、文句なく面白かったですね。
最初の出演者一覧を見ただけで吹き出してしまいます。

嶺澤丹波守(ディック・ミネ)
志村狂斉(志村喬)
お春(市川春代)

って、まんまだってば(爆。

白黒の画面ではありますが、とてもカラフルに感じます。
ディック・ミネ演じる若殿様が「ぼくはオシャレな殿様〜♪」と
突然歌い出したり、骨董ぐるいの傘張り浪人志村さんが
日本に一つの茶碗なるものを持ち出して
「さ〜てさてさて、この茶碗♪」と自慢を始めたり、
なんか鼻歌そのまんま歌詞にしてみました系のナンバーが炸裂。

ミュージカルが何となく恥ずかしい私ではありますが、
ここまでやってくれれば大歓迎です(こういう時代劇ものは
ミュージカルではなく「オペレッタ」というらしいけど)。

鼻歌もあれば竹久夢二風のバラードあり、
1930年の作品だけあって、同時代の他の国のポップスと
似たメロディーが飛び出すのも興味深いところでしょう。

お話は他愛もないものなのですが、明るくて、人情味があって、教訓めいたことも入っていたりして、庶民に愛されそうな内容です。

ごく短期間で撮られた映画だそうで、香港の「賀歳片(お正月映画)」を彷彿とさせます。そして賀歳片同様、軽いノリで作られてはいるけど、決して手抜きにも安っぽくも見えないあたりもスゴイ。

話は変わりますが、
最近見た「Mr.&Mrs.スミス」で女優のアンジェリーナ・ジョリーより
男優のブラッド・ピットの方が顔が一回り小さく見えるんで驚いていたのですが、
さすが歌舞伎役者というべきか、立て役の片岡千恵蔵は顔が大きく、その点でもなんとなく和めたのであります。

土日の朝10時か、平日・土日の夜9時20分からの上映なので、お客さんが少ないのが残念です。この作品はビデオで見るより、満員のお客さんと一緒にげらげら笑って見たいものです。

シャレがわかる皆様に、超超オススメです。

ユーロスペース(渋谷)
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2005年12月31日

歓びを歌にのせて

*緊急告知*
ミヒャエル・ゾーヴァ展が東京でも開催されます。出展点数は130点とのこと。

以下こちらからの情報です。
不思議な物語−ユーモアに秘められた、ただならぬ気配
ミヒャエル・ゾーヴァの世界展
2006年1月18日(水)−1月23日(月)
10:00-20:00(入場は閉場30分前まで、金曜21:00・最終日17:00閉場)
松屋銀座8階大催事場
中央区銀座3-6-1
 HPはこちら

yorokobi.jpg


さて、本題。
「歓びを歌にのせて」はスウェーデンの映画です。
健康を害した世界的な指揮者が、故郷の村に戻ってくる。
隠者のような生活を送れるものと(たぶん)期待してたんでしょうが、そこは小さな田舎町のこと、噂はあっという間に広がっていたらしく、自分でも知らないうちに皆の好奇心と怖れの的となっているというトホホな状況。

そしてやむなく、聖歌隊の指揮者まで引き受けさせられる羽目になってしまうんですが…。

あらすじだけ読んでも、感動の音楽ストーリーなんだろうなと予想できてしまい、しかも全然予想が裏切られないので、あ、やっぱり?とつい思ってしまうのは我ながら困ってしまいますが、同じく合唱を主要なモチーフにしていたフランス映画「コーラス」と比べてみると、こちらの方はより切実です。

先生と生徒なら卒業するまでその関係は変化しませんが、大人相手の合唱団だと人間関係がややこしく、ともすれば泥沼に嵌っていってしまいます。北欧の映画は数えるほどしか観たことがありませんが、意外にどれも感情表現がオーバーで、さすがバイキングの子孫…という訳の分からない感想を抱いたものです。本作品も例外ではなく、わめく、泣く、叫ぶと子供じみたふるまいの挙げ句、あわや殺人事件?という極限の状況も登場するなど、なかなか激しいものです。

感動の名作というと、しみじみした味わい、淡々とした物語が続くのでは、と思っていた方には驚きの展開かも知れません。

そして、そんな冬の嵐のような激しいぶつかり合いを経て至るハーモニーの境地というのが実に美しく、そこで初めて、ああ見て良かったなあと思う次第。大人が見るにふさわしい作品です。

ケイ・ボラック監督
2004年 132分

渋谷ル・シネマで見ました。
すごい混雑ぶり。
ここは朝10時以降、全ての回を劇場窓口で受け付けしますので、
なるべく早く受け付けすることをお勧めします。
日曜なんて、昼1時過ぎにノコノコ行ったら最終回しか空いてませんでした。
(最終回は一律1000円なので、油断してると満席になります)

番号順の受付で、見やすい席はFG列あたりです。

スクリーンが高めの位置から始まっているので、皆さん割と後ろに座りますが、
あまり角度がないので、あまり後ろだと少し見下ろす感じになってしまうのが
辛いところ。
posted by 銀の匙 at 12:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月20日

ザ・コーポレーション

corpo.jpg

今年の冬は観たい映画が少ないとお嘆きの皆様、こういう硬派なドキュメンタリーは如何でしょうか。

この作品は、大企業というものが、ビジネスの名のもと、如何に傍若無人なことをしているかをさらけ出すもの。どうせ多国籍企業なんてロクなことはしてないだろう…という漠然とした不信感は持っていたものの、ここまでやるとは開いた口がふさがりません。

なぜこうまでしなければいけないのか、その理由は「金のため」。俄には信じがたいほどです。最近のバカバカしい株買い占め騒ぎを見聞きしていなければ、絶対嘘だと思ったでしょう。だとすれば、対岸の火事とは思えません。

しかしながら、信じがたいことをする企業であっても、そこで働く人たちは、ごく真っ当な人間ばかりです。そこに根深い問題がある。真っ当に働き、熱心に成果を上げ、株主や市場の要求に応えることが恐ろしい結果を生むとは、誰しも考えたくないでしょう。

中には、自分たちのしていることが間違いだと気づきながら、それを隠蔽しようとする人たちも当然います。むしろ、昨今ではそれが企業人として当然の態度であるかのようです。

一方では、職を、時には命を危険にさらしても、それを告発しようとする人たちもいる。昔、「シルクウッド」というアメリカ映画を観たことがあります。会社のずさんな安全対策を告発しようとして殺されてしまう従業員の話。企業を内部告発しようとした本人にも、発表しようとしたメディアにも圧力がかかる「インサイダー」って映画もありましたっけ。でもこうした映画を発表できるところに、アメリカの底力を感じたものでした。今回この映画はカナダ映画ですけど…。

しかし、和を以て貴しとなす日本国民たる私は、ここまでストレートなメッセージにはどうも引き加減になってしまうのであります。この映画、ずいぶん理路整然としてるけど、何か洗脳しようとしてるんじゃないだろうか。ついには、映画を観ながらも、どこか理論が破綻してるところはないのか、あら探しをする始末。

日頃「不思○だいすき」とか「明るい未来を作る皆様の○○」とか、感性に訴えかけたり、雰囲気で訴えてくるCMに囲まれていると、そうじゃないメッセージは不快や不信を引き起こすようです。

少しは自分で考える訓練もしないと、そんなことでは良くないんだけど、ここは一つ、カウンター側も同じ土俵の上で勝負してみるっていうのはどうでしょう。心理学者やコピーライターを動員して、メッセージが浅く広く消費者に浸透するようなアイデアを出してみるのは?と考える私は骨の髄まで商業主義に侵されているんでしょうね…。

観ながら思い出したのは、星新一のショートショート。生理現象も広告として売ってしまう話です。たとえばくしゃみをすると、何か特定の商品の名前をいうような条件反射をつけるという広告手法が出てきます。まるっきり同じではないですが、この映画にも主旨としては同じような広告手法が登場してちょっとゾッとしてしまいました。

マーク・アクバー、ジェニファー・アボット監督
2004年 145分 

UPLINK X(渋谷)HP はこちら

ここの1階に入ってるレストランが好きで(テラスもある)
用もないのにフラフラ寄ったりします。映画を観ると割引になります。

映写室(としか言いようがない)は2つあり、
入場30分前に整理券を配布、15分前から整理券順に入場します。
絶対に座れはしますが、狭い上に段差がないため、
後ろに座れば前の人の頭がジャマ、
前に座れば後ろの人のジャマになり、良心の呵責に苦しめられるという
精神修養にもってこいの映画館。
もうちょい何とかして欲しい…。
posted by 銀の匙 at 01:07| Comment(0) | TrackBack(2) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月18日

キング・コング(2005年版)

公開初日、渋谷の土曜日夕方というのに余裕で座れちゃいました。他人事ながら興行収入が心配です。

それはさておき。

今年も残すところ後わずか、恐らく2005年で一番泣いた映画はこれになることでしょう。
上映時間は3時間超とのことでしたが、あっという間に感じられました。

お話は1930年代のニューヨーク。コミカルな役をこなす気だての良い女優、アン・ダロウは、所属の劇場が閉鎖になってしまい路頭に迷う羽目に陥ります。そこへ降って湧いた映画の主演話。しかも脚本は敬愛する劇作家ドリスコルが書くと知り、ロケ地・シンガポールへの船に乗り込むことになります。

しかし、彼女へ出演を口説いた監督、カール・デナムは腹に別のアイデアを持っていました。フィルムを取り返そうとする資金提供者から間一髪で逃れ、船を出航させます。未知の島へ主演の男女を連れて行き、驚異の世界を映像に収め、一発逆転を狙う。その島とは、恐ろしい伝説が伝わる場所でした…。

見どころはもちろん驚異のSFXですが、全く期待していなかったドラマ部分が意外に良くて、後半は、ほとんど無理やり同行して頂いた小鳥遊さんの手前も憚らずボロ泣き。

主演のナオミ・ワッツが生き生きとして美しく、コングならずとも目を奪われてしまいます。
そのほかのキャストもしっかり描かれていて、なかでも船長役のトーマス・クレッチマンはオイシイ役どころ。コングはアンディ・サーキスが演じたとのことですが、前作「ロード・オブ・ザ・リング」とは違って、コングの造形には彼の外見は反映されてないみたいです(^^)
。コックの役でも出ていて、良い味だしてました(コックだけに…)。

そして監督役のジャック・ブラック。情熱はあるのに何か掛け違えている男。ついに栄光を掴みかけた彼を評して劇作家ドリスコルがつぶやいた言葉が、あまりにも切なくて(さすが劇作家、と思わせるセリフで、その時の表情も良かった)、ほろっと来た瞬間から後はもう涙腺ゆるみっぱなし。

ニューヨークの夜の闇から、忽然と現れるアン・ダロウの立ち姿。
朝日を見て「Beautiful... Yes,it is(美しい…本当にそうね)」というシーン。
あまりにもベタなのに、やっぱり泣かされました。

まるで宮崎アニメのヒロインのような、アンの一途な行動がまた…。うう、まさか女と恋愛シーンを撮るのがヘタだと思ってたPJに泣かされるとは…無念。つーか、やれば出来るじゃないですか…。

もちろん、この映画の見どころである驚異のビジュアルは期待を裏切りません。
SFXの技術が高度なことは言うまでもありませんが、リアルに見えるのは、やはり演出の力でしょう。想像上の生き物も、如何にもこう動きそうだ…という観客の予測に嵌めて動かしているので、ホンモノらしく感じます。また、上手にCGを設計すると、つい得意になってそこにばかりフォーカスを持ってきがちですが、カメラを人間の視点に据え、一瞬クリーチャーを見失わせてみたり、ジャンプした瞬間はぱっとフレームの外へ出すなど、巧みな動かし方です。

カーチェイスや空中戦のシーンも、かつてないアングルとカメラワークで、この後類似のシーンを撮る人は苦労しそうですね。

私は1933年のオリジナル版を見ていないので、どこからがリメイクなのかはわかりませんでした。この作品単体への評価は、オリジナルを見てみないと何とも言えません。一つはっきりしているのは、オリジナルが、これほどの情熱をそそいでリメイクしたいと思わせるほどの名作だったということでしょうか。

作品のHPはこちら。
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2005年12月02日

ハリー・ポッターと炎のゴブレット(ストーリーのネタバレなし)

harry.jpg
↑コンボセットを買ってみた…。絵なのが昔なつかしい感じ。

前三作は、映画としては何となくもの足りなく感じておりましたが、今回は面白かったです(単に暗い展開が好きなだけ?)

魔法学校だかサーカス団だかわからないような入場シーンだの(一体どういう教育なんだろう??)、私語に夢中の学生へのスネイプ先生のお仕置きだの、細かいところも面白かったし、新キャラ「マッド・アイ・ムーディ」もイケてます。肝心のラスボス対決部分がちょっとショボい(これは毎回変わらない…のを除けば…。

CGを使った見せ場とドラマ部分がちょうどいい配分で、話も良くまとまってたと思います。

ハリー役のラドクリフ君は片目だけ瞬きするのが1作目から気になってしょうがないんだけど(^^;)今回は原作通り、ちょっと悪い子風味の入ったところも見せてくれて、サービスシーン(???)もあるのでファンの方はお楽しみに。

「陰謀で人を陥れる話」と「殺人事件の犯人捜し」は後味悪いのであまり見ないんですけど、「ハリー」って毎回どちらか(ときどき両方)の要素が入ってるんですよね(--)。

それでも毎回見るのは、1枚2役の缶バッジとか、どうやって思いつく?というような小道具系のネタ(ほとんど原作から引き継いでるのでしょうが)があるのと、いかにもなハリウッド映画にはない、ここなら魔法くらいあってもおかしくない、と思わせる、伝統的なイギリスの雰囲気が、それなりに尊重されてるところが好きだからです。今回は4作のうちでは一番イギリス映らしい雰囲気だったかも。最初の方の野原のシーンから景勝地セブン・シスターズが見えるシーンにかけてがケルトっぽくてきれいでした。

それに、主人公3人組も含めて、俳優陣の醸し出す雰囲気には毎回感心します。

英語の違いはよくわからない私でさえ、せりふはバリバリのイギリス英語だなあくらいはわかりますし、それだけのことでも、作品全体のトーンにかなり影響しています。

中国人俳優と日本人俳優の差とまでは言いませんが、英語圏とはいえアメリカやイギリスの人がみれば、アメリカ人俳優、オーストラリア人俳優、イギリス人俳優の違いは細かい仕草まで含めて気になる点なのではないでしょうか。原作者がイギリス人俳優の起用にこだわったというのはもっともな話です。

「ロード・オブ・ザ・リング」で一番惜しいと思ったのは、実はこの点(皆がんばったみたいですけどね…)。

ベテラン俳優さんたちは舞台で鍛えてるおかげか、非現実的で大仰な演技(魔法をかけるとか…)がさまになってるので、安心して見られます。

さて、そういえば、中に珍しくロック調の音楽が出てきますが、歌詞にエルフが歌いこまれてて(韻を踏むため?)思わず耳がエルフ耳に…。

映画の公式HPはこちら
posted by 銀の匙 at 02:33| Comment(2) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月02日

コープス・ブライド

corpse.jpg

当初、この映画を観る予定はまっっっっっっったくありませんでした。
だって、「チャーリーとチョコレート工場」を見たばっかりだし(こっちは気に入った)、
大きな声では言えないけど、私は同じティム・バートン監督の人形アニメ「ナイトメア」についていけなかったんですよ…こんなにアニメファンなのに(泣。
第一、あの歌がうるさかったんだもん。

そのとき「ナイトメア」を一緒に見た連れは「うーん、イマイチ」と言ってたくせに、
「チャーリー」を観た劇場でこの↑ポスターを見かけて、絶対行きたいと言い出しました。

私「あんた、この映画、どうせまたナイトメアアレと同じよ」
連れ「この骨(あばら)が好き〜☆」

あかん、キョンシー好きだった…(ちっ)。

案の定、劇場で「少林キョンシー」なんて妙な映画のチラシに魅せられている連れ。「香港映画界の全てを賭けて贈る」って、他にネタはないのか他に!と八つ当たり。

そうこうしているうちに本編が始まりましたが…すみません、面白かったです。
主な舞台は死者の世界なのに、からっと明るい作品でした。
今度もやっぱりミュージカル仕立てだったんですが、あまり気になりませんでした。
慣れたんでしょうか(爆)、エルフマンさんに。

その割にはジョニー・デップ扮する主役のビクターは歌いませんでしたね。そういえば「チャーリー」でも歌ってなかった。この人、元ミュージシャンじゃなかったでしたっけ…。

もうお一人、牧師様というのがすっごい迫力で、ガン爺と良く似たセリフを叫んでらっしゃいましたが…もしや、サルマン様でしたか?そういえばこの方も指輪物語関連のCDで歌ってらっしゃいましたっけね。でも歌ってなかった。

お話は、政略結婚させられそうになったヘタレ花婿ビクターが、何の因果か死体の花嫁にプロポーズしてしまうというもの。この死体の花嫁エミリーが見た目はコワイけどとっても可愛くて、映画の好感度アップに大貢献してます。

バートン監督の初期の作品「フランケン・ウィニー」を思い出させる骨の犬も可愛かった。

でも、何と言っても感動したのは音楽ですね…。
ビクターとエミリーがピアノを連弾するシーンがあるんですが、
あの「ウィリー・ウォンカ♪」と同一人物による曲とは思えません。さすが音楽家。
と妙なところに感動した1時間17分でございました。


ティム・バートン監督

渋谷シネパトス 1
この劇場は整理番号制です。
朝から全ての回の受け付けをして、
会場15分前から整理番号順に入場する仕組み。
見やすいのは2階最前列か、
1階後方(ちょうど2階席が始まるあたり)です。
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2005年10月22日

ヘイフラワーとキルトシュー

hayflo.jpg

この映画を見に行った理由はただ一つ。めったに聞くチャンスのない、フィンランド語が聞いてみたかったのです。「指輪物語」のトールキン教授はエルフ語の1つをフィンランド語を基礎にして作ったというではありませんか。で、結論はと申しますと、

エルフ語に似てるー!!(感激)

ついでに言うと、主人公である美少女姉妹もさらさらの金髪でこちらも

小さなエルフみたいー!!(感激)

ということで、十分映画代の元は取れました。日差しがいっぱいで爽やかな北欧の夏も満喫。

じゃ手放しでお勧めのキュートなだけの映画かというと、うーん…。これ以上深入りしなければ確かに、可愛くて良い映画だけど…。
文句入ってるけど続きを読む
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2005年10月16日

ナイト・ウォッチ

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ユアン・マクレガー主演の「ナイトウォッチ」という映画が別にあるので紛らわしいけれど、こちらはロシア製。本日、東京ファンタスティック映画祭2005で見て参りました。

ハードロックとオーケストラ曲が違和感なく同居できる、スピード感と重厚さを兼ね備えた映像と、ロシア映画らしい時空を自在に行き来するストーリーが組み合わさって、とても魅力的な映画でした。

ロシアの同名小説が原作だそうで、三部作として構想された壮大なスケールの作品です。
昔、光の王と闇の王は協定を結び、互いに監視者を立てて均衡を保ってきました。闇の世界を見張る光の勢力の監視者〈夜警=ナイト・ウォッチ〉のアントンもその一人。彼は人間に紛れて暮らしているものの、特殊な能力を持つ〈異種〉でした。しかし、ついに危うい均衡が破られる時がやってきます。伝説の通りとすれば、その出来事のために闇の勢力は力を増し、ついに勝利することになるのですが…。

闇の王の名前が「ザブロン」なんて心の中でおいおいおい!とツッコミ入れてしまったし、冒頭の戦闘シーンは鎧兜の戦士達の闘いで「うっ、、またLotRもどきか?」と思わなくもないんですけど、そこからの話は全然違います。後半、冒頭シーンのフラッシュバックのような光景が出てくるんですが、そこがもう黒々とした闇の森の中のようで、この監督さんがLotRを撮ったら別の味わいで面白いかも!

どのカットも外国人の目には非常にロシアっぽいというか、独特の色遣いや小物遣いです。背景となる夜のモスクワにも惹かれます。

チラシを見ると「ポチョムキンなんて知らねーよ!」というコピーがついていますが
なかなかどうして。

その時空感覚といい映像のトーンといい、エイゼンシュタイン、タルコフスキー、ノルシュテインに連なる、正調ソビエト映画の伝統をしっかり受け継いでいると見ましたがどうでしょうか。タランティーノ監督が絶賛しているそうですが、道具立てはB級でも、内容としてはB級には見えませんでした(原作は読んでいませんが、原作がしっかりしているのかもしれません)。しかもベクマンベトフ監督はカザフスタン出身だそうですね。大好きな「僕の無事を祈ってくれ」の監督さんと一緒です。

続編は、今度は「デイ・ウォッチ」という名前らしく、エンドロールに予告のようなシーンが挿入されていました。これは楽しみだと思ったら、1作目からしてすでに日本での一般公開が危ぶまれているそうなのです。

今回、東京ファンタスティック映画祭のクロージング作品として上映されましたが、映画祭関係者と配給会社の代表が舞台挨拶をして、日本公開に向けてアメリカの親会社に働きかけたいので、署名運動に協力して欲しいと呼びかけていました。

この作品は是非公開するべき、と思ったのでもちろん署名しましたけれども、観客の反応は舞台の上とは微妙に温度差があったように見えました。マーケティングに流されず、良い作品を上映していきたい、という主催者側の熱意は多いに買うけれど、こういう運動ってファンが自主的に始めるのが普通で、配給会社に頼まれてというのは何だかあべこべな感じがするんです。それにファンタに来るような観客は普段あまり見られない映画を観ようと思っている人が多いから、一般公開されないのがむしろ当たり前と思ってるフシもなきにしもあらず…。

しかし、これ一回の上映というのは寂しすぎますし、続編はどうあっても見たい!「カルト映画」なんて狭いくくりに押し込んでおくのは勿体ない!何とか一般公開に漕ぎ着けられるよう、祈るばかりです。

*追記*
ついに2006年4月公開決定しましたね!カッコイイパンフレット作ってくれるといいなあ…。


ティムール・ベクマンベトフ監督
115分

こちら、ツボヤキ日記さんではもっと詳しく映画の内容がわかります。
そして続編のデイ・ウォッチまで!ありがとうございます。
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2005年09月18日

銀河ヒッチハイクガイド

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近年見たSF映画のうちでは、最もSFマインドに溢れていた作品。
そして、近年見たイギリス映画のうちで、最もイギリス映画らしいなあと思えた作品です。

SF大作ではよくある、山あり谷ありジェットコースタームービーという訳ではないので、全ての皆様にオススメとは言えません。ただし、イギリスが好きか、あるいはSF小説がお好きなら、きっとお好きであろうことは保証できます。

笑って泣けて(笑いすぎて)さらっと見られるのに、思わず考えてしまうシーンもあるという、良い脚本のお手本のような作品。CGが多様されていますが、動きやカット割に「おっ?」と思う新鮮なところがあり、映像的にもみどころが多いです。

「銀河ヒッチハイクガイド」という名作が原作だそうです。私は残念ながらこの本を読んでいませんが(こんな基本図書も読んでないのかよ!という突っ込みはナシね☆)、この映画の出来ならば、きっと原作者も原作ファンも満足のはず、と思って買ったパンフを見たら、原作者が脚本を書いたんですね。道理で、普通の脚本なら落としちゃうようなオタクなディテールが良く盛り込まれてると思いましたよ…。

「スターウォーズ」のC3-POだの、「トレジャープラネット」のベンだの、ハリウッド映画で主人公と共に活躍するロボットは暑苦しいほどお喋りで陽気なキャラが相場なのに、この映画のマーヴィンはウツ入ってて全然可愛くありません(そこがステキ)。声もシブいしなあ…と思ったらアラン・リックマンでした(「ハリー・ポッターのスネイプ先生)。実に本格的です(笑)。

彼以外にも愛すべきキャラがざくざく。
主人公のアーサーは、どこへ行っても紅茶を飲もうとしたり、どうでもいいところが頑固だったり、勇気はあるけど火がつくのに時間かかったり、という頭のてっぺんからつま先まで典型的な(情けないタイプの)イギリス人。とんだことから銀河をヒッチハイク(密航ともいう)する羽目に陥ります。

彼を助ける「銀河ヒッチハイクガイド」の編集者フォードはステキだけど、彼の親戚で銀河大統領のゼイフォードはとんでもないイカサマ野郎。この2人の凸凹ぶりがまた可笑しい。その他にも、さすが何考えてんだかわからないスーパー・コンピューター「ディープソート」とか、ナゾの教祖ハーマ・カヴーラなど脇キャラも最高です。特にカヴーラ役のジョン・マルコビッチの演技には唸りました。

「銀河ヒッチハイクガイド」を開くとオシャレなアニメが出てきます。パンフレットには何も書いてないけど、エンドロールを見てたらShynola(シャイノーラ)とあったような気がします。細かいところまで凝ってて面白いですよ。

あらすじは全然知らない方が楽しめると思いますので、作品のHP
御覧になったあとにどうぞ。Gameコーナーの「銀河一官僚的な」そして、このとてもこの映画らしいヴォゴン・ゲーム、再訪を重ねると病みつきになりそう…?

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2005年09月17日

チャーリーとチョコレート工場

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何軒回っても前売りが売り切れていて、大人気ぶりが伺えるこの映画。観ればナットクであります。

小物、美術、ストーリー、どこを切っても金太郎飴のごとく惜しみないティム・バートン監督の毒毒テイスト、本当にこれ、原作あるの?と思ったほどでした。幸い(恐らく)にもまだ原作は読んでないんですが、果たして原作ファンの裁定や如何に?

ジョニー・デップ演じるウォンカさんも期待にたがわぬあっぱれな変人ぶりでした(ちょっとウォンカさん、ギャクにおやじ入ってますよ)が、やはりこの映画はしっかり監督のものでした。主役にジョニー・デップを起用しても主導権を握れる監督といえば彼しかおりますまい。

とにかく、次から次へと出てくる不思議な光景に子どもならずとも夢中になってしまいます。
工場見学はどうでもいいから、天才ショコラティエ、ウォンカさんの作る小鳥チョコが欲しい!ガラスのエレベーターに乗りたい!ウンパ・ルンパに悩みを聞いてもらいたい!…と、登場人物の一人である何でも欲しがるクレクレ女の子に乗り移られてしまった私。リスも欲しいなあ。

でも、たまたまあの子は頭が○○だから良かったけど、中味詰まってたらどうなっちゃったんでしょうね〜。ぞぉぉ…。

そして、しょうもなくも耳について離れない音楽を作った人は…やっぱり、このしょうもない映画の音楽を作ったエルフマンでした(ガックリ)。タイトルロールのELFという字に敏感に反応してしまいましたよ。

ティム・バートン監督
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2005年08月24日

拘束のドローイング9

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*東京での上映が行われます!2006年2/11(土)→3/3(金) 渋谷シネマライズにて。
※鑑賞券は上映3日前の初回上映開始1時間前からチケット売場にてご購入頂けます。
※特別興行につき、「毎週日曜日最終回は1000円均一」料金の対象外となります。
※《ぴあシネマリザーブシート》による限定枚数の指定席販売があります。
 
とのことです。詳細はこちら

金沢21世紀美術館で、同タイトルの展示と同時期に公開された映画です。
前作「クレマスター」が素晴らしかったので新作を楽しみにしておりましたが、日本を題材に撮ったと聞いて一抹の不安を感じました。反面、彼なら日本趣味の罠をくぐり抜けて面白いものを作るのでは、という期待もありました。

映画を観てみると、ここまで真っ向勝負で来るか!とまずは驚きました。まるでこちらの心配を見透かしたかのように、長崎、捕鯨船、阿波踊り、海女、茶道、ゆず風呂、和室、和服、樽酒、笙、等々、日本の伝統文化を挙げてみなさい、はーい、という連想ゲームみたいに、「いかにも」日本文化らしいモチーフが次々と登場します。しかもマシュー・バーニー風のアレンジというのがこれまたいかにも「よくある間違えた日本認識」みたいな感じで、まさか狙ってやってるのでは??と思ったほどです。

映画が終わると連れ(←外国人)は大絶賛で、この映画を観にわざわざ金沢まで来た甲斐があったと大満足の様子でした。私はといえば、監督が意図したかどうかは別として、日本文化の中で育った観客には一段高いハードル、いうなれば強力な「拘束」がかせられ、それを解くのは容易ではないということに思いを馳せておりました。

日本文化の中で育った以上、日本で撮られた画面に映ったものを文化の干渉なしに見るというのは難しいものです。何か字が描いてあれば読んでしまうし、仕草や登場する小道具からさえ、「元の意味」を排除してこの映画なりの解釈を受け入れることは厳しい。

しかしながら、後半、茶室のシークエンスに至って、ようやく私もこのジレンマが見せてくれるものに目が慣れ始めました。

ビヨークとバーニー演ずる西洋からの客人は、捕鯨船の上での茶会に招かれます。毛皮で出来た奇妙な和服に身を包み、型通りに茶を嗜む客人二人。対する主人は、貝殻の茶器に巻き貝の茶筅で立てた茶を供します。(内心、げっ、あのアオミドロみたいなものホントに飲む気?と思っちゃいましたが)。使われる道具や物の配置はユニークで奇妙な美しさがありバーニーらしいとはいえ、一歩間違えば噴飯モノのこのシーン、しかし道具立てが奇妙であれば一層、主人の型と所作の確かさ、一連の動きに込められた精神に心が向かいます。

それはルールの決まった行為、拘束の中にある美として現れ、茶の所作、贈り物を包む行為、服を着せ替える仕草、抑制され説明されない事柄の中に垣間見えるものです。

定まったルール、決まった形式、約束事。
形に美を見る日本人さえネガティブに受け取りがちなこれらの事柄を、こういった決まり事から自由になる方向を目指してきた文化で育っていながら否定してかからないということ自体に作者の自由な精神を感じます。

展示の中では身体的な拘束によって作品を生み出そうとする行為(とその結果)が提示されていましたが、映画では同じテーマをまた一つ別の側面から見ることができ、興味深く感じました。音楽も素晴らしかったです。

マシュー・バーニー監督
150分 
.
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2005年08月15日

Sprout(スプラウト)

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夏休みが終わっちゃった皆さん、これから夏休みの皆さん、夏休みって何、な皆さん(T T)
ゆく夏を惜しむ気持ちをお持ちなら、どうぞこの映画を御覧ください。

本作は、波乗りを心から楽しむ人たちの幸せな様子を収めたサーフィン映画。これまでもサーフィン映画は観たことがありますが、大会に出るために頑張るとか、ビッグウェーブに挑戦するとか、何かしら目的があるものでした。この作品に登場する人たちは、サーファーの間では有名人なのかも知れませんが、とりあえず映画の中では、波に乗れるのが嬉しくてしょうがない人たち、という風にしか見えません。

その喜びが見ているこちらにも乗り移ってきて、見ている間思わず笑顔になってしまうという、実に楽しい映画なのです。

プロとしてサーフィンをする人がいる、ということを今回初めて知って驚いたくらい、サーフィンについては何も知らないので、いちいちビックリしながら見ていました。サーファー個人の波乗りのスタイルは様々ですが、地域によっても、サーフィンのスタイルが全然異なることとか(そりゃ波の特徴が違うのですから、当然といえばそうだけど)。カリフォルニアのいかにもノンビリした波と、それに合わせた訥々としたサーフィン。東インド洋のダイナミックな波と、それに負けないゴージャスなサーフィン。見せるためのテクニックに走ったりせず、波と一体化したサーファーたちの姿はまるでダンスを踊っているようで、大変美しいものです。

一番ビックリしたのはボディーサーフィン。ボードを使わずに、波にすいすい乗っていく究極のサーフィンで、思わずスゴイ…と声が出てしまいました。

波待ちの間の時間のつぶし方も、絵を描いたり、単語ゲームをしたり、皆ニコニコ楽しそう。

ちょっと実験映画的なシーンをはさんだりする巧みな編集のおかげで単調になることもなく、音楽ともタイミングがばっちりあったこの作品、見終わったら幸せな気分になれることでしょう。

映画の公式HPはこちら。穏やかで美しいシーンの数々をご堪能ください。

日本語の公式HPはこちら。上映館情報もあります。

トーマス・キャンベル監督
91分
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2005年07月29日

お知らせ

開店休業中のようなこちらのブログに遊びにきてくださいまして、本当にありがとうございます。ここ1年ずっと忙しいかったのですが、いよいよこれから未だかつてない忙しさに突入する予定でございます。

お盆過ぎには再開できると存じますので、その折にはまたよろしくお願い致します。
皆様におかれましても、楽しい夏休みをお過ごしくださいませ!

銀の匙拝
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2005年07月24日

アイランド

土曜も日曜も仕事、今週1週間は休みがない…と思ったとたん、そうだ、オールナイトなら観られるじゃん、と夜9時過ぎに思いつき、行ってまいりました「アイランド」。

ヘンな感想ですが、久々にCGが気にならない映画でした。
ホログラムで格闘技ゲームするシーンとか、空中バイクのシーンとか、CGでなきゃできないんですが、イヤミな感じはしません。絵的にも斬新できれい。あと14年先の近未来、という時代的に中途半端な設定が生きていて、上手く現代とつながっています。生理的に痛そうなのは嫌という方にはお勧めしませんけど、久々に正しく制作費を使った映画を観たって感じでした。

ストーリーは単純ですが、前半はいちおうサスペンス仕立てになっているので、あまり予備知識を仕入れずに行ったほうが面白いと思います。ポスターを見てるとラブロマンスかと思っちゃいますが、アクションシーンの連続で、普通のデートには不向きです。

ユアン・マクレガーは久々に演技力のあるところを見せてくれました。スカーレット・ヨハンソンはちょっと心配だったんですが、イノセントながらやるときゃやる女の子の役でポイント高いです。あの、ぽけっと開いた口が彼女をしてイノセントに見せるのでしょうか。「I'm not an idiot」(だったかな?)っていうセリフは最高だったです。idiotとは、成長しても精神年齢が3歳以下のものを指す(ジーニアス英和)。深いッス。

ショーン・ビーン兄いは…また矢かい!お楽しみに(こらこら)。
こういうの、DVDで観てもつまらないと思うので、ぜひ映画館で観てください。

あらすじがちょっとわかってもOKな方はこちら。
ストーリーにもちょっと触れた感想を読む
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2005年07月20日

皇帝ペンギン

pensama.jpg
(↑公式サイトからダウンロードできます

全国1千万(以上)のトリ好きの皆様こんばんは。
三連休も返上して働かねばならぬこの時期に、どうしても観たい気持ちが抑えきれず(っていうか、今週はもう休むことは無理なので)千難万難を排して言って参りました、「皇帝ペンギン」先行上映。

まさに夏に観るにふさわしい映画です。氷の大地、寒そうな海、冷たい空気に凍り付きそう。しかも映画館側は冷房MAXにして臨場感大増量サービス。もうちょいで遭難しそうでした。

本作品は、皇帝ペンギンが1年の決まった時期に営巣地に集まり、ヒナを育て、また海に帰っていくまでを追ったドキュメンタリーです。オープニングは南極の景色。白一色の世界とはいえ、太陽の光や海の色に染められて、まるでメビウスのイラストに出てきそうな美しい色合いです。

と、感動していると、男声と女声でフランス語のナレーションが容赦なく掛け合いを始めます。しかも、単なるナレーションとか、はたまた子供と一緒にテレビを観ている親が「ほーらこれがペンギンさんよ、何しているのかな?」と話しかけている、というような内容ではありません。男声はオスペンギン、女声はメスペンギンの心の声を代表しているのです。うーん、この演出って…。

何でも言葉で説明しなきゃ気が済まないのかしらと一瞬思ったけれど、そういえば同じフランス映画、同じく鳥が題材のドキュメンタリーでも、「WATARIDORI」は静かな映画でしたっけ。あんなふうに絵だけ見せてくれればいいのにうるさいな…と思っていると、今度は画面も、営巣地に集まってきたペンギンたちで押すな押すなの大にぎわい、何だか夏の江ノ島みたいです。歩き方といい仕草といい、絶対これ中に人が入ってるよ、とペンギンに向けるまなざしも疑惑含みに…。

しかし、そんな不具合も、ヒナが出てくるとたちまち消し飛んでしまいます。ペンギンのヒナもぴよぴよ鳴くんですねー。その愛くるしさは過酷な自然の中で世話してもらうための戦略なのねとかくだらない考えに邪魔されつつも、可愛いものは可愛いのでした。

ペンギンの習性についてはほとんど知らなかったため、いろいろ新鮮で面白かったのですが、それを人間の男女に置き換えようとしてるみたいな演出だけは趣味に合わなかったかも。さすがフランス映画、ドキュメンタリーでさえ主題は「愛」なのね、とちょっと苦笑…。

さて、映画の宣伝のためやってきた、ペンギン大使ペン様の日記がこちら。ペン様…ビミョー。

恵比寿ガーデンシネマで観ました
真ん中よりちょっと後ろ目がよいお席です。
朝から全ての回の受付をします(入場券に受け付け番号を押す)のでお早めに。
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2005年06月26日

スターウォーズ エピソード3 シスの復讐

さきほど先先行を観て参りました。書かないと忘れちゃいそうなので、感想をば…。

私の見た劇場では、オールナイトでほぼ30分おきに上映があったため、それほど混雑している感じでもなかったのですが、上映時間にはほぼ満席になり、「Lucus Film」という緑のロゴが出た瞬間に大きな拍手が!そしてタイトルが出ると、口笛、喝采、拍手で大騒ぎという、大変な盛り上がりを見せました。

全6話の長い長いシリーズの最終話、しかも結末がどうなるかを皆が知っている、というのはストーリーに驚きがない分、観客を飽きさせないのが難しいところ。そこはルーカス監督、アナキンの葛藤を説得力をもって描くことで、ドラマとしてうまくまとめたと思います。エピソード1から延々引きずってきた政治的な話題も恋愛沙汰(やっぱり二人して回ってたけど、はは)も、ここへ来て一挙に話の本体と合流し、退屈させませんでした。必ず描かなければいけないこの暗い話をシリーズの最後に据えたところが、ルーカス監督の凄いところだなあと思います。

アナキンがジェダイを裏切る結果になった原因についてはいろいろ伏線が張ってあったけど、一番可哀想だったのは、彼が結局誰からも信じてもらっていなかったこと。評議会はもちろん、ジェダイ・マスターの面々、師匠、そして近しい人さえも、最後には彼を疑い、恐れている。そんな立場に置かれて正気を保とうという方が無理な話です。当然、本人はひしひしと皆の彼に対する見方を感じとっていただろうし…。この辺の話は、ちょっと「指輪物語」のスメアゴルを思い出しちゃいました…。

こうしてみると、パルパティーン議長の言うとおり、絶対的にジェダイ側が善であり、共和国が良いともいえないわけですよ。ああ…しまった私もフォースの暗黒面に捕らわれそう…。しかし、いかに鈍感な人でもこのエピソード3まで観れば、スターウォーズがスカッと爽快、勧善懲悪の物語とはとても言えないことがわかるでしょう。

タトゥイーンの空に2つの太陽がかかると、おお!という感慨がこみ上げて参りましたが、映画に文句がないわけじゃないです。グチを読む
posted by 銀の匙 at 02:47| Comment(2) | TrackBack(2) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする