2014年06月08日

スタフ王の野蛮な狩り

ちょうど今、オーディトリウム渋谷で「ソビエト・フィルム・クラシックス」と題した映画祭がおこなわれており、そのうちの1本として鑑賞しました。

1979年のソ連映画なんですが、第一印象はズバリ、レンフィルム製作の傑作「ロシア版シャーロックホームズ「バスカヴィル家の犬」」。

閉鎖的な村、しかも沼地で起こる事件といい、誰もが怪しく見えちゃう登場人物(ホームズと違って、ワトソン=主人公のベロレツキーさえ怪しく見えちゃうけど)といい、大筋がよく似ています。

20世紀初頭の、とある大雨の夜、沼地の村に民話の採集にやってきたという若き青年貴族学者・ベロレツキーは、雨宿りをしようと、とある屋敷のドアを叩きます。うら若く美しい女主人ナジェージダは、最初のうちこそ親しげに話をしますが、民話の採集の話になると突然席を外してしまい、執事にも女主人に失礼だとたしなめられてしまいます。

何が失礼だったのかも判然としないまま、夜中におかしな物音を聞いたベロレツキーが目撃したのは、女主人と老婆の、怪しげな悪魔祓いのような儀式。そして、一族が一堂に会しての、さらに怪しげな、女主人の成人式。祝いの客が帰ると、ナジェージダは成人式の贈り物として伯父ドゥボドフクが運び込んだ巨大な肖像画を罵倒し、気絶してしまいます。

目が覚めたナジェージダは執事に命じて、ベロレツキーにこの館と一族にまつわる呪いの話を聞かせます。かつてこの地方には、「スタフ王」と呼ばれる英雄がいました。農奴をはじめ誰もが彼を慕う中、彼女の先祖であるロマン・ヤノフスキーは快く思わず、ついに彼を亡き者にしてしまいます。「スタフ王」は12代先までお前の子孫を殺めるであろうという恐ろしい呪いの言葉を遺して消えてゆきました。

以来、ヤノフスキーの一族には変死や狂気が蔓延し、今に至るも、館にはおかしな物音が響き、沼地にはスタフ王に率いられた幽霊騎士たちが現れ、人間狩りを行うというのです。伯父から贈られた巨大な肖像画の人物こそ、彼女の偉大なる先祖であり、また呪いの源であるロマン・ヤノフスキーだったのです。ナジェージダもまた、この伝説に怯えており、幽霊騎士を見かけたり、館を走る小人を見かけたと口走ります。

昔は吸血鬼や狼男なども信じられていたし、見たという人もおりますよ、と学者らしい理性的な態度を崩さないベロレツキーでしたが、滞在を延ばすうちに沼地で何者かに発砲され、また、館の中でおかしな物音や人影を見聞きするようになります。この話は誰かが仕組んだものに違いないと周囲を疑うベロレツキーでしたが、彼が怪しんだ人物たちも沼地で次々と殺され、彼自身も幽霊騎士を目撃するに至ります。警察に乗り込んではみたものの、下手に動くと損をしますよと忠告される始末。

そして、かねて招待されていたドゥボドフクの館を訪ねると、ちょうど道化の一座が、人形劇を演じていました。演目はまさに「スタフ王」。その筋書きは、領主の美しい娘に横恋慕したスタフ王が、娘と館に隠された黄金を目当てに領主の首をはね、ひいては娘の首もはねてしまう、という、伝説とは真逆のお話でした。

ドゥボドフクの屋敷を叩きだされた道化の一座は、沼地で幽霊騎士に襲われ、あえない最期を遂げてしまいます。それを見た村人たちは…。

一体何が起こるのか先の見えない展開で、ゴシック趣味満点の設定といい、魑魅魍魎が湧き出てきそうな館の内部といい、サスペンス好きの皆様にはこたえられない内容なことはもちろん、こんな怪奇映画でなぜか全体に上品な雰囲気なのが実に不思議な味わいです。沈んだ色調の映像も美しく、見ごたえのある作品です。

ということで、サスペンスをネタバレすると面白くないので、これから観る予定の皆様はここまで。以下は観終わっての感想ですが、お話の結論部分に触れていますので、分かってもいいや、という方のみどうぞ。




以下、お話の核心部分に触れています。
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2014年05月19日

ウィズネイルと僕

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東京・吉祥寺のバウスシアターが閉館になるとのこと、ここでしか見られない作品も多かったし、爆音上映とか、面白い企画もやってて良い映画館だったのに、実に残念。

そのクロージング作品ということで観に行ってみましたが、もっと混雑してるかと思いきや、10数人のお客さんとまるでプライベート上映気分で鑑賞することになろうとは、ぐっすん。

ま、そういうしょぼくれた雰囲気が実に似合う映画ではございました。

「ウィズネイルと僕」というくらいだから、僕の方が主人公なんだろうけど、ラスト近くでステキな巻き毛を散髪してしまうのでなんかもう名前も憶えてないです(怒)。売れない役者で、しょぼくれた部屋でメガネをかけてると、いかにもなどん詰まり感が漂っていますが、どこかギリシャ彫刻のような感じの青年であります。

彼のフラットメイトが、同じく売れない役者のウィズネイル。彼ももうほとんど瀕死の状態なのですが、ハムレットとか演じたら確かに似合いそうな感じです。

この2人が、役は来ないわお金はないわ、お皿も洗わず台所に何が棲息してるかわからない状態だわ、酒も買えずにライターのオイルを飲むわ、家にはヤクの売人が勝手にのさばってるわで、もう好い加減行き詰まり、ロンドンを出て、どういう思考回路してるんだか良く分からないけど、空気の良い郊外で、一息つこうと思いつく。

そこで、ウィズネイルの羽振りのよいおじさん、モンティーに取り入って、彼のコテージの鍵を借り出すことに成功。

ところが、とことん生活能力のない2人のこと、田舎に行けば行ったで薪がなくて凍えそうだし、食べ物もないし、隣人には怪しまれるし(って実際怪しいのですが)、ロンドンにいたとき同様、あるいはそれ以上にしょぼくれた状態に陥る。

で、いい大人の男が2人して、密猟者に怯えたり、どうもその気(け)があるらしいモンティーおじさんから自業自得の仕打ちを受けたりと、とにかく話は最後まで全然華々しくならず、ビビり―2人組の、どこまで行っても情けない話なのであります。

そんなに落ちぶれてるくせに、役者だからかイギリス人だからか、スーツはパリッと着るし、(やることは超しょーもないのに)立ち居振る舞いは無駄にダンディなのが、これまた観る側をどっと脱力させるのであります。

ウィズネイルは肝心なところで逃げ腰だったり、責任逃れの嘘をついたり、突然キレたりと、確かにいろいろ困った人なんですが、ま、変人というほどでもないし、「僕」の方も他人の事はいえないロクデナシという、よくも悪くも突出したところのない似た者同士感が実に救いのない人物造形。

そしてこの2人がただダラダラしてるだけという、まるで『聖☆おにいさん』のキャラ立ってないバージョンのような(そういや「僕」は聖ペテロみたいと言われていましたっけ)、ほんと、ストーリーはどうでもいい映画です。観ながら何となく、同じイギリスの「さらば青春の光」という映画を思い出していました。

しかしまあ、特に意味などないのが人生なのであり、際立った出来事など起こらないのが日常であるわけで、この作品は、プラス、細かいディテールの積み重ねによって、一度でもイギリスに行ったことがある人なら、ああ、そうそう、こういう感じ…とピンと来るような、捉えどころのない空気感を見事に描き出しています。

自分で扉を閉めなきゃいけないフットパスの柵。雨の国の必需品、「ウェリントン」(長靴)。パブでの飲みっぷり。退役軍人の自慢ばなし。シェイクスピア。突然、部屋に座っている、どこの国から来たのかよくわからないような人物。シビルロウであつらえた背広。スノッブな中流階級。インテリア。午後のケーキ。突然の豪雨。

そして、ウィズネイル同様、いきなり放り出されてしまう寂寥感。

ある時代が終わり、新しい時代が始まっていく。しかし、自分は取り残されたまま。
それでも独り、大雨の中、シェイクピアを演じている…。

この映画をクロージング作品として選んだセンスに、惜しみない拍手を送ります。
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2014年05月15日

映画「アナと雪の女王」いっしょに歌おう(シング・アロング)版を観てきました

さて、今は昔のGW、全国60もの映画館で実施された、「アナと雪の女王」いっしょに歌おう版を観てまいりました。

シング・アロング版といえば、これも昔、イベントで観た「ロッキー・ホラー・ショー」の楽しさは格別で、今回も結構楽しみにしておりました。全員で延々「メサイア」を歌うだけ!というシング・インのイベントにも参加したことがあるし、9曲くらい楽勝よ(はぁと

しかしまあ、結論からいえば、「歌ってきました♪」じゃなくて、「観てきました」になっちゃいました(哀。

実は、不肖わたくし、せっかくの試みが成功して欲しくて、周りがどうあろうと断固として歌うつもりでおりました(私の美声で振り向かせてやるぅ、くらい思っていた・呆)。が、吹き替えとはいえ、やっぱり初見でシング・アロング版はなかなかハードルが高うございました。

なんか途中からアラゴルンみたいに鼻歌になってしまい、戴冠式で一人で歌うのってやっぱり寂しいよね、と珍しくも同情の念が沸々とわいたのであります。

お子さんが来ることを想定してか、コアなファンならどんな時間でも来ると思ってか、シング・アロング版は午前中に設定されてることが多くて、やっと見つけた夕方回の上映館は板橋のイオンシネマ。初めてきましたが、なかなか見やすい劇場でした。

客層は、ちらほらとカップルがいたものの、圧倒的に親子連れが多かったです。全9曲の挿入歌のうち、最初の歌は男性合唱なので誰も歌わず、その時点でかなり、会場のテンションが下がったように思います。

アナ(吹き替え版は神田沙也加が歌った)の「生まれてはじめて」は、ミュージカルナンバーが得意な人なら歌いやすい部類の曲ですが、お子さんには入るタイミングが難しい曲みたいで、サビの「生まれてはじめて〜音楽に乗り〜」のところから、ようやく歌声が聞こえはじめました。

私がいきなり歌ったんで、隣の席にいた連れはビビっておりましたが(あ、歌っていいって言っとくのを忘れてた)、映画のサウンドが大音量なんで、隣の人でもない限り、かなりの人数が歌っていてもほとんど聞こえません。看板曲の「Let it go」なんて、もっと皆歌うのかと思ったけど、意外におとなしかったです。オリジナルが低音だからか、これもお子さんには歌いづらかったみたいですね。

ロッキー・ホラー・ショーみたいに、入場する時点でいろいろ仕掛けがあれば、もっと盛り上がったかも知れません。六本木あたりで英語版を観れば、もう少し歌う人もいたのかな? 

でも、英語版はサビ部分はともかく、そこ以外のメロディに歌詞を嵌めて歌うのがかなり難しく、その点、母語だからってこともありますが、日本語の訳詩はとてもよくできていると思いました。

さて、そんな訳で、みんなでカラオケ大会の方はあまり盛り上がりませんでしたが、映画自体はなかなか楽しめました。オタク的に面白かった(→「指輪」ファンとしてみた場合の見どころはこちら)こともありますが、背景がきれいだったし、色遣いもケバケバしくなくていい感じでした。

そしてなんといっても、日本語版の立役者は雪だるまのオラフでしょう!
まるで狛犬のように、山寺さんの「ゴラム」ちゃんと並び立っております。

一歩間違えるとジャージャービンクス並みのウザキャラになりかねなかったところを、ピエール瀧さんのナイス吹き替えで素敵キャラに。あのしゃべりがあまりに気に入ったせいか、油断するとオラフ口調になるぅ〜。

ストーリーは大筋、「雪の女王」なんですが、雪の女王自身が助け出される役、というのがまさかの大逆転です。また、お姉さん、または妹さんがいる人なら、きっと身につまされるであろう描写が、狙ってるなーという感じでしょうか。

妹から見れば、いつもボス風を吹かせ、妹を叱るのが仕事化していて、周りからは何故か尊敬されている姉。姉から見れば、要領がよくて、ちゃっかりオイシイところをもっていき、自分の好きなようにふるまっても可愛がられる妹。姉の方は妹には言えない葛藤があるので、なおさら辛いところです。

触れたものを何でも凍らせてしまい、しまいには傷つけてしまうのを恐れている…って設定の割には、エルサおねーちゃんはなかなか乱暴です。ひょっとしてロボットものアニメを見すぎたのかも知れません(さもなきゃ、なんであんな怪物を…?)。妹のアナの方も、ホントに王女様か、オイ?というような言葉遣いや態度なので、似たもの姉妹ってところでしょうか。

それはともかく、お姉ちゃんは王位を継がなくちゃいけないので、妹ほどお気楽には過ごせません。
主題歌の「Let it go」の歌詞を見ると、同様の内容であっても、英語版の方が
「周りを気にしなくちゃいけない」お姉さん的立場の辛さがよく分かります。

Heaven knows I tried.
神様だけが知ってる、私が(隠すように)努力したってことを
とか、
Be the good girl you always had to be.
これまでのように、良い子でいなければ
とか、
Let it go, let it go. Can't hold it back anymore.
(ふさわしいふるまいという枷を)どこかにやってしまいましょう
魔法の力(と、自分を解放したいという思い)は、もう隠しておけない
とか、
I don't care what they're going to say.
気にしない、彼らが何て言おうと
The cold never bothered me anyway.
どっちみち、寒さなんて私には何ともなかったんだから
And the fears that once controlled me, can't get to me at all
私を縛っていた恐れは、もう私を捉えることはできない
That perfect girl is gone
完璧な女の子(だった私)は行ってしまった(もういない)
とかね。

日本語版の訳詞は上手いこと同内容を伝えてるんですが、
「私がどうしたいか」が主体になってるので、
ここまで空気読んでる・気ぃ遣いな感じは受けませんでした。

今は子どもの数も少ないから、お姉さん的な立場の子も増えてるだろうし、
わかるわかる〜と思う人も多いんじゃないでしょうか。
女性が共感しやすいように作ってるというのは、このあたりを指してるんでしょうかね。
かなり露骨ですけど…。

ま、スレてる観客にはこの辺はどうでも良くて、女の子2人は可愛いし、
アナはなかなかガッツがあるし、
絵は綺麗だし、スペクタクルな動きが面白いので、それで映画としてはもう十分です。

雪だるまはしゃべるんですが(エルサが魔法で作ったものだから)、トナカイはしゃべらないとか、
いちおう頑張ってるのは認めてあげましょう。

私が一番気になったのは…
(以下、お話の核心部分に触れておりますので未見の方は注意)
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2014年05月04日

ジブリ美術館と「星をかった日」

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(画像は美術館で買ったパンフレットの表紙です)

天気のよい日にぜひ行きたい、とかねがね思っておりました、東京・三鷹のジブリ美術館にようやく出かけることができました。

とは言っても、ここへ入場するのは2014年現在、ひと仕事。まずはコンビニ「ローソン」を探し出し、行きたい月の前月10日に、日時指定の入場券を購入しなければなりません。(購入の仕方は→ こちら)。ギリギリまで販売はしているみたいなので、平日なら直前まで予約はできるかと思いますが、基本、思い立ったらふらっと…が不可能な美術館、それがジブリ。

しかし、着いてみればそれも納得。平日だというのに(そして皆、切符を持っているというのに)入り口の前には入場待ちの行列ができています。これじゃ入場制限しないとケガ人が出そうです。

実は、日時指定券というのは、入場時間だけが規制されているチケットなので、選んだ時間から30分以内に入場しさえすれば、退場時間には制限がありません。そこで、相対的にお得な朝の回は、常に満員御礼状態となっているのです。

三鷹の駅からは「風のさんぽみち」という玉川上水脇の道を進めば正味20分ほど。ただ、ここは車道の脇に狭い歩道が設けられた普通の道なので、前をゆっくり散歩している人を追い越すのは難しく、結局、改札を出てから入場口まで、25分くらいかかってしまいました。

入場ゲートで入場券のチェックがあり、進むと受付があります。ここで、コンビニで発券した入場券をチケットに引き換えてくれます。チケットは映画のポジフィルムを使ったもので、他のお客さんとの良い話のタネになっていました。

建物は中も外も複雑な作りになっていて、いかにも子供が喜びそうです。子供の覗きそうな高さに開けられた小窓や、展示の前にしつらえられた足台なども、この美術館が考えるメインのお客さんが誰かを物語っておりますが、平日だったせいなのか、客層は8割おとなで、その半数以上が海外のお客さんという印象でした。

美術館なので入れ替えの展示もあるのですが、それは本当に小さなスペースなので、主には常設展示や建物の雰囲気を楽しむ美術館です。1階には常設展示と小さな映画館、2階にはアニメスタジオの再現とレストラン・中庭、3階には小さな図書室とショップがあり、どれも面白いです。

1階ではアニメーションの歴史と原理が、ひと目でわかるように紹介されています。この世にあるものはみな動いている…昔から人々は、動く絵を作りたいと願っていた、というあたり、心に響く展示です。

2階ではアニメスタジオは、再現された作業机にタップ(下絵とセルがズレないように固定するための道具)や下絵を置く棚、筆洗や筆などが並んでいるほか、たぶん日本アニメ系のアニメカラー(セルに色を塗る絵具。東映動画系のもあって、そっちは円筒形の入れ物だったと記憶してます。ビニール塗料なので、蓋をあけると物凄い匂いがするんですよね…さすがに美術館では蓋は閉まってたけど)、カメラを据え付けた撮影台など、昔ながらの道具が揃っていました。資料がみっちり詰まった本棚もあり、実家がアニメ屋さんだった私には懐かしい空間でした。今のアニメスタジオには行ったことないけど、みんなパソコンの画面に向かっているのかしら...?

全部ざっと見るだけなら30分もあればOKですが、絵コンテ(四コマ漫画みたいな、映像のための脚本)を眺めたり、原画をじっくり見たり、図書館で本を取り出したりしてしまうと、たちまち2時間3時間は使ってしまいます。図書館には宮崎駿監督がインスピレーションを受けた本が並んでおり、入り口のウィンドウには「指輪物語」が、寺島画伯の挿絵大フィーチャーで展示されていました。

レストランは1つ、他に食べ物の売店が1つあり、レストランが混むせいもあるのか、持ち込みのお弁当をテラスで食べてもよいことになっています。これは、お子さん連れには嬉しい点でしょうね。ショップはあまりの大混雑ぶりに恐れをなし、入るのをやめてしまいました。

テラスは井の頭公園に隣接しているのでとても気持ちがよく、「ザ・武蔵野」といった風景が満喫できます。ここで一日ぼーーっとしているのも良いだろうなぁ、とつい考えてしまいます。

さて、美術館の1階には土星座という小さな映画館があります。20分に1回、上映があるということでしたが、世界の名作アニメを上映するのかなとノーチェックだったところ、ジブリの短編を上映するというので慌てて列に並びました。前の上映が始まってからすぐ並んだというのに、凄まじい席取り合戦に負けて一番前の列になってしまったんですが、見やすいスクリーンで映画に没頭することができ、却ってよかったかも知れません。

その昔、「セロ弾きのゴーシュ」という長編アニメを見たことがあります。アニメだというのでお子さんがたくさん来ていたんですが、走り回ったり騒いだりと落ち着いて見られたもんじゃありませんでした。そのときの同時上映が宮崎監督の「パンダコパンダ」で、始まった途端、子供たちの食いつきが全く違います。短編だからってこともあるのかも知れませんが、最後まで皆食い入るようにスクリーンを見ていました。同じ監督の短編、これは期待できそうです。

映画は全部で9本あるようで、1か月おきくらいに1本ずつ入れ替えで上映されています。行ったときはたまたま「星をかった日」という作品でした。

観終わったあと、図書館でこの映画のプログラムを買いました。その説明によると、この作品は井上直久さんの「イバラード」を元に作られているとのこと。まるでポーランド映画かロシア映画のような、静かで美しい冒頭のシーンから、中原中也に激似(?)の主人公・ノナ少年、「紅の豚」のジーナに激似(?)のいい女、ニーニャ、目の前に広がる巨大な昼の月、相変わらずカエルの役から逃れられない大泉洋などなど、全てがツボに嵌るその世界は、たった16分とは信じられないほど深く、魅力的でした。

現時点では、ここ以外で観る方法がないのですが、入場料の1000円を払って観る価値は十二分にあります。「星をかった日」、もう1回観たい! 他にも、あのタモリさんが声の出演をしている「やどさがし」という作品もぜひ見てみたく(タモリさんの大ファンなので…)、すでに、また来ちゃおっと、と心に決めております。皆さまもぜひ、土星座の上映をチェックしてお出かけください。

さて、短編なのでストーリーを書くとネタバレ以外の何物でもないので、以下、未見の方はスルーしてくださいませ。続きを読む
posted by 銀の匙 at 23:17| Comment(2) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月01日

2013年に観た映画のベストはコレ:「サラゴサの写本」

明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

さて、旧年中も忙しいとか言いながら結構映画は観たのですが、感想を書き留めておくヒマが全くございませんでした。改めて備忘のために何を観たか振り返ってみると…

1月1日 ホビット 思いがけない冒険
ま、これはデフォルトなので、特にコメントの必要はないでしょう。。

1月14日 ホビット 思いがけない冒険
大雪の日にわざわざ観に行ったんでした。上映形式が他と違ってたので押さえておくかと…

1月26日 ホビット 思いがけない冒険
…だああぁあああああっつ!!!

はぁはぁ…失礼しました。それほど観てないと思ってたのに、年をまたいで同じ映画ばっかり観てたことに改めて気づきました。
気を取り直して、他に面白かった映画というと…

ロシアンカルト映画祭
日本初公開のプログラムは少なかった(なかった?)のではないかと思いますが、自分にとっては初見のものが多く、とても楽しめました。中でも『日陽はしづかに発酵し…』は本当に良かったです。
『両棲人間』だの『妖婆 死棺の呪い』『ドウエル教授の首』などなど、タイトルだけだと何だかなぁ…と思ってしまう作品も傑作ぞろいでした。

クラウドアトラス
アイデアは良かったし、劇中大切な役割を果たす「クラウドアトラス六重奏」も良かったんだけど、なんだか詰めが甘い感じの映画だったなぁ…。
でも、好きなシーンも結構あったので取りあえず元は取りましたという感じでしょうか。

セデック・バレ
昔、『イノセント』の展覧会を観に行ったときに、舞台芸術の種田陽平さんの新作がこの台湾映画で見られるというので、ずっと楽しみに待っていた作品です。結局お蔵入りしちゃったのかなと思っていたら、ついに日本公開に漕ぎ着けました。

台湾で起きた「霧社事件」を題材にして、台湾先住民の誇りをかけた戦いを描いた映画です。すごく乱暴にいうと、「インディアンが勝つ西部劇」みたいな感じ。先住民たちの行動は現代人からみると何でわざわざ…と思うところもありますが、むしろ彼らの心情は、後先考えずに特攻しがちな日本人にはかえって理解しやすいのかも知れません。

監督さんは(たぶん)漢民族の人だと思うのですが、劇中の日本人の描き方を見る限り、きっと先住民の描写も納得のいく方向になっているのではないかと推測します。例えば、現地で暮らす日本人女性が先住民女性を子守に雇っていて、「言わないと分かりゃしない。本当にグズなんだから」とこぼすシーンがあります。日本人はこんなこと言わないって? いえいえ、平成になっても日本人海外駐在妻から似たセリフを聞いたことがありますよ…他にも、先住民から慕われている警官の安藤さん。現地の人に良かれと思ってふるまっているのは分かるのですが、現代の目から見ると実は自分たちの価値観が最上だと思ってる超上から目線の人だったり、あるあるあるある、ってことばかり。(そして、時代が経つと、安藤さんみたいな人を、つい、現地に貢献した人なんて評価したりしてしまうんですよね…)。日本人の考え方やこだわりも、批判は抑えてあるがままに描写しようという姿勢に好感が持てますし、日本人俳優がきちんと演じているので、とてもリアルに感じました。

内容が内容だけに、相当スプラッタなのは避けられないのですが、先住民の考え方を表すにはすべて必要なシーンで、そこも含めて、日本人、先住民、それぞれの立場や思いに寄り添う形での映画になっていると感心しました。ただ漢民族の存在感はすごく薄く、実際当時そういう風だったのか、これほどの監督さんでも自分たちの立場をうまく表現するのは難しいのか、どっちなんだろうなって思いました。

日本人が出てくると当事者意識(?)が先に立つせいか、冷静に見られなくなってしまうかも知れませんが、
日本人のことをよく理解してくれていると思うし、一方、こういったことは近代以降、世界のあちこちで繰り返されてきたことなんだろうなあと思わせる、広がりもある内容です。

映画としてとても良い作品だと思うので、機会があったらぜひご覧ください。当時の日本人が作った集落をリアルに再現した、種田さんの素晴らしいセットもみどころです。

きっとうまくいく
好評なのも納得の1本。

オブリビオン
ぱっと見、大味なSFかと思いますが、しばらく噛みしめてると味が出てくる映画。

王になった男
「王子と乞食」の韓国時代劇バージョンのようなお話。いや、「影武者」か??
韓流に疎いせいか、主演の人は「なすび」さんに似てるなぁとかバチあたりなことを考えながら観ていました。韓流ばかりか韓国の歴史にも疎いんですけど、昔っから周りの国に翻弄される運命は変わらないらしくホントお気の毒。制作時、その辺りを訴えたい意図も少しはあったんでしょうか(ないでしょうね…)。
劇中には確か出てこなかったけど、主人公は日本史とも関係あるんですね。うーん。

風立ちぬ
見えないものを描けるのがアニメだとすると、風というのはまさにアニメ向けの素材ですね。零戦設計者の伝記だと聞いていたので、ドキュメンタリータッチなのかと思っていたら、すごくファンタジックな描写でちょっと意表を衝かれました。

サウンド・オブ・ノイズ
『風立ちぬ』と割と近い時期に観て、『風立ちぬ』と響きあうものを感じたスウェーデン映画。芸術至上主義者のやりすぎパフォーマンスを描く、とても気に入っている作品です。時間があるとき、別エントリーで感想を書きたいと思っています。

スター・トレック イントゥダークネス(重大ネタバレ注意)
お話的には大したことない映画だったのに、実は2013年、「ホビット」を堂々抜き去り、リピート回数最多を記録してしまったこの作品。何度も観た割に分かってないんですけど、最後にカーンが地球に戻ったのって、外の椅子に置き忘れた自分のコートを取りに帰るためだって理解で合ってますか?

あと、おっとこ前なスポックではありますが、死にかけた人に「長寿を祈る」指サインを贈るのはやっぱりどうかなと思います。

世界一美しい本を作る男
美術書専門の小出版、シュタイデルの社長さんに密着したドキュメンタリー。

RED レッド リターンズ
せっかく映画の日が休日だし、1000円だったら観てもいいや、って映画にしようと消極的な理由で選びましたが、映画らしい映画でとてもよかったです。

ポーランド映画祭
1作品の上映回数が少ないうえに、平日にしかやらないプログラムも多く、良作ぞろいだけに残念至極だった映画祭。それでも無理やり1本、前年の再映となった「サラゴサの写本」を観ました。

美しい挿絵が興味をそそる写本が主役の映画とあって、それだけでもうお気に入りマークが点滅しちゃうんですが、この写本を劇中で主人公が書くという流れが、LOTRファンにはたまらない展開なのであります(力説)。登場するエピソードや人物が魅力的なのももちろん、お話の中にお話が、そのお話の外にお話が、お話の外に抜け出そうとすると別の形で囚われてしまう…という映画の構造自体も考えさせられるという大変素晴らしい作品。モノクロで上映時間が3時間以上かかるのですが、観る価値は十分にありました。
この作品も、時間があったら別エントリーで感想を書きたいと思います。

今年2014年は「ブランカニエベス」の鑑賞からスタートしました。お正月休みに、ホビットの第2作を鑑賞の予定です。

それでは、また素晴らしい作品と出会える1年でありますように、
そしてブログをご覧くださった皆様にとって、良い1年となりますように!
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2013年12月01日

RED リターンズ

ポーランド映画祭を観ようと思ってた日曜日、予定の時間には家を出られなくなってしまい、ハタと考えました。そうだ、今日は映画の日!1000円ならアホ映画(失礼!)でも惜しくない!

という訳で、さっそくネットで予約を入れて、行ってみました『RED リターンズ』。全然期待してませんでしたが、期待以上。いやー、痛快痛快。アクションものはこうじゃないとね〜。

豪華キャストは伊達じゃなく、主役のブルース・ウィリスがヒーロー役にはまってるのは当然として、ジョン・マルコビッチ(上映中は、この俳優さん上手いけど知らないなーと思っていた)、アンソニー・ホプキンズ、キャサリン・ゼタ・ジョーンズなど豪華キャストをふんだんに使用。出演料だけで伊勢丹がビルごと買えそうです。一歩間違えばただの顔見世公演になりそうなところ、演技の上手さか脚本の妙か、全員、がっつりキャラが立ってます。

特にすごかったのがヘレン・ミレン。登場するとなぜかバックにヘビメタが流れ、チョウ・ユンファも真っ青の二丁拳銃と暴れん坊クールなお仕事ぶり、さすがシェイクスピア女優! 最後はヘレン女王様のドライバー役に成り下がってしまいましたが、イ・ビョンホンのドヤ顔も良い味だしてました。

こうなりますと、前作を見てないのが悔やまれますが、見てなくても困らないあたりがアクション大作のいいところ。ラストを見ると、なぁんだ、別にこの程度なら最初からふっ飛ばしちゃえばよかったじゃん…とつい思ってしまいますが、まぁその辺は何ですよ、80年代に比べると武器もデフレかもですからね。

ということで、お正月に楽しく映画を観たいなら絶対におススメします。あ、かなりバタバタ人が死にますので、その辺は1つよろしく…。

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2013年06月03日

映画『オブリビオン』(ネタバレ表示以降、未見の方は注意!)

最近のSF大作にしては2時間の上映時間はちょうど良かったですね。って、褒めるとこは、そこかい…な、感じですが、まずは映画館で観とけ、と、おススメしときましょう(何をエラそうに)。

前評判通り、背景も、登場人物も、極限までそぎ落とした映像がとてもスタイリッシュで綺麗。アイスランドでロケをしたと聞きましたが、薄い灰色、白、薄い緑が主体の地上の風景は大変美しく、雲の上にしつらえられたトム・クルーズの住居兼オフィスも本当に素敵です。

建物はセットで、眼下に映る光景はハワイの山上で撮影したものだとか。移りゆく雲、時間とともに変化していく空の色が素晴らしく、このあたりのシーンだけ編集して、ずーっと壁に投影しておきたいと思ったほどでした。

雄大な風景をバックにした追撃シーンも迫力があり、IMAXでの鑑賞がおススメです。

ヒロインのジュリアを演じたオルガ・キュリレンコは私のストライクゾーンの女優さん(誰も聞いてないですね、そんなこと。でもなぜか時々中島みゆきに似てるなーと思うこともあるんです…)。ただ、見た目あまりアメリカ人っぽくない彼女が、アンドリュー・ワイエスの絵の前に立って故郷を思い起こすシーンは、ちょっと違和感ありましたけど。

映画のぱっと見の印象は、いかにもお金のかかった、でもストーリーはいろんなSFをつぎはぎしたような作品、なんですが、観終わった直後から、じわじわと心に沁みるSF映画なんです。それは恐らく、もう一人のヒロイン、ヴィクトリアを演じたアンドレア・ライズボローの好演のおかげが大きいと思います。

お話の方も、単純なようでなかなか歯ごたえがあります。
ストーリーの「オモテ側」は、こんな感じです。

舞台は2077年の地球。エイリアンの侵攻に人類は勝利するも、その戦いのために月は破壊され、地上は地震や津波、また核兵器による汚染にさらされ、居住不可能な状態に。人類はタイタンへの移住を計画し、準備を進めていた。

しかし、計画の切り札である海水を使ったエネルギープラントは、常にエイリアン「スカヴ」の攻撃にさらされており、空中に浮かぶ、移住までの居住地「テッド」にある本部は無人偵察機ドローンによって、プラントを守っている。

なぜか5年前以前の記憶を抹消されたまま、トム・クルーズ演じるジャック・ハーパーは、ドローンの修理屋として地上に降り、地表高く作られた管制ルームで彼をサポートするヴィカとともに、たった二人、プラントを守っていた…

広大な地球をバックに男女二人だけが取り残され、故郷の大地も、かろうじて、放射能汚染地域の境界線に降りることができるだけ。頼りの本部「テッド」も、日没時には通信できなくなる。しかも、「テッド」とのやりとりは、いつも決まりきった言葉の往復…。

こんな美しくも寂しく、単調な生活が繰り返される中で、ヴィカのただ一つの希望は、あと2週間で任期が終わるということ。決まり通りの手順にしばしば違反するジャックをいつもはらはらしながら見守るヴィカ。

美しく、まるでアンドロイドのような彼女の表情は、無表情なのに何か必要以上のことを知っているような、不思議な雰囲気を漂わせています。

一方のジャックは、繰り返し繰り返し現れる記憶の断片に悩まされています。エイリアン侵攻前の地球、ニューヨークの雑踏の中で振り向く、長い黒髪の女性。エンパイア・ステートビルの屋上らしき場所の望遠鏡…。

そんなある日、地表に宇宙船が墜落するという大事故が起こります。どうやら、かつて地球からタイタンに向かうことになっていた調査船のようです。ところが、事情を知らないらしいドローンが、墜落機のカプセルで冬眠する生存者を攻撃しはじめます。ジャックは危険も顧みず、ドローンの攻撃を止めようとしますが…。


観終わった後も、いったいヴィカにはどんな記憶があったのか、繰り返し考えてしまいます。いつも伏し目がちで、指令を疑わないヴィカ。きっとジャック・ハーパーを心から愛していたであろうヴィカ。

サスペンスの謎解きや、ヒロイン・ジュリアと主人公ジャックの永遠の愛の影に隠れてしまった切ない彼女の物語こそ、この映画を記憶に留めるものにしてくれているのだと、つい思ってしまいます。




以下、ネタバレになりますので、ご覧になっていない方はご注意ください。





さて。


裏のストーリーの方は、つなぐもつなげたり、『月に囚われた男』+『ブレードランナー』+ひょっとすると『2001年宇宙の旅』+『ターミネーター』って感じでしょうか。

これは新鮮、という設定がなかったのが残念ではありますが、未来を描くと言いながら現代の問題にもつながる描写がされていること、お話の中で、いろいろな要素がそれなりに整合性が取れているので、SFとしては及第点だと思います。

結局、宇宙のどこかから現れた破壊機械(後の「テッド」)が、自らの取り込んだサンプル(NASAがタイタン調査のために送り出した探査機にのっていた、ジャックとヴィカ)を大量にコピーして地球を制圧、その後は、自らが海洋資源を利用するためにプラントを作ったものの、生き残った人類の破壊工作に遭い、防御のための無人攻撃機のメンテナンスをジャックのコピーが担っている訳です。

ところがコピーの方にもオリジナルの記憶は残っていたらしく、地球を周回し、60年ぶりに地上に呼び戻されたNASAの探査船の後部(破壊機械に取り込まれる直前にジャックが切り離した)で人工睡眠状態になっているジュリアを見て、ジャックの方はこれが夢の中の女性、そして妻だったと思い出す。

そして、管制タワーに連れ帰ると、ヴィカの方は規則違反だと強い拒絶反応を起こす。ま、単に嫉妬した、ということなのかも知れませんが、当初同じ探査機に乗っていた者同士、実はオリジナルのヴィカもジャックに思いを寄せていたのかも知れません。

どの程度記憶があるのかは分かりませんが、アンドレアが、知っていそうな、何も知らなさそうな、実に微妙な演技で、見る者に切々と迫るものがあります。

映画のストーリーの方は、このあたりを大げさに盛り上げたりせず、さらりと流しているのも、アクションものの分かりやすいSF+永遠のラブストーリーを観たい人にはそう観えるということで、面白い作りだと思います。

一方、SFの中身を見ていくと、どっかから究極の破壊機械が忽然と現れて…なんて話、唐突すぎてなんだかなー、なんですが、そんな凄いテクノロジーの割には、テッドの中身もドローンも人間の理解の範疇内なのが、怪しい感じなんですよね。

実は、テッドは宇宙の果てからやってきたのではなく、人間が秘密裏に作っていたものが、制御が効かなくなり、暴走を始めたのではないか…。そう考えると、いろいろと辻褄が合います。

第一、ドローンにしても、攻撃機能を備えた人工衛星にしても、すでに世の中に存在しているし、相手が誰かを考えもせず、無条件に殺戮しようとする兵士も存在します。ジャックも言います。ドローンではなく、ジャック自身が武器なのだと。あるいは、この作品の裏テーマは、こうした状況やこうした状況を引き起こす、人間への諷刺と見ることだってできるでしょう。

さらにもう少し、普遍的なテーマを探るならば、それはSF(そして文学)の一大テーマである、人間とは何か、ということに行き当たります。

ジャックは、地表に残された、美しい自然に囲まれた小屋の中に、死について書かれた本を大切に持っています。ジュリアと2人、歳を取り、だれにも知られることなく死んでいく…そんな将来像を語るという、決戦シーンの前によく置かれるお約束のシーンなんですが、この映画では皮肉にも、その直後に、ジャックは大量にコピーされた存在なのだということが発覚します。

ま、世界のヒーローとして彼が犠牲になるとしましょう。

でも、まだまだ「ジャック」は大量に存在してるんですよ。(感動のラストシーンにさえ、のこのこ出てきましたよね?)

トム・クルーズのファンにゃー嬉しいかも知れませんが、これは相当シュールな光景です。何せ、ジュリアを発見したジャックだって、オリジナルではないんですから、彼をジャックと認めるなら、ジャックは永遠に死なないし、取り換えの利く存在、まるで彼らが破壊しようとした機械のような存在ということになります。

ついにテッドに乗り込んできたジャックと対峙した人工頭脳は叫びます。クローンを作ったのだから、
私こそが神なのだ、と。そうだとすると、クローン(コピー)は人間ではないのでしょうか?

一方、同じ記憶、同じ身体を持っていても、経験が違うのであれば別の個体、とみなすのであれば、5年前以前の物事を忘却し、ジュリアとであったジャックはやはりジャックとは言えないのでしょうか。『トータルリコール』では、記憶をいったんなくした主人公は、記憶のなくなる前とはまるで正反対の人間になってしまうのですが…。

そういうわけで、「忘却」をタイトルに冠したこの映画、難解すぎてお客がついてこれない、という風には作っていないものの、なかなか味わい深いものがあります。他にもいろいろ解釈はできそうですね…


フェイバリット映画100のリストは→こちら です。


そのほかの映画に関するエントリーは→こちらから、
posted by 銀の匙 at 02:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月01日

きっと、うまくいく 3 idiots

映画館では、「オレ、インド映画『ムトゥ』以来」みたいな話している人が多数いたように、残念ながら普段は見る機会の少ないインド映画。私も本当に久しぶりに見ましたが、さすが一般公開に踏み切っただけあって、老若男女、どなたにも楽しめる作品でした。

3時間と長尺なので(スルーされちゃいましたが「インターミッション」というテロップが出てましたので、地元で上映するときは折り返し部分で休憩が入るのでしょう)、笑って泣いて感動してたらあっと言う間でした。

ある日、いきなり母校、超名門のICE工科大に呼び出され、「勝ち組」チャトゥルの腹いせに付き合わされる羽目になった2人の同窓生、ファルハーンとラージュー。チャトゥルは、天才クラスメートのランチョーに忘れられない(爆笑ものの)屈辱を味わわされた怒りから、10年後の9月5日、すなわち今日、どちらがより成功しているか賭けをしよう、と言っていたのです。しかしその場にランチョーは現れず、なんとか今の自分の成功を見せつけたいチャトゥルと、親友を慕うファルハーンとラージューの2人は、卒業後忽然と姿を消したランチョーの行方を捜すことになります。

3人が捜すランチョーとは、気は優しくて機械オタクのナイスガイ(あんまりこういう組み合わせの人知らないけど)。Aal is well (何とかなるさ;うまく行くさ)が口癖で、学業優秀ながら正義感が強すぎ、あちこちでトラブルを引き起こしてしまいます。

彼と同室となったばかりに常に厄介事に巻き込まれてしまうファルハーンとラージューですが、そこはランチョーの機転と発明でいつもピンチを切り抜け、友情を深めていきます。ランチョーは学長をおちょくりつつも、暗記ばかりで本当の勉強をしようとしない、させない学生や学校の目を覚まそうと奮闘し、ついに首席で卒業したあと、忽然と姿を消す…というところまでが前半。ここで本来ならちょっと休憩が入り、後半にはあっと驚く展開が待っています。

工科大学生のバカ話というと、つい、「ビッグバン★セオリー/ギークな僕らの恋愛法則」を連想しちゃうんですが、こちらはセリフで笑わすというより、やんちゃで笑わすと言った感じでしょうか。理系男子あるある……的なノリは少ないものの、野郎だらけの宿舎であるある……ネタはバッチリ組み込まれ、青春ムービーにはつきもののロマンス、インド映画にはお約束のダンスシーンも盛り込んで、なおかつ細かい伏線をきっちり回収していくドラマ作りに脱帽です。

音楽はインド映画らしい、キャッチーで踊れるメロディのものばかりですが、舞台が現代の、しかも工科大ということで、アレンジがかなり現代風になっています。現代風といえば、サリーが似合えばよかった昔のぽっちゃり系ヒロインと違って、いまはイブニングドレスやジーパンなんかも颯爽と着こなせなければダメみたい。

聞いてて面白かったのは、現地語(ヒンディー語)と英語がちゃんぽんで出てくるところ。どんなときヒンディー語から英語にスイッチしているか注意してたのですが、あまりにシームレスなのでときどきいつ切り替わったか気が付かないほどです。英語の中にヒンディー語が混じってる(小学校の先生様:マスター・ジーとか)こともあるし。字幕大変だったろうな、と思ったら松岡環さんでした。ずっと前、個人でインド映画を広めるために奮闘していらしたときに、作品を見せていただいたことがあるのですが、今も変わらず頑張っていらっしゃるのに感動し、なんだか映画と重ねてみてしまいました。

感動といえば、悪役(?)っぷりが板についてた学長先生が、一番初めにランチョーから「宇宙でなんでペンが必要なんですか?鉛筆で書けばいいのに」と質問されて即答できず、一本とられた形になっていたのを、最後にキッチリ返してそのままにしておかなかったところが、とても科学者らしく、そして先生らしくてジーンと来ちゃいました。

ぜひ、ぜひ皆さまもご覧になってください。

シネリーブル池袋で見ました。ルミネの中にある小規模な映画館ですが、ラインナップがとても良いです。画面が小さいのがちょっと残念ですが、席は段差があってよく見えます。スクリーンがかなり上の方にあるので、I以降の席がおススメです。

以下、ネタバレになりますので、未見の方はご注意ください。






後半の、実は彼は大金持ちの養子で、主家の跡取りになりかわり…という展開が、なんだか『ムトゥ 踊るマハラジャ』でも見たなー(あっちは逆の立場でしたが)という感じでしたが、昔の日本の映画とか、韓流とかといっしょで、こういうのは鉄板ネタとして入ってるんでしょうか。あるいは、インドの庶民が見ると、カタルシスを得られる展開なのか、インドのことにとんと疎いのでよくわからないですが…。

今も階級社会なのか、仕事は好きに選べるのか、女の人もふつうに働いてるのかなどなど、知らない自分にもやもやしつつ見ておりました。出身地ネタも入ってたみたいでしたが、よく分からなかったのも残念。

ラストは、やっぱりねー、という感じでしたが(ペンネタも効いてましたね)、実は小学校の先生「のみ」というのでも良かったんじゃないかなと思います。それじゃチャトゥルにいっぱい食わせられないから観客は納得しないかな。優秀なら成功する、とランチョーは言ったけど、その成功が社会的地位とか、収入の額だといことなら、何だか彼の自由人っぽい言動と整合性がとれないような気がしました。

ま、収入は少ないけれど、好きな道を歩んだファルハーンのエピソードもあるし、ランチョーは結局、自分の好きなことが認められたということだし、これでいいのだ!
posted by 銀の匙 at 01:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月19日

ロシアン・カルト その3

昨日書くつもりが、結局バラバラのアップロードになってしまいましたが、今回の特集上映で初めてみた作品がこちら、

妖婆 死棺の呪い

整理券もらうとき、どうしてもこのタイトルを口に出すのに抵抗があって…(笑)
はぁ、でも、ホラー映画ファンにはあまりお勧めできませんが、ロシア映画ファンにはぜひにとお勧めしたい作品です。確かにこの邦題の方がお客は入ると思いますが、ゴーゴリの原作通り、「ヴィー」にしといた方が、誤解は少なかったかも。

当初、ガチなホラー映画かと思ったので実はあまり見たくなかったんですが(連れがどうしても見たいというので仕方なく)、でも全然怖くなくて、雰囲気としては、そうですねぇ…「まんが日本昔ばなし」でお化けが出てくる回なんかの感じでしょうか。

その気で見れば、いろいろと見どころには事欠かない映画なんですが、特にすごいなーと思ったのは、棺桶美女が魔除けのために描いた円に阻まれ、ぐるぐる回りを回るシーン。当然CGなんてものはない上に、特撮じゃなくて「透明な壁がある」演技をしてるわけですが、これがパントマイムのお手本級に上手い!さすがロシアの女優さんは美人なだけじゃございませんね。

以下、内容について触れますので、これからご鑑賞予定の方は、スルーしてくださいませ!




さて、この作品、ソ連時代に作ったので天罰も怖くなかったのか、出てくる神学生も教会もかなりグタグタな感じですが、美化されてないぶん、実際きっとこんな感じだったんだろうなーと思わせるものがあります。

神学校も休暇に入り、校長先生のお説教もむなしく、(かなりトウのたった)神学生たちはやりたい放題。哲学専攻のホマーをはじめ、ワル3人組も羽目を外していますが、夕闇迫るころ、やっとたどり着いた農家で、泊めてもらおうと門を叩くと、中からはまるで妖怪のような老婆が…。

納屋に通されたホマーは老婆の妖術に嵌りますが、辛くも難を逃れ、老婆をメッタ打ちにして逃げ去ります。ところが瀕死の老婆はみるみるうちに、絶世の美女のビジュアルに。これがまた、ものすごく整った、お人形さんみたいな顔立ちの女優さんなんですよね…。

何食わぬ顔をして学校に戻ったホマーの元へ、地元の富農から、瀕死の令嬢のため祈祷をするようにとお呼びがかかります。逃げる気満々のホマーを阻止しようとする使いの男たちとのやり取りが、ロシア民話タッチでコミカルに描かれているのがなかなか面白い。民謡や農村の習俗などもふんだんに盛り込まれ、ロシア情緒が存分に味わえます。

さて、ついに逃亡もかなわず富農の前に引き立てられたホマー。令嬢はちょうど亡くなり、ホマーは生前名指しされたということで相当疑われていますが、とにかく遺言通り、3晩の間、棺桶が安置された教会で令嬢のために祈るようにと依頼されます。

いよいよ、村のひなびた木の教会で、3晩にわたる棺桶美女と神学生との対決が始まります。ドリフのコントもかくやと思わせる、朝が来るとバタっと閉まる空飛ぶ棺桶、キョンシー飛びが思わず笑っちゃう美女との一騎打ち、3晩の死闘(?)の末、ついに現れる怪物ヴィーなど、脱力ものの見どころ満載です。

神のご加護もあったのかなかったのか、ついに力尽きてしまったかに見えるホマーですが、本当はどうなったのか、この話自体が噂なのか、真相は全て藪の中、といった終わり方も、いかにも民間伝承を映画にしてみました感を醸し出して、なかなか良い感じです。

ちょっと「ピロスマニ」なんか思い出させちゃったりする色彩も味がある本作品、珍品とはいえおススメいたします。
posted by 銀の匙 at 23:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ロシアン・カルト その2

さて、前回に引き続きましてロシアン・カルト第2弾。

アエリータ
文芸大作の趣もあり、おススメの逸品です。これも以前、映画祭で見たことがあるのですが、すっかり忘れておりました。なんと1924年制作の無声モノクロ映画で、今回はピアノ伴奏がついており、それも含めて楽しめます。

お話は少々混みいっており、技師ローシが主人公のロシア革命後の混乱期である現実世界と、ローシが夢想する火星での幻想の世界が平行して進みます。

ある日、技師ローシは「アンタ オデリ ウタ」という不思議な文言の電文を受信します。まるで火星からのメッセージのようだ…。すっかり魅せられたローシは火星ロケットの研究をはじめるまでになります。研究が行き詰まると、彼は火星の様子を夢想します。そこには美しい女王がいて、地球の様子を好奇の目で見つめ、ローシ自身のことも気にかけている、と…。

現実世界では甘い新婚さんだったローシですが、ちょっとした行き違いから妻の不貞を疑い、ついに彼女に向かって発砲するという、取り返しのつかない罪を犯してしまいます。

執念深い刑事に殺人容疑で追い詰められたローシは、完成したロケットに乗り込み、火星へと逃げ出す羽目に陥ります。ついには、アエリータの愛を手に入れ、火星にも革命を起こして、虐げられた火星の人々を救いだした、はずだったのですが…。

あらすじからすると深刻な話っぽいですが、要所要所はコミカルで軽いタッチにまとめられています。とはいえ、モノクロならではの重厚な質感で描かれるロシア社会のリアルな描写と、ジャポネスクな衣装に身をまとう女王やアヴァンギャルドな舞台を思わせる火星の描写の対比が素晴らしいのはもちろんのこと、1920年代の雰囲気をそのまま味わうことができる貴重な作品です。

ピアノの伴奏は全くの即興だそうですが、演奏家の方は、「今回、必ず『インターナショナル』は使おうと思ってました」ということで、とても印象的に、ときに皮肉に、曲のモチーフを使っていらっしゃいました。

【以下、ネタバレです!】



この作品もかなり諷刺が効いていて、当時意図されていたかどうかはともかく、今日の眼から見ると、かなり思い切った内容に見えます。救護所に勤めながら、ブルジョワ生活についふらふらと惹かれてしまうローシの妻。彼女の不貞を責めながら、空想の中とはいえ、アエリータに靡くローシ。限られた物資をめぐる腐敗と不正。集団の都合で個人の邪魔をする革命というもの。とどのつまり、革命や戦争が生活の手段になっている赤軍戦士。

特に最後の、人々を煽って革命を起こし、政敵を抹殺したら自分が権力の座につこうとする女王のエピソードは印象的です。クーデターではよくあることなのかも知れませんが、皆が革命に酔っていたであろうこの時代に、現実の世界でだって革命も結局はこうなると見通していたのでしょうか。ここまで醒めて冷静に描けるものなのか、本当に脱帽です。

逆に、21世紀の今、自分に、自分のいま置かれた状況をここまで客観視しろと言われても、到底できません。後の世代の人から見れば、きっと何かに酔っていて、周りが見えていないんだろうということは、予測がつきますが…。

最後の「アンタ・オデリ・ウタ」
とは、広告ポスターに書かれたタイヤの商標名だったというオチも、もう空想にふけるのはやめて、祖国の建設に邁進することにするよ、といういかにもとってつけたような(当時は大まじめだったかもしれませんが)ローシの態度と考え合わせると、美しい理想も商業主義の前には膝を屈するという皮肉に思えて実にキョウレツです。

原作はSF作家、トルストイ(「戦争と平和」のトルストイとは別のひと)の作品とのこと。ちょっと読んでみたいです。








posted by 銀の匙 at 00:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月18日

ロシアン・カルト その1

2013年3月アップリンクで公開されているロシアン・カルト映画。
(公式サイトはこちら) ゴールデンウィークにもアンコール上映があるとのことで、楽しみですね。
今回は初日と2日目で4本見てまいりましたので、その感想をば。

まずはこちら、
ドウエル教授の首
映画は1984年のものですが、原作は1926年の同名小説で、日本語訳もちゃんと出版されているらしい(→Amazon)。

舞台はドウエル教授の研究所(映画ではどこにあるのかよく分からない)。人格者としても知られた教授は交通事故でなくなり、弟子の外科医コルン、助手のマリーが研究を引き継いでいるらしい。しかし、研究資金も底をつき、大手化学会社「メルクリ」が、研究成果に触手を伸ばしている。

父の銅像の除幕式を前に、ジャーナリストとして長らく戦場にいた息子、アルトゥールが帰ってくる。彼は、昔から研究所で働いている職員から父親の事故にまつわる疑惑を耳にする。現場からはコルンのタバコケースも見つかり、謀殺は決定的かと思われた。ところが、ドウエル教授は生きていた。ただし、自らの発明した培養液によって生きながらえる、首から上だけの姿となって…。

ちょうどゴルバチョフ政権誕生前夜に制作された映画ですが、南国抒情(英語の歌なんかも出てくるんですが、なんとなくロケ地がキューバっぽい)、水着美女のセクシーショットもあり、なかなかサービス満点な作品であります。

公開年に動員数トップだったというのはこうした営業努力(?)のおかげもありましょうが、ゲテモノ映画かと思いきやテーマはなかなか深く、こういう映画がウケるところにロシアの観客の懐の深さを感じます。

身体の中の何の組織にでも変えることができる構造体の研究は、今はやりのiPS細胞を思わせますが、人助けのためであっても、勝手に命を操作してもよいのかという倫理的な問題や、純粋に学問的に真理を追求しようとしても結局軍事に使われるだけと嘆くドウエル教授の苦悩、発明した結果に対する責任の問題など、30年も前の作品でありながら(原作からも引き継いでるとすると、100年近く前から!?)今日的な課題を扱っています。

しかも80年代のソ連は日本どころではない科学技術命の国だったはず。その方向に懐疑の目をむけるようななこうした作品が制作され、人々に歓迎されたというところに感心します。いえ、むしろ、金儲け第一の現在の方が、撮りにくいタイプの作品なのかも知れません。

宇宙旅行
こちらは1935年のモノクロ映画。以前映画祭で見たことがあり、今回は2回目の鑑賞です。昔懐かしいサンダー・バードや円谷プロの特撮を思い起こさせるロケット開発・月旅行モノの作品ですが、アールデコ風のロケットのデザインといい、構成主義風(制作時にはもう衰退してたんでしたっけ?)のセットといい、とてもオシャレです。

実際のロケットに乗り組むのが、いかにもな英雄パイロットを押しのけ、爺さん、ギャル、子どもという組み合わせなのも良いですね。宇宙旅行の考証も、無重力状態の描写などすごくキッチリやっているかと思えば、寝るときハンモックですかみたいなトホホな部分があるのもご愛嬌。とても和める癒し系SFです。
posted by 銀の匙 at 22:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年01月17日

The Hobbit 思いがけない冒険:思いっきりネタバレ編 その3

感想をこんなにちんたらちんたら書いてたら、エンドロールまで行き着かないので、ターボをかけて参ります。

今回、尺にゆとりがあるせいか、「ロード・オブ・ザ・リング」では追加バージョンにしか出てこなかったような、歌のシーンがあるのは嬉しいですね。♪霧のぉ〜山なみ越えてぇ〜の方は、あまりにもキャッチーなメロディのせいか、メインテーマとしてドワーフが出てくるシーンで何度も出てくるせいか、つい歌ってしまう人続出の模様で、大学の先生までもが、こんなツイートを…。

Saw "The Hobbit" this afternoon. Enjoyed it. Thank you Howard Shore - Can't...stop...humming...this:
午後、「ホビット」を観た。面白かった。ありがとう、ハワード・ショア。止まらなくなったよ、この曲のハミングが…

ホビットのパイプ草にドワーフのハミング。中毒には気を付けましょう(あ、ラダガストの幻覚キノコもね!)。

字幕版ではスペースが限られているので、モブのセリフはあまり訳されてませんが、吹き替え版ではドワーフがワイワイしゃべるシーンの音声がすごく面白いので、ぜひ注目(注耳)くださいね。

ドワーフ雑技団の皿回し芸をかいくぐり、クロシェとかドイリーとか、手芸関係の用語が出てきますが、クロシェとはかぎ針編みのレースのこと(用語集)、ドイリーとは(映画ではレース編みの)小さな敷物のこと(用語集)です。

セリフではビルボが「すまないがそれはフキンじゃない!ドイリーなの!」
ドワーフ(まだ名前が覚えられないむかっ(怒り))「だって穴だらけじゃん」
ビルボ「だーかーらーそういうものなんだって!かぎ針のレース編み(クロシェ)なんだよ!」
ドワーフ「それにいい遊び道具だよな」
他のドワーフ「これに合うボールがあればな」(訳はてきとー。間違ってたらすいません)
字幕ではレースに引っ掛けて、「俺も競争は好きだ」かなんか言ってましたっけ?

本当にドワーフ13人は多いって!!上に名前書いた吹き出しつけといてくれれば良かったのに。
というのは置いといて、ここで注目すべきは袋小路屋敷。HFRで見てよかったシーンはハッキリ言ってここだけです!(断言)どんなディテールもくっきりはっきり。いやあ眼福眼福。

お屋敷内に貼ってある配置図によると、内部はこうなってるらしいですが、(クリックをするごとにサイズが拡大します)
bagend.jpg
「旅の仲間」のときの設定資料と若干違いますね。

入口から入ると玄関ホールがあり、
bagend玄関.jpg
↑玄関

奥へ向かうと樫の間、左へ向かうと応接間につながっています。

bagendパーラーからキッチン.jpg




パーラーキッチン2.jpg


応接間からキッチン

樫の間を右に進むと予備室、奥に進むとスモーキング・ルームがあります。このスモーキングルームって何だろ?喫煙室?にしては換気悪そうだけど、ま、おいといて、
樫の間を左に進むと東廊下に接続し、ここから外側へ向かうと応接間、応接間の左はキッチンです。


bagend玄関パーラー2.jpg

玄関から応接間

キッチンとダイニングはつながっており、ダイニングの奥がアトリウム(天井の高い、広い空間)になっていて、奥にパントリー、その先にワインセラーとコールドセラーが続いています。

アトリウムの外側は書斎、書斎に隣接して主寝室があります。

これで見ると、ひどいありさまになってるはずの「バスルーム」が見当たらないんだけど、さらに奥にあるのか、独立してないのか…
bagendbedroom.jpg
これは旅の仲間のスチル(クローゼットの形状から見てたぶんフロドの部屋)ですが、ベッドの下に桶が置いてある。
ビルボのベッドの手前には茶色の水差しが置いてありましたよね(どこかに写真があったはずだけど見つからない…)

ちなみに、上ではいちおう「樫の間」って書きましたけど、oakって樫(カシ)じゃなくて、「楢」(ナラ)のことだそうですね、wikiによると。するってえと、トーリン・オーケンシールドは「楢の盾」を持ってた、と…なんかあんまりカッコ良くない気がするのは、私だけ?

と考えてたらまた長くなったので続きます。
終わるのかな、このエントリー。
posted by 銀の匙 at 23:24| Comment(4) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月02日

インセプション

ちょっとした買い物で池袋に出かけましたが、あまりの暑さに途中でバテてしまい、映画でも観よう…と思ったら、昨日は映画サービス・デーでメチャメチャな混雑ぶり。

ちょっと見てみようかな、くらいに思っていた「インセプション」は最後の回まで見事に満席に。こうなると、見ないではいられないのでありました。

急いで銀座に移動すると、劇場が大きいせいか、はたまた客層が池袋より上のためか(?)最終回には案の定、まだ空きがありました。初めて座る丸の内ルーブルの2階、最後列の席でしたが、意外に見やすいですね。ここはねらい目かも。

さて、この映画ですが、敢えてストーリーは伏せておきましょう。脚本が大変素晴らしく、サスペンスとしては最高の部類に入るのではないでしょうか。

クライムものとはいえ、誰かが死ぬわけではないので安心して観られるし、その割にはアクションが派手なので爽快感もあります。そして、その甘っちょろいところが、この映画の最大のキーポイントになっています。主人公も、観客も安全地帯にいるのに、なぜか不安に苛まされる…この辺りに脚本の妙を感じます。

物語の終盤、相当ハラハラさせられたものの、全ては収まるところに収まり、ハリウッド映画だからしょうがないなーと思いつつも、でも、結構登場人物たちに感情移入してたので、大団円で終わってくれて何だか嬉しく、ちょっとホッとした…



思った


のに…




その瞬間、観客席のあちこちから、溜め息とも驚きともつかないざわめきが漏れ、タイトルロールが始まったときには、拍手しようかと思ったくらいでした、久々に…。

ディカプリオは(昔を知ってるだけに)どうしても、この人オッサンになったなぁ…という感想しか抱けず申し訳ないんですけど、脇の人たちは皆とても良かったですね。クールな相棒役のジョセフ・ゴードン=レヴィット、おおざっぱでも頼りがいのあるトム・ハーディ、この人いろんな役できそうだと思わせてくれたディリープ・ラオ、夢の女、マリオン・コティヤールなど、組み合わせも抜群です。

渡辺謙はなかなか面白い役どころで、英語も大変わかりやすいのが(笑)良かったです。音楽、煽るの上手いよなーと思ったら、ハンス・ジマーでしたし。

夢の中の夢、夢から覚めない夢、「荘子」の頃からさんざん使われてきたモチーフなのに、いまだに人を惹きつけるのはなぜなんでしょうね。仮想現実が現実を浸食しつつある今はなおさら、この話が説得力を持つのかもしれません。

見終わったあとで「ぴあ」のインタビューを読み返してみたら、監督さんはP.K.ディックのファンだそうで、なるほど趣味が合いますね…。
posted by 銀の匙 at 01:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月01日

エアベンダー

お久しぶりでございます。
それでもって「エアベンダー」。何かあまりパッとしないタイトルだなーと思いながら観に行きました。

実は、この映画の予告に「アバター」という言葉が出てきたので、キャメロン監督の「アバター」と混同していたんですが(「アバター」を観ながら、なかなか小坊主が出てこないなーとか思っていた…爆)こちらはシャラマン監督であります。ネット情報によると、タイトルでキャメロン監督に先を越されたとかいう事らしいのですが…。

すでにこの時点で負け犬の烙印を押されたこの映画、今年最高のB級大作「パーシー・ジャクソン」には譲るものの、ツッコミどころ満載度ではそれに次ぐ、ある意味エンタテインメント度抜群の映画です。映画館でツッコミ入れられたら楽しいのに!黙って観てるのが辛いよ!!とジタバタしてしまうこの映画、どうも続きがあるらしいので、何とか公開して頂きたい!ぜひ皆様、お友達と劇場でご覧下さり、終わったあとはツッコミトークで盛り上がってください!

さて、すごくはしょってる観のあるストーリー展開なのは原作未見でもうすうす感じますが、それにしても、ただでさえ長いんだから、もうちょい脇の人物をカットするか活躍させるか何とかしたらいいのに、と外野は勝手に思ってしまいます。原作もののある映画って、これがきびしいところですよね…。

世界が水の国、火の国、気の国、土の国に分かれていて、それぞれ何となくアジアンテイストというか、ジャポニズム入っているところが吹き出しそうになるのですが、あのハンニャの面は何なんだ、とか…でも…シャラマン監督だから許す。

火の国のヘタレ王子が自国の武官にコケにされ、食事中の兵士たちの前で嘲笑されるシーン、どうみてもしょぼい温泉旅館の朝食風景にしか見えないんですが、でも…シャラマン監督だから許す。

劇中重要な役割を果たす、ある高貴なものも、どうみても近場の温泉にある日本庭園で見かけたとしか思えないんだけど、でも…(以下同文)

シャラマン監督にインタビューできたら、そんなに温泉旅館がお気に召しましたか?と、聞いてみたいです(笑)。

登場人物はいちおう人種混合になってますが、悪役の火の国だけはインド系のキャストで固めているところにはシャラマン監督の見識を感じるけど、この点は否定的な意見が多いみたいですね。

話の進行上配置された、とってつけたような登場人物の多いなか、悪役なのに心優しい?ズーコ王子や、スゴイのかそうじゃないのか良く分からない叔父上、最後にちらっと出ただけでインパクト抜群の王女様など、火の国のキャラクターはなかなか、味があるんですが…。

アン少年があまり大きくなってしまわないうちに、続編よろしくお願いします。
posted by 銀の匙 at 12:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年03月18日

アバター

関係者の皆様には申し訳ないですが、当初この映画を観るつもりはまっっっっっっったくありませんでした。映像がキレイなだけの3D映画なんて(そしてウワサによればストーリーは涙が出るほど陳腐で)、ましてや、静止画像ではキレイとも思えない映画なんて、そして、興行収入第一位の映画なんて、わざわざ観てどうする?(←すごい偏見)

ところがぎっちょん、普段はSF映画しか観ない友人知人が口を揃えて、とにかく観ろ観ろと言うんですよ(話は期待しない方が良いけど…と必ず付け足すのまで同じ・笑)。見巧者にここまで言わせる映画がどんなものか、ちょっと心が動きました。

それに、ここだけの話ですが、私は同じ監督さんの『タイタニック』がとても好きなんです。これを告白すると微妙な反応を示す方が多いんですが、作り手の情熱がひしひしと感じられる執念深そうな作品という点で、良い映画だと思いません?(そういや、話は期待しない方が良いのはあの映画も同じか…)

そういう訳で、前置きが長くなりましたが、まるで騙されたような気持ちで、映画館に座っていたのです。

最初の10分くらいは、飛び出してくる字幕(も3Dとは迂闊でした。しかも、言うも名を憚るあのしとの字幕…)とズリ落ちてくる立体メガネ、ガンダムとエヴァを無断転載してるような映像(正確に言えば、日本がオリジナルって訳でもないんでしょうけど)が不快で不快で、こりゃ先が思いやられると暗澹たる気持ちにおそわれましたが、3Dアニメ(と言っていいんでしょうか)中心の映像になった途端に、その辺はすっぱり、忘れてしまいました。

これでもか、これでもかと、お得意の執念深さを発揮して作り込まれた映像は、確かに一見の価値があります。ゲーム画像が大きくなったくらいのレベルを考えていましたが、そんなチャチなものではありませんでした。

デジタルアニメは実物に近づけば近づくほどキモチ悪く見える…とはよく言われる事ですが、そこを逆手に取って、「実物」を参照しようがない世界を作り、画面に出したあたり、実に心憎い戦略であります。

映像美を心ゆくまで堪能し、ああ、あっという間に終わっちゃったなー、遊園地のアトラクションみたいですごく面白かったーというのが正直な感想であります。で、観てない人にせっかくだから映画館でやってるうちに観なよ〜というのが口癖になってしまいました。

で、推薦の辞はここまでなんですが、せっかくエントリーしたので、話の中味についても、少しは触れようかと思います。
以下、ストーリーに触れています
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2010年01月12日

のだめカンタービレ 最終楽章 前編

音楽モノ鑑賞が続いておりますが、今回は「のだめ」でございます。

今だから告白しますが、先々月まで玉木宏と玉置宏を素で間違えてたんで、アレコレ言う資格は全然ございません。お正月休みにテレビドラマ版のDVDをまとめて見て、すっかりファンになりました(ちょっと出だし遅すぎ)。(ここのとこ、期待して見た日本のテレビドラマの安っぽさに悉く裏切られて辟易してたので、許してください…)

逆に、時間差がなかった分、ドラマの続きとしてすんなり見ることができましたが、いきなりこの映画を見た人は、何がなんだかわからなかったでしょうね。登場人物の名前すら把握できないと思います。業界用語も遠慮会釈なく使われていますしね(応援のために駆り出してくるエキストラ楽団員のことを「トラ」って言ったりとか)。でもたぶん、演奏シーンがほとんどだったのでそこそこ楽しめるんじゃないかとは思いますけど…。

ことばのギャグから音楽のギャグまであれこれちりばめてあって笑わせて頂きました(「また呪文みたいな名前の料理」というのがツボだった)が、なんと言ってもハイライトはベートーベンの「第九」ですね!そう来るか!!っていうか、これから聴くたびに、客席を埋め尽くした白目剥いたウサギが、力の限り合唱しているシーンがフラッシュバックしそうで怖いです…。原語で歌ってて字幕は出ないけど、歌詞もちょうどシーンにピッタリの内容(「歓喜よ!魔法が、厳しく切り離された我らを結びつける」の部分)なんで、余計おかしかったです。

音楽映画で一番腹が立つのは、演奏シーンで音楽をブツ切りにされることなんですが、この作品はその辺の処理のうまさが際だってるように思います。コンサートのシーンではチャイコフスキーの「序曲1812」を相当長尺演奏してますし(この曲、フランスの侵攻に耐えて起ち上がるロシアがモチーフなのに、〈フランス国歌がだんだんしょぼくれていくフレーズもバッチリ入ってるし〉フランスのオケ、フランス国内で演奏するとは良い度胸…と思ったんだけど今は関係ないのかしら??)。

あと、全然本題とは関係ないんですが、この曲の終わりが急にレコードの回転数が落ちたみたいな音になってません?気のせい?あるいは、そういう曲なんでしたっけ?どなたかご存じの方、教えてくださいませ(「1812」を聴くと条件反射で「V・フォー・ヴェンデッタ」を思い出すように刷り込んだウォシャウスキー監督をにくむぅ)。

ちなみに、劇場で売っていた「ピアノミニアルバム のだめカンタービレ最終楽章」っていう楽譜があります。劇中使用曲を短いピアノ曲にアレンジしていて面白いので買ってみたら、「1812」も入ってました。えっ、ピアノでどうやってあの大砲の音を…?って思ったら、楽譜の該当部分にちゃんと「床を踏みならして大砲の音を表現してみましょう」と入ってました…ナイス。

ということで、音楽映画としては十分面白かったんですけど、ドラマ部分に関しては、前々からちょっと引っかかってるところがありまして…。ほとんどどうでも良い続きを読む
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2010年01月01日

THIS IS IT

皆様、明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

さて、1月1日は映画の日。今年の初鑑賞はマイケル・ジャクソンの「THIS IS IT」と相成りました。

この作品、去年秋に2週間の期間限定で上映されたのですが、あまりの人気に再上映が決定、それでも見られない人続出で、ついに再々上映となったようです。私も2回とも全然入れなくて諦めてたクチだったので、今回の再々上映が本当にありがたかったです。

それにしてもそこまで混んでるなんて、日本人は期間限定モノに弱いのか、日本にそんなにマイケルファンがいたのかな…とちょっと感慨を新たにしつつ、劇場に行ってみると、60代以上と見受けられる観客が多くて驚きました。

山田洋次監督の映画と間違えたんじゃ?

いえ、皆様どうも映画の評判を聞きつけていらしたらしいんですよ。

内容としては、マイケルが今年開催するはずだったコンサートのリハーサル風景とメイキングのビデオをつないで作ったものなので、観客はいないものの、ほぼコンサートのドキュメンタリーのようなものです。

しかし、リハーサルはあくまでもリハーサルなので、衣装もないし、演出も話に出てくるだけで、コンサートそのものは観ることができません。

じゃ、何を観るかって?

マイケルですよ、マ イ ケ ル。

とにかく彼はすごい。
こんな陳腐な形容詞しか出てこないのがもどかしい。

以下、映画の内容に触れています====================

冒頭、ベーシストにどんな演奏が欲しいか説明しているシーンがあるんですが、そこから感心しっぱなし。もっとファンキーに…といいながらベースラインをベース風に歌ってみせるんですけど、マイケル、この際、その調子でバックバンド全部、口三味線(?)でやったらどうなの?と思っちゃうくらい。たった数小節でもこのリズム感、このグルーヴ、まさにブラックミュージックの本懐。

「ポップの王様」、キング・オブ・ポップの称号通り、ファンとは言えないレベルの私でも映画で流れた曲は全部知ってたくらい、キャッチーで覚えやすく、親しみやすい音楽路線でしたけど、その底にあるのは強固な黒人音楽の伝統なんだなあと感じた瞬間でした。

ジャズにしろロックにしろ、今の音楽は何かしら黒人音楽の遺伝子を受け継いでいるのだとすると、黒人音楽のエレメントをふんだんに持っているマイケルの音楽には、始原とつながる、どこかとても純粋なものを感じます。

そしてダンス。この映画で初めて彼のダンスを見たんですけど、私のようなど素人にも一目瞭然なほど、バックダンサーとは全然ダンスの質が違います。

オーディションのシーンがあるのですが、選考基準はマイケルと一体となって踊れて、しかも華のある人。だとすれば選ばれた人のダンスは限りなくマイケルに近いはずなんですが、同じステージにたつと、三輪車とポルシェ以上の差があります。

もちろん、真似して踊ればオリジナルより劣化が避けられないのは当然ですが、この差は一体何なんでしょうか。

バックダンサーは振り付けを踊っているけれど、マイケルのは音楽が身体の動きになって現れている。私に言えるのはここまで止まりなんですが…。

いま彼のダンスを観る人は、あれで50歳!あんなに切れる動きで信じられない!という印象しか持たないかもしれないけれど、マイケルが指一つあげられないほど老いたとしても、彼の身体は音楽を語るでしょう。そう感じさせる動きなんです。

小さい頃からエンターテイメントの世界で揉まれてきた人だからか、何か頼むときに腰が低いのも印象的でした。言葉のはしばしに、相手にとても気を遣っているのが伺えます。そうしながらも、出す指示は非常に的確だと思いました。曲のテンポ、コード進行、キーの高さ…がなぜそうなのか、完成品だけ聞いていると「感じる」ことしかできませんが、マイケルが出す指示に、どのような狙いでそれらが決定されているか、かいま見ることができます。その意味でも貴重な記録です。

興味深かったのは、キーボードの人とのやりとりで、演奏をCDと同じにしてくれと言っているシーン。お客さんが何を望んでいるか、さすが、良く把握しています。

ああ、本当にこのコンサートが開催されなかったことが悔やまれてなりません。せめて、世界中の人がこの記録を観たことで、彼の芸術がいっそう愛されることを祈るばかりです。
posted by 銀の匙 at 23:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月01日

WALLE ウォーリー

明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い致します。

さて、1月1日は映画の日。毎年恒例で映画を観るようになりました。今年は、予告を観て以来ずっと気になっていたピクサーの「ウォーリー」を観ることに。

劇場は日比谷宝塚の隣にある、日比谷スカラ座です。

元旦ということもあり、大きな劇場にお客さんはまばらでしたが、豪華な映画館でゆったり映画に浸れて、なかなか良いお正月になりました。

昔懐かしい「ショートサーキット」を彷彿とさせる、ちょっとアナログなゴミ処理ロボット「ウォーリー」(再起動の音声がMacの起動音なのでドキっとするんですけど…)。誰もいないゴミだらけの地球で今日もけなげにお掃除に励んでいると、突然、宇宙船からiMacっぽいつるるんとした未来形ロボットが現れます。

好奇心旺盛なウォーリーは早速近づいてみるものの、新型ロボットがカラミティ・ジェーンかよ?な抜き撃ちの早さであちこち破壊しまくり、ビビるビビる。それでも、持ち前のけなげさをここでも発揮して、この猟奇的な彼女とお近づきになるのですが…。

観るべきものは、まず背景。
ゴミの舞い散る地上の様子から、ゴージャスな宇宙船での描写まで、汚しもバッチリ入って圧倒されます。もはやセットなのか絵なのかわからない域に達しており(というか、映画撮影でセットなんて、もう使わないのでしょうか)、現実味にあふれています。

それでも、キャラクターや画面全体の動かし方にはアニメーションらしい部分が残っており、そのあたりの匙加減が絶妙です。

宇宙船内での描写などにほんの少し、ブラックなテイストを滲ませてみたり、誰もいない地球に(「感染列島」の予告を観た後では特に)ちょっと怖い感じを匂わせたりはするのですが、そこはアメリカ映画なので、ストーリーはあくまで楽天的な方向へ進んでいくのであります。

制作陣が意識してるかどうかはわかりませんけど、相手が名乗ったら自分の名前も必ず言うとか、相手が通ろうとするときは道を空けるとか、アメリカの良き伝統が未来社会にも受け継がれてるのはなかなか嬉しいですね。

ただ、お話の赴くところもいかにもアメリカ風で、こんな具合に円満解決になるのが本当に良いのか、ちょっと疑問に思ってしまいました。子ども向けだしフィクションだとはいえ、ひょっとしたらアメリカの人って環境問題とその解決法をこんな風にとらえてるのでしょうか。だとしたら、それはちょっと怖い…。

日比谷スカラ座は、かなり広い劇場で音響もなかなかです。ただ、真ん中の通路前後の席は、ぴあのリザーブシートとプレミアシートで占められており、それ以外で見やすい席というと、プレミア席の真後ろの2、3列しかないので、通常はあまり嬉しくない劇場かも知れません。

しかし、本日は映画の日!プレミアシートは一般客にも開放され、見やすい席でゆったり鑑賞でき、本当におトクでした。
posted by 銀の匙 at 22:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月01日

トロピック・サンダー 史上最低の作戦

ハ〜イ!皆様ご無沙汰でございます。
やっぱり見に行きました「トロピック・サンダー」。

ベン・スティラー、ジャック・ブラック、ロバート・ダウニー・Jr.を主役に揃え、映画(と映画スター)をコケにしまくるこの映画、せっかく戦争映画がネタなのに、そこを茶化さずに「映画産業」を茶化す止まりなところに限界も感じますが、そんな内輪受けがかなり笑えてしまうあたり、果たしていいのか悪いのか…。

役者が役者に扮してるため、公式サイトには「主演俳優」たちの公式サイトまで用意されてるというバカっぷり徹底ぶり。

撮影開始たった5日で泥沼状態の超大作戦争映画「トロピック・サンダー」。ワガママばかりの俳優たち、英国人の映画監督(←という時点ですでにダメの烙印が押されているのが笑える…どうせお偉い舞台監督サマなんだろ、みたいなこと言われててお腹よじれそう)、サイテーな脚本と、もう映画の完成は風前の灯火に。

しかし、そこで起ち上がった独りの漢(おとこ)@ウソつきによって、ついにクルーは本物の戦場に投げ込まれることになってしまうのであります。

全編やりすぎな曲者出演者オンパレードの中でも、特にスゴイのがトム・クルーズ。完全に他を圧倒している。誰か彼に座布団3枚、いやオスカーを上げてください。

ぜひ効果音ばっちりの劇場で見てください。ただ、一緒に見に行く人を選ぶ映画かも知れません。コメディだと思ってナメてると、ロケット砲でぶっとばされちゃいますよん。時事ネタっぽいのも入っていましたが、その辺は相当ブラックでしたしね…。
            +     +
あ、そうそう、ファミリー映画じゃないですよ。グロ攻撃に耐えられる方のみご覧ください。

グロ攻撃って何よ?と思われた方、まずは、このページのウェブ用プロモを見て、大丈夫そうだったら行ってみて下さい…あ、これを見てイヤになった方、ここまでひどくはありません!お友達に誘われたら行ってあげてください!
posted by 銀の匙 at 22:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年07月28日

崖の上のポニョ

コンビニの入り口で「これ見たい!これ絶対面白いよ!」と連れが騒ぎ出すので(アンタ一体いくつ?)指さす先を見ると、そこには「鉢かづき姫」みたいなポスターが…。最近世間のことに疎かったのでうっかりしてましたが、そういや「ポニョ」ってもう上映されてたんですねー。ポニョポニョというよりコリコリとおいしそうな絵に釣られて、そのまま映画館に直行しました。

何だかんだいって、宮崎駿作品はすべて劇場で見てる私。今回は子ども向けと聞いていたのでやめとこうかと思ったのに、結局見る羽目になるとは…。

今回まずびっくりしたのは、背景が色鉛筆みたいなもので書かれていることです。動くものはセルに描かれているため、最初はちぐはぐな感じがして慣れませんでした。崖の上に立っている家なんて、嘘っぽすぎると思ったものです。でも怖ろしいことに、だんだん気にならなくなってくるんです。

次にびっくりしたのはポニョの名前ですかね。え、ポニョじゃないの?って、それ、あだ名(?)ですから。本名は違いますよ。奈良美智の描く憎らしい子どもみたいな顔してるくせに、本名
ブリュンヒルデって、どこが?

まあその三白眼の憎らカワイイところが何とも言えませんで、おさかなのポニョにはすっかり参ってしまいました。バケツの中でぐるぐる泳いでるところなんか、宗介くんじゃなくたってノックアウトです。
しかし、いくらアニメだからってあんなに形状が変わっちゃって、同じポニョだって子どもはわかるのかなー?

それに、大人と致しましては、ポニョが口を利くようになるとそこまでカワイイとは思えなくなるんですよね。ずっとしゃべらないままの方が良かったんだけど、子ども向けならしゃべらないとダメかな…。感情移入できないもんね。あ、トトロはしゃべらなかったですが。

結構派手でスペクタクルな場面も多いのに、全体としてはそれほどエキサイティングな印象ではないのは、どこがヤマ場かあまりハッキリしないせいでしょう。リサを捜す宗介とポニョの場面がストーリー的にはヤマ場のはずなんですが、絵的なヤマ場は嵐の中をリサが家に戻ろうとするシーンと、ポニョが宗介に会いに来るシーンなので。

それにしても、周りで見ている子どもたちの反応は熱烈なもので、エンディングの歌はすぐに覚えて一緒に歌っていました。大人が見て面白いかどうかは人によると思います。お話が単純でも動きの面白さに反応する人なら、相当楽しめることでしょう。

それから、大人的な見どころとしては、宗介とポニョを取り巻く大人たちの反応でしょうね。旦那さんが帰って来なくてふて腐れても、いきなり妙な女の子が現れても、すぐにさらっとして子どもの思いを受け止めてあげられるのは素敵ですけど、なかなか現実には難しいだろうなあ…。

新宿ピカデリーで見ました。
今月新装なったばかりのピカピカの映画館です。
バルト9につづくシネコンで、一番大きなスクリーンの部屋でした。
ただ、大きな劇場にありがちの欠点で、スクリーンに近い席は非常に見づらいです。見やすいのはNOPあたりでかなり後ろの方。前の席との段差は大きく取ってあるので、前の人の頭は気になりません。
posted by 銀の匙 at 23:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする