2008年01月04日

ブルーノ・ムナーリ展 あの手この手

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イタリアのデザイナー、ブルーノ・ムナーリの回顧展。プロダクトデザインからブックデザインまで幅広い分野で活躍した人です。今でもあちこちで作品を見かけるので、生誕100年記念と聞いてびっくり。

この展覧会はブックデザインを中心にしていると聞いていたので、ただ本がいっぱい並べてあるだけなのかと思っていたら、もちろん本の実物もありましたけど、それをオブジェにして見せたり、日本の友人達にあてた手紙(これがまた素敵)を展示したりと、なかなか立体的な構成でした。

そうそう、実家にこの人がデザインした灰皿があるんですが、それも展示されていて、何だか懐かしい人に久しぶりに出くわした気分でした。

展示によりますと、ムナーリのデザインの根底には、あるものを違う角度で見てみると考え方の視野が広がる、というのがあるらしく、その哲学はどの作品でも遺憾なく発揮されていました。

私が一番お気に入りなのは「木をかこう」という絵本で、黒の線だけでいろいろな木のスケッチが載っています。普通なら、よく観察して全体の形に注意してみよう…とかアドバイスを書いてしまいそうなものですが、ムナーリは違います。木には規則がある。どんな木でもそれは同じだ、というのです。つまり、太い幹があると、そこから分かれて枝が伸び、先に行くほど細くなる、という規則です。木の形にはいろいろあるけれど、この規則は変わりません。

絵本ではここまでなのですが、ここまでシンプルに考えることができれば、例えばコンピューターを使って木についてのプログラミングが出来るってことですよね、と応用できるし、さらに、木についてはムナーリに教えてもらったけど、他のこともよく観察してみると、下に規則が潜んでるんじゃないかな、と思うようになるのが、この本のミソですね。

他にも、「ピタゴラスイッチ」のような不思議な装置満載の絵本とか、文字を廃して視覚の要素だけで本を作るとどうなるかという実験とか、アイデア溢れる作品がいっぱいで、よい刺激になります。

図録も可愛かったので買っちゃいました。ムナーリの本ばりに、切り込みを入れた凝った装丁になってます。

展覧会の公式情報はこちら

板橋区立美術館
2008年1月14日まで
この後、滋賀県立近代美術館、刈谷市美術館に巡回。
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2007年10月08日

イタリアの美術館

皆様こんにちは。

ずいぶん間があいてしまいましたが、これからしばらくは通常の内容に秋の旅行で観てきた展示を織り交ぜたエントリーで行きたいと思います。

展示等が観られたのは、イタリア、ベルギー、オランダでした。
特にイタリアは、別に行きたい訳でもないのに付き合いで…とか言ってた割にはずいぶんあちこち観ることになりました。

まずイタリア編。

1.予約できるところはしていくべし。
いちおう観たい美術館には目星をつけて、日本から予約していきました。reservation と美術館の名前を掛け合わせて検索すると出てきますので、調べていった方が良いと思います。
後から考えると、予約が取れる美術館では、この作業は必須だったといえます。

夏のバカンスシーズンでもないのに、有名美術館は長蛇の列でした。館内に入ってみると空いてるんですけど、予約のお客さんから先に入れるので待たされるみたいです。予約するか、観たいものが決まってる人は閉館の1時間くらい前に行くか、どちらかをお勧めします。

2.美術館の広大さをあなどるべからず。
観たい絵は2点しかないから、30分あればOKかなあ等と甘い考えでプランニングしてたらとんでもない。入口から出口まで、ただ歩くだけでも1時間以上かかる美術館だってざらにあります。しかも、入ってみるとお宝満載、どうしてもゆっくりしちゃうんですよね…。ほんの小さな美術館でも1時間、名の知れた美術館なら半日以上使う覚悟でお出かけください。

3.ガイドブックで展示について調べていくか、現地で買うこと。
予約だけはしたものの、収蔵品についてきちんと調べて行かなかったので見逃してしまった作品もありました。先入観なしに作品に出会うことが出来たというプラスの面もありましたが、とにかく展示品が多すぎて、全部は到底ムリ、みたいな美術館が多かったです。

ということで、次回はレポートをば…。
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2007年03月24日

中村宏 図画事件

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すみません、すぐ書くつもりが何だかんだと遅くなりまして。

今度の日曜までやってるので、ご都合のつく方はぜひ御覧になってください。

「銀河鉄道999」に女学生が乗ってるようなポスターの図柄はインパクト大ですが、幻想的な作風なのかというと、ちょっと違います。

彼の絵から受ける印象は、一貫して「不安」で「不吉」。
地方都市を描いたごく初期の版画作品からして、人を不安に陥れるような、特徴ある構図のものが多いです。そこには、ほっとするふるさとの町とか、人情といったポジティブな「田舎」のイメージはまるでなく、排他的で寂れている、ネガティブなイメージががっちり掴み取られて提示されています。

「ルポルタージュ絵画」と呼ばれる50年代の作品は、90年代中国の現代アートを連想させます。

当時の中国絵画は社会主義リアリズムから一歩抜け出したばかりでした。改革開放に乗り、それまで描かされていた具象の技術を使って別のことを表現しようとしていて最初は面白かったのですが、そのうちどれも似てきて、いささか食傷気味になってしまいました。

中村宏の50年代の絵画には、その辺に通じるものがあるようなのですが、片一方に、何々風や○○イズムにまとまらない、画家の強烈な個性が見て取れます。機械や器官、車窓への異常なまでのこだわりぶり、大きなキャンバスに素晴らしい質感を持って描かれる、奇怪な風景…。

さらに、70年代にしてすでに、一つ目女学生のキャラクターを使った、スーパーフラット的な作品を多く世に出しています。

そして、どこか黙示録的な近作も見ものです。今年73歳になられるそうですが、枯れるどころかますます怪調なのには驚かされます。実際の作品については、こちらのHPで何点か御覧になれます。

もう一つ、見逃せないのは装丁・装画の数々です。私はむしろこちらに興味があり、かなりの数の展示が見られて大満足でした。
特に「総銅製機甲本イカルス」を拝めるとは!(←この書名だけでカッコいいでしょ?本については別ブログでもエントリしてみました)

「携帯風景」といった鉄道ファンの心をわしづかみにするオブジェもあり、機械やら車窓やらが好きな方にもオススメの展覧会です。

2007年4月1日まで
東京都現代美術館(清澄白河/菊川)
公式HPはこちら
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2007年03月05日

ブルーノ・タウト展

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ブルーノ・タウトといえば桂離宮。昨年ようやく念願の桂離宮を見ることができたので、桂離宮を評価したタウトさんの作品も見たいものだとずっと思っていた折りも折り。早速出かけてみました。

桂離宮を実際に見たことがある方ならわかって頂けると思いますが、確かに素晴らしいんですけど、壮麗な建築物を見慣れた人が先入観なくこれを見て、直感的に良いと思えるかどうかは微妙…って感じなんです。

タウトさんの場合にも、日本の建築家・工芸家との交流など、それなりのバックグラウンドがあってのものだったんだなあと納得できる展示内容でした。

日本で彼の建築作品が見られるのは熱海だけですし、会場のワタリウム自体もそれほど広い場所ではないので、どうするんだろうと思っていたところ、前半は素晴らしいドローイング、中盤は手紙など彼の思想を表すもの、後半は工芸との結びつきが展示されていました。ギャラリー「間」あたりで見ることのできる、建築プロパーの展覧会に比べると、やはりちょっと物足りない面はありますが、また別の面白さもあるなといった感じでしょうか。

彼の建築作品自体は思ったほどは見られませんが、作品を支える思想はよくわかります。そしていま見直すべきはその部分であるという意図がよく伝わってくる好企画です。

2007年5月27日まで
ワタリウム美術館(外苑前)
こちらの地下にある書店はとても有名で、本というより半分美術品みたいなものも多数置いてあります。お店の担当の人も大変熱心なのですが、熱心すぎて、あまりふらっと入れない雰囲気かも…。

美術館のあるあたりは渋谷区でものんびりしたところです。お時間があったら周りをブラブラしてみてください。
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2007年03月04日

チェコ絵本とアニメーションの世界

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目黒川沿いにある、区の施設がいくつか集まった中に設けられた小さな美術館での展覧会です。2人で行ったら、2種類の違った絵柄のチケットを切ってくれました。

小さい美術館の身の丈にあった、こぢんまりした展示でした。カレル・チャペックやクルテクなど、おなじみの作家、アニメーションの他にも、現代の絵本作家のコーナーが面白かったです。
特に好みだったのはユライ・ホルヴァート(Juraj Horvath)
とマルケータ・シムコヴァーの二人。マルケータの方は売店で実際の絵本が売られていましたが、印刷にのりにくい絵らしく、原画を御覧になられますようオススメします。

「指輪物語」ファンには、イジー・シャラモウンによるチェコ版「ホビットの旅」の挿絵がみものです。この木の切り株みたいな袋小路屋敷は、バイキングみたいな船は、一体なんなの?っていうか、絵本作家の人って本文をあまり見ないのか、わざと無視して描くんでしょうか。そういう意味でちょっと面白かった。


展示場の一部に実際の絵本を見たり、子供連れがお話を読んであげたりできるスペースが設けてあるのは、この手の展覧会にふさわしい良い工夫だと思いました。

上映スペースがあって、そちらで久しぶりに「クルテク」を見ました。すごく昔に見たと思うんですが(絵本だったかもしれない)案外覚えてるものですね…。

公式HPはこちら

2007年4月8日まで。
目黒区美術館

なお、この美術館のラウンジでは、午後1時から4時まで、カフェを営業してます。ラウンジ自体、木が見えて本が読めて、居心地の良いスペースなんですが、カフェもすごくいいです。カフェの準備の時間は、いかにもパートタイムのおばさんという雰囲気でだべっているのでちょっと心配してたら、淹れるコーヒーや紅茶がむちゃくちゃおいしかったです。

紅茶、コーヒーのカップは何の変哲もない白いものですが、それなのにとても上品な感じがするので、どこのメーカーのかな?と裏返してみたら、ウェッジウッドでした(汗)
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2007年03月02日

ティアラ展

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たまには目の保養にいいかなと思って出かけてみました。ジュエリー展なんかと同じレベルで見に行ったんですが、さすがティアラは権力の象徴、初めて知ることが多く、勉強になりました。

もとは古代エジプトで高貴な死者を埋葬するときの副葬品だったティアラは、古代ギリシャでは神々が身につけるものとなりました。マラソンで勝者に送られる月桂冠のリース、あれがティアラと同じルーツなわけです。

その後、王侯貴族の女性の頭上を飾るものとなったティアラ。デザインの美しいものから単に宝石の豪華さを競うものまでさまざまあり、なかなか面白いものです。

飛行機事故に遭いながら、無傷で残ったティアラ、戦火を超えたティアラには歴史を感じます。

しかし、参観者の足を一番長く引き留めたのは最後のビデオコーナー。まだあどけなさを残し、ティアラを着けた花嫁姿の美智子さんや雅子さん、紀子さんの晴れ姿を、長いことじっと眺めている人が多かったです。

公式サイトはこちら

3月18日まで、
Bunkamura ザ・ミュージアム(渋谷)
このあと新潟4月1日−5月9日
    京都6月9日−7月22日
へ巡回します。
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2007年01月25日

日本の表現力

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「マリー・アントワネット」を見ようと六本木くんだりまで出かけたのに、豪華な衣装と音楽に負けて(スタッフロールのラストに流れたの、Aphex Twinの曲ですよね?良かったなあ…)、王妃の孤独なんてさっぱり伝わって来なかったとむくれている今日この頃。せめて言葉だけでもいきなりフランス語になれば少しは感じ出たかもしれないのに、なぜ皆英語でしゃべる!?

…ああ、禁を犯して気に入らなかった映画の話をしてしまいました。もちろん、見どころはあったので全然ダメでもなかったんですけど…。

というわけで、絶対オススメの企画の方をエントリー致しました。もうちょい足を伸ばして、国立新美術館。

六本木ヒルズからですと、地下道を乃木坂方面に抜け、直進して六本木トンネルに入る直前の右側にある階段をとことこ下へ降りていき、道なりに進むと正面玄関に到達します。

スゴイ大建築のような写真を事前に見ていたのでどんないけ好かない建物かと思ったら、意外にこぢんまり見えて好印象。お目当ては無料展覧会「日本の表現力」だったのでそのまま入ります。

最近の美術館のトレンドで、入場券を買わなくても取りあえず構内に入れるのが嬉しい。公共の建物はこうでなくちゃ。

大学のカフェテリアみたいな三つ星レストラン(平日の2時だったのに長蛇の列)を視界に収めつつ、展示ホールへ。

マンガ、アニメ、ゲームなど日本ご自慢のエンタメ系アートを取りそろえたラインアップと聞いておりましたところ、入っていきなり、鳥獣戯画絵巻がひっそり展示されていたのにはビックリ。普通だったら行列して見るものですもんね。じっくり拝ませて頂きました。

映像ホールできちんと上映会もあるのですが、日程が合わなくて残念に思っていたところ、ほんのさわりですけど会場でも常時流されているとわかりました。一度は見てみたかった「くもとちゅうりっぷ」といった古典アニメも流れていて嬉しい。

とはいいつつも、アニメやマンガは大体リアルタイムで見ているので、目新しかったのはむしろメディアアートの方。

公式HPにまだ画像も紹介も出ていない、面白い展示がたくさんありました。ジャイロスコープを操作して自分が地球の内側から地図を見ているような気分になれる作品とか、1人1弦を演奏して1つの音楽を作り上げる作品とか、SF的発想のものが多くて楽しめました。会期は2月4日までと短いので、この機会にぜひ御覧になってみてください!面白いアイデアを見たい方には超オススメです。

公式HPはこちら
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2006年05月10日

本城直季「small planet」展

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AGHOMEさんの記事で見て、急いで駆けつけました。
リトルモア刊の同名写真集の展覧会です。

白い壁に掛けられた大小さまざまのジオラマの写真。実在の景色を特殊な方法で撮影したものだという説明を読んでさえ、良くできたミニチュアにしか見えません。

精巧なミニチュアを使ってホンモノらしく撮る、特撮のトリックには慣れているのに、まさか逆があろうとは…。とても刺激的な展覧会でした。ギャラリーの建物も面白かったし。

残念ながら展示は金曜まで。上記の本でも十分雰囲気は味わうことができます。

ギャラリー(g) (代官山)
2006年5月12日(金)まで
12:00〜19:00
HPはこちら
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2006年04月21日

藤田嗣治展

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藤田嗣治といえば第二次大戦のときに「戦争賛美画を描いた人」という知識しかなく、それ以外の絵はどんな感じなのだろうと、とても興味があったので行ってまいりました。

平日の午後1時過ぎだったので、ゆっくり見られるかな〜と思ったらとんでもない。入り口の前の芝生に入場待ちの列が出来ていて、一瞬、帰っちゃおうかなあという考えが頭をよぎりました。

幸い、列はどんどんと進んでいるようで、誘導の手際も良かったので並んでみました。10分も待たずに入れて一安心。

しかし、当然ながら絵の前には黒山の人だかりで、全体が見えた絵はほとんどありませんでした。しかも観客のマナーの悪いのには驚きます。展覧会場というより、まるっきりバーゲン会場のノリです。絵を見に来たのは皆同じ。少しでも近寄ろうと、人を押しのけたりこづいたりしちゃダメですよ!見たら、さっと離れましょうね。絵の前でおしゃべりしてたら、見たい人が見られませんよ(T T)

思うに、解説を聞く機械というのも良くないんですよね。説明が終わるまで絵の前に立っているので、混雑に拍車がかかってしまいます。だいたい、絵を見るのになぜ説明が必要なんでしょうか。この辺は説明が必要派の皆様にご意見を伺ってみたいですね。

さて、肝心の展示ですが、かなり広い観客層にフィットしそうな感じです。全体が製作年代にそって章立てされており、それぞれに画風に特徴があります。全部お好きな方はもちろん、陶磁器のように美しい肌を描いた前半がお好みの方もいらっしゃるでしょうし、私のように、最晩年のちょっとエキセントリックな感じの画風になってからが好きな方もいるでしょう。後半は目のつり上がった風変わりな子供を描いた絵や宗教画などで、現代の画家らしい作風です。

東京国立近代美術館(竹橋) 2006年5月21日まで
ここには、外からも入れるオープンエアでなかなかオシャレなレストランがありますが、昔はミネラルウォーターをひと瓶くれたりしたのに、最近ちょっと太っ腹度が減少して哀しい…時間を多少外しても混んでますので、先に名前を入れてから展覧会を見ても十分間に合うかも。

公式HPはこちら

木、金、土は夜8時までと頑張っています。
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2006年03月13日

長谷川潔展

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明治から昭和にかけて、パリで活躍した銅版画家の展覧会です。
ごくごく初期の作品からして洋風が板についてるのは驚くばかりです。

モチーフは自然や静物、景観など優しいものですが、
金属板に刻んで作られた輪郭がシャープで、きりりとした印象です。
そして、何ともいえない黒の美しさ…。

後半には装丁や招待状などの作品の小品もあり、
とても洒落ていて楽しめます。
入場券で常設展も見られますが、ふだんなら行列してみる
マチスの絵や、富本憲吉の作品などが、人気のない空間で
楽しめて大変お得に感じました。

また、併設の美術情報センターに入ることもできます。ここでも
関連の展示が見られます。横浜美術館は稀覯書のコレクションでも有名なので、司書の方に聞くといろいろ教えてもらえるかもしれません。

私は2時間くらいいるつもりで見始めたのに、あっという間に時間が
過ぎてしまい、センターでゆっくりすることができませんでした。
いろいろな資料が自由に見られるし、落ち着いていてオススメです。

開催中〜3月26日(日)
横浜美術館
HPはこちら
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2006年02月15日

ニューヨーク・バーク・コレクション展

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アメリカの資産家バーク夫人が収集した日本美術コレクションの里帰り展覧会。
なぜこれほどの宝が流出してしまったのかはさておき、収集範囲がとても広いのにビックリ。
やきものや掛け軸、屏風は見た目も豪華な美術品だからそれほど驚きませんが、
蕭白とか若沖とか髪の毛一筋の差で悪趣味にしか見えないものまでちゃんと揃えているのがスゴイです。

たくさんの屏風図が揃っているのが、屏風好きの私のツボをぐりぐりに押してくれました。「大麦図屏風」のようにモダンなものから洛中洛外図や南蛮屏風、源氏物語絵屏風までジャンルもいろいろ。絵巻もそうですが屏風図も大きな画面の中に何場面もが展開し、まるでアニメでロールセルに絵を描いて引っ張って撮影する技法みたいな感じなのが面白いんです。酒井抱一のような琳派の装飾的なものでも、季節の移り変わりや時間の経過など、確かな動きが描き込まれているのを見るのは楽しいものです。

東京都美術館のチラシ↑にも使われた蕭白の「石橋図」は掛け軸ですが、これも中央に目線を据えて下の方と上の方で別の時間が流れています。獅子は子を千尋の谷におとす、の図が描かれておりますが、画面中央の 星一徹 親獅子から上は見上げたアングル、下は俯瞰のアングルが同一画面に出現しています。誇張された動き、ロケット発射台みたいな大胆な構図に加え、水墨画らしい微妙なボカシではなく、輪郭の中をきっちり塗りつぶしてるのもアニメっぽく見える一因でしょうか。

出口付近には若沖の「双鶴図」が飾られています。「きょろちゃん」みたいな造形に思わずぷぷっと吹き出してしまいそうな鶴二羽ですが、尾羽のあたりのイヤに写実的な表現に画家です!という意地を見せてるのがまた笑わせてくれます。

正統派からヒネリの効いたものまで幅広いコレクションなので、誰と行ってもきっとお気に入りが見つかるであろうコストパフォーマンスの高い展覧会、ツウから入門者までオススメです。

2006年1月24日〜3月5日(日)まで
東京都美術館(上野)

平日午後に行きましたが、空いていました。
第三水曜日は65歳以上の方は無料です。
ってことは、それ以外の方は避けた方が良いでしょう…。
なお、中はそれほど混んでませんでしたが切符売り場が混んでるので、
前売りかJR上野駅で切符を先に買っておくとよいかも。

こちらに割引券もあり。
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2006年02月12日

花森安治と「暮らしの手帖」展

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最近、ロハスが注目を集めるにつれ、また盛り上がってきております雑誌「暮らしの手帖」。その編集長だった花森安治氏による装丁、装画等を中心にした展覧会です。
確か2002年にも銀座で展覧会があったんですが、そのときは1時間たりとも休めないほど忙しい時期だったので、結局行かれませんでした。今回、ゆっくり見ることが出来て本当に嬉しかったです。

花森氏といえば、おかっぱ頭のワンマン編集長というイメージが強くて、デザインワークもしていたということは、実はあまり知りませんでした。今回、氏が指定したレイアウト等の実物を見て、その卓越したセンスに改めて驚きました。

まずは表紙のための装画の展示があり、レタリングした新聞広告の原稿などもありました。壁の上部に展示された「暮らしの手帖」バックナンバーの表紙は、そういえば昔見たなあと懐かしく、子供の頃だったのにどれも覚えているところを見ると、かなりインパクトが強かったのでしょう。書き文字などの手仕事と、大胆なデザインの組み合わせに味があります。

雑誌全体を通してのレイアウトのリズムもよくて、今みても斬新でモダンです。

レイアウト原稿を印刷所へ入稿するときは、アタリといって、どんな位置にどんな写真を配置するかというスケッチを描くんですが、花森氏が鉛筆で輪郭を取ったその線がすでに素晴らしくて、素描として額装したいくらいの感じでした。

「暮らしの手帖」で話題になった商品や記事なども置かれており、なかでも商品テストで使われた昭和の電化製品たちも、キッチュなプラスチックのつまみや、鉄製のボディに微妙な色合いの塗装がしてあるのが、今見るととても可愛らしく感じます(記事では批判されてたりしますが…)

花森氏は戦時中、大政翼賛会に属していたそうです。これがドイツなら二度とマスコミの仕事なんて出来なかったに違いありませんが、幸か不幸か日本では戦後も言論関係の仕事を続けることができました。本当にこの仕事が好きでしょうがなかったのでしょう。

雑誌記事も含めて、彼の作品は素晴らしいし、言ってることはとても真っ当だと思います。言葉によって実際に人を動かすことのできる、稀有な才能の持ち主だったのでしょう。個人的には、追いつくどころか真似することさえ無理であっても、花森氏が職業人としての目標であり、尊敬もしています。

でも、主婦の目線で雑誌を作ってたにもかかわらず、その記事にはどうしても煽動者的なものを感じてしまうんです。時代がそうだったのだといえば、そうなんでしょうし、マスコミとはそういうもので、それ以外にどんな主張の仕方があるのかと言われれば、それまでですが…。

*2016年 追記*
本屋さんに行ったら花森安治氏についての本がたくさん積まれていて、ドラマの影響力ってすごいんだなと改めて感じました。

もう二度と戦争は経験したくない、日々の暮らしが大切にしたいものであれば、戦争は起こらなくなるに違いない、と考え、生活を主役にした雑誌を作った、というところは実に立派だし、自分のできることで行動を起こすという実行力も凄いと思います。

だけど、私にはどうにも釈然としないところがある。

以下は小さい頃読んだ本の内容なので記憶もあいまいなため、きちんと確認もせずに書くのは良くないのかも知れないけど、花森さんというと真っ先に思い出すことです。個人的な偏見だと思ってお読みいただければ幸いです。

『暮しの手帖』は「商品テスト」というのが看板記事で、耐久性を調べるために、商品を繰り返し使ったり、実際に使われる環境で性能をテストしたりしていました。企業からの干渉を避けるため広告も取らないなど、妥協を許さない編集方針だったので、中身はしっかりしていたし、勢いもあったのだと思います。

そういう雑誌だから、記者さん(編集者さん?)も妥協せずに仕事をしていたのだと思います。花森さんが書かれた記事の中に、そうやって頑張った猛烈女子編集者の話がありました。彼女は頑張って働き、優しい旦那さんとお子さんを遺したまま、若くして亡くなったそうです(確か、脳溢血か何かだったと思います)。

記事には彼女の頑張りぶりしか書かれていなかったのですが、読んで私は思いました。これは(今でいう)過労死じゃないんだろうか。雑誌のために頑張って、確かにやりがいはあったでしょうし、ご本人も後悔してないかも知れない。でも、もっと長生きして、家族団らんの時間も持てる働き方もあったんじゃないだろうか。

しかも記事を読むと、花森さんはこういう働き方をさせたことを全然悪いと思っていないみたい。それって戦時中の「一億火の玉」とどこが違うんだろう。結局、この方は、根本的なことは何も変わってないんじゃないか、と…。

今考えてみれば、社会全体がそういう雰囲気だったのだろうけれど、でも戦前の反省に立っているというならば、少しは気が付いて欲しかったと思ってしまう訳です。あるいは、時代の雰囲気に流されないということも、「啓蒙」する立場の人なら貫いてほしかったとか、さらに言えば、時代を先取りしてそういうことに気づいて欲しかったとか、尊敬できる仕事ぶりなだけにその辺が、納得がいかない原因なのだろうと思います。

もう1つ、これは花森さんとは直接関係ないと思いますが、今でも覚えているガッカリした記事はこんなものです。

路面電車がなくなるというので、上野のアブアブ(百貨店)の前で、いろいろな人にもらったコメントを集めたものです。年配の人は「寂しいね」等々、なくなるのを惜しむコメントを寄せているのですが、若い女の子たちのは「要らない、遅くって」みたいな人を小バカにしたような口調の発言しか載っていません。

読んだのはたぶん小学生の頃だったと思うのですが、何だか無性に腹が立ちました。子供なだけに、路面電車がなくなるのは残念だと素直に思ったので、年齢によってそんなにはっきりコメントの傾向が違うはずがないと感じたからです。しかも、あからさまに「年齢バイアス」が感じられるコメントの編集の仕方を見て、本当にちゃんと取材したんだろうか、と子供ながら疑問に思ったのです。

それ以来、あまり熱心に『暮しの手帖』を読むことをしないまま大人になってしまいましたので、この展覧会に行ったのは、全く偶然のきっかけからでした。

何の催しだったか忘れましたが、10数年前、雑誌が売れないと言われていた時期に、どうやったら雑誌を立て直せるか、みたいなことをいろいろな雑誌の関係者の人が話す、という会がありました。

マーケティングだとか、タイアップ記事だとか、普通の会社で聞くような提案が続くなか、暮らしの手帖社の人はポツンと『良い物を作れば経営はよくなると信じています』と言っていました。

あの雑誌はもう危ないんじゃないの? ずいぶんお花畑でノンビリしてるよなあ…と会場にちょっと呆れたようなムードが漂ったのは、よく覚えています。でも私はそのとき逆に、本気でそう考えているなら、良い物と信じて何を作っているのか見てみなくちゃ、と思ったのでした。

その後、松浦弥太郎さんが編集長に就任したりして、また『暮しの手帖』の話題をあちこちで聞くようになりました。そして今度はドラマで注目されています。行き詰っているように見えて、どこからか必ず援けの手が得られる状況を見るたびに、私はあのときの「良い物を作れば…」という言葉を思いだします。

(↑上の2枚の写真はこの展覧会のお知らせなんですが、デザインが面白いです。おわかりでしょうか?
広げるとポスターに、下を折り返した後じゃばらに畳むとパンフレットになるように出来ています。)

2006年4月9日(日)まで
世田谷文学館
もよりは京王線・芦花公園駅 

世田谷文学館の展示はこれだけではありません。
東宝の砧撮影所のご近所ということもあり、ゴジラに関する資料がいろいろあったのも驚き。
さらに、世田谷文学館ってどこかで聞いたなあ…と思ってたら思い出しました。
crannさんの
「Sextans 好奇心のコンパス」に関連の御紹介があったんでした。

人形作家・石塚公昭氏が作った
永井荷風、江戸川乱歩、中井英夫、寺山修司の人形と、
人形による世田谷ロケ(?)の写真が展示されてるんですよね。
ホントにすごいです。これです、これ
こちらは2006年3月31日まで。お見逃しなく!
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2006年01月23日

Motion Graphics7



新橋はリクルートビルの1階に設けられた小さなギャラリーでの展覧会。映像作品だけなので、むしろ上映会と言うべきでしょうか。

映像表現の第一線で活躍中の、辻川幸一郎、森野和馬、石浦克、エンライトメント、グルーヴィジョンズ、AC部、タナカカツキの7組の映像クリエーターたちによる競演です。それぞれの代表作を一気に見ることができます。

メイン会場では映像だけを流していますが、会場の一角には音声付きの上映コーナーが設けられています。やはり音と一緒に見ると印象はかなり異なります。森野和馬×ケンイシイのコラボ、辻川幸一郎×コーネリアスのコラボなどお馴染みの作品の他、よくインテリアショップで見かけるゴーカートゲームみたいなグルーヴィジョンの映像、しりあがり寿系(?)なAC部(こんなグロ作品が「みんなのうた」のアニメとは…。こと短編に関していうと、NHKのはじけっぷりは相変わらず素晴らしい)。これで入場無料とはちょっと申し訳ないような充実度です。

アニメーションの技術や実験映像としての面白さというより、デザイン作品としての完成度を追求しているようなので、映画ファンよりデザインファンの方が、お気に召すかもしれません。 

Creation Gallery G8(クリエーション・ギャラリーG8)(東京・新橋)
2006年2月3日(金)まで
11:00-19:00 水曜20:30まで
祝祭日、土曜は休館
もより駅は新橋。有楽町、日比谷、銀座からも徒歩圏内です。
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2006年01月11日

オラファー・エリアソン 影の光

olafur.jpg

デンマークの作家、オラファー・エリアソン(Olafur Eliasson)の個展です。
最初の展示室にテーブルを置き、作品集が並べてあったのがとても新鮮でした。
これまでだと、出口やミュージアムショップに置いてあるケースがほとんどでしたので。

おかげで、今回の展覧会は彼の幅広い作品世界のごく一部分であるということが
最初にわかって良かったです。何しろ、会場に合わせて割とこぢんまりした、光を使ったインスタレーション作品が中心でしたから。

まずはタイトルが「美」という作品。ず、ずいぶん大きく出たわね…と思いましたが、展示を見れば確かに、「美」そのものです。
上のチラシの写真だとわかりませんが、実はスプリンクラーのような装置で水のカーテンを作り、プリズムの光を当てて虹を作っているのです。

落ちてくる水は絹糸のようによじれながら、七色の織物となり、見る角度によって表情を変えます。乾燥した東京の冬の室内では、水の潤いが見ている者に染みこむようにすら感じられます。

他にもいくつかプリズムをつかった作品があるほか、一部屋全部を単色のライティングにしただけ、というのもありました。部屋自体としてはオレンジ色になっているだけでどうということもありませんが、そこに人物がいると、相手が白黒にしか見えないのがとても面白いのです。目の前にちゃんと居るのに、上映されている昔のフィルムを見ているような感覚です。

光を使った作品というと、ジェームズ・タレルを思い起こしますが、彼の作品が空間の広がりを感じさせるのに対して、エリアソンのこの作品は、より「光」と、それを作る「モノ」に焦点がある感じです。

全部で10作品ほどの小さな展覧会ですが、なかなか楽しめます。日曜に行きましたらかなりの賑わいでした。

2006年3月5日(日)まで(会期延長になりました!)
原美術館 
もより駅は五反田、もしくは品川です。品川駅のみどりの窓口では100円割引券を
売ってます。

この美術館には庭に面したレストランがあり、2時過ぎてもランチがあるので
行くときはいつも美術鑑賞兼昼食って感じです。

HPはこちら
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2005年11月23日

宮殿とモスクの至宝

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↑イーデンホールの幸運

イギリスはサウスケンジントンにあるヴィクトリア&アルバート美術館は、装飾美術の殿堂として有名です。来年夏にギャラリーが新設されるのを機に、イスラム美術の収蔵品が貸し出されることになったそうです。確かにここの美術館には行ったんですけど、入り口近くにあるお尻がテラテラ光っていた女性像しか思い出せません…その像のところにわざわざ「触るな」って書いてあったのが印象深くて(--;)。…えっと。何も覚えてないんじゃ、行かなかったのと変わりませんですね。

世田谷美術館ではジェームズ・タレルと三星堆遺跡を観て、どちらも良く覚えております。今回もそれに匹敵する面白いものでした。

イスラムといえば、偶像崇拝が禁止されているために抽象美術が発達したと聞いておりましたが、人物や動物を生き生きと描いたものがあり意外に思いました。棟方志功の版画に登場するような眉毛のつながった女性だとか、イケメン王子タピストリーなどもございます。こうした具象モチーフは、宗教的な場所以外で使われる、詩歌の挿絵として使われる、モンゴルの法が有効であった地域で使われる、等々、様々な理由によって思ったより広く採用されていることがわかります。

と同時に、広大な地域にまたがり、さまざまな文化と接触のあったイスラム社会の多様性を知ることもできます。

文物のうちでも、十字軍などによってヨーロッパにもたらされたイスラムの文物は、当地で宝物として扱われることもあったようです。中でも、小部屋を一つ使って展示された「イーデンホールの幸運」という文物↑は、モノも綺麗ですしエピソードも興味深いものです。

図録によると、そのエピソードとはこういうものです。

イーデンホールとは、イングランド最北部にある屋敷で、そこには13世紀にエジプトかシリアで作られた、ガラス杯が保管されていました。時が過ぎ、人々はこの美しいガラス杯がどうしてあるのか、その理由を忘れてしまい、以下のような話を伝えました。

妖精が集まって…酒宴をあげていたとき、
物見高い人間の近寄る気配に驚き、急いで退却した。
そのとき、この杯を置き去りにしていった。逃げる最後の妖精が叫ぶには
「この杯が壊れたり倒れたら、イーデンホールの幸運とはおさらばさ」


こうして完璧な姿でガラス杯が見られるということは、幸運はまだ続いているのでありましょう…イーデンホール自体は、取り壊されてしまいましたけど。

図録はイギリスのものの翻訳なので読みづらいところはありますが、イスラム美術についてざっと知りたい人には役に立つのではないでしょうか。

世田谷美術館 2005年12月4日(日)まで
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2005年11月19日

Passion and Action 生の芸術 アール・ブリュット展

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数年前、外苑前のワタリウム美術館で「ヘンリー・ダーガー展」というのをやっていました。孤独死したダーガーじいさんがせっせと書きためていた『非現実の王国で』という物語の挿絵で、色遣い・構図とも素晴らしく、他では見たことないような絵です。ついに本まで買っちゃったんですけど、正直、この絵が好きというのは自分にどこか問題があるんじゃないかと躊躇したことは事実です(あれが絵じゃなくて写真だったら…と考えたらおわかり頂けるかと)。

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描いた人が偉いのはもちろん、一歩間違えば変○よばわりの絵でも、良い絵だと拾い上げた人は偉いなあ、と思っていたところ、同じようにヘンテコな絵の一群が、「アウトサイダー・アート」と呼ばれていることを知りました。

今回、ハウス・オブ・シセイドウで開かれているのは、こうした、ダーガー始めユニークな作風の絵を一堂に集めた展覧会。いずれも発想が常人のレベルを逸脱している作品です。正式な美術の教育は受けていない作家ばかりだということですが、むき出しの欲望が画面の隅々にまで満ちあふれていて、見つめていると怖くなってきます。過剰な絵ばかりではなく、カレル・ハヴリチェックの作品のように、どこまでも端正な中に狂気がなみなみと溢れている絵もあります。

「芸術新潮」の11月号でダーガーが惜しげもなく表紙になっていたので買ってみたら、ちょうどアウトサイダー・アートの特集でした。特集タイトルではフランス語の「アール・ブリュット」という用語が使われています。日仏のエキスパートお二人の対談によると、英語はこれを訳したものだそうですが、精神病患者など社会の周縁にいる人々が描いたからといって「アウトサイダー」と呼ぶとは最悪な用語、だそうです。まあ、そうかもしれません。

でも、音楽では「オルタナティブ」こそ今や主流ですからね。「アウトサイダー」が絵画のシーンの真ん中にいて悪いことはないはず。この言葉が「描き手の状態」だけを指してるとも限らないし。実際、この用語のせいでいろいろ誤解が生まれたそうですが、主流にのまれず我が道をいく作風ということで「アウトサイダー」も好きだなあ…

コレクターやキュレイターの努力によって、第三者が見ることはかなわなかった作品に触れられることに感謝する一方、将来的にはこれらの素晴らしい作品が「○○派」「○○芸術」とひとからげにされてしまわず、たとえばダーガーのように、個々の作品として注目が集まってほしいと思うのです。

House of Shiseido (東京・銀座)
HPはこちら

2005年11月27日まで
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2005年11月03日

プーシキン美術館展

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今日はゲルハルト・リヒター展を見に行ってきました。
金沢でしかやらないのかと思ったら、千葉でも開催されたのでラッキーと思ったのですが、
意外に遠かったうえに、今ひとつピンとこなくて…。思いつきは買いますが…。

と、いうわけでプーシキン美術館展。
会場の東京都美術館というのはいつもビッグネームの展覧会をやるので混雑必至のため
平日に行ったのでさすがに入場待ちはありませんでしたが、
常に絵の前はバーゲン会場状態で、ゆっくり鑑賞という雰囲気ではありませんでした。

リヒター以上に印象派がピンとこない私ですが、
それでも出かけたのはマチスの「金魚」(↑)を観たいがため。
会場に入るなり、人だかりしているモネもルノアールもすっ飛ばし、
この絵の前に直行です。

いえほんと、この絵だけ見に来る価値は十分ありますって…。

可愛らしいイラスト風の絵なので小さいのかと思うと、意外に大きく、
大胆な筆遣いにほれぼれします。
左上のピンクに見える部分は実際には紫がかっており、ラメが入ったような不思議な色合い。
右側の濃い灰色のところは、ひっかき傷のように絵の具を掻き落としてあります。
葉っぱの部分は水彩画のように、もやもや滲んでいます。

4匹の金魚は我関せずで「ふふんっ」と言った表情。

観ても観ても飽きません。

他の絵の前ではあれこれ批評をしていた人たちも、この絵の前ではぽつりと、
「いい絵だね…」とつぶやき、沈黙して立ち止まっていたのが印象的でした。
この絵を見たとたん、「即決でお買いあげ」だったという、コレクターの気持ちがよーくわかります。世界中の美術館から1枚、好きなのもってっていいよ☆と言われたら(←そんなことありえないけど)、迷わずこの1枚を指さしちゃうでしょう。

未練がましく見終わったら、この絵の印象が上書きされないよう、まっすぐ出口へ。

天気がよい日は、美術館を出たら、東京文化会館のテラスでお茶するのが密かな楽しみ。
向かいに西洋美術館の裏の木立が見え、駅からすぐとは思えないくらい広々したオープンエア。道路から1段上がっているため、外からは隠れていて、空いてます。

この日も、あんなに美術館は混雑してたのに、ここは貸し切り状態でした。
紙コップでコーヒーだっていいんです…。

プーシキン美術館展
2005年12月18日(日)まで
東京都美術館(上野)
関連HPはこちら
posted by 銀の匙 at 23:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 展覧会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月30日

チャールズ&レイ・イームズ展

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目黒区美術館で開催されている回顧展です。

イームズといえば椅子。ですし、一般にはプロダクト・デザイナーとして知られていますが、今回の展覧会では啓蒙者としての一面も取り上げています。
会場では科学教育映画(いずれも短編)を見ることができますが、思わず見入ってしまいました。

また、展示されている椅子の中には座ることができるものもあります。
「ラ・シェーズ」というグラスファイバー製のソファなどは(写真はこちら)見た目からは想像がつかないほど座り心地がいいです。

展覧会の詳しい内容はこちら

で、↑上のHPの展示内容というところを見てみたら、がーーーーん!!
イームズのおもちゃとか事務所とか、
展示されてるはずの内容、半分見てない…ど、どうして????
道理で入場料1000円にしては展示が少ないと思ったけど(でも、この内容なら高くないや、とも思いましたけど)。

順路通り観たと思ったのに(TT)
展示を飛ばさないよう、お気をつけて。

目黒区美術館で12月11日(日)まで。
初めて行きましたが、居心地がよく、目黒らしい美術館。
11月22日からは映像展示が増えるそうですので、この後行くのかいいかも。
posted by 銀の匙 at 22:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 展覧会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月06日

チェコとスロバキアの版画

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皆様こんばんは。
しばらくチェコに旅行に行っておりました。
帰国してからも、チェコという文字に敏感になっております(ちゃんと調べてから行けばいいのにね…)

こちら神保町のギャラリー福果で開催中なのは、チェコとスロヴァキアにゆかりのある画家、
ドゥシャン・カーライ、マリナ・リヒター、カタリナ・ヴァヴロヴァーの版画展。いずれも非常に緻密、かつ奇抜で、その大胆な着想に驚かされます。

カーライは絵本画家としてご存じの方も多いと思います。奇妙にねじれた絵空間、すし詰めの物体、グロテスクぎりぎりの線で止まっている作風は、風土的な理由があるのか、チェコのアニメ作家シュヴァンクマイエルにも一脈通じるところがあるように思いますが、シュヴァンクマイエルは色遣いがちょっと苦手(いつもワガママで済みません)なのに対し、赤中心の彼の絵は好みの色合いです。

後のお二人の作品は初めて見ましたが、やはりどことなく似通った雰囲気を持っています。

こちらでは、カーライとリヒターの貴重な書籍も販売しています(紹介はこちら)。

10月22日まで
gallery 福果
神保町1−11−2F
地下鉄神保町駅A7を出て、出口に向き直ると右側に路地があります。
「さぼうる」という看板がすぐ目につくと思います。その隣、「六法」という
お寿司屋さんの2階です。
12:00−19:00
日曜休 
posted by 銀の匙 at 23:34| Comment(4) | TrackBack(0) | 展覧会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月13日

ギュスターヴ・モロー展

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画家本人の自宅兼アトリエを美術館にした、パリのギュスターヴ・モロー美術館所蔵品による展覧会。ぜひこの展覧会には行こうと思っていたものの、それは「出現」という絵の本物を見たかっただけで、他にどんな作品があるか、などの予備知識はまったくありませんでした。それほど悪趣味じゃないといいなあと思ってただけでした(無知)。

shutugen.jpg
(写真はチラシから)

これが「出現」です。最初に見たのは教科書か何かに載っていた小さな図版でしたが、それでも十分過ぎるほどインパクトがありました。空中に浮かぶ首とそれを指さす人物の強烈な対比、床の上の強い光、建物に差し込むぼんやりとした光、おぼろげな背景…。

実物を見てみると、印刷のせいではなく、実際に全体が朦朧としていることがよくわかります。ことに空中のヨハネの首を指さすサロメは主役にもかかわらず、背景から生え出てきたかのように輪郭があいまいで、口の部分などはこすったように描かれています。首の下にいる人物は、輪郭がはっきり描かれている割に彩色は真ん中の部分だけ。よくみると、建物の装飾も輪郭だけがあるのです。

その装飾はユダヤの宮廷というより、どうみたってインドの寺院そのもの。ここまでの作品にも、西洋の人物でありながら、飛天のように描かれたものがありましたっけ。何の説明もなしに持ち込まれた東洋趣味と、聖書から得た画題のミスマッチが、この作品の不思議さをさらに強調しているように思えます。この他「一角獣」(冒頭のチラシの図版)という美しい作品にも使われている輪郭を強調した描き方には、東洋趣味とともに、油絵の技法を越えた現代性を感じます。実体がすでにないのに残像だけが見え、一つの画面にいくつもの時間軸が描き込まれているような感じを受けるのです。フェード・イン、フェード・アウトが描かれているとでもいいましょうか…。

この絵には緻密に描かれた水彩画のもの、さらに大きなものなど、いくつかバージョンがあるそうなので、今回のバージョンは習作なのでしょうか。しかしながら、きっちり完成したバージョンよりも、より抽象度の高いこの作品の方が面白いし、主題にも合っていると思います。

実際のところ油絵でいいなと思ったのは上記の「出現」「一角獣」の2点だけ(を見るだけでも十分価値はあります)でしたが、意外や水彩画がとても気に入りました。下の作品はトロイア戦争での美女ヘレネを描いたものですが、このような水彩画らしい作品はむしろ少なく、油彩が朦朧としているのに比して、水彩画の方はぱきっとした色遣いのものが多くて、むしろ伝統的な西洋画に近い印象を受けました。ですので、逆にもやもやっとした水彩画しか知らない自分にとっては、とても斬新に感じられました。

helene.jpg
(会場で買った絵はがきから)

具象はどうも…という方にもお勧めです。

Bunkamura ザ・ミュージアム(東京・渋谷)
2005年10月23日まで。
途中、9月13日から展示替えがあります。
目の前がカフェ・ドゥ・マゴなので、お茶する
場所には困りません。
posted by 銀の匙 at 00:49| Comment(4) | TrackBack(1) | 展覧会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする